[104] 雪の夜語り |
- 7℃ - 2008年01月04日 (金) 06時45分
・ギャグです。 ・大佐再就職分岐での話と思って下さい。J君S君は 同じ軍に潜入済み、わんこ君にはちょっと意地悪です。 ・その分岐だと考えると時系列がややおかしいのですが、 大佐の守備範囲がものすごーく広かったということで。 ・子飼いながら油断のならないJ君S君と大佐の関係を クールに書きたかったのですが…お屠蘇気分で読み飛ばして 下さる方だけ、よろしくお願いします。m(_ _;)m
雪の降る清らかな夜だった。 だが。 男が3人居て酒が入れば、ろくな話になるわけがないのだ。
「へえーえ、やっぱ育ちの良いエリートさん程、あちら方面はがっついてるってのは、本当だったんだなー…よりにもよって大佐の話を肴に飲みたいだなんて、そんなくだけたご趣味とはまったく恐れ入りました。でも、まあー、せっかく酒まで差し入れてもらったことだし? 喋りますかね。いろいろと、大佐のアレな話ってのを?」 「いや誤解しないで下さい。俺は別に下劣な噂話が聞きたいわけじゃなくて、ですね!」 「あー、でもとりあえず下劣な話だとは思っているんだ」 「ぐっ……」 「…言っておくが、大佐に関するあれな噂はおおむね真実だぞ」 傍らのJが、物静かに口をはさむ。 「そ、そんな!」 「そうそう。最近はちょっとおとなしくなっているみたいだけど、陰で何をしているやらって…」 「あ…ありえない! よりによって、身近な貴方たちまでがそんな事を口にしてどうするんですか! 違うでしょう!? 大佐は誤解されやすい人なんです!」 「誤解ねぇ…」 「誤解ときたか…」 「言っておきますが、俺は釣られませんよ! なにしろ、あのこじれにこじれたYーー公国との国境交渉を、わずかに七週間でやってのけた人なんですよ!? しかも双方1発の銃弾も撃たせずにです…あんな凄い人が卑劣な中傷の的になっているというのに、何とも思わないんですか、あんたらは!」 「…そういうこともするが、ああいうこともするんだ。それが大佐だ」 なにやら沈痛なJの言葉に、平然とSも同意する。 「誤解の入る余地なんかないね。まあ、ひとことで言えばイカレているって事だよ、あの人は…いや、正直俺は大佐には昔からわりと執着していたんだけどね? もともと制服組だったし、接点は少ない職域にいたんだけど、それでもほら、なんか噂とかさ…聞こえてくるわけだ。軍属だから他にそういうネタのある将官も多かったけど、大佐は別格っていうかさ。俺的にね」 愉しげに瓶を抱えながら、すでに数本を空にしている筈なのに、顔色一つ変わっていない。 強いていえば『その話』がしたくて堪らないあたりが、そうとう廻っているということなのだろうか? 「なんていうのかな、他でさ…体、使っている噂のある連中はみんなどこか卑屈って言うか、最後は自分を恥じている気配があるのに、大佐だけは逆でさ。やることはえげつないわ、欲しい獲物は渡さないわ…誰でも彼でも踏みにじって通る気満々の気位の高さが最高っていうか、堪らないわけ」 「……」 「いろいろと異名もあったしな? なんだっけ…『参謀司令室の悪夢』だろ、『特務の毒ヘビ』だろ? そのあたりは特務畑のこちらさんの方が詳しい筈だけどさ」 「『冷血淫売のムスカ』が、俺としては一番はまった」 「ああ、それそれ。それ最高」 「あ、あんた達、歪んでる!!」 義憤にかられて吠える大型犬の椅子を、あっさりSが蹴り飛ばす。 「お門違いだっつーの、大佐はあれがノーマル仕様なんだから。温室育ちのお坊ちゃんは黙ってろって」 「…温室育ちかも知れませんが、俺は上官への侮辱に対してなら、いつでも決闘を申し込む覚悟くらいあります」 「やろうって言うの。へえー、じゃあ抜けば?」 「まあ、待てS」 やんわりとJがわって入る。 「そんな理由で騒ぎを起こしてどうする。だいたい事情を知れば、まず真っ先に大佐が…あー、かなり困惑するぞ。それよりこの坊やに納得してもらうべきだろう、大佐の何と言うか…鬼畜な実像というか…」 「何か吹き込もうというなら無駄です。さっきその人が言っていましたよね? 『大佐とは別部署だった』って。という事は、あんた達の話も大半がデマってことになる」 「おー、犬コロのわりに賢いじゃないですかー」 「確かに、我々はどちらも大佐の直属だったわけじゃない。だが、それでも事実は十分に証明は出来るんだ。まあ聞け、あれは恐ろしい体験だった…」
|
|