「内なる声に耳を傾ける生き方」
ジョブズ氏の逝去に思う
2011年10月5日。 アップルコンピューターの創業者であり、ディズニーの筆頭株主でもある、 スティーブン・ポール・ジョブズ(56歳)の早すぎる逝去は世界を驚かせた。
彼の「歴史的成功の原点」は、彼の「出生」秘話と「親の愛」にあるようだ。
彼の生みの母親は若い未婚の大学院生で彼が生まれる前から養子に出すことを決めていたそうだ。しかし養子受け入れ先の夫婦が大卒でないことを知り、「縁組みを取りやめ」する事にしたそうだ。理由は、≪教育は非常に大切だから≫という親心であったという。しかし、受け入れ先の両親が「必ず大学に行かせるから」と堅く約束してくれたので縁組みが成立したという。
17年後。約束通り、スタンフォード並みに学費の高いカレッジに入学。労働者階級の親の収入のほどんどが大学の学費に使われたという。ジョブズは入学したものの、「親が生涯かけて貯めた金を使い果たしている」事に報いるような学問の意義を見いだせず退学を決意。不安と恐怖もあったけれど、後にそれが「人生で最良の決断」だったという。彼は若い世代に向けて語っている『君たちが持つ時間は限られている。他人の人生に(追従して)自分の時間を費やすことはない。【中略】≪自分の内なる声≫が雑音に打ち消されないことだ。最も大切なことは自分自身の心と直感に素直に従い、勇気を持って行動すること。心や直感というのは、君たちが≪本当に望んでいる姿(実相)≫を知っているのです。それ以外のことは、全て二の次でも構わないのです。重要な事は、『我が本心の声に耳を傾けよ』ということです。
日本の文化に傾倒し「禅」を学んだかれは、後にこう言っている『自分の根性、運命、人生、カルマ、何でもいいから、とにかく信じる事です。歩む道のどこかで点と点がつながると信じれば、自信を持って思うままに生きることができます。たとえ人と違う道を歩んでも、≪信じることが全てを変えてくれる≫のです。』
彼がアップルを創業したのは、20歳の時だったが10年後、取締役で経営対立。自ら創立した世界的企業を追われてしまうという信じられない事態が起こった。
しかし全てを失ったかのように思えた半面、「人生で最も創造的な時期を迎えることができた」と日時計主義で語る。5年間で新たに創立した会社がアニメーション映画「トイ・ストーリー」を創り、世界で最も成功しているアニメーション・スタジオとなる。なんと、その会社が古巣のアップル社に買収される。「奇跡的に」アップル社に復帰することになり、自社で開発した技術がアップル再生の中核的な役割を果たしたというのだ。一見、不遇と思えた時期が「再生の起爆剤」となったという。その時期に、夫人ともめぐり合えたという。
彼の人生観は、17歳の時にであったこのコトバ。「毎日を人生最後の日だと思って生きてみなさい。そうすればいつかあなたはその通りに生きることができる。」という言葉。
33年間毎朝彼は、鏡に映る自分に問いかけてきたという。「もし今日が自分の人生最後の日だしたら今日やる予定のことは私は本当にやりたいことだろうか?」それに対する答えが「ノー」の日が何日も続くと、「何かを変える必要がある」と自覚し、自ら変革をしてきたという。その生き方が、そのまま企業の「イノベーション(改革)」につながったという。
もうひとつ青春時代に出会った人生を変えた言葉。
"Stay hungry, Stay foolish." (本心の願いに対して)「貪欲」であれ。
(本心の願いに対して)「愚直」であれ)
スティーブン・ポール・ジョブズ。多くの人に≪イノベーション(革新)≫と「感動」と「驚き」を与え続けた「偉大な実業家」であった。その「自分をごまかさない生き方」と「1日を1日大切に生きる」生き方は、彼の名を「偉大なる経営者」として人類史に残した。