[379] 夢幻と現実の狭間 〜プロローグ〜 |
- 闇の大天使 - 2006年08月11日 (金) 17時54分
---------徐々に、真っ暗だった視界に、天井が写し出されていく。壁に掛けられた時計を見ると、既に7時10分を回っていた。ゆっくり体を起こして部屋の扉を開け、リビングへ向った
リビングでは当然の如く、母が朝の用事を片付けていた。洗濯物を干す為にベランダに出たり、ペットの犬に餌を与えたりしている。こちらに気付いたのか、ふと視線を向けた
「あら、お早う。もう朝食はできてるわよ」
それだけ言い残すと、再びベランダへ向っていった。いつもと同じパターンだ。今日から新学期だと言うのに、体が妙にダルい
それから食事を済ませて、TVの芸能情報を見ながら着替える。母は大体こちらを向かないので問題は無い。 いつも通り制服に着替えて、洗面所に向う
顔と歯を洗い、タオルで拭った後は洗濯機にポイ。これはどうせ、明日洗濯されるんだな、とか考えつつ、再び自室に戻り、 念の為バックの中身を確認する
「7時40分…ま、早めに出ても損は無いだろ」
小さく呟いた後、バックを肩に背負って廊下に出ると、犬がワンワン鳴いていた。五月蝿いが、これもまたいつもの事。ほえ続ける犬をリビングに戻すと、靴を履き、家を出た
学校へ向おうと歩を進めると、後ろで玄関の扉が開く音がした
「駿ちゃん!上履き忘れてるわよ!」
振り向くと、母が上履き片手に走ってきた。ハイ、と渡してもらうと、再び学校へ歩き出す
「いってらっしゃい」
母の挨拶を返しもせず、無言で歩き続けた。いつもは応えるのだが、今日は何だかそんな気分にならなくて、 ただ無心に学校へ歩みを進めていた。外は残暑で、少しだけ暑い
ちなみに、俺は誰だって?無理矢理だが自己紹介に持っていく事にする。 波川駿、16歳。緋神(ひがみ)高校っていう普通の高校に通う高校生。趣味はサッカー、ゲーム、読書
俺がどんな人間かは、直に分かると思う。…ここから俺視点じゃ無くなるけど、ね
いつもの様に、細道の階段を下りていると、段の中間で誰かが座っているのが見えた。どうやら女で、駿の高校の女子が 着る制服を着ていた
理由は分からないが、駿が横を通り過ぎる時、はぁ、と重い溜息をついていた。その時駿と視線が合い、その彼女は 恥ずかしそうに立ち上がる
「あ、すいません!邪魔でしたか!?」
「いや、別に…それよりあんた、ウチの学校の生徒だろ?何してるか知らないが、急いだ方がいい」
「え?あなた、緋神高校の生徒さんなんですか?」
別に間違いではないので、駿は軽く頷く。すると、その女の子は後ろを向いて、ガッツポーズをした。 理由が分からず、駿は小さく首を傾げる
「よかったぁ。私、今日から転校してきたんですけど、途中で迷子になっちゃって…」
「そうなのか…でも、良かったな。ここは学校への近道だ。この階段下りて真っ直ぐ行けば、緋神はすぐそこだ」
階段の下の方を指差すと、駿はさっさと歩き始めた。 自分も遅刻したくない為だが、自分の横を彼女が付いて来るのが気になり、目の端で彼女を見る
「何だ、まだ俺になんか用か?」
「あ、あの…ちょっと不安なんで、一緒に行ってもいいですか?」
駿はちょっとだけ悩んだ末、小さく頷く。すると、彼女の表情が笑顔で緩んだ
「ありがとうございます。あ、そうだ…まだ私、名乗ってませんよね?私、紅堂 璃音って言います」
「くどう…りおん?何だか珍しい名前だな。俺は波川駿。ちなみに高1だ」
「ほっ…私もです。でも、波川さん、もっと上の歳に見えるなぁ…」
「そりゃ、この身長だとな」
その後も、他愛ない会話が続いた。駿からして見れば、 彼女は可愛い方だ。それでこの性格だから、 ようやく学年に華ができたな、と思ったりしていた
「まぁ、同じクラスになれるといいな」
「ふふ…そうですね。まだ私、何組に入るか聞かされてませんから」
異性に対する欲望などの下心ではなく、駿の本心からの台詞だった。ふとしたキッカケで仲良くなった男女は、 こうして学校へ向かっていくのだった…
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