【広告】楽天市場から最大11倍のお買い物マラソン2月10日まで開催中

文章投稿用掲示板

ホームページへ戻る

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[19] パズ父×若大佐 (1/4 : 宿の一室)
七梨子 - 2007年05月19日 (土) 14時13分

 気がつくと、部屋のベッドの上だった。随分飲み過ぎたらしいく、頭がすっきりとしない。

 確かいつもの店で空飛ぶ島の話を、愚痴交じりに語りながら飲んでいたはずだがそれから…どうやって帰ってきたんだろう。

 「気がついたようだな。無茶な飲み方して、大して強くも無いんだろ。」

 「うわっ、誰だあんは!」

 いきなり声を掛けられ、一気に酔いも冷めるような勢いで驚いた。部屋の中に居た見知らぬ男が水の入ったグラスを差し出してきた。状況が全く飲み込めない。彼はそんな様子など全く気にしないようにデスクにおいてあった書類入れを勝手に物色し始めた。

 「ああ、これが想像図で、これが写真か。ラピュタ…本当に…」
 
 「あんた聞けよ人の話。それに何勝手に荷物あさってんだ。」

 「…言っておくが是非見て欲しいと持ちかけたのはそっちなんだが。まぁ、その様子では覚えてはいないらしいな。」

 人を馬鹿にしたような物言いが気に障る。しかしどこかで見たような気もする―。必死で記憶を探っていると、昨晩の出来事が段々思い出されてきた。

[20] パズ父×若大佐 (2/4 : 行き付けの店 ―回想―)
七梨子 - 2007年05月19日 (土) 14時23分

「またあんたその話か。」

「餓鬼じゃあるまいし、誰がそんな夢物語信じるっていうんだ。」

「空に浮かぶ島探査の為に投資を募っているんだって?詐欺で訴えられる前に手を引いたほうが利口だと思うけどな。」

 いつもの店で、いつもの遣り取り。結局、実際に目にした者でもなければこんな話は酒の席の戯言程度でしかないのだろう。

 「全く…世間の連中は頭が固すぎるよ。ラピュタは今もこの空のどこかを漂っているっていうのになぁ。」

 こんなことを言う私自身、誰か他の人間からこの話を持ちかけられていたら信じたかどうか…。それほどにあの体験は浮世離れしたものであった。今でも時折、あれは嵐に巻き込まれ冷静さを失った精神の見せた幻だったのではと不安になることもある。

 「その話、もっと詳しく聞かせてもらえないか。」
 
 唐突に現れ声をかけてきたのは、このあたりでは見かけたことのない青年だった。年のころは20歳前後…もしかしたらもっと若いかもしれないが、年に似合わない妙に人を威圧する態度が特徴的だった。
 
 「兄ちゃんやめときな、そいつはとんだ詐欺師なんだ。」
 
 「そんなのと係わり合いになってもいいことないぜ。」
 
 「見ない顔だが…学生さんか?そんなのほっといてこっちに来なよ。」
 
 雑然とした店の雰囲気にそぐわないその青年をからかって、酔客達が口々に声をかけてきた。その彼らに軽蔑したような視線をチラリと向けると切り捨てるように言い放った。

 「うるさい。私はこの男と話しているんだ。」

 一瞬、店の中がしんと静まりかえった。中には柄の悪い連中も居ると言うのに全く気にかける様子も無い。周りの視線もお構い無しに彼は私の正面の席に座るとさらに質問を続けた。

 「貴方は見たんですね、その空に浮かぶ島を。」

 変わり者同士で勝手にやっていろとでもいうように、店の中は元のざわめきを取り戻していった。

 請われて語るのは実に久しぶりのことだ。嵐の中心で見つけた島のこと、その姿を写真に収めた状況―口にするたびに嘲笑われ、詐欺師呼ばわりされ、それでも誰かに話さずにはおられなかった衝撃的な体験―…今まで散々繰り返した話である。
 唯一違ったのは、このとき目の前に居た青年が一言も聞き漏らすまいという真剣な表情で話に聞き入っていたことだ。

[21] パズ父×若大佐 (3/4 : 再び宿の一室)
七梨子 - 2007年05月19日 (土) 14時31分

 「…話を聞かせてくれと言ってきた変わり者か。」

 「どうやら思い出したらしいな。あの後調子に乗ってまた飲みだして勝手に潰れたりして…放っておこうかとも思ったんだが―」

 途中まで、やや苛立った調子で話していた彼は視線を写真に戻すと、もうこちらのことなど忘れたかのように感慨深そうにそれを見つめ続けていた。

 「変わった男だな。今までこの話を本気にした奴なんて一人もいなかったのに。」

 ―いや、正確には一人いることにはいるのだが―
 
 「当然だろう。空に浮かぶ島がある、そこには街があり城が築かれているなんて、突然言われて誰があっさり信じるものか」

 視線は写真に注いだまま、面倒そうに冷たく言い放った。

 「…あんたはどうなんだ。」

 「私は確信していたよ。」
 
 ずっと探し続けていた、何年も何十年も。もしかしたら何百年かもしれないな―。そんなことを誰に聞かせるでもなくつぶやきながら近づいてきたかと思うと、私の隣にすっと腰をおろした。
 
 「また証拠が一つ見付かったんだ。確実に近づいている。」
 
 薄暗い部屋の中でも分かるほどに輝きを持った金色の瞳には、情熱を通り越してある種異様な執着心のようなものが見てとれた。言動など、一見すると冷静なようだが必死に感情を押さえつけているのだろう。間近に見たその表情は熱に浮かされているようであった。
 
 「目撃者に遭えるなんて…」
 
 私の存在を確かめるようにそっと手を顔の横へ添え、続いて冷たい指先が瞼の上を軽くなぞるのを感じた。普通こんなことをされたなら払いのけないまでも文句の一つも言いたくなるところだが、何故か動くことすらできなかった。
 
 「生きた証言なんだ…。伝説でも古代の文献でもなく、今現在の出来事なんだ…。」
 
 彼は私を見てはいるが、実際その視線の先にあるものは空に浮かぶ島―ラピュタなのだろう。先ほどから、全くこちらの都合などお構い無しに自分の世界に浸っている。
 
 「…感激してくれているところ悪いんだが、ちょっとこの体勢…まずくないか?」
 
 縋り付かれ、押し倒される形で、何年も待っていただの、会えて嬉しいだのと囁かれながらなでまわされては、例え妙齢のご婦人でなく同性の相手であっても、そう平常心でいられるものではない。
 
 「まずは冷静になろう、とりあえず手を放してだな―」
 
 不意に唇に柔らかい感触を覚え、驚いて抗議する間もなく舌が差し入れられた。思わず髪を掴み引き離そうとしたが、さらに深く口腔を弄る熱にいつの間にか積極的に応えていた。互いに貪りあい、やがて息苦しさに息をついたとき、うっすらと涙の浮かんだ金色の瞳と目が合った。
 
 この期に及んで今の状況に困惑しているのを察したのか、ぐったりと放りだされていた私の腕を持ち上げると、そっと指先に舌を這わせた。
 
 指先に感じる、湿った柔らかい感触、蠱惑的な仕草、情熱的な表情…抑え難い欲求が沸き起こってくるのを感じた。

 私はノーマルだ、妻子だってある身だ、しかも下手したら未成年かもしれないような相手にこんなこと――。

 なけなしの理性を総動員して踏みとどまろうとしたが、その努力はあまり功をなさなかった。

 「男相手なんてやったことないんだ、どうなっても知らないからな。」
 
 声が、上ずっている。
 
 「――ああ、そのあたりのことは安心してくれていい―」

 彼は私の言葉にやや興を殺がれたような表情を浮かべたが直ぐに気を取り直して行為を続けた。器用な指先が胸元を肌蹴てゆく。服を身に付けていたときには気付かなかったが意外と鍛えられた身体をしている。一体何者なんだ、この男は―。そんな疑問が浮かんだが、間もなくそんなことを考えている余裕はなくなっていった。
 

 「…入れたい…?」
 
 ――背後に腕を回され耳元で囁かれたその言葉の意味を理解した時、一瞬、息を呑んだ。その表情を肯定と受け取ったのだろう、一旦身体を離し、自ら唾液を含ませた指で後孔を慣らしだした。その苦しげな、それでいて誘うような表情、あまり意識していないらしい挑発的な仕草につい、情欲が刺激される。
 
 導かれるままに挿入を試みるが、勝手が違うためか、随分負担を強いてしまったらしい。絡みつく腕からは感じているであろう苦痛を必死で逸らそうとしている様子が伝わってきた。それが分かってはいても、このまま力任せに押し進めたい衝動にかられてしまう。
 
 「…っ、出来れば、もう少しだけ動かないで居てくれると助かるんだが…」
 
 気丈に言いながらもその目からは涙が零れていた。
 
 「悪い、つい…」
 
 暫くの間、そのままの姿勢で直ぐにでも動きたい衝動に耐え、相手の浅い呼吸を感じながら、汗で張り付いた髪をかきやってその表情を見つめていた。
 もう、いいから、と掠れた声で告げられて後はもう抑えつけてなどいられなかった。熱を帯び絡み付く内壁による直接的快感に加え、時折懇願するように縋り付く四肢に、煽られた嗜虐心と征服欲が満たされる思いがした。

[22] パズ父×若大佐 (4/4 : 翌朝)
七梨子 - 2007年05月19日 (土) 14時34分

 閉じた目に朝の光が感じられる。薄く冷え込んだ空気に鳥の鳴き声…。 不意に昨夜の事が思い出されて飛び起きると、きっちりと服を着込み、身支度を整えたあの男が部屋を出ようとしているところだった。

 「あ…昨日は…その…」
 
 何と声をかけたものか。正直、顔を合わせるのが気まずかった。
 
 「このまま帰ろうかと思ったけど、起こしてしまったかな。」
 
 とにかく何か話さなければ。しかし一体何と声をかけたものか。
 
 「…今更聞くのも変な話だが、あんたの名前―」
 
 「もう二度と会わない人間の名など聞いても仕方ないだろう。それに、係わり合いになって良い事のない相手というのは私に対しても言えることでね。」
 
 そう、何処か自嘲気味に言った。こちらが心穏やかでないのに引き換え、昨夜のことなど何も無かったかのような冷静さであった。
 
 「ああ、そうだ。」
 
 ふと何事か思い出したように戻ってくると、顔を寄せて小さく囁いた。
 
 「初めてにしては、割とマシな方だったと思うよ。」
 
 思わず言葉を無くし、相手を見返したまま固まってしまった。彼は悪戯っぽく笑うとそのまま立ち去っていた。
 
 夢なんかではない。だが、あれは一体何だったのだろう。
 
 その後、何度もあの店には通っているが彼の姿を見ることは二度となかった。



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場から最大11倍のお買い物マラソン2月10日まで開催中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板