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[383] 夢幻と現実の狭間 〜1章 3話〜
闇の大天使 - 2006年09月12日 (火) 18時56分



時は流れて、日の暮れた夕方。部活などで残っている者
以外は全員帰宅し、昼間に比べて校内はかなり静かになっていた

当然の如く、何の用もないのに学校へ来ている者もいた。いや、用があるから来ているのか…夕日で照らされた廊下を歩く四つの人影があった


「ここが図書室。まぁ、どんな所かは言わなくても分かるでしょ?」

「はい。ありがとうございます」

そう言って、頭を下げたのは璃音だった。その面々というのは、駿、夜一、璃音と、もう一人、自己紹介の済んでいない人物が一人、という顔ぶれだ

女子高生にしては背が高めのこの女性。木沙羅 凛、16歳。駿達と同じクラスの生徒で、大企業の社長の令嬢………だが、そんな雰囲気は微塵も出さない、と言うか出せない女の子だ

「大体、何であたしも学校案内に付き合わされなくちゃ
いけないの?実際暇だったからあまり文句は言えないけど」

「そう言わんといて。この璃音ちゃんとも仲良くできるんやから、言いっこなしや」

いつもの関西弁で夜一が宥める。この三人は幼い頃からの関係なので、事ある毎に絡んでいる


「そうだ…この後皆暇だろ?総合病院に行かないか?」

「桃のお見舞い?良いわね。新学期が始まった祝いってことで」

駿の提案に、凛も夜一も賛成の意思を見せた。璃音だけは、ポカンとしているのだが

「桃ちゃん?」

「あぁ、璃音ちゃんにも紹介しとく。僕たち幼馴染の中の一人で、今は交通事故に巻き込まれたせいで入院中の女の子や。引っ張りまわすようで悪いけど、クラスに馴染む前に僕たちと仲良くしようや」

「あ…ありがとうございます」

まずは自分達の輪の中に入れて、だんだんクラスに溶け込ませよう、と言うのが夜一の考えだった。駿が関わった以上、彼への冷やかしなどではない、璃音への心遣いだった


「じゃ、折角だからアイツも誘うか」

「豹介ね。でも、あいつ帰宅部だからもう帰ったんじゃない?」

「…悪いけど、ここにいる」

図書室の入り口に体を寄り掛け、腕を組み眼鏡を掛ける学生がいた。新しい出会いである璃音はどこか戸惑った表情だったが、駿達はその姿に薄ら笑いを浮かべている


「豹介。話は聞いていただろ?一緒に、お前の家に行くんだが」

「あそこは僕の家じゃなくて、父の仕事場だ。…そっちの女の子は、噂の転校生?」

眼鏡越しに鋭い視線を、璃音に向ける。その通り、と夜一が返す


「は、初めまして。紅堂璃音です」

「知ってるよ。朝、見ない顔が駿と歩いてたからね。
嫌でも顔は覚えるし、噂で君の名前を聞いたんだよ」

「じゃあ聞くなよ」

「あくまで確認さ。それより、もう行くんだろ?教室に忘れ物があるから、先に行っててくれないか」

分かった、と短く返すと、駿達は下駄箱へ向けて歩き出した。彼らは一旦帰宅しているため、豹介と違って荷物が何も無いのだ。私服で高校へ入るのは、少々骨が折れたとか


ちなみに、彼は藤堂 豹介。街の医療の中心、藤堂総合病院の院長の一人息子で、天才肌だがどこか抜けていて、冷たい。勤勉家で、最年少生徒会長にも推薦されている



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