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[111] 『S――河ラインの奇跡』その後
無名 - 2008年01月05日 (土) 12時15分

アクセス規制に引っかかってしまって、萌えを叫べないのでこちらで失礼。
勝手に>429姐さんの作品より派生させて頂きました、
『昔のお友達』からの攻撃に晒される大佐のお話。

個人的にはマクレイン氏の勘違いっぷりがツボでしたww

[112]
無名 - 2008年01月05日 (土) 12時16分

転進命令を無視して、勇敢にも(一部では無謀にも、と評されているが)その場に留まり、戦線とその背後に住む数万人の民間人の命を守り、八日後到着した友軍と共に撃って出て迫り来る敵軍を打ち倒し、最終的には国境まで撤退させ、数人の敵軍高級士官を捕虜にして『和平交渉』を持ちかけるまでに至らしめた、という後に『S――河ラインの奇跡』と呼ばれ軍史にもその名を残すことになった作戦終了より3週間ほど経った頃。
信賞必罰を旨とする軍の特性ゆえ、作戦に関わった部隊の全員が転進命令を無視したことにより1階級降格、そして同時にその功績を讃えて2階級特進という処遇がなされ、上層部も粋な計らいをするものだ、いや、体面にこだわる迂遠なやり方はどうかといった議論も多々もあったがそれはさておき。
表舞台に立つことはなかったために無関係と思われ、結局処罰にも褒章にも関係のなかったその作戦の影の功労者、というより、支配者であったムスカ大佐の執務室には、その作戦で新たに展開した戦線が移動し、そして未だに続いていた。



ばたん、と大きな音を立てて執務室のドアが蹴り開けられる。同時に聞こえた元制服組の男の帰還を告げる声に、行儀が悪いと小言でも投げてやろうかと顔を上げたムスカは、男が抱えた荷物を目にしてそのまま自分は何も見なかった言うように書類へと目を戻した。
「ちょっと大佐、無視しないでくださいよ。これ持って帰るの大変だったんですから」
あからさまに気付いているにも拘らず、無視を決め込もうとする上司に、男は困り果てたような呆れたような笑みを浮かべながらも近づいていく。
「それを持ったまま近寄らないでくれたまえ…匂いで気分が悪くなる」
「じゃあ何処に置きましょうか…何処置いても香りは消えないでしょうけど。で、どうします?これ、屋敷に飾ります?」
大の男でも抱えるのに苦労するほどの大きさの、薔薇の花束。軽く見積もって、300本はあるだろう。既に部屋中に充満している薔薇の甘い香りに頭痛を誘われながら、ムスカは唸るような声を上げた。
「………経理部出納課年金係にでも寄付して来い」
「あぁ、それなら有効活用ですね。弔慰金に添える花に…って、赤い薔薇は弔花には向かないと思うんですが」
「………庶務でも食堂でも医務室でも何処でもいい。いっそ街に出て配るでもなんでも、とにかく、私の目に入らん場所に片付けろ!」
焼却場に捨てる、という選択肢が出て来ない辺り、倹約精神旺盛というか貧乏性というか。
「はいはい、じゃあ適当に…あ、カードが付いてますね。えぇと…
『一番美しい花を選んだつもりだが、君の魅力の前では枯れ草同然になってしまうな。その身を守らんとする棘ごと君を抱きしめよう。今度こそ君を離しはしない。愛を込めて、マクレイン』…だそうです」
読み上げられるカードの内容に、握り締められたペンがみしりと音を立てた。
品物はともかく、カードの処分は御自分でと丁寧に畳みなおされたカードが書きかけの書類の上に投げ置かれる。
怒鳴りつけてやろうと開きかけた口は、再び勢い良くドアが開かれる音によって止められた。
「大佐ー、なんか救援物資って名目で貢物届いてますけどどうしますー?」
元特務組の青年が抱えてきたのは、小さな木の樽だった。
その青年も、制服組の男が抱えている薔薇の花束を目にした瞬間、引きつったような笑みを浮かべていた。そして男の方も、『貢物』として献上されたらしい樽を見て首を傾げる。
「酒か?」
「いえ、コーヒー豆ですね。王室御用達の最高級品ですよ。カードも付いてます。
『火薬の香りを纏い、銃の響きを謡う君に捧ぐ。血に濡れた褥で共に飲む、夜明けのコーヒーを楽しみに。ハインリヒ』
…夜明けのコーヒー何回分でしょうねー、コレ」
新兵の給料に換算して一個小隊分ほどの価値の詰まった樽をコツンと叩いて、青年は楽しげにわらっている。新たに並べられたカードに、ムスカの喉からは獣のようなうめき声がもれる。
「大佐の淹れるコーヒーは絶品ですからね。今度、僕にもご相伴させてくださいよ」
無言で投げつけられたペーパーナイフは、軽口を叩く元特務の青年の鼻先を掠めて執務室のドアに突き刺さる。はらりと数本髪が舞うが青年は特に気にした様子もない。
逆に、新たに入ってきたエリート一門出身の青年の方が、ドアの内側に刺さったナイフに怪訝そうに眉を寄せていた。
「………何やってるんですか、一体?」
「深く気にするな…あーあ、刃先が潰れちまった」
ダーツのようにドア板に食い込んだナイフを引き抜き、仔細を点検していた男は溜息を漏らす。
本来、紙を切ることのみを想定して作られたペーパーナイフは、硬いドア板に食い込んだ先端が見事に曲がってしまっている。実用品としてよりも、芸術品としての価値の方が高そうな精緻な彫金が施されたナイフは、使えないことはないだろうが格段にその価値を下げてしまったことだろう。
気にするなと言われた青年は、はぁ、と首をかしげながらも改めて上官へと向き直り自らに託された手紙を示した。
「あのー、大佐。べッソン伯爵家の三男から手紙を預かってきたのですが。軍務関係ではなく、プラ…」
「燃やせ」
「…イベートな、って、いや、ちょっと待ってくださいよ! いくらなんでも失礼ですよ!」
最後まで聞くことすらなく間髪入れずに下された指令に、優雅な封蝋を施された封筒を咥えた郵便配達犬は毛を逆立てる。
「どうせろくな内容ではあるまい」
吐き捨てられる言葉に、まぁそうだろうと先に立っていた二人の部下も揃って頷く。
「でもまぁ、一応目を通しとかないと余計まずい事になるんじゃないんですか? 相手は一応お貴族様なんですから」
「手紙だけなんでしょ? 変な貢物は付いてないみたいだし」
二人の取り成しに、深々と…それこそ、地の底から湧き出るような溜息を吐いて、好きにしろというように軽く手を振る。
あまりに憔悴した上官の姿に困惑し、手にした手紙と上官の顔を交互に伺う。男はその手から封筒をとり、器用に先の曲がったナイフで封を切ると再び犬の手へと戻した。困惑する目を向けられ、さっさと読め、と言うように軽く顎をしゃくる。
恐らくこのまま上司のデスクに置いていてもそのままゴミ箱に直行するだけだと判断し、失礼ながらと一度姿勢を正して手紙を広げた。
上質な、昔ながらの紋章が刻印された便箋である。
「えぇと…
『君が与えてくれた「再会の理由」は有効に使わせてもらうことにするよ。私の心はずっとこのカフスと共に盗人の元に囚われたままだ。近い内に取り戻しに参上する。せいぜい覚悟しておいてくれたまえ。レオン』
手紙は以上です。あ、それから何か硬いものが……印章? いや、カフスですね。伯爵家の紋章が入ってますが…」
ご確認くださいと手紙と共に置かれた見覚えのあるカフスに、ペンを握り締めた手が震え、軽いが頑丈な金属で作られていたはずのペンにぺキリとヒビが走る。
不穏な空気に、仲の良さは兎も角として息の合い方には定評のある二人は目配せを交わす。
「危険物は?」
「撤去済みだ。弾も抜いてある」
「………あ、あの、大佐?」
「逃げるぞ」
恐る恐るといった感じで問いかけようとする犬の襟首を、元特務組の青年が引っつかみ、元制服組の男が蹴りあけたドアから三人縺れ合うように廊下へと飛び出す。
閉じた扉の向こうで、何かが壊れる音と共に呪詛の声が響いてきた。

戦線は、いまだ終結を見せず。ただ激しさを増すばかりである。



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