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[78] 大佐FB中・Sクン独白
無名 - 2007年07月17日 (火) 21時34分


ごめんなさい

もう ほしい なんて おもわ ないから

てを だ したりしな いから

ごめん な さい

ひとりで  あなた に かか わ らない で

じぶんで ちゃんと

にどと のぞんだ りしない  から

だから  ゆ るし て



切れ切れに漏れる言葉に、俺は彼を縛る鎖を見た気がした。
自らを戒めるその手をそっと撫でて、すべてを拒むかのように強張る体を抱きしめる。
懺悔の言葉を零し続ける唇からは、錆び臭い血の味が伝わった。
記憶に残る懐かしい人の声を真似て、その耳元へ唇を寄せて彼の名を呼んでやる。
弾かれたように顔を上げ、涙に濡れた金色の目が真っ直ぐに俺を見詰める。
そして彼は、その瞳に俺ではない誰かの姿を映して、
その唇にほんの少しの微笑を浮かべて、意識を失った。

力を失った体をベッドに横たえ、その両手を紐で戒める。これ以上自らの肉体を傷つけてしまわないように、せめて夢の中だけでも安らかでいられるようにと願いながら、俺は彼が眠る部屋を後にした。

[79]
無名 - 2007年07月17日 (火) 21時35分

喉を焼くアルコールを溜息とともに飲み下す。

彼は接吻も抱擁も信頼も、与えられ、そして受け止めて然るべきであろう全ての情愛を拒絶する。
与えようとしても、彼はそれを喪うことを恐れてか受け取ろうとしない。
喪うことを恐れるならば、最初から手に入れないほうがいい。
それはある意味賢明な判断といえるのかもしれない。
だが、受け止められずに零れ落ちた思いは、何処へ行くというのだろうか。

彼は、王になろうとしていたと聞く。

王となる。世を支配する。
それだけを聞くと、まるで子供の御伽話か狂人の戯言のようだが、彼にとってはそれは一族の悲願であり、生まれる前から彼の魂を支配し続けていた呪いのようでもあった。
そして彼はそれを実行できるだけの才覚と手段を持ち合わせており、ほんの一瞬ではあるが実際にその力を手に入れていたという。

その力を振るい、彼は数百人もの人間の命を奪った。

数百人の命を奪った。それは、世間一般の常識と比べるとしたら違えることなき『悪』であり、『愚かな行い』であり、『許されざるべき行為』であろう。
汝殺すなかれ、と神は教えている。
右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ、とも。
だが人は――それがいかに賢明な人間であろうと――結局、与えられたことがあるものしか理解できないのではないだろうか。
右の頬を打たれた者が知るのはただ打たれた痛みであり、怒りであり、恐れであり、世界は自分を傷つけるものであるという事実だろう。
そこから『許し』を理解し、そして『愛』を返すのは不可能ではないのだろうか。
俺達は神ではない。ただの矮小な人間だ。

賢帝を作るのも、愚王を作るのも、最終的には民ではないかと思う。
民が王を愛せば、王も民を愛し、その暮らしが健やかで実りあるものになるようにと心を砕き
民が王を呪えば、王も民を呪い、民の事を顧みることもなくただ疑いと悪意に満ちた国になるだろう。
彼の行為を正当化しようとは思わない。
彼は大量殺人者であり、許されざる咎人だ。
だが、もしも。民が彼を愛していたら。
彼に与えられていたものが、苦痛や孤独ではなく、愛情や信頼だったとしたら。
その受け止め方を知っていたら。
あの人を喪わなければ。
彼は、誰よりも賢明な王となっていたのかもしれない。



「―――望んで、いいんだ」
違う。望んで欲しいのだ、俺は。
今、あの人の中には俺はいない。
俺が注ぐ思いは受け止め方を知らないあの人の中に残ることなく、そのまま零れ落ちる。
受け止め方を教えたかもしれない人は、あの人に喪失の悲しみと絶望だけを残して逝ってしまった。
抱きしめる腕を、髪を撫でる手を、名を呼ぶ声を、望みながら――彼はまだ、孤独の檻に閉じこもったまま怯え続けている。
 


「アルコールで溺死するつもりか?」
呆れた声と共に、手にしていたジンの瓶を取り上げられる。
グラスまでは取り上げられなかったのは、奴の温情だろうか。

零れた思いは、消えるのだろうか? それとも、何処かへと還元されるのだろうか?
もしも思いが巡るものならばと、胸に浮かんだ祈りを最後の一杯と共に飲み下す。

どうか、ほんの少しでいい。
世界が彼に優しくあるように。



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