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[81] リハビリ中大佐(SクンVer.キス有り)
無名 - 2007年07月25日 (水) 16時54分

以前よりも濃い色硝子を通して見る薄暗い世界に慣れてきた。
動かない足を引きずることにも、杖に縋ることにも随分と慣れてきた。
そして、左手で銃を持つことにも。
しっかりとグリップを握って真っ直ぐに腕を伸ばし、暗く霞む視界の中狙いをつけてトリガーを引く。
乾いた銃声が草原に響き、30ヤードほど離れた位置に設えた的に穴が開く。
そのまま姿勢を崩さぬように注意しながら、弾倉が空になるまでトリガーを引き続けた。



競技用の的を模して、適当な板切れにペンキで円を書いただけの粗末な的。
そのほぼ中央に1つ。そして、それから1インチほどずれた場所に2つ。合計して3つの穴が開いていた。
確認するように指先で穴をなぞっていると、不意にその背後から軽い拍手が響く。
驚いて振り返ると、ほんの2ヤードも離れていない場所に人影があった。いつの間に近付いていたのだろう。足音どころか、気配すらも感じなかった。
凡庸を装っているが喰えない男だと改めて思う。
そして、彼が自身の部下だったらどれだけラピュタ探索の力になってくれただろうかなどと、今更なことも考えてしまう自分にムスカは薄く笑みを零した。
「流石ですねぇ、大佐。もうすっかり回復したご様子で」
相変わらずの人を食ったような笑みと物言いに、ムスカは軽く溜息を付く。以前のように上手く体が動かない様子を見られるのが嫌だと言うわけではないが…大体、そんなもの今更である…わざわざ見物しに来るものでもないだろう。
「世辞は不要だ…で、何の用だ?」
「お世辞じゃありませんって…夕食のリクエストを取りに」
何か食いたいものはありませんかー、などと、暢気に問いかけながら更に近付いてくる。的を縛り付けた立ち木に背中を預け、右肘を杖において体を支えるムスカの顔の横に手を付き、先ほどムスカがしていたように的に空いた穴を指先でなぞっていく。
ムスカが愛用する銃の装弾数は6発。的に開いた穴は3つ。3発しか命中しなかった…と言うわけではない。
恐らく、初弾から4発目までは連続して中央に、そして少しずれた場所に開いた穴が、残りの2発によって穿たれた穴だろう。
実戦には向くが精密射撃には不向きな銃を用い、しかも利き手とは逆の手でここまでの成績が出せると言うのは感嘆に値する。
「足ですね」
ポツリと呟かれた言葉に、ムスカは弾を込めていた手を止めてちらりと見やる。この装填作業にも随分と慣れた。最初の頃は、上手く体を支えることが出来ずに倒れたり、また手を滑らせて弾をばら撒いてしまったりしたものだが。
「右足が使えないから…杖じゃどうしても安定しないから軸がブレる。体を支えようとして無意識に膝が落ちるから、上にズレてしまう」
自身でもそうではないかと思っていたことを改めて指摘され、ムスカは深く溜息を付いた。装填を終えた銃身を戻し、弾倉を軽く回す。
「つまり、根本的に身体を鍛えるしかない、と」
「そういうことです。でもまぁ、競技会に出るわけでもなし、実戦ならコレくらいで充分だと思いますがね」
さり気無さを装って…全然装えていないが…筋肉のつき方を確かめようとぺたぺたと肩や腕を触って来る男に、ムスカは思い切り嫌そうに眉を寄せて肘で相手を押しやろうとする。
「おっと、危ないですよ」
その拍子に杖に置いていた肘がずれて支えを失った杖は倒れ、同じように支えの一端を失ったムスカ自身の上体がぐらりと傾く。何とか銃は落とさずにすんだものの、逆に相手の腕に体を預ける姿勢になってしまった。
「誰のせいだ」
「大佐のせいでしょ」
支えるだけならまだしも、妙に嬉しげに背中に腕が回ってぎゅっと抱きしめられる。思わず殴りつけてやろうかと銃を持った腕を振り上げるが、それもあっさりと相手の手に絡め取られてしまった。
そのまま立ち木に押し付けられ、文句を言いかけた唇を塞がれる。
「ン…ッ、ふ…」
軽く何度か表面を触れ合わせ、次第に深く重なっていく。ぬるりとした感触が唇を掠め、噛み付いてやろうと閉じかけた歯列を舌先でなぞられる。思わず緩んだ隙に絡め取られた舌に男が好むキツい煙草の香りを感じた。
「ホントはね…ちょっと、惜しかったなって思ってるんですよ」
舌先が絡み合い、くちゅ、と濡れた音が響く。口付けの合間に呟かれた言葉にムスカは訝しげに眉を寄せる。なにを、と促すその唇を親指の腹でなぞった。
「もっと、酷いコトしときゃよかったって」
カリ、と耳朶に歯を立てながら囁かれ、ムスカは背を震わせる。
「右足だけじゃなくて左足も潰して…二度と、立ち上がれないようにして…」
耳元から顎へとかけて舌先で伝い、開いた片手は胸元を探り器用に釦を外す。
「腕もね、二度とこんなもの持てないように…」
銃を持った手を引き寄せ、軽くその甲に歯を立ててみせる。ちくりとした痛みとどこか狂気の混じったその言葉に、ムスカはぞくりと背が粟立つのを感じていた。
「もちろん、目も。あぁ、でもちょっと惜しいかな。この瞳、すごくイイから…いや、アンタは全部イイけど…」
濃い色硝子を嵌めた眼鏡が僅かにずらされ、金色の瞳が露になる。
「そうしたら―――、一生、アンタを繋いでおけるでしょう?」
瞳を灼く光にじわりと生理的な涙が滲み、目を閉じる。生温い舌先が瞼をなぞり、涙を拭っていった。
「…馬鹿なことを」
熱い吐息と共に呆れた声を漏らしながら、ムスカは自ら男の背に腕を回し唇を重ねた。




「………そうだ。夕食のメニューだがな」
「なんです?」
いきなり戻された話題に、男は訝しげに眉を寄せた。とは言え、途中で止めるつもりも無いらしく、寛げた首筋に舌を這わせながらもムスカの様子を伺う。
銃を持ったままだったムスカの腕が真っ直ぐに伸ばされ、トリガーが引かれる。乾いた銃声と共に甲高い獣の断末魔が背後で聞こえ、発射の反動が抱きしめている男の腕にまで伝わった。
「ウサギのシチューでどうだ?」
「………ウサギなら、香草焼きでもいいですね」
火薬の匂いを漂わせる手を引き寄せ、銃を握った手の甲に軽く口付ける。当然のようにその口付けを受け入れながらも、からかうようにトリガーには指をかけずに銃口を男の胸元に押し当てる。
「それもいいな。では、さっさと獲物を回収してきたまえ。夕食に間に合わなくなるぞ」
「俺は猟犬じゃないっすよ?」
拗ねているのか遊んでいるのか、わざとらしく眉を寄せて見せる男に思わず笑みがこぼれる。まるで、主人に無碍にされて落ち込む犬のようだ。ムスカは自身の背中に回されていた手を取ると、その掌にわざと音を立てて口付けた。
「猟犬ならば褒美が必要か。そうだな…先ほどの続きでどうだ?」
握った手を操って自身の唇を指先でなぞらせ、ついでにその指先を軽く食む。柔らかい舌が爪先をくすぐる感触に、男は一瞬きょとんと目を見開く。やがて口元を笑みに歪ませると、恭しく頭を下げて見せた。
「了解しました、ご主人様」
男は足元に倒れていた杖を拾い上げてムスカの手に持たせると、背中を向けてがさがさと下草を掻き分けていく。
腰近い高さのある草むらの中、小さな獲物を探すのはなかなか骨の折れる作業だろう。
さっさとしないと日が暮れるぞとからかう声をかけ、ムスカは男の横を通り過ぎる。
銃を服の下へと隠し、それと共にまだ微か残った熱を隠すように襟元を整えながら、街へと戻る道をゆっくりと辿っていった。



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