| [16] 笑顔の一日 |
- ティア - 2008年02月01日 (金) 13時04分
「・・・チェックメイトです!」 「しまった・・・まいりました」
伽夜とロートスはチェスをしていた。 少し前までロートスの家には皆がいた。 そのときはトランプをしていたのだが、二人とも意外と勝負に強いということ気づき、では、違うもので勝負してみよう・・・ということになって、二人になってからチェスを始めたのだ。
普段ロートスはその人の才能などを見抜く力に長けている上、相手の技量を測って勝負することもできる。だが、女性に対してはたまには負けることも必要ではないのか? そんな事を悩みながら打っていたのでは、本気でかかっている伽夜にさすがに敵わず、王手を取られてしまったのだ。 しかもこの戦いにはお互い相手の言う事を聞くという賭け事つきだ。 さて、伽夜は何を望むのだろうか?
「さすがにお強いですね。では、何をお望みになりますか?俺は何でも大丈夫ですよ」
伽夜ならば無謀な願いを言う事もないという安心感からか、ロートスは気軽に請け負った。
「では・・・・・では!明日のお休み一日私の言う事を全部聞いてください!」
伽夜は少し悩んでからそう言った。 多分、買い物に付き合えとか、お菓子の作り方を教えろというところだろうか?
「もちろんです、ミス。では明日は二人で楽しく過ごしましょう」
ロートスは笑顔でそれに答えた。 そうやって伽夜の我侭な一日は始まったのだった。
<<翌朝>>
朝起きると伽夜はもうロートスの家に来ていた。 普段の衣装とは違い、薄いピンクのワンピース、そしてほんのりとつけた化粧・・・。 その気合のいれように、ロートスは少し驚いた。 〜なんで今日はこんなにお洒落をしているのだろうか?もしかして出かけるのかな?〜 そんなロートスに向かい、伽夜は大まかな一日のスケジュールを話す。 内容はだいたいこんな感じだ。
1、まず買い物。一日中家にいれるように先に買出しをしておこうとのこと 2、一緒に料理、教えてもらいたいらしい 3、そのあと部屋で映画を見る。見たい映画があるらしい 4、その日の終わりまで家にいることを許してほしい、これはロートスが普段はなるべく夜更けになる前に家に帰すからで、今日はそれは嫌だということらしい
おおまかな内容は上記のものだが、こまごました願いは更に続いた。
「一日中私の事を呼び捨てで呼ばなきゃ返事しません」
「今日出すお茶は全部ミルクティにしてください」
「買い物いくとき、手をつないで欲しいんです」
「ロートスさんの泳いでいる姿がみたいから、昼食後泳いでくださいね」
「抱えるほどのポップコーンを持って映画を見たいです」
ロートスはもう少しで噴出すところだった。 なんといっても、その願いの全てが自分からみればそんなに対したことじゃないからだ。 まったく、舞踏会以来の彼女のいう我侭はなんというか、見た目、もしかするとそれ以下の少女が願う我侭ばかりだ。
しかも、1つ願いをいうたびに嬉しそうに、だけど顔を真っ赤にしていう伽夜は本当にこういう我侭に飢えていたんだというのも彼は見てとれた。
〜俺にだけいう我侭というのも嬉しいものもあるな。しかも相手は我侭なんて縁がなさそうな伽夜だし〜
大笑いしそうな顔をどうにか我慢しながらロートスは伽夜の願いを1つ1つ叶えていった。
映画を見るとき、伽夜はロートスの膝の上で見たいと言った。 そんな可愛い我侭もいいものだ。そう思いつつ、ロートスはそれを実行する。
自分の胸元に頭を持たれ、両手いっぱいのポップコーンを抱えて映画を見る伽夜は本当に嬉しそうで、見ている自分すら嬉しくなるような姿だった。
この映画が終わって2時間もすれば、今日が終わる。
「あの・・・今日はありがとう」
ロートスを見上げながら伽夜が微笑んだ。
「いえ、俺も面白い一日でしたから。たまにはこんな日もいいですね」
「ええ、また明日から急がしくなりますから」
そうだ、明日からまたお互い冒険の日々が続くのだ。 あと少しだけだから・・・
伽夜への最後のサービスにと、ロートスは伽夜を背後から優しく抱きしめた。

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