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[408] 第三章 〜出会いのClassroom ・ 後〜(95%)
KAEDE - 2007年11月14日 (水) 23時01分

『猫耳・・・・・・』

女生徒の誰かがポツリと呟きました。
誰もが異常事態の発生に戸惑い、クラスメイトの大半がフリーズしています。
入学式でも一度目撃していた私ですが、あまりに予想外の飛び出し方に言葉を失ってしまいました。
あれじゃ本当に生えてるみたい――――

『まいったなぁ・・・』

この事態の原因に当たる人物、東雲由真さん。
私たちからしてみれば予想外の出来事なのですが、彼女は妙に落ち着いた態度で教室中を見回しています。
言葉を失っているクラスメイトたちが見つめる中、東雲さんは「全員かー」なんてのんきなセリフを口にしてばつが悪そうに自分の頭を軽くコンコンと叩き、一息置いて「ごめんね・・・」と静かに呟きました。

さて、誰に対する謝罪なのでしょう、なんてことを考えようとした次の瞬間でした。
不意に視界がブラックアウトしたのは――――


第三章 〜出会いのClassroom ・ 後〜


何事もなかったかのように全員の自己紹介が終わり、遊馬先生が翌日の予定を黒板に白チョークでリズムよく書き綴っている間、私は「今、何があったんだろう」とずっと考えていました。
軽く教室を見回した限りでは不思議そうな表情をしている人は誰もいません。
これではまるで私だけが変な夢でも見ていたかのように思えて仕方がありません。
誰かに尋ねたい気持ちは山々なのですが、あいにく付近の席に座っているのは初対面の男子ばかり。
いきなりこんな話を持ち出したら変な目で見られてしまうのではないか、という恐れもあってなかなか声をかけることができません。
せめて近くの席に女子が一人でもいればよかったのに・・・!

『以上だ。何か質問はあるか?』

はい、訊きたくて仕方がないことがあります!

なんて、近くの人に訊くのさえ躊躇われたのに堂々とそんなこと言えるはずもありません。
誰か私の代わりに質問してくれる人はいないかな、なんていう願いはついに叶わず誰も挙手しないままホームルームは終わってしまいました。

『・・・そうだ。東雲由真と水無月クラウスはこのまま教室に残っておくように。いいな?』

なんということでしょう。
高校生活初日からお呼び出しを受けてしまいました。

い、いえ、これはきっと掃除当番か何かなのですね。
そうです、そうに違いありません。
おそらくさっき少し目立ってしまったせいでたまたま名前を覚えてもらえて・・・それで指名されたのでしょう。

『他の者は速やかに帰るように』

厳しい口調で遊馬先生がそう告げると不思議なくらいあっさりとほとんどのクラスメイトがそそくさと教室から出て行ってしまいました。

この様子からしてどうやらお掃除当番ではないみたいです。
ま、まさかさっきの自己紹介であんなことしてしまったから?
余計なお世話だと先生の怒りに触れてしまったのでしょうか。

遊馬先生の凍りつくような冷たい視線が痛いです。
うぅ・・・そんなに睨まなくてもいいのに。

『なんかいきなりご指名されていや〜な感じだね』

ため息混じりの声で隣の席にゆっくりと腰を下ろしたのは東雲由真さんでした。
彼女は猛暑に苦しむわんちゃんのような様子で、いかにもだるそうに机に寝そべってため息をひとつ。
前の夏にニュースか何かでこんなわんちゃんを見た気がするなぁ、なんて彼女の顔をまじまじと眺めながら思い出していました。

『水無月さん、だっけ? 珍しい名前だなー、って思ったけど海外出身なの?』

『あ、はい。生まれはドイツなんです』

『へぇー。ヨーロッパの方かぁ。
 いいなぁ。ヨーロッパってなんか憧れるものがあるんだよね、華やかで』

『と、いってもほんの二、三年程度しか住んでいなかったのでよくは覚えていないのですが・・・』

『あ、そうなんだ。でもいいよねー、ヨーロッパ』

せめてそういうセリフは身体を起こしてから言ってください。
なんてファーストコンタクトでいきなりそんな感じ悪いことも言ってられませんでしたし、東雲さんのうっとりした顔を見るとそんな小さなことで咎める気も起きませんでした。
本当にわんちゃんみたいですねこの人・・・。

そんな東雲さんを見ていると私もなんだか机に寝そべりたくなってきました。
学校に来てからほんの二、三時間程度しか経っていないのに精神的にどっと疲れてしまった気がします。
この際、東雲さんと一緒に私もわんちゃんになりましょうか・・・。

『あはは、僕と一緒だね。
 水無月さんも疲れちゃったの?』

『お恥ずかしながら・・・。
 入学式の校長式辞も無駄にロングトークでしたからね・・・』

『あ、それ同感。どうして校長ってあんなに長々と喋りたがるんだろうね』

『初日からこんなのではこの先が思いやられます・・・』

どうやら校長先生の長話に対する不満は誰もが当たり前のように持っているようです。
どこかに校長先生の話を尊敬の眼差しで真剣に聞いている生徒はいないものでしょうか。
もしいるのだとすれば一度見てみたい気がします。

『あはは、僕たち気が合いそうだね』

ですからそういうことはせめて身体を起こしてからと・・・。
と、言う前に東雲さんはゆっくりと身体を起こして右手を差し出してきました。

『僕の友達第一号ってことでこれからよろしくね、水無月さん』

『あ、はい。こちらこそよろしくお願いします、東雲さん』

笑顔と共に差し出された東雲さんの手を握り返すと、その手からとても暖かなぬくもりを感じました。

『あ、由真でいいよー。
 苗字で呼ばれるのにはあまり慣れてないし』

『わ、わかりました。
 由真さん・・・でいいでしょうか?』

『うん。でもそんなにかしこまらなくてもいいよ。
 僕としてはもっと気軽に接してもらいたいなー、なんて』

初日から良い友達に巡り会えたようです。
朝抱えていた不安要素もこれでなくなり、今までの疲れが全部吹き飛んでしまったようなスッキリした気分です。
今なら山頂から大声でやまびこさんを呼んでしまえそう。
それくらいとても嬉しいことでした。

『ところで「友達第一号」って、他に友達はいらっしゃらないのですか?』

『え・・・・・・』

何気なく問いかけると東雲さん・・・由真さんは少し戸惑うような表情を見せてうつむいてしまいました。
そのしぐさを見て、私は「ものすごく失礼なことを言ってしまったのではないか」と小さな罪悪感を覚えました。
由真さんはそのまま机に突っ伏してしまい小さなため息を吐きました――本人としては私に聞こえないように吐いたのでしょうけれど――。
同じ突っ伏すでも先ほどのわんちゃんの時とは全然違います。
どこか拗ねたようにも見える由真さんの様子を見て「やってしまった・・・」と、そう思わずにはいられませんでした。

せっかく仲良く付き合えそうな同性の友達ができたというのに私はなんて失礼なことを・・・。
少し考えればわかることなのに、どうしてそのまま口に出してしまったのだろう・・・。

そんな風に自分を責めても一度口にした言葉が消えることはありません。
いつの間にか教室には私たち二人以外誰もいなくなってしまい、とても気まずい沈黙が流れます。
そういえば私たちに残るように指示した遊馬先生は何処へ行ってしまったのでしょう?
「残れ」と言っておきながら自分だけ帰ってしまうなんてとんでもない先生です。
・・・いえ、ちょっとした所用でもあったのでしょう。

うん、すぐに戻ってくるよきっと・・・・・・。
そういえばもうお昼時。
そろそろお腹が空いてきました。
家に帰ったら何か作って食べましょうか。

ううん、自分を誤魔化している場合ではありません。
とにかく由真さんに謝らなきゃ・・・。

『ご、ごめんなさい。
 私ってばなんて失礼なことを・・・』

『あはは・・・』

不意に由真さんがリストラされて公園のブランコに揺られていた黄昏サラリーマンのように顔を上げながら全然笑っていないような声を漏らしました。
由真さんの顔に浮かんでいるのは苦笑い以外の何でもありません。
「彼女を傷つけてしまった」
この瞬間、私はそれを確信しました。

『別に友達・・・いないわけじゃないよ?』

独り言のように声を漏らした由真さん。
私がその言葉に対する応答を考えるよりも先に彼女は身を乗り出して声を上げました。

『それよりさ、ケー番教えてよ。ケー番』

私の答えも待たずに彼女は慣れた手つきでポケットから携帯を取り出しました。
この様子からしてどうやら高校の入学祝に買ってもらった携帯ではないようです。

『あ、もしかして水無月さん携帯持ってない?』

『も、持ってますよ!』

思わず反射的に大声を上げてしまいました。
「携帯も持ってないの?」みたいな哀れんだ目で見られたら少しは反発もしたくなるというものです。
何故だか無性に悔しくなってしまったので、由真さんに見せつけるように勢いをつけて携帯を取り出しました。
勢いをつけすぎて手からすっぽ抜けそうになりましたが左手で慌ててそれを阻止。
結局、そんな様子を由真さんに笑われてしまったわけですが。

『それ結構前の型だね』

『い、言わないでください!
 仕方ないじゃないですか、携帯ってすぐに新しい型出しますし・・・』

『だよねー。わかるわかる。
 どのタイミングで買おうか迷うよね』

由真さんは「うんうん」と声に出しながらわざとらしくうなずいてくれました。
でも彼女が手にしているのは最新の機種。
それを見ると無性に悲しくなってしまうのは何故でしょう?
共感してくれているはずの人が今この瞬間だけ少し憎らしく見えました。

『さすがに赤外線機能はあるよね』

『そこまで古くないですよ・・・』

『あはは、ごめん。
 別にからかうつもりじゃなかったんだー』

そんなたわいない会話を交わし、私たちはお互いの電話番号とメールアドレスを交換しました。
実に便利な時代になったものです。
やはり友達ができたらまず番号の交換ですよね。
携帯の普及によりコミュニケーションのとり方も少しずつ変わってきているのかな、なんて時代の変化をしみじみと感じていました。

『よし、二人ともいるな?』

いつからそこにいたのやら、遊馬先生が廊下側最前列の机に腰掛けていました。
遊馬先生、教師がそんなとこに座っちゃダメです。
せめて椅子に座りましょうよ。

『待たせて悪かった。
 腹も減っているだろうからなるべく手短に済ませよう』

そう言って先生は立ち上がり、私たちのもとへと歩いてきます。
生徒名簿でも持っているのかと思いきや、先生の手には何故か新聞紙。
用件すら聞かされていない私と由真さんは、お互いに顔を見合わせてきょとんとしているだけでした。

『君たちはこの事件を知っているか?』

先生は手にしていた新聞紙を机の上に広げ、その一面記事を指差して尋ねてきました。

なんということでしょう。
私は今日に限って本日の新聞を読まずに来てしまいました。
いろいろと準備が慌しかったり、うっかり寝坊しかけてしまったりしたせいで・・・。
でも「知りません」なんて答えたら「高校生になったというのに新聞も読まないのか」なんて返されそうで返答に困ります。

せめて何の事件なのかだけでも把握しておこうと苦し紛れにその記事に目を向けると、ふとあることに気がつきました。

『あ、この事件・・・最近ニュースで見た気がします』

それは四月に入ってから頻繁にメディアで報道されるようになった事件。

「平成のジャック・ザ・リッパー」

その見出しの由来は、過去イギリスに存在したといわれる恐怖の殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」からきているのでしょう。

ジャック・ザ・リッパーは女性ばかりを狙い、そのすべてをバラバラに刻んだといわれています。
そして事件の真相、犯人の正体は未だ闇の中・・・。
もう百年以上も前の事件ですもの、時が経つに連れて余計に解明が困難になっているのでしょう。

今回の事件で「ジャック・ザ・リッパー」の名前が持ち出されたのは、その事件に似通った部分があるからなのだと思われます。
平成のジャック・ザ・リッパー、それはこれまでに少なくとも五人もの犠牲者を出した殺人鬼。
それも被害者の死体はすべてバラバラに刻まれた状態で発見されています。
ニュースで聞いたところによると、すべて同一犯の犯行であることは確かなようです。
ただ、犯人の目星がつかず捜査は行き詰っているそうですが・・・。

『だろうな。今や日本全土で話題になっている事件だ。
 それもすべて・・・この近辺で起こった事件となれば恐ろしさもより一層増してしまうな?』

『そ、そんな恐怖心を煽るようなこと言わないでください・・・』

『ああ、すまない。恐がらせようと思ったわけではないんだ。
 それで本題なんだがな・・・』

先生が何か嫌な予感をほのめかせる謎の間を作り出している間、ふと隣に目を向けてみると由真さんが窓の外を眺めて沈黙していました。
これはまるで興味がないといった様子でしょうか。
由真さんは恐くないのかな・・・。

『君たち、この事件の犯人に心当たりはないか?』

『は・・・?』

いきなり何を言い出すのでしょうこの先生は。
警察でさえ捜査が困難になっているというのに、どうして一般の女子高生である私たちがそれを知っているはずがありましょうか。
少なくとも私の知り合いに気の狂ったような人は思い当たりません。
普通なら誰だってそうです。

もちろん由真さんだって同じですよね・・・?

しかし、相変わらず彼女はそっぽを向いたまま話なんてまるで聞いていませんでした。
さっきまであんなにはきはき喋っていたのに・・・いったいどうしてしまったのでしょうか。

『すまない、言い方がやや遠まわしだったな。
 この際ハッキリと言ってしまおう』

――――君たちのどちらかがこの事件の犯人じゃないのか?――――

さすがに自分の耳を疑ってしまいました。
今、この人はなんと言ったのですか・・・?
私たちのどちらかが「犯人」ですって?

『・・・と、聞いて素直に答えてくれるはずもないな。
 だが、疑う要素になりえる情報が入っているんだ。
 君たちが私の受け持つクラスに配属された以上、そこをハッキリさせておく必要があるだろう』

『ま、待ってください!
 どうして私たちが疑われなくちゃいけないんですか? 
 それに「疑う要素になりえる情報」って・・・』

『ふ、「私たち」か・・・。
 君たちはお互いのことをよく理解している仲なのか?』

『い、いえ・・・今日初めて会ったばかりですけれど・・・。
 で、でもそんな殺人鬼だなんて・・・・・・!』

いくら冗談だとしても性質が悪すぎます。
どうしてこの先生はこんなにも真剣な顔でそんなことを訊ねてくるんですか?
本気で私たちを疑っているんですか?
先生こそ今日初めて顔を合わせた間柄なのに・・・・・・。

『そうだな、証拠もなしにこんなことを言われてもただの言いがかりに過ぎん。
 なら今度は証拠を突きつけるまでだが、どうする?』

『その前にどこからその情報を仕入れたのか聞いておきたいね』

『お師匠様・・・!』

『扉を開けるときはノックくらいしてもらいたいものだな、常盤木君。
 呼ばれていない者は帰るように言ったはずだが?』

『すみませんね、初日から忘れ物をしてしまったもので』

お師匠様登場のタイミングの良さに助けられた気がします。
一刻も早くこの話を切り上げたい。
もう随分とお腹もすいてしまっているし、こんな見当違いな話をされても困るだけです。

お師匠様が助け船を出してくれないだろうかと期待の眼差しを向けていたら、その祈りが通じたのか彼は私のところへと歩み寄ってきてくれました。
そういえば「忘れ物」と言っていたようですが、今日は特に持ち物なんて何もなかったような・・・。

『さ、帰ろう。水無月さん』

『え・・・?』

『おや、忘れ物とやらはどうしたのかな常盤木君?』

『忘れ物・・・預かっていただきありがとうございました、遊馬先生』

含みのある笑顔を先生に向けるお師匠様。
その笑顔には何か挑発じみたものが見え隠れしているように思えました。
私の気のせいであればいいのですが・・・。

『お腹空いたでしょ?
 どこかで何か食べていかない?』

『え、あ、あのお師匠様・・・?』

『ダメかな?』

『い、いえ、そんなことは!』

『うん、よかった。
 じゃあ、そういうことで僕らは失礼しますね、先生』

『ふ・・・。
 なんだ、たいそうでかい忘れ物をしたものだな』

『誰かさんがいつまでも離してくれなかったおかげで、ね』

これはいったいどういうことなのでしょう?
もしかしてお師匠様の言う「忘れ物」って・・・・・・私のこと?
そ、そんな・・・恥ずかしいですぅ・・・。

『悪いが、私の話はまだ終わってないんだ。
 あと数分で終わる、それまで外で待っていてくれないか?』

『お断りしましょう。
 その話をこの場で解決させようだなんて不可能ですよ、先生。
 「証拠」だなんてハッタリなのでしょう?』

『君はいつから盗み聞きしていたのかね。
 教師として見逃すわけにはいかないな』

『さて、それは本当に「教師として」なのでしょうか。
 僕には別の理由があるようにしか思えませんが?』

『やれやれ、君はどこまで事態を把握しているのかな?
 



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