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[404] 第二章 〜出会いのClassroom ・ 前〜
KAEDE - 2007年04月08日 (日) 10時17分

『昔、こんな話があったんだ』

彼は遠い目をして私に語りかけました。
私は彼のことを「お師匠様」と呼んでいます。
お師匠様はとても物知りで、時折「この世界のすべてを知っているのではないか」と思わせるような発言をします。
でもそれが真実なのかどうかは私にはわかりません。

『かつて神々の怒りを買った者がいた。
 彼はその世界で一番格の高い・・・いわばすべての創造主たる偉い神様だったんだ』

お師匠様は神話がお好きなのでしょうか。
時々こうして私に話を聞かせてくれます。
でも私はこのお話を聞くのが嫌いです。
神話が嫌いなのではありません。
ただ、この話をする時お師匠様はどこか哀しそうな目をするのです。
私はそんなお師匠様の顔を見たくはないのに――――

『彼は人間から崇められていた存在だった。
 でも時が経つに連れ、人々の目は彼以外の神に向けられるようになった。
 妙な神様もいたものでね、彼の「自分が一番偉いんだ」というプライドが他の神に祈りを捧げる人間たちを許せなかった』

『なんだかどこかの国の王様みたいな神様なんですね』

『そうだね、当時の神々はとても人間に近い姿をしていたんだ。
 外見だけではなく、中身もね。
 だから、一番偉い神といっても人間とほとんど変わりがなかったんだ。
 唯一違うのは人間には出来ないことが彼には出来た、ということだね』

『それで・・・どうなったんですか?』

『彼はその憤慨のままに恐ろしい存在を生み出した。
 自分を崇めない人間たちを抹殺するための女神・・・セクメト神を』


第二章 〜出会いのClassroom ・ 前〜


本日は高校の入学式です。
私たちが入学する学校は中高一貫なのだそうで、そのほとんどが中学からの入学生だと聞いています。
私のように高校から入る生徒は珍しいらしく、ちゃんと友達ができるのか少し不安です。
知り合いに似たような学校に通っている人がいるのですが、その人の話では生徒のほとんどは中学時代で仲良しグループが成立してしまっているらしく、高校から入ってきた人は孤立しがちなんだとか。

友達・・・できるのかな・・・・・・?

一応お師匠様と一緒の入学なので知り合いがまったくいないというわけではないのですが、彼と同じクラスになれるとは限りません。
もしクラスが別々だった場合、孤立した状態からのスタートになってしまいます。
仮に同じクラスになったとしても、ずっとお師匠様と一緒にいると妙な噂が立ってしまうかもしれませんし・・・。
とりあえず同性の友達を作ることがファーストミッションになりそうです。
私と同じように高校から入学してきた人・・・探してみようかな。


そして入学式。
入学する生徒――といってもほとんどは中学からの繰り上がり――が多いせいなのかやたらと広い体育館で式が執り行われています。
私の通っていた中学校の体育館の倍の広さはありそうです。
体育館の広さから察するに、この学校の生徒数は中学の比にはならないのでしょう。
そうなると体育祭、文化祭といった行事もさぞ壮大なのであろうと胸に期待を膨らませていました。

ですが・・・校長先生のお話があまりにも長すぎて段々疲れてきました。
椅子に座っての式だったのが唯一の救いです。
これを立って受けろと言われたら立ちくらみすら覚えてしまいそう・・・。
校長式辞は入学式のスケジュールの前半部分に含まれます。
まだまだ時間がかかりそうだな、と思った私はたまたま前の席に座っていたお師匠様に声をかけてみました。

『なんだか時間がかかりそうですね・・・』

『校長の話なんてこんなものさ』

確かにその通りだと思いました。
これはもう苦笑いしか浮かべられません。
延々と唱えられる校長先生の呪文を完全に無視してお師匠様と雑談でも続けようかと思ったその矢先のことでした。
今まではお師匠様の頭しか見えずまったく気がつかなかったのですが、彼が振り返ったことによりその前の席に座っている女子の頭が一瞬視界に入りました。

うーん、これはどう表現するべきなのでしょう・・・。
栗色のセミショートな彼女の髪型・・・というよりは頭にとても妙な違和感を覚えました。
その違和感の正体を簡単に表現するのであればこうなります。

あの人・・・頭に何かついてる・・・・・・。

『水無月さんも気づいた?
 やっぱり気になるよね、あの猫耳・・・』

『コスプレ・・・でしょうか?』

『まさか・・・。入学早々そんなこと・・・』

『じゃあ生えてるんでしょうか・・・』

『ファンタジックだね、水無月さん』

笑われてしまいました。
確かに自分でも我ながらおかしい発言をしたなと思ってます。
話の流れ上のなりゆきとはいえあんな小学生みたいな発言を・・・。
幼稚な子だと思われてしまったでしょうか・・・恥ずかしいです。

『いや、ごめん。笑うつもりはなかったんだ』

『笑うなんて酷いです・・・』

『真面目な顔してあんなこと言う水無月さんが微笑ましくてつい、ね』

ちなみに「水無月」というのは私の苗字です。
水無月クラウス、それが私の名前。
私の生まれはドイツですが、父が日本人なので苗字は日本のものです。
といってもドイツで過ごしたのはほんの数年。
実際には日本で過ごした期間のほうが長いので日本語で不自由することはありません。
むしろ生まれ故郷の知識に欠けているくらいです。


いつの間にか式は終わり、私たちは生徒会役員の先輩方にこれから一年間過ごすことになる教室まで案内されました。
プレートには「1 - 2」と書いてあります。
どうやら私は一年二組に配属されたようです。
生徒数からして「1 - 10」を超える勢いだと思って期待していたのですが・・・ごくごく普通の数字のクラスになってしまい少し残念です。

教室に入るとご丁寧にも机が綺麗に並べられていました。
先輩方がわざわざ並べてくれたんだろうなぁ、なんて中学時代の自分と重ねてそんなことを考えていました。
各机にはそれぞれ名前が貼ってあり、どうやら自分の名前の貼ってある席が自分の席となるようです。
「水無月」はマ行なので出席番号としては割と後ろの方でした。
このクラスは三十五人編成で、席は縦五列、横七列に並んでおり、私が卒業した中学校より若干広く感じる教室です。
廊下側最前列が出席番号一番の席となっており、出席番号三十番の私は窓際から一列間を置いた列の最後尾でした。
後一つ番号が後ろだったら窓際の席になれたのに・・・!
そう思うとなんだか悔しくなります。
でも最前列になるのもそれはそれで嫌なので、とりあえず現在の位置で我慢することにしました。

そのうち席替え・・・するはずだよね・・・・・・。

結局のところお師匠様と同じクラスになれたのですが、出席番号順に並んでしまうとどうも席が離れてしまいます。
お師匠様の名前は「常葉 楓」なのでタ行になります。
するとマ行の私とは少し間が開いてしまうわけで・・・。

どうやらお師匠様の番号は二十番なのだそうで、私の席との間に余計な一列が入り込む形となってしまいました。
これではとてもじゃありませんが席に座ったまま会話を交わすことは不可能です。
早いところ近くの席の人と話し友達になっておかなければ後々非常に気まずいことになりかねません。
でも、私は衝撃の事実に気がついてしまったのです。
目の前、両隣、更には斜め前方に位置する席までもがすべて――――男子の席でした。

はぁ・・・いきなり前途多難です・・・・・・。

なんとか全員が各自の席に落ち着き、私がふとなんの気なしにポニーテールを結い直していた頃、何の前触れもなしにこのクラスの担任と思われる教師が教室に入ってきました。
全体的にすらりとした印象で黒いセミロングヘアー、きりりと整った顔立ちにメガネをかけている若い女性でした。
ああ、こういう人を美女と言うのだろうな、なんて少し羨ましく思っていたら「待ってました」と言わんばかりに男子生徒たちが騒ぎ始めました。
これだけ綺麗な人が自分たちの担任になるのか、と思うと男子にとってはとても嬉しいことなのかもしれません。
もっとも、中学の経験からしてどんな教師が来ても男子は騒いでいたでしょうけれど。

『静かに!』

先生は教卓につくなりそう叫びました。
教室に響き渡る透き通った声。
あれだけ騒がしかった教室が一瞬にして静まり返ります。
あの人を見ていると「まさしくああいうのが真面目な委員長タイプなんだろうな」なんて考えてしまいます。
いえ、先生なんですけど。

『私がこのクラスの担任を持つことになった遊馬だ。
 これから一年よろしく頼む』

最初の一声、顔立ち、その挨拶から察するに非常に厳しい先生なのだろうという第一印象がついてしまいました。
これはうっかり居眠りでもしてしまえばチョークを投げられてしまうのではないか、なんて悪寒を感じるほどです。
どうやら私だけではなく他のクラスメイトもどこか落胆している様子でした。
みなさんも厳しい先生とはなるべくあたりたくないものですよね・・・?

『じゃあ早速で悪いがみんなに自己紹介をしてもらおうと思う。
 お互いこれから一年を共にする仲間たちなんだ、面倒だとは思うがよろしく頼む』

意外といい先生なのかもしれません。
そう思うのは私だけでしょうか?

『まずは出席番号一番からだな。
 えーと、一番は・・・なんだお前か』

遊馬先生のため息まじりの視線は出席番号一番の男子に向けられたものでした。
よくよく見るとこの男子・・・どこか先生に似ているような似ていないような・・・・・・。

『まぁ仕方ないか・・・。
 では、玲からよろしく頼む。
 あんまり余計なことは言うんじゃないぞ?』

やけに親しげに話しかけています。
先生と面識がある人なのでしょうか。
でも考えていてもわかるわけがありませんし、ここはおとなしく自己紹介を聞くことにします。
ところでこの先生・・・「よろしく頼む」が口癖だったりするのでしょうか。

『どうも、遊馬 玲です。
 担任の遊馬夢月先生とは姉弟関係にあたります。
 無愛想な人物に見えるかもしれませんが、とても生徒想いの先生なのでどうか誤解なさいませんよう・・・』

『玲! 「余計なことは言うな」と言っただろう!』

『姉さんが誤解されやすいのは事実ですからね。
 むしろわざわざ誤解を招かないようにしてあげたのですから感謝してもらいたいものです』

『それが余計なことだというんだ!
 そもそも「誤解」なんてものは存在しない。
 教師とは常に厳しくあらなければならないとこのマニュアルにも・・・』

一瞬教室の中に冷たい沈黙が走りました。
それも誰かの「ぷっ」という小さな笑みが起爆装置となり、教室中に大きな笑い声が響き渡ります。
私も微笑ましくてつい笑みを漏らしてしまいました。

なんだ、厳しい人なのかと思ったらそんなマニュアル読んでたんだ。

『・・・っ! し、静かにしなさい!
 いいですか!? 今は自己紹介の時間であって笑う時間ではないのですよ!』

いきなり丁寧語になってしまったようです。



もしかして新任の先生だったりするのでしょうか。
だからマニュアルなんていうものを携帯しているのかもしれませんね。

でも・・・そっか、姉弟だったんだ・・・。
どうりで親しげに話していたわけです。

『仕方ないだろう・・・私だって初めてで緊張しているんだから・・・・・・』

声が聞こえたわけではありませんが、小さく動いた遊馬先生の唇はそんなことを呟いているように見えました。
そう・・・誰だって最初は緊張するんだ・・・笑っちゃいけないよね。
なんていう私の思いをよそに相変わらずみんなの笑い声は絶えません。
顔を赤らめてうつむいている遊馬先生の顔を見て、私は居ても立っても居られなくなりました。

『みなさん静かにしてください!
 先生が困ってるじゃないですか』

「ああ・・・やってしまった」と思いました。
周りの人の視線が突き刺さるように痛いです。
いきなりこんなことを言い出してしまったんだ、みんなに悪い印象持たれちゃったかなぁ・・・。

一応静かにはなったものの、みんな周りの人と小さな声でひそひそと話しています。
おそらく私の悪口でも言ってるんだろうなぁ・・・なんて被害妄想を浮かべていたところ、一人の女生徒が唐突にガタンと立ち上がりました。

あまりに勢いよく立ち上がられたものだから全員ビクッと肩を震わせていました。
この状況でそんな大きな音立てて立ち上がられたら威圧感を感じずにはいられません。
怒るのかな、怒られるのかな・・・・・・。

『僕トイレ行ってきまーす』

行ってらっしゃい。
・・・いえ、何を言い出すのかと思ったその直後に彼女が発した一言がそれだったようです。
あまりの予想外のセリフに全員が唖然としていました。
そして彼女はそのまま誰の返事を待つ様子もなく教室を出ていってしまいました。
そういえばあの人は・・・さっきの猫耳の人?
でも肝心の猫耳がなくなっているような・・・。

『こほん、すまなかった。
 では自己紹介を続けてもらおうか。
 二番の奴、よろしく頼む』

そんな間にも遊馬先生は完全復活したらしく、先ほどの動揺が嘘だったかのように最初の挨拶と変わらぬ口ぶりでセリフを紡いでいました。
クラスの誰もが戸惑った様子でしたが、出席番号二番の人が喋り始めたことによりようやく自己紹介の時間が戻ってまいりました。
もしかして・・・あの子はこのためにわざとあんな音立てて立ち上がったのでしょうか・・・・・・。
・・・まさかね。


順調に自己紹介は続き、「次は十五番の人か」とその人がいたであろう席に目を向けました。
本人・・・不在ですが。
そう、先ほど教室を出ていった女生徒がどうやら出席番号十五番の人らしいのです。
さてどうしましょう、と教室がざわめき始めます。
この際飛ばして十六番の人の紹介に移ってしまおうか、なんて提案が挙がった頃にようやく十五番の女生徒が帰ってきました。
全員の視線が集中する中、彼女は一人キョトンとした顔で状況が飲み込めないといった様子でした。

『あ、あれ? 自己紹介進んでたの?』

彼女はそそくさと自分の席に戻り、まるで何事もなかったかのように頬杖をつきました。
「はぁ〜」なんて大きなため息をついている彼女を全員が注目しています。
周りの注目がずっと自分に向けられていることにようやく気づいた彼女はあたりをきょろきょろと見回して静かに立ち上がりました。

『僕の番・・・なのかな?』

そういうことは立ち上がる前に訊ねるものなのではないだろうか、という疑問をよそに彼女は隣の男子に確認をとっていました。
・・・ってよく見ればその男子はお師匠様じゃないですか!
あ、でもそうか・・・二十番なんだから十五番の隣になるのは当然ですよね・・・・・・。
うーん、何故か複雑な気分です。

確認を終えた彼女は「こほん」と咳払いをすると軽く息を吸い込んで自己紹介を始めました。

『東雲由真ですー。
 えっと、ここから歩いて五分のとこに住んでます。
 あ、あと只今友達募集中ですー・・・なんちゃって』

ピョコン。

さて、本日何度目のフリーズでしょうか。
今度こそ全員の視線は彼女・・・東雲由真さんの頭に集中し、「これが呆然という状況です」とリアル辞書のような説明が字幕で出てきそうな勢いで全員固まってしまいました。

その真相を今から簡単に説明しようと思います。
まず、彼女の自己紹介。
「なんちゃって」の「て」と同時にピョコンという擬音が聞こえた気がしました。
東雲さんからしてみれば「よりによってこのタイミングで!?」といった感じに頭から異物が飛び出してきたのです。

そう、入学式の時に目撃したあの猫耳が――――



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