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[84] 戦場再会話(大佐+ちびっこ+J君+S君)
ななし - 2007年08月26日 (日) 21時11分

・兄ちゃんの故郷に居たちびっこの、約十年後の話です
・大佐は北の国で階級を進めて現在は将官
・J君とS君も登場(兄ちゃんは出て来ないけど国で同棲が前提)

・戦争というか戦場です。敵兵の命は雑草より軽い場所

[85]
ななし - 2007年08月26日 (日) 21時12分

僕にできることは限られていて、それは早く撃つ事と的に命中させる事だ。
体格もそれほどよくない、力も体力もない僕は、塹壕に潜んでも殆ど役に立たないし、重い装備を持って行軍するのにもあまり向かない。でも銃を撃つ事だけは出来る。弾を命中させる事だって出来た。

戦争が激しくなって、徴兵されて、訓練は凄くきつかったけど、銃の腕を認めて貰ってからは僕の訓練は少し変化した。遠距狙撃の精度を上げる訓練が追加されて、基礎の体力作りなどが多少免除されたのだ。訓練に殆どついていけていなかった僕にとって、それはとても嬉しい事だった。僕はもう本当に家に帰りたくて、兵役を早く終えて家に帰りたくて、ただそれだけだった。
三ヶ月訓練を積んだ僕は、一緒に入隊した何百人もの兵士たちと、前線に行く事になった。わかっていた事だけど、とても怖かった。父さんと母さんに手紙を書いた。きっと帰るから、帰ったら僕の好きな鳥の包み焼きを作ってね、と母さんに。父さんには、帰ったらもう一人前の男なんだからきっと漁に出してね、約束だよ、と。返事が帰ってくる前に出発だ。おととい聞いた話では、向こうでまた幾つかの隊に分かれて、必要な場所に必要なだけ配備されるらしい。配備場所によっては戦場を転々と移動するので、恐らく手紙の返事が届く事はないだろうとの事だ。
だから僕は、返事が要らないように一方的な要望だけを書いて送った。
兵役は三年だ。絶対に生き残って、母さんの料理を食べて父さんの船に乗るんだと誓った。

半年が経過する頃には、そんな事もう無理だって気がついてしまったのだけど。



こんにちはお母さん、元気ですか。
お父さんはお酒を飲み過ぎていませんか。

最近僕は、そういう書き出しで手紙を書く妄想をよくする。
妄想だ。手紙を最後に書いたのは、訓練所から出たあの時。もう二年近く前になる。
その間に僕は、数え切れない位に戦場を転々とした。所属した隊は幾つも壊滅に近い打撃を受けた。今の隊で八個目だ。煙草も覚えた。最初は何だってあんな煙いものをと思ったし、喉を灼く臭いに辟易としたものだけど、今では誰かがどこからか調達して来る葉っぱを巻いて一口吸うと落ち着ける。
最初は煙草を巻く為の紙も支給されていたけど、今では辛うじて葉っぱが来るだけだ。前線では紙が殆ど手に入らない。だから僕らは十字を切って、両手を合わせてから聖書の一節を拝借する。時折聖職者が前線にまで来るんだけど、その時に聖書を頼んでおけば、暫くしたらまた沢山の聖書が送られて来るんだ。神様今日も僕らにお恵みをありがとう、と、僕らは煙草を吸い、酒を飲んだ。
今日祈っても、僕らは明日、人を殺しに行くのだけどね。

僕は一応、狙撃手として配備されている。
僕は銃を撃つ以外に出来る事はあまりない。でも、銃を撃つ事だけなら、結構いけてる方だと思う。
なるたけ高くて見晴らしのいい場所に陣取って、じっと息を潜めるんだ。見えた奴から撃って行く。一人に使う弾は一発だけって決めている。だから頭を狙いたいけど、大体の敵兵はヘルメットを被っているから、僕は横向きになった時の耳か、首を狙う事にしている。
僕の使っている銃は、軍から支給された何の変哲もない、皆が持っているのと同じものだ。狙撃手用にスコープを用意されているけど、僕は付けた事がない。上官にはやかましく付けるように言われたけど、どうしても出来ない。狙撃手仲間が死ぬ時は、戦車からの無差別な砲撃か、位置を知られての集中砲火が圧倒的に多いんだ。スコープの反射は敵に位置を知られる手掛かりになる。本当にそうかはわからないけど、事実僕は、何度もガラスの反射で敵の狙撃手の位置を把握した事がある。だからスコープは使いたくない。僕は死ぬのが怖い。死ぬのが怖いんだ。
ようはスコープがなくても当てればいいんだ。
幸い僕は目がよかった。そして的に当てるのは得意で、早く撃つのも得意だ。スコープを使わずに敵を打ち落とし続けていると、そのうち、あんなにやかましかった上官は何も言わなくなった。安心した。僕は死にたくない。僕は死にたくない。僕は死にたくない。
300ヤード程度なら速射で当てられる僕は、戦場に投入されて一年が過ぎる頃には、独立狙撃班という特殊部隊に組み込まれていた。そこは名前が示すとおり、狙撃手のみで構成された部隊だ。大体敵の多い所に配備されるので、僕の戦果は狙撃班に配備された直後から面白い位に膨れ上がった。
僕は他の狙撃手からルーキーと呼ばれていたが、半年が経過した頃、誰もそう呼ばなくなっていた。
エースと呼ばれるようになり、そうしてもう、家に帰れないことに気付いてしまった。

こんにちはお母さん、元気ですか。
お父さんはお酒を飲み過ぎていませんか。

僕はもう帰れません。何故なら銃を手放せないからです。夜寝ていても、丸と突起が重なったその先にある頭や首に弾丸を撃ち込む夢を見ます。それは恐ろしい夢ではありません。賭けた煙草の数や回って来る酒の量が増えるという、嬉しい夢です。怖い夢はあまり見ません。僕の怖い夢は、今は家に帰ることです。僕は銃を手放せません。家に帰って自分のベッドで眠ってその手に銃がある、なんて、そんな怖い夢はごくたまにしかやって来ません。でも僕が家に帰ったらそれは確実に現実になるので、僕は家に帰る事が出来ない。僕は死ぬのが怖い。死ぬのが怖い。帰りたい。帰れません。
僕はもう、ここでしか、生きられない。



ある日向かった戦場は、最悪だった。
まず陣地が悪い。砂と埃だらけだ。水も悪い。沸かしても赤錆で苦くて臭い。そして味方が少なく、敵は多く、多い方が装備は充実していて、少ない方は開戦早々指揮官が砲撃で死んだ。
あとはてんでバラバラだ。
抵抗はするけど、保つもんじゃない。
投降なんてまともなものが出来たらしたいもんだけど、前線を回ってた僕らは知っている。向こうの本国がどういう趣旨なのかは知らないが、少なくとも前線の兵士たちは僕らを殲滅する気で掛かって来ている事を。捕虜になんてなった日には、石投げの的とか私刑の標的かがおちだろう、聞くまでもない。だってうちの軍も最前線で捕らえた捕虜なんてそういう扱いだからね。

弾を一箱使い尽くした頃、どうももう、ダメらしい、と流石の僕も気付いた。
撃っても撃っても敵兵は途切れないし、逆に味方の陣地はどんどん侵食されているようだ。僕は基本的に一度構えたらあまり動き回る事はない。歩いたり走ったりしながらでも撃てないことはないけど、やはり命中精度は落ちるし、だったら確実に当たる、そして敵が多く通る場所が見える位置に陣取った方が効率がいい。ホントは隊長の言う事を聞いて行動しなきゃいけないんだけど、狙撃班だけは作戦行動を阻害しない限りはかなり自由に行動が出来る。僕も例に漏れず、ここに来てすぐ、いい具合の位置を探し出していた。慎重に隠れるだけの用意を整えて潜り込み、敵影を見かける端から撃っていく。外れない。どうしてそんなに当たるんだとたまに聞かれるけど、当てようとして撃ってるのに外すほうがおかしいんじゃないかと僕は思う。そんな事を考えながら、引き金を引いていた。

急に空気が変わった。敵兵の出す音が、一気に変わったのだ。大きな車が土煙と共に、僕の視線の先、射程のギリギリ外に出るかでないかの場所に止まった。僕は慌てて、一層息をこらした。
眼前の光景が信じられない。
僕が参加する戦闘といえば、佐官すらも居ない事の多いような本当に末端のものが多い。今現在居るここもその末端の一つだ。そんな場所に。
僕はもう一度、目を凝らしてそれを見た。
前につばのある軍帽。きちんと着込まれた敵国の、上級仕官の軍服。そしてマント。足元まであるそのマントを着ける事が出来るのは、将官だけだと聞いた事がある。肩当てには軍旗の意匠が、マントと同じ色で刺繍されているのだというが、この距離ではちょっと判別がつかなかった。でも。
―――――将軍だ。
身震いをしそうになって、僕は慌てて低く息を吐いた。
あれを撃てば。あの頭を撃ちぬく事が出来たら。
何という名前なのかは知らない。敵国の将軍の名前と顔なんて、僕には関係ないと思っていたからだ。でも、将軍という人間は一軍にそう何人もいない。だからこんな場所であれを撃つ事が出来たら、敵は少しでも混乱する筈だ。千載一遇のチャンスだった。僕はごくりと唾を飲み込んだ。
外してはいけない。
絶対にだ。この一撃は絶対に外せない。
的はただ無防備に立っているだけに見えるけど、その周りは違う。全方位、前角度を最低二人以上でカバーするように、将軍を中心に取り巻いている。
はずしたら。
……外したら、僕の位置は確実にバレる。そして死ぬ。
当たればどうなるだろう。撃てると思った所で撃ったら、絶対に自分は外さない事を僕は知っている。つまり僕が撃てば、通常ならあの将軍は死ぬ。護衛たちは駆けつけるだろう。そして将軍に駆けつけなかった護衛たちには、僕の位置がバレるだろう。僕は死ぬ。
では、撃たなかったら?
僕は笑いたくなった。
どのみち僕は死ぬだろう。だってもう、銃撃の音が殆ど聞こえて来ない。ごく稀に、遠くの方で一発二発、短いものが響くだけだ。戦闘はどうやら終了したようだ。だからあの将軍は出て来たんだろう。
僕は今生きているけれど、何を選んでも死ぬようだ。
撃ったら死ぬ。撃たなくても、見付かったら死ぬ。見付からなくても、敵軍が去る時に態々僕の分の食料を残してくれる筈もなく、一番近い村まで車で二日掛かった。餓えて死ぬ。
将軍の頭にぴたりと狙いを定めたまま、僕は身動き一つ取れずに途方に暮れた。
頭を確実に打ち抜くなら、あと僅か、ほんの20ヤードもこっちに寄ってくれたらそれで十分だ。いつでも撃てる体勢で、でも引き金に指を掛ける事は出来ない。
だって死ぬのは怖い。怖いんだ。僕はいつだって怖かった。死にたくないから、殺してきたんだ。でももう死ぬって。どう足掻いても死ぬって。

将軍が動いた。
僕はびくりと身を固めた。何人かに囲まれた将軍は、周りと何か会話をしながら、早足で僕の潜む方向に近づいて来た。すぐに、僕の得意な射程距離に将軍の体が入った。将軍はまだ歩き続けている。将軍の、護衛の、軍靴の音が聞こえ、将軍の顔で、キラリと何かが光った。将軍は眼鏡を掛けていた。それが見て取れるほど、もう距離はない。50ヤードもない。
将軍はぴたりと足を止めた。くいっと顎を上げて、僕の潜む方向を見上げる。まさか、見付かったか、と、一気に冷たい汗をかいた。いいやそんな筈はない。絶対に。カムフラージュは完璧な筈だ。

「……随分、いい腕だ。私の部下に欲しいくらいだよ」

狙いは将軍の頭にあるままだ。この距離なら、逃げ惑う素早い野鳥でも仕留めて見せる自信がある。なのに僕の指は重く、引き金まで上がって行こうとはしない。腹の底がガクガクと震えて、どうしようもなくて、なのに狙いは少しもぶれなくて、もっとどうしようもなくて、僕は叫びだしたくなりながら、叫びだすことも出来ず、ただ片目でひたすら将軍を見続けた。
将軍は、僅かに首を傾げた。
「降りて来ないかね。これでは話も出来ない」
フゥフゥと荒い息が口から出ている。狙いはぶれなかった。震えは全身まで来た。引き金に掛かるはずの指はいつの間にか拳の形に握り込んでしまっている。何をしている、開け、と命令をしても、自分の手なのに、言う事を全く聞かなかった。
僕はダラダラと脂汗をかき、ガタガタと震え、がちがちと歯の根を鳴らしながら、祈っていた。
死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたく……
祈る僕の前で、将軍は、ふぅむとのんびりとした声を出した。
「出来たら出てきて欲しいものだ。君の噂は、我が軍はもとより本国の民にまで伝わっているよ。悪魔のような射撃の腕を持つルーキーが居る、とね」
僕は返答をしなかった。あちらから僕は、結局のところ見えてはいないんだろう。でもあの人は、僕がここに居る事を知っている。口を開く事が出来なかった。声も出ない。指一本動かせない。おかしな話だが、僕は敵国の将軍に賞賛されて、初めて自分が人殺しである自覚を持ったのだ。
それは何より恐ろしい事実だった。僕はもうスコアを数えるのをやめてしまっていた。連戦すると、数日で100を超てしまう事もある。面倒だったのだ。
その数だけ人を殺してきたなんて、自分の目で確認して来た筈なのに。
震える僕に、将軍はまた反対側に首を傾げ、わからないかい、と言った。
僕は震えながら、何がだろう、と頭の遠くの方で考えた。

「どんぐりは、足りているか?」

その言葉、その声を聴いた瞬間、僕の体は震えるのをやめた。
この期に及んでも照準だけは僅かにもぶれていない銃から目を上げる。唐突に関係のない事を言い出した将軍をまじまじと見た。どんぐりだって。こんな戦場で、何を言っているんだ。ぴくりとも動かなかった筈の僕の手は、ゆっくりと上がって自分を隠してくれているカムフラージュに掛かる。やめろと、頭の中で警告がなったが、やはり体は言う事を聞かなかった。
こんな場所で聞く筈のない言葉をつむいだ声の、懐かしさに気付いてしまったから。
「こうした方が、わかりやすいかね?」
将軍はその声で頷くと、掛けていた華奢な眼鏡を外して、横に居た護衛の一人に渡した。軍帽を取り、撫で付けていた髪にくしゃりと手を入れる。前髪が落ちて来て、少しだけ、ほんの少しだけ笑った。
僕はもう何も考える事が出来なくて、僕自身を何重にも覆ったカムフラージュをがむしゃらに払い除けた。ジャコ、と一斉に銃が上がる。護衛達の銃口が全て僕に向いていた。それに気付いても、ガタガタと音を立てて除けるのを止めなかった。
粗方を除き、息を荒げながら顔を上げる。

「……ムスカにいちゃん………」

ガキの頃、僕の故郷に、突然やって来て突然消えた人。



今もそう変わってないけど、ガキの頃の僕は本当に臆病者で、背だって皆より全然小さくて、かけっこも遅いし、力も弱いし、すぐに泣く、有体に言って『使えない』子供だった。
その頃僕らの間では、広場や野原を使ってする戦争ごっこがとても流行っていた。僕も例に漏れず大好きだったけど、ただし僕は足も遅く怖がりで、こけて膝でも擦り剥こうものならすぐに泣くような子供だったので、仲間はずれにされがちだった。
そんな時に街にやって来たのがムスカにいちゃんで、にいちゃんは海に事故で落ちたそうで全身怪我だらけだった。最初は歩くことも出来ないにいちゃんが、リハビリ(当時はこれが何を指す言葉なのかよくわかっていなかった)の為に歩き出した頃には、にいちゃんは僕らの格好の遊び相手になっていた。にいちゃんは頭が凄くよかった。字が読める人も珍しいのに、にいちゃんは難しい計算も出来るし細かい機械の修理も出来るんだ。でもにいちゃんはそれ以外の事が何も出来ないダメな奴だった。虫を怖がって泣きそうになりながら逃げるし、牛の乳搾りもした事がないし、海辺を歩いてたら波に足を取られてこけるし、ハンモックに寝転ぶ事が出来なくて落ちるし。僕らはにいちゃんを、年上の弟分として、色んな所に連れ回した。縄がちゃんと結べないにいちゃんにもやい結びを教えてあげたのは僕らだ。草笛が吹けないにいちゃんを、三日かかって皆で特訓した。にいちゃんは口が痛いって文句言ってたけど、合図なんだから出来なきゃ仲間に入れてあげられない。
殆ど何も出来ないダメなにいちゃんが、でも得意な事があった。
戦争ごっこだ。
まだあんまり走ったりさせられなかった頃に、広場の隅で僕らの戦争ごっこを見ていたにいちゃんが、片方の陣地のリーダーにちょっと助言をしたら、もうとんでもなくゲームが面白くなって、皆ではしゃぎまくった。戦争ごっこが始まると、チームをくじで決めてから、皆でにいちゃんの取り合いだ。にいちゃんを仲間にした方が勝つんだから。にいちゃんは直接手出しはしないけど、皆の得意なところと苦手なところを不思議なくらいに全部知っていて、僕らはにいちゃんに言われた通りの位置について、にいちゃんにやれって言われた事をやるだけで、面白いほど勝てたんだ。
みそっかすで臆病だった僕は、戦争ごっこは好きだったけど、最初やっぱり邪魔者扱いされるのかな、って少し悲しかった。だって兄ちゃん、平気で
『君は自爆要員だ』
とか言うから。僕も自爆要員か囮要員かなあ、と思っていたら、にいちゃんは僕に高い所は平気かと聞いて来た。自分で上り下りは出来ないけど平気、と僕は答えた。するとにいちゃんは近場の屋根に、結構苦労しながら僕を抱き上げて乗せた。その上に藁を沢山乗せられる。そして言った。
『じっとしていろ。君は的に当てるのが上手い。絶対に外さない位置まで敵が来たら、どんぐりを撃ちたまえ。息を殺して、位置がばれないようにするんだ。見付かったら逃げ場はないぞ』
そうして僕は、待つ勝ち方を覚えた。臆病な僕に、にいちゃんは言った。
『臆病なのはいい事だ。失敗が怖い奴は失敗しないように努力する。工夫する。考える。そして行動する。無謀よりもよほどいい。考えなしに度胸がある訳ではない』
僕はにいちゃんが、恐々と頭を撫でてくれる、その仕草が好きだった。父さんなんてもっと乱暴に撫でるっていうのに、兄ちゃんはまるで僕らの頭を、ちょっと触ったらもげちゃいそうな壊れ物みたいに撫でるんだ。少しくすぐったかった。だから僕らは遊びで勝ってにいちゃんに褒めて貰いたくて、遊びそのものよりにいちゃんの獲得にばっかり一生懸命になった。
遊びを始める前にいつも言う。制限時間の確認。遊びに使う範囲の確認。そして最後に言うのだ。
―――――どんぐりは、足りているか?



「大きくなったな。木にも登れず泣いていた子とは思えん」
「……にいちゃん」
狙いを定めた時、何故わからなかったんだろう。最初の第一声で、何故。
あの時と変わらない髪の色。声、そして目の色がそこにはあった。薄い、金色の目だ。まぶしいのが苦手だって言っていた。大きな麦藁帽をいつもかぶっていた。
気がついたら僕は、地面に滑り落ちていた。降りようとして、にいちゃんばっかり見ていたから、足を滑らせたんだ。肩から腰までの体の側面を強く打って、頬っぺたを石で擦った。でもにいちゃんから目を離さなかった。にいちゃんは落ちた僕にちょっと驚いて、笑った。
「まだ降りるのが下手なようだ」
「にいちゃん……ムスカにいちゃん、僕、」
大勢の護衛が僕に銃を向けるのを遮って、にいちゃんは僕に近付いて来た。すっと膝を折る。汚れ一つない濃い色の軍服の膝が、地面にじかについた。
「将軍」
「黙っていたまえ」
慌てる護衛をにいちゃんは、一言で黙らせる。格好悪く地面に寝転がったままの僕に、にいちゃんは手を差し伸べた。
「立てるかね?」
「あっ、た、たて、立てる!立てるよ!」
僕は慌てて飛び起きた。周りの銃口は、僕の動きにぴたりと合わせてじゃこっと角度を変える。それはとても怖いことだけど、僕はそれどころじゃなかった。膝をつく兄ちゃんを立ち上がらせようとして、自分の手が真っ黒に汚れているのを知って、慌ててズボンで手を拭いた。落ちない。何度も拭いていると、にいちゃんは笑いながら自分で立ち上がった。
すぐ横に控えていた人に何かを言いつけると、その人は吃驚するくらい格好いい敬礼をして走り去り、すぐに戻って来た。にいちゃんはその人から何かを受け取って、僕に向き直った。にいちゃんが受け取ったのはタオルだった。冷たい水で濡れたタオル。
「汚れたズボンで擦っても、汚れは落ちんぞ」
手を拭ってくれた。裏返して、顔も。冷たいタオルで拭いて貰っているうちに、僕は段々と我慢が出来なくなってきて、止めようと頑張ったんだけど、どうしても無理で、目がぶわっと熱くなって、鼻で息するのが苦しくなって来て、しゃくりあげて、涙が出て、声も出て、わあわあと泣き出してしまった。
「う、ぅ……っうえっ、にい…にいぢゃ…うぇえ……」
堪えようとぐっと口を噛み締めたら息まで出来なくなって、口を開けたら声が出ちゃって、僕はどうしたらいいのかわからなくなって俯いた。にいちゃんはなにも言わなかったけど、ぶるぶる震えながら泣いていた僕の頭を、懐かしい感触が撫でて行った。
にいちゃんの、手だ。
おっかなびっくり撫でてる。
たまらなくなって顔を上げた。目の前ににいちゃんの顔がある。目線は少し下だ。あの頃にいちゃんは、少し苦労してたけど僕を屋根の上にまで持ち上げることの出来る『大人』だった。背だってすごく高いと思っていた。手も、とても大きいと思っていた。でも今僕の目の前に居るにいちゃんは、やつれた訳でもないのに、僕より小さいくらいだ。背も、手も。違和感を感じて顔を顰めた。にいちゃんが気付いて、どうした、と聞いて来た。そして僕は、自分が大きくなったのだと実感した。
ずる、と大きな音で鼻をすすり上げる。
「ムスカにいちゃん、僕」
「ああ」
僕の涙は段々と止まって来ていた。変わりに、歯の根がかちかちと鳴り出した。だって僕はこの状況を知っている。降伏だ。そしてこんな最前線の捕虜っていうのは、私刑の餌食だ。僕は殺し過ぎた。敵を殺し過ぎた。狙撃班の仲間がちょっと前に教えてくれた。僕は敵国で大層なあだ名も付けられているらしい。魔弾の射手。僕の首には賞金まで掛けられてるらしい。怖い。殺される。周りの人達は皆、僕に銃口を向けている。多分、にいちゃんのちょっとした合図一つで、僕は蜂の巣になるんだろう。
掠れそうな声で、僕はにいちゃんを呼んだ。
「ぼ、……僕、―――――死ぬの?」
にいちゃんは僕の目を、少しだけ下から覗き込んで来た。
「死にたいかね」
僕は慌てて首を振った。本当に千切れそうなくらい、何度も何度も横に。
「し、死にたくない、死にたくない、死にたくない……!」
「もう二度と、故郷には帰れんぞ」
「生きてたって……!」
ごくんと唾を飲み込んだ。
「う、うちへ帰りたかったんだ。怖いかった。怖いよ」
「そうだな」
「でも、もう、無理だよ……帰れないよ。僕んちに銃なんて、持って帰れないよ。父さんと母さんに見せたくないよ。でも僕、もう、銃がないと眠れない。怖いんだ。怖いよ」
「そうか」
にいちゃんはちょっと考えるようにしていたけど、やがてすぐにまた横に立っていた人に耳打ちをした。さっき濡れタオルを持って来てくれたのとは違う人だ。その人も格好いいビシっとした敬礼をすると、あっという間に走り去って行った。
「もうわかっているとは思うが、私は君の所属している軍とは敵対をしている軍で、一応将軍の地位についている。いわゆる閣下という奴だ」
「うん。にいちゃんすごく出世したんだね」
「……まあそれは今は置いといて、つまり君の敵な訳だ」
「うん……」
さっき走り去って行った人が、また走って戻って来た。手に結構大きい袋を抱えていて、それをにいちゃんに渡す。にいちゃんは袋を開けながら、僕を見た。
「私が川に落ちた時の事を覚えているかね?君の村で。私はまだちゃんと足が治っていなくて、土手から転げ落ちた。正直溺れて死ぬかと思ったのはあれが最初だ」
「覚えてるよ」
にいちゃんが川に落ちたのを僕は見ていた。遠くに見えたので声を掛けようと駆け寄っているその時に、何だかよくわからない体勢で勢いよく水飛沫が上がったんだ。僕は子供で、大人が川に落ちたのを助けあげるなんて到底出来なかった。だからにいちゃんに必死に『町の人を呼んでくるよ!』って伝えて、多分一生で一番一生懸命走って街まで帰った。助けられた兄ちゃんは水を沢山飲んでて、気を失ってぐったりしていて、僕はあの時初めて自分が子供で何も出来ないことに泣いた。
「ここの戦線に魔弾の射手が投入されているという噂を聞いていてね」
にいちゃんはまた唐突に話を変えた。
「え?……あ、……うん……」
「正直言って、君は少し殺し過ぎたな」
「……うん」
「まったく。英雄なんて冗談じゃないが、おかしな事に本国でも君の人気は高い。どこからともなく、素早く、そして正確に、たった一発で仕留める魔弾の射手。腹立たしくて調べたら、聞き覚えのある町出身の、聞き覚えのある名前でね。調査の結果、君だと確信をした。間に合ってよかったよ」
にいちゃんは、袋からばさっと濃い色の布を取り出した。にいちゃんも着ている、周りの人も着ている、敵国の軍服だ。パン、と音を立てて広がったそれを兄ちゃんは、僕に差し出した。
「受け取るか?」
「―――――え……?」
「受け取ったらもう、絶対に故郷には帰れない。全てを捨てねばならない。それでも私に全てを差し出すと言うなら、あの時助けを呼びに行ってくれた礼に、私は君を助けよう」
僕の手は、にいちゃんの手から軍服を受け取っていた。さっき吃驚しただろう。こんな末端の戦場なんかに何故、将軍なんて偉い人が出て来るのかって。
「僕を……助けに来てくれた……?」
にいちゃんは、ちょっと違うと口を尖らせた。
「貸し借りがあるというのが嫌なだけだ」
そうして背後にざっと振り返ると、軽く腕を上げて払った。
「全軍に伝令!敵軍『魔弾の射手』は我が軍に降伏、丁重に扱う旨を流せ。暗号はレベル1、回線はオープン。あちらさんにも存分に教えてやれ!」
にいちゃんの手の振りに合わせて、いろんな人がばっと動き出した。まるで士官学校の訓練所みたいにきびきびとしている。凄いなあ、と僕はぼんやり見送ってしまった。僕の入ってた隊はどれも徴兵から来た奴だばっかりだったし、前線になると結構ゆるい。しかも狙撃班だったせいでかなり好き勝手やってても見逃されていたから、こんな軍隊らしい軍隊を見るのは久振りだった。
「君は暫く私付きだ。言っておくが、むやみに一人で歩き回るなよ。君の部隊に全滅させられた者も私の下には沢山居る。ふらふらしてると格好の餌だ」
「う、うん!あ、でもムスカにいちゃん」
「何だね」
「僕、何するの?銃撃つ位しか出来ないよ」
にいちゃんはにっと笑った。見たことのない笑顔だった。
「優秀な狙撃手は何人居ても構わん。索敵の感覚を磨く事だ、君はの的はこれから、私を狙っている人間全てが対象となる。心してかかりたまえ」
「う……」
「嫌かね」
車まで辿り着いたにいちゃんが、振り返って首をかしげた。僕は慌てて、またぶるぶる首を振った。
「では、長居は無用だ。乗りたまえ」
車を指されて、僕は仰天した。だってどう見てもでっかくって豪華な車だったんだ。あ、にいちゃんは将軍様なんだっけ。でもでもでも、無理だよ!だって僕今まで、車っていったら移動用の、幌もシートもびりびりに破れたぼろぼろのジープとか、そういうのしか乗った事がないんだ。
「にいちゃん、僕無理だよ」
「君一人くらい増えても車は走るが?」
「違うよ、僕ホラ、すっごくドロドロだから!車のシートまでドロドロになっちゃうよ!」
「汚れたら拭けばいい」
「でも、」
「『魔弾の射手』」
厳しい声で異名を呼ばれて、僕は固まった。
「私のいう事を聞くんだろう?」
僕はしおしおと頷いた。綺麗な車の中に、出来るだけ他に触れないようにしてそろそろと入って行く。奥に詰めろと言われてその通りにすると、隣と向かいには護衛の人達が乗り込んだ。バンと扉が閉まる。運転席と仕切られた車内には、僕とにいちゃんと、あと二人の合計四人が乗って、なお広かった。
何気なく窓を触ったら黒く汚れてしまい、慌てて袖でガラスを拭ったら余計に汚れが広がって、僕は途方に暮れた。向かいに座った人がそれを見て、笑いながら『ほっとけよ』と言ってくれた。堅苦しく怒られるとばっかり思っていたので、その気さくな口調に僕はほっと力を抜いた。僕の緊張が抜けたのがわかったのか、向かいに座った人は懐こそうな顔で笑いながら言った。
「いやー将軍、もう止めて下さいねーこういう綱渡り。俺もー、心臓バクバクですよ。バクバク」
胸の前で大げさな仕草をする人を何となく見ていると、横に座った人が煙草を咥えた。
「ん?吸うか?」
綺麗な金属で縁取られた革張りの煙草入れだ。僕が戦場で吸ってたような紙巻の奴じゃなくて、一本一本に黒と金のラベルがついた、少し細目の葉巻。いいやつだこれ。吸った事ない。いいのかな、とにいちゃんを見ると、貰っておけと頷いてくれた。僕はお礼を言って受け取って、ついでに火まで貸して貰った。煙草入れと揃いのライターだ。何か格好いいなあこの人、と思いながら葉巻を吸った。ちょっと目がちかちかするけど、びっくりするほど美味かった。もうこんなの次にいつ吸えるかわかんないし、大切にゆっくり吸おう。そう思ってそっと吸っていると、しかしなあ、と煙草をくれた人が溜息を吐いた。
「魔弾の射手なんて大仰な異名までついてっから、どんな奴かと思えば」
僕はごほごほごむせた。そう呼ばれているのは知っていたけれど、面と向かって僕をそう呼ぶ奴なんて居なかったからだ。射撃班の奴らはからかい混じりに呼んでいただけだし。
「ぼ、僕がそう名乗った訳じゃ……」
「そりゃあわかってるんだけど、実物前にしたら、どうもなあ。お前幾つだ?」
「じ、十九!今度、二十歳に、なる……り、ます」
「っかー、十代!怖いねえ。射撃はいつからだ?」
「ぐ、んに入ってから、だから……18から……」
おいおいおい、と隣の人は葉巻を握り潰した。
「魔弾の射手の名前、最初に聞いたなぁ、もう一年っから前だぞ?」
「狙撃班に……入った、のが、そのくらい……ですっ」
格好いいけどちょっと怖い人の隣で僕が震えてると、向かいの人がにこにこと笑って言った。
「そいつ凄いですよ。異名も伊達じゃないって、見てて思いましたね。見ててわかる位体ガックガク震えてんのに、銃の構えだけは微動だにしてなかった。な、いつでも将軍の事撃てたよな?」
急に話を振られて、でもどうかえしたらいいのかわからなくてきょろきょろしていて、ふと僕はある事に気付いて向かいの人に聞き返した。
「み……見ててわかった、って……?」
「あ、気付いてなかった?俺もやるじゃん、ねー」
葉巻の人に振ったけど、葉巻の人は無視をしたようだった。
何だよーとブツブツ言いながら、向かいの人は僕の方を向いた。そして腰が抜けそうな事を言った。
「お前の左斜め後ろ10ヤード位ん所に木があったろ。あのブッシュの中に俺が居たのよ」
背中に氷を放り込まれたような心地になって僕はまた葉巻の煙でむせた。
「ダイジョブ?いやーでも、何とかなってよかったよ。最初は見つけた瞬間に撃ち殺してやろうかと思ってたんだけど、将軍がダメって言うしさー。おまえ運いいよ。もし引き金にちょっとでも指掛けてたら、頭に風穴開ける気だったからさ」
「私は殺さず捕らえろと言った筈だが?」
「そこはそれ、将軍、戦場に事故はつきものなんですよねー」
「お前も丸くなったもんだよ。ちょっと前なら、将軍に銃口向けた罪で極刑、だったな」
「今でもダメって前もって言われない限りは極刑にしてますよ」
怖い話で笑いあう人達を、にいちゃんが嗜めてくれた。
「やめたまえ。怯えてるじゃないか、まだほんの子供だぞ」
「ぼ、僕、もう、大人だよ!」
つい叫んでいた。
「そりゃあ、やってるこた大人顔負けだがなあ?」
「転んでべそべそ泣く大人ーあ?」
懐疑的な声に、僕はむきになった。
「お、大人だよ!ムケてるしっ、もうにいちゃんを抱っこして町まで運べるっ」
「いやおまえそれ、わけがわからん」
「嘘じゃないよ!ほら、」
ズボンを脱ごうとした所を、向かいと横から羽交い絞めにされて、落ち着けと怒られた。僕はしゅんとなって、ごめんなさいと謝った。
「自由奔放な田舎町からならず者の集まる最前線だからなあ。おまえまだ、まっすぐ育ってる方だとは思うんだが、ちょっと落ち着け。密室でそんなもん晒すな」
僕は益々小さくなって、ごめんなさいと俯いた。その頭に、ぽふぽふと柔らかく撫でてくれる手が乗った。ムスカにいちゃんの手だ。ほわっと嬉しくなった。手はすぐに退いてしまって、名残惜しかったので顔を上げたら、また向かいの人と目が合った。まあ狭いし向かい合わせだし、当然なんだけど。
「そういやお前さ、スコープは?あん時つけてなかったみたいだけど」
「う、あ、す…スコープ、は……キライで……」
「キライぃー?狙撃にんなもん言ってらんないだろー?」
「銃、古いから……そんな先まで見えても、狙ったとこに飛ばないし。300ヤード位なら、ナシでも頭か喉狙えるし……スコープガラスついてるから……光が、反射したら、怖いし」
「え、待っておまえ、狙撃用使ってんじゃないの?」
「普通の支給ライフルです」
「カスタムは?」
「整備……は毎日してるけど、あんまり銃とか詳しくないから……」
ぼそぼそと答えていたら、魔弾の射手、と隣から言われた。振り返る前に、葉巻がもう一本差し出される。お礼を言う前に、吸え、と命令口調で言われてしまった。強い口調だったので、葉巻の端を急いで千切り、咥える。すぐに火が来た。慌てて吸って、煙を吐いた。
「確かに魔弾の射手だ、おまえは」
言われて、そうかなぁ、と首を傾げる。軍の銃で当たるものを撃って来ただから、当たらないものを撃たなかっただけだから。そう言うと、君はもう少し自分を評価してもいい、とにいちゃんが言ってくれた。
そうかな。
そうなのかな。
「……ああ、でも、やっぱ僕、魔弾の射手なんかじゃないよ。ただの射手だよ」
「謙遜も大概にしねーとイラつく」
向かいの人がむすっと言って来たけど、でもこれは本当の事だ。
「僕ただどんぐり当てるの上手かっただけだから。もし僕が本当に魔弾の射手なら、僕をそうしたのはムスカにいちゃんだよ。僕はにいちゃんに教えて貰ったことを未だにずっとやってるだけだよ」

息を殺して、見付からないように、考えて、工夫して、絶対に外れない位置で撃つ。

「それだけだよ」
だから凄いとしたら、ムスカにいちゃんだ。僕がそう言うと、向かいの人が飲み物をくれた。あったかいコーヒーだ。嗅いだ事もないようないい匂いの。ホントに何でも出て来る車だなあ、と思いながら、お礼を言って受け取る。飲んだらやっぱり美味しかった。これも、次にいつこんなのが飲めるかわからないんだから、ゆっくり飲もうと思った。

「僕はこれからどこで何をすればいい?」
にいちゃんを狙う奴を撃つのはいいけど、にいちゃんは毎日同じ場所を行き来するんだろうか。色々と考えていると、にいちゃんは少し考えてから、射撃以外は苦手なんだったな、と聞いて来た。うんと頷く。そうかと頷いたにいちゃんは、あんまりな事を言った。
「では、この二人に専門施設を紹介して貰ってくれ。射撃以外も人並み以上程度にするんだ」
「えぇえええ!」
青天の霹靂な言葉に思わず叫ぶと、煩いと怒られた。
「で、でも……っ」
「でももクソもあるか。将軍は人使いが荒いんだ、んななよっちい体じゃついてける訳ねーだろ」
「だって僕、徴兵訓練も無理で免除して貰ったのに……」
「そりゃそりゃ、シゴき甲斐があるってもんだねー」
「任せたぞ」
「まあ、あの犬っころ位には仕上げてみせますよ」
葉巻の人がにいちゃんに笑いかけて、向かいの人が僕に笑いかけた。

死なない程度にお願いしたいと僕は思ったんだけど、果たして聞き入れて貰えるだろうか。



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