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[129]Masker's ABC file.02-1 - 投稿者:壱伏 充

 深い、闇の中。日の光も差し込まない無人の空間。
 しかし、視覚による認識を拒む分だけ、その場所が他の語感に訴えかける強度は暴力的ですらあった。
 耳を聾する轟音。鼻を突く異臭。肌をざわつかせる空気の流れ。誰も舌を伸ばそうとは思わないであろう、その空間が持つ意味。
 東京都の某所を流れる、そこは下水道の一画。
 その中で、ひときわ異臭を放つ存在が横たわっていた。
 緑の泡に包まれた、全裸の男性の死体。その腰に巻かれたベルトが時折火花を上げて、小さな光を生む。
 光に照らし出されたのは、下水道を塒にする小動物や流れる汚水。
 そして浄化装置に覆い被さるように鎮座した、一抱えほどもある何かのタマゴが一つ。

Masker’s ABC file.02
“飛べ!空中大決戦”

「KEEP OUT」のテープで仕切られた現場に足を踏み入れると、所轄の警官が敬礼をしてきた。
 神谷典子は部下の杁中を連れて「ご苦労様」と声をかけ、所轄の刑事の下へ歩み寄った。
「遊撃機動隊第一班、神谷です。遺体は?」
 典子の問いに刑事が頭を下げ、答えた。
「ああ、ご苦労さんです。ホトケさんなら今しがた解剖に。
えーと、身許は分かってます。富岡拓郎、35歳。水道局の職員。ここいらの浄水装置の様子が変だってんで住民から連絡受けて下水道に入ったのが10時5分。
 20分経っても連絡がないんで、上で待ってた同僚が下ってったら、富岡が死んでいたそうです。で、奇っ怪なのがこの状況でしてねぇ……」
 刑事はしばしもったいぶるように言葉を切り、おどろおどろしく言葉を継いだ。
「ホトケさん、“ライダー”溶かされて死んでたんですよ。あ、聞いてました?」

 21世紀も4分の1を過ぎた現在の社会を語るならば、“仮面ライダー”の存在を避けて通る事は出来ない。
 正式カテゴリ名・即時対応型外部装甲システム、略して即応外甲。普段は携帯ゲーム機大の機械として持ち歩けるが、腰部にセットしてスイッチを入れることで内部の記憶媒体“スフィアミル”にデータ化保存されていた質量が再生され、装甲強化スーツとして所有者の全身に装着されるのだ。
 第一人者であるセプテム・グローイング社の商標からそれらは一般に“仮面ライダー”、あるいは“ライダー”と呼ばれるようになった。
 人の繊細な指先に銃器のパワーを上乗せできる即応外甲は、瞬く間に世界中に普及し、関連して起きた各方面での技術革新の波、通称“ライダーショック”とともに人々の暮らしを豊かにしてきた。
 しかし一方で、こうした技術の悪用により犯罪もまた過激化するのが世の常である。警視庁はこうした即物的ハイテク犯罪に対応すべく即応外甲を運用する警備部、刑事部との横断部署を設立した。
 それが、神谷典子が所属する遊撃機動隊である。

「ふーん、じゃ警察犬はつかえない、と」
 警視庁、遊撃機動隊隊長室。東堂 勇警視はディスプレイ上でメールに添付されたファイルをスクロールしつつ、電話の向こうの部下に問うた。
『ええ。下水道を流れて逃亡したと推測されますので』
「分かった。ガンドッグ使っちゃって。あとよろしく」
『了解』
 使用許可さえ下せば、後は典子の判断に任せて大丈夫だろう。東堂はファイルの写真に視線を移し、口の中で呟いた。
「しかし謎の怪生物現る、ね。こんなんだからウチは、すぐやる課とか地球防衛軍とか陰で言われちゃうのかねえ」

「ガンドッグの使用許可が下りたわ」
 典子は遊機専用のパトカーIDA-7・1号車から部下たちに指示を出した。
「赤池君は被害者のスカラベバックルを解析に回して。杁中と私、原と植田、平針と川名の3チームで下流を洗う。相手は正体不明の、恐らくはバイオクリーチャー。油断しないで」
『了解!』
 通信機からは小気味の良い返事。典子はマイクを置いて、IDA-7を発進させた。

 持ち込まれたバイクを静かに見下ろし、石動信介は結論を出した。
「こりゃ、修理は無理だな」
「やっぱり……ですか」
 客の青年が露骨に落胆する。石動は「いいか」と屈みこみ、むき出しになったフレームを指差した。
「この辺、何かが溶けて固まってるだろう? バッテリーの奥はもちろん、全部のパーツにこびり付いている。その時の影響で、こことここが著しく歪んじまってるせいでな……」
「ということは、買い替えなきゃダメってことですよね、おやっさん。こいつを……スクラップにして」
「だな」
「ああ……俺のバイク……」
 石動の宣告に青年は眩暈を覚えたのか、店内の柱にもたれ込む。
 渡良瀬悟朗がモーターショップ石動に顔を出したのは、ちょうどそんな時だった。
「何だい、どうしたいこの愁嘆場は」
 状況が読めず、首を傾げて渡良瀬は見せに入ってきた。石動は顔をしかめる。
「何してる貧乏探偵。昼飯は食ったばかりだろうが」
「いや、客来なくってさ。あんまりヒマだからポスター作ってそこらの電信柱に貼ってやろうかと」
「……探偵3年目で初めて達する結論じゃないだろう、それ」
 石動は呆れてため息をついた。どうにもこの店子には、商売への意欲が欠けている。
 ――と、打ちひしがれていた青年がピクリと会話中の単語に反応した。
「探偵? 探偵なんていたんですか?」
 どうやらモーターショップ石動の常連客のクセに、二階に探偵事務所があることに気付いていなかったらしい。
「ああそうだ。渡良瀬っていう金を入れない店子だ」
「どうも、渡良瀬探偵社代表の渡良瀬です。……って、これ君のバイク? おしゃれだねェスケルトンちっくで。今、こんなの流行ってんの?」
「ンなわけないでしょうがァッ!」
 渡良瀬の能天気な一言に青年がキレて詰め寄った。
「外装取られたんですよ。蕎麦屋で昼飯食ってる間に! しかもフレームの中に何か詰まらされて!」
「あ、そういう事情だったの。ゴメンゴメン、ってか顔近づけてないで警察行ったら?」
 青年の迫力に圧倒された渡良瀬の言葉に、青年の動きが止まる。そして、呟いた。
「……いえ、警察じゃ生温いです」
「へ?」
 青年は渡良瀬から顔を話し、あらぬ方向を向いて力説した。
「機械だって生きてるんです! 誰かの役に立つために生まれて、精一杯性能を発揮しながら生きてるんです! それをこんな風に……器物破損? 冗談じゃない!
 俺が絶対捕まえて、償わせてやる!」
「は、はあ」
 気圧される渡良瀬とは対照的に、石動がそこで至極冷静に指摘した。
「ところで鷲児。お前、仕事はいいのか? 昼休みもう終わるぞ」
「あ、いけね! えーと……バイク、今預かっててもらえますか?」
「ああ。後で取りに来い」
「そんじゃ、失礼しましたおやっさん!」
 鷲児と呼ばれた青年が慌てて駆け出していく。渡良瀬はそれを見送って肩をすくめた。
「……犯人挙げたら火にくべそうな勢いだな」
「そう思うなら手伝ってやってくれ」
 外装のないバイクを奥へ運び、石動が言う。渡良瀬は軽く驚いた。
「おやま、珍しく他人に甘いじゃないの、おやっさん」
「お前とは入れ替わりだったが、な。あいつは俺の弟子みたいなもんだ」
 石動はそう言って、どこか懐かしむような表情を浮かべた。
「料金はおやっさん持ちで」
 すぐにその表情は引っ込んだ。

 相手が“何”なのかすら分からない、雲を掴むような状態である。典子は車を徐行させつつ周囲に目を光らせていた。
 もちろん彼女だけが警戒をしているわけではない。後部座席では部下の杁中が変身した即応外甲が、センサーを働かせている。
 ジャーマンシェパードをモチーフにした三友重工製汎用型即応外甲“ガンドッグ”だ。
 現場で検出された物質のデータを記憶し、僚機とデータリンクさせつつ犯人の足跡を追うことが出来る設計になっている。
「班長」
「見つかった?」
 ガンドッグ杁中の声に典子が問う。ガンドッグ杁中は首を振った。
「いえ。この構図何とかなりませんかね。やたら恥ずいんですが」
 覆面パトカーの後部座席に座る即応外甲。確かに格好のつかない状況ではある。
「我慢して。IDAにはそのセンサー乗せられなかったのよ。市民の安全のためだと思って」
「いやもう、せめて俺外歩きますよ。外歩いて探しますから」
「ダメよ。犯人がどこで見ているか分からないわ。正体も出方も掴んでないんだから」
「卵から生まれた生き物の目より、こっち指差して笑うガキの目の方が万倍痛いんスけど。殴ってきていいっすか?」
「やめてお願い。それに、怪生物を操っている存在だっている可能性があるわ」
 実りのない会話を交わしつつ、典子はカーナビゲーションシステムに従ってハンドルを切る。
 副班長の赤池には、被害者が着用していたスカラベバックルの解析の手配と上流側の調査指揮を任せてある。
 こうしている間にもどこかで被害が出ているかもしれない。そんな危機感が典子の心を焦がす。
「はーんちょー」
 しかし杁中の声は緊張感がなかった。典子は温度を下げて訊き返す。
「今度は何?」
「1時方向500m。例の反応です」
「……それを早く言いなさい! 全車に連絡、富井市東垂水3丁目に反応アリ。速やかに急行!」
 典子は部下たちに指示を出しつつ、IDA-7を急ターンさせた。

( 2006年04月18日 (火) 22時20分 )

- RES -


[128]Masker's ABC file.01-6 - 投稿者:壱伏 充

 語るべき事を語り終えて、篠原はソファに座り込んだ。
 下手な研究発表よりも緊張した瞬間を過ぎ、今も精神的には針のむしろだが、心はどこか清々しかった。
 偽らないとは、こういうことか。
 後は審判を待つだけだ。
 またしばしの時が過ぎ――最初に口を開いたのは明菜だった。
「私は……実を言うと、薄々何かおかしいな、とは思ってました。
 父が本当の父じゃないんじゃないかって。妹が一人いるんですけど――先生には一度話しましたよね――妹に比べて、私に対する態度がよそよそしい時もあって。
 昭彦さ……あのヒトとの結婚もあっさり許してくれて。母や妹に比べて関心が薄いっていうか。
 もちろん、色々不自由せずに済んだことは感謝してるんですけど……だから先生からお話を聞かされたときには、正直ビックリしたんですけど、ああそうだったんだって」
 戸惑いを口にしながらも、明菜の表情はどこかさっぱりしていた。

 渡良瀬が埃を払いながら体を起こすと、四体の即応外甲がのた打ち回っては派手に壁や仲間の体にぶつかっていた。
 そのうちの一人が嶋田の足に当たり、踏みつけられる。渡良瀬は肩をすくめた。
「一匹でかいのが生き残った、か」
「目と耳塞いで口開けて、姿勢は低く。ちょうど本に載ってたんでな」
 嶋田は言って周囲を見回した。
「スタングレネード。光と音で制圧する非致死性兵器、だったか。えげつないマネしてくれるじゃねぇか」
「そんな褒めんな、照れるぜ」
「だが解せねぇ。最初から使えばもっと楽だろ?」
「そりゃあーた」
 渡良瀬は方目を瞑る。
「効かないだろ、ベストコンディションのところを潰さないと。お前らは一人のオジサンに完全敗北したんですってな」
「じゃあチームのアタマとして、負けるわけにゃ行かんなァ」
 嶋田は歯をむき出しにすると、自分のバックルを巻いた。中央のボタンを押し込むと、バックルから再生された強化スーツが放射され、体を覆い隠していく。
 丸みのある赤褐色の装甲と、短くてほとんどヘルメットに埋没したアンテナ。変身を遂げた嶋田の姿は、比較的メジャーな機種だった。
「三友のスカラベか。お前らスカイウォーカーのチームじゃなかったのかよ」
 渡良瀬は機種名を言い当てた。作業用重機として工事現場でよく見かける。
 スカラベは肩を揺らした。
「こいつらを抑えるにゃ、このくらい必要でな」
 そして、床を踏みしめる。スカラベの足元に亀裂が広がった。
「そぉら――行くぜェ!」
「!?」
 スカラベの頭部が渡良瀬に触れんばかりに接近する――渡良瀬の予測を超えるスピードだった。

「納得はしたけど、それでもどうしていいか分からなくって……今日もここに来るかどうするか、最後まで迷いました」
「すまなかった。君や、周りの人間を傷つけるのが怖くてね。いや、自分が悪者になるのが嫌だった……」
 頭を下げる篠原に、しかし明菜は笑いかけた。
「いいんです。先生が奥様を気にかけてらっしゃるのは、知っていましたから」
「そう……なの?」
 眞由美が聞き返す。明菜は頷いた。
「ええ。いつも苦労をかけているけど、おわびに何をプレゼントしたらいいか、だなんて」
「いや、えっと。その話題はまたいつかね?」
 別の意味で居たたまれなくなって、篠原は明菜の話を遮った。

 コートの男が銃を向ける。噴き出した塗料を腕で払い、スカラベは男の蹴りを受け止め、首に手をかけて壁に叩きつけた。
「ぐぁ……ッチィ!」
「無駄だ!」
 銃を向ける男の腕を掴み、壁に打ち付ける。男はたまらず銃を取り落とした。スカラベは男の表情を覗き込み、仮面の奥でにやりと笑った。
「アテが外れたなぁ。スカラベだからって、鈍足たぁ限らないんだぜ?」
 通常スカラベは、パワーと頑丈さが売りで、機動性は低いものと認識されているが、嶋田は市販パーツで速力を上げて弱点を補ったのだ。
「くそ……そういうとこばっか頭回んのな……っあああ!?」
 もがく男をさらに強く壁に押し付ける。スカラベのパワーなら簡単に潰せるだろう。
「形勢逆転だな。言えよオッサン。本当の目的は何だ?」
 スカラベは仮面の奥で笑みを崩すことなく問うた。
 塗料にスタングレネード。用意はいいが、たったそれだけの装備で自分たちに挑むからには、それなりの裏があるはずだ。
 男が苦しげに聞き返してくる。
「本当の……目的だ?」
「トボけても無駄だぜ。スカラベの馬力は落としてねぇ。テメーなんざ5秒でミンチだ」
「本当の目的ね……っぐう!」
 余裕を崩さない男を、締め上げて脅しつける。スカラベは容赦するつもりなど無い。
「言えよ。誰かに頼まれたのか? 恨みでもあったのか? 言わないんならそれでも構わないぜ?」
「ほ……」
 男が何か、声を漏らす。言う気になったか。
「ほ? ほ、がどうした?」
 重ねて問うスカラベ。男の右手と喉笛に掛けた手に目をやって、男は不意に――凄みのある笑みを浮かべた。
「!」
 スカラベの背に冷たいものが走る。男は静かに言った。
「骨、軋んでんだよタコ助。分かんねェかコラ」

「でも、どうしたらいいか分からなかった私に、探偵さんが言ってくれたんです。その、さっき会ったんですけど」
 明菜は篠原夫妻に向かって、その探偵のマネをしてみた。
「『そんな難しく考えるこたぁねーよ。どっちの夫婦も仲良くやってて平和なんだからよ。
二人一組だった優しい父ちゃん母ちゃんが、四人二組に増えた。そんだけだろ?』……って。
 誇れる親が増えたなら、気にせず胸を張っていればいい。そうしたら悩むことなんかない……そう教えてもらいました。
 私の父は、やっぱり私の父なんですけど……先生のお父さんがいても、いいかなって」

「――テメェらにゃ分からねぇだろ。仮面被って、殴る痛みも殴られる痛みも目ぇ逸らして。極薄人工筋肉の手袋越しじゃ、自分のしたことなんか分かりゃしねーんだ。
 そのクセ何か? 変身しなきゃ男も満足にボコれねぇ、女も満足にコマせねぇ。恥ずかしい生き物だなぁオイ」
 渡良瀬は言葉を紡ぎつつ、タイミングを待った。
「言ったはずだぜ。俺は――テメェらみたいな“ライダー様”が大っ嫌いなだけさァ!」
「ほぉう……言いたいこたぁそれだけか!」
 激昂したスカラベが、渡良瀬の喉に掛けた力を強める。
(そら来たか――――!)
 そう――このタイミングを待っていたのだ。痛みと苦しみを堪え、渡良瀬は全身の筋肉に指令を発する。
「うぬ……がああアアッ!」
 スカラベの腕力に体を預け、渡良瀬の足がスカラベの体を駆け上がる。
 そして長い脚の先、安全靴に覆われた爪先がスカラベの顎を捉え――
「――っっ、どりゃあああああああっ!!」
「!!??」
 一気に直上へと、蹴り上げた!

 眞由美がポツリと呟いた。
「そういうこと、ね。分かったわ明菜さん」
「お前……」
 篠原が意外そうな目で見ると、眞由美が顔を背ける。
「私はただ、あなたが浮気していないか心配だっただけよ。子供に会うなとは言ってないわ。
 それを私に言わなかった事は、怒ってますけどねっ。
 それに、ここで何だかんだ言った所で私が悪者じゃないですか。……あなたが愛してくれているのは私でしょ?」
 篠原は素直に詫びて首を垂れた。
「ああ、もちろんだ……すまないな。私はお前の事を裏切って」
「あら。バカな事を言うものじゃないわ。あなた、いつ私を裏切ったって言うの?」
 あっさりと言い放つと、眞由美は明菜に微笑みかけた。
「また、遊びにいらしてね。私はいつでも歓迎するから」
「……はいっ」
 明菜がはっきりと頷く。
 こうして、親子としての初めての対面は、つつがなく終わりを告げた。

 即応外甲の頭部装甲は、大抵が他のヘルメット類よりも装着者の頭部にフィットしているものである。
 故に、顎に衝撃を受けると首を支店として装着者の頭がシェイクされ、脳震盪を起こす。これが渡良瀬がコボルトの即応外甲を退けた手品の種だ。
「ったく、オッサンオッサン言いやがってからに。俺はまだ30前だっつの」
 渡良瀬はタバコに火をつけて、壁にもたれた。一休みしたらもう一仕事――お礼参りなど出来なくなるくらいの、“仕上げ”作業が待っている。

 一週間後。渡良瀬のもとに一通の手紙が届いた。
 石動家の食卓で読みながら、渡良瀬は便箋をひらひらさせる。
「つーことで、後の事は信頼と実績のあるプロに任せてきたから万事オッケーって寸法よ」
 得意気な渡良瀬に、石動が半眼で睨んだ。
「そりゃ結構だが、お前にしては上手く行き過ぎてないか、今回のことは」
「その辺はアレだよおやっさん、父と娘の絆が生んだ奇跡とか言って片付けときゃ」
「適当だな」

 同封された写真に写っていたのは、いつもの公園で開催中の“発明おじいちゃんの科学手品ショー”だ。

 石動は小さくため息をついた。
「で、その娘の今の両親とはどうなっているんだ」
「知らないよそこまでは。おやっさん、俺ぁね。当事者の自己判断って物を重視してんの」
 渡良瀬が写真を差し出す。石動は一刀両断にした。
「無責任なだけだろう」

 ただし、写っているショーはいつもとは少し趣が違う。

「まあね。誰も子供じゃねぇんだ。だから、上手くやれるんじゃね?」
「そんな心構えで賭けに出るな」
 石動に怒られて、渡良瀬は肩をすくめて写真を指差した。
「終わった事は気にしない。ほら、見てみなって」

 老人の両隣にアシスタントがいて、不慣れながらも老人を手伝っているのだ。
 そう、篠原政重の妻と、娘だ。

「いい笑顔してんじゃねぇか。みんなが笑ってりゃ万事オーライだって」

 イレギュラーな家族関係が、これからの篠原たちの未来に影を落とすのか光のみをもたらすのか、それは誰にも分からない。
 だが、篠原が一歩進み出て、彼の妻と娘がそれに歩み寄った結果としての現在なら、きっと上手くいくだろう。
「…………グッドラック」
 渡良瀬は写真をつまみ上げて呟いた。今日は、酒が美味そうだ。

――――To be continued.

次回予告
file.02“飛べ!空中大決戦”
「アルマ……変身!」

( 2006年04月16日 (日) 02時57分 )

- RES -


[127]Masker's ABC file.01-5 - 投稿者:壱伏 充

「畳んじまえ!」
『オウ!』
 リーダー格――昭彦から聞き出した情報によれば名を嶋田という。25歳――の号令を受けて、コボルトのメンバーが獲物を手に渡良瀬に殺到する。その後ろでは即応外甲を起動させるメンバーたちもいた。
「へんっ!」
 渡良瀬は迷うことなく傍らに手を伸ばし、先刻壁に打ち付けた男を引き寄せ眼前にかざす。
 鈍い音、そして衝撃。盾にした男の口からヤニで黄ばんだ歯が飛んだ。
「あ……げべ……っ」
「げ、しまっ」
「――あらよっと!」
 メリケンサックや鉄パイプで打ち据えられた男を放り出し、渡良瀬は軽やかに床を蹴って踊りかかった。

 緊張した面持ちの教え子を案内して居間に通すと、妻が強張った顔で立ち上がり無言で会釈した。教え子もまた、硬い仕種でお辞儀する。
「すでに事情は話したとおりだ」
 どちらにともなく、あるいは自分自身に再確認させるためかもしれないが、篠原が口を開く。二人ともが姿勢を正した。
「かけたまえ。紹介しよう、妻の眞由美だ」
 教え子に席を勧める。妻が真向かいに座った女性に頭を下げた。
 そして篠原は妻に向き直る。
(なりふり構わず幸せになる覚悟、できてるよな?)
 探偵の台詞が脳裏に蘇る。そうだ、もう逃げない。
 たとえそれで誰かや、自分を傷つけてしまうとしても。
 誰よりきっと自分のために。今は、それでもいいはずだ。
「こちらは園田明菜君。私の教え子で……娘だ」

 トレンチコートの裾が翻るたびに、コボルトのメンバーが打ち倒されていく。
「ッラァ!」
「っと――甘い!」
 トレンチコートの男がビデオカメラの三脚を巧みに用いて鉄パイプを捌き、左右のメンバーの首筋にそれぞれ一撃をお見舞いして無力化していく。
 なるほど、いきなり殴りこんだだけあって、なかなかの腕をしている。嶋田は冷静にその様子を見ていた。
「やるなぁ、だがここまでだ」
 嶋田が呟くと同時に、一人のタハラ発動機製即応外甲”ヴィックス”をまとった男がメンバーを押しのけコートの男に殴りかかる。
「んごっ!?」
 三脚が折れて宙を舞い、男が他の撮影機材を巻き込んで殴り倒された。

「真実を全て話すですって!?」
 昨夜、渡良瀬が告げた案に、篠原はあんぐりと口をあけた。渡良瀬は頷く。
「そうすりゃ娘さんもデートどこじゃない。まあ連中の後のことは俺にお任せを」
「いや、しかしそんなことを……探偵さん! できるはずがないでしょう!?」
 渡良瀬に思いとどまってもらうよう篠原はすがろうとするが、逆に渡良瀬は携帯電話のアンテナを突きつけた。
「あのねオッサン。お父んが娘に会って何が悪いってんだ。ガツンと言ってやんなさい、あんな男はやめとけと」
「いや、しかし、そんな今更……明菜はもう別の父親や家庭が」
「だからこそ。言っちゃ何だが多感な思春期通り越して、彼女がもう立派な大人だって、誰よりアンタが知ってるじゃねぇか」
「それは……」
 口ごもる篠原に、渡良瀬が諭してきた。
「オッサンさ。実の娘にずっと先生先生言われてきて、代替行為でこそこそ心癒してきたんだろ?」
 身も蓋もない言われようだが、事実だ。顔を曇らせる篠原に、渡良瀬は肩を叩いて笑いかけた。
「そろそろさ。アンタ、胸張って幸せになっていい頃合だ」

「……ってぇな。即応外甲で人殴ると、道交法にも引っかかんだぞ?」
 いい気になっているヴィックス――ちなみに昭彦が先日まとっていたのと同型だ――に説教しつつ渡良瀬は立ち上がった。寸前で自分から後ろに飛んだおかげで、殴られたダメージはさほどでもない。
 改めて数えるとヴィックスが3人に、三友重工製山岳用即応外甲”ウィーヴィル”二人、アレックス・コーポレーション製農耕用”早乙女”が一人。
 そのうち、ヴィックスの一人が嘲り笑った。
「正当防衛だよ、バッカじゃない?」
「つーかさ、俺たちライダーに素手で喧嘩しかけようってあたりがバカだろ」
 別の一人もそれに乗る。やがて他の者たちも囀り出した。
「今のは手加減してやったんだぜ? それでこの威力、うーんライダーってサイコー!」
「そういや昨日も変なのいたよな。じーさんがへなちょこなパンチしてきてさ。”蚊が止まったのかと思った……”って、ありゃマジであるんだな」
「あれ。もしかしてオジサン、あの頭弱いじーさんの息子か何か?」
「ああ、そっか。何しにきたかと思ったら」
「なあ、何とか言えよ。もしかして、あれ? 怒っちゃった?」
 ウィーヴィルの一人がニヤニヤ(推定)しながら渡良瀬に近づいてくる。
 渡良瀬は無造作に腕を振るう。軽い音が響き、再び嘲笑が起きた。
「うっわ痛そ。あいつライダー素手で殴ったよ」
「効くわけねーのに。なぁタカシ……タカシ?」
 不審に思った一人の声に、応えてウィーヴィルが振り返る。
「お……う?」
 ふらつき、よろめいて。タカシと呼ばれたウィーヴィルが、倒れた。
「タカシ!?」
 嘲笑が止む。嶋田も腰を浮かせる。
 渡良瀬はウィーヴィルを踏みつけ、残り6人を順に睨み付けた。
「ジイサン? いーや知らねーな。俺ぁただ、腐ったたくわんと調子ん乗った”ライダー様”がでえっきれぇなだけだ。
 ほら、どぅしたぁ? ビビってないでかかってこいや!」
「野郎!」
「……ナメやがって!」
 ヴィックスたちがいきり立ち、床を蹴る。
 渡良瀬もまた駆け出すと、コートの懐に手を伸ばした。

 篠原は改めて、全てを話した。
 前の妻とのなれ初め。娘の誕生。すれ違い。離婚。再婚。
 娘と再会した喜び。その都度感じた胸の痛み。話さなくてはいけないことがたくさんありすぎた。
 渡良瀬は懐から銃のようなものを取り出すと、床を転がってヴィックスたちをかわした。
 三つの筒を束ねたような銃身を手動で回転させる。もう一人のウィーヴィルがいち早く方向転換し、渡良瀬に駆け寄ってきた。
「銃なんか効くかバーカ!」
「知ってるよ」
 言いながら渡良瀬はトリガーを引く。バレルから迸ったのは、鮮やかな蛍光塗料だった。
「うお!?」
 ウィーヴィルがまともに塗料を顔面に浴びて視界を失う。超速乾性の塗料を拭うには専用の落とし剤が必要だ。
 渡良瀬はふらつくウィーヴィルの突進を避けて、足を引っ掛けて転ばせる。
「あらよっと!」
「はぅっ」
 仕上げに転んだウィーヴィルの頭を蹴飛ばした。残り四人。
「くそっ、妙なもん使いやがっててめえ!」
 残る四人が顔をかばいながら向かってきた。渡良瀬はあわてず騒がず銃身を切り替え、先端に鶉の卵上の弾頭をこめて頭上に撃つ。
 四方から即応外甲たちが飛び掛る。渡良瀬はその場にかがみこみ目を閉じ耳をふさいで口を開けた。
 刹那――凄まじい閃光と爆音が室内中を蹂躙した。

( 2006年04月15日 (土) 19時29分 )

- RES -


[126]Masker's ABC file.01-4 - 投稿者:壱伏 充

 日曜日、午前10時25分。
 昭彦はもう一度ブティックのショウウインドウで身だしなみを確かめて、自身に及第点を下した。
 これなら若きベンチャー企業副社長ぽく見えるだろう――実家から勘当されたフリーターではなく。
 今のチームに入って先輩に顎で使われることも多く、その分甘い汁も吸ってはきたが、今回は昭彦にとって最初の大仕事だ。
 ターゲットは資産家の若い美人。愛しい愛しい明菜嬢だ。
 偶然を装って接近し、口八丁で甘い夢物語をささやいて、恋仲になった後はベッドで教育するのを欠かさなかった。
 世間知らずな彼女を自分好みに育て上げる快感に幾度も仕事を忘れそうになった。だが、本番はこれからだ。
 仲間たちの元へ連れて行き、楽しむだけ楽しんで撮るものを撮って、彼女の両親に送りつける。失うものの大きい彼らが司法に訴え出ることはない。
 定期的に搾取し、脅す材料を増やし――秋なの親の事業に一枚噛ませてもらってもいいし、裏でこっそりビデオを流して収入を得てもいい。脅迫の材料を元手に新たに脅迫の対象を増やしてもいい――明菜一人が不幸になっては可哀想というものだ。ぜひとも友人たちにも共演してもらおう。
 膨れ上がるバラ色の未来絵図に、笑いをこらえ切れない。独り占めできないのが残念だが、文句は言うまい。
 嶋田の機嫌を損ねると、昭彦の命がない。
 待ち合わせ場所として有名な彫像が視界に入る。そこで待っているのは、ホームレス狩りでコツコツ稼いだ金でプレゼントしてやった清楚なワンピースと帽子姿のシルエット。
 昭彦は目一杯爽やかな表情を作り上げ、片手を上げた。
「やあ、待たせちゃった?」

 繁華街に建つ小さなビルの四階が、チーム”コボルト”の拠点である。
 とはいえコボルトは正式なスカイウォーカー協会に加盟したチームではなく、もっぱら”副業”のために即応外甲を利用しているだけだ。
「遅ぇな昭彦の野郎」
 ベッドを囲む撮影機材をチェックしつつ誰かが言うのを聞いて、リーダーの嶋田は本を読みながら唇を歪めた。
「女ってのは面倒臭ぇからな。気長に待ってやれ。どうせ今日が終われば、いつでも好きなときに好きなカッコで呼び出せるんだ」
 嶋田の一言で下卑た笑いが巻き起こる。チームの気合も充分だ。
 パンツ一丁に仮面をつけた男優役のメンバーがいささか寒そうではある。
 そして予定時刻を30分ほど過ぎたとき、窓から外を見張っていた一人が声を上げた。
「昭彦来ましたーっ」
「よぅし……丁重にお出迎えだテメーら」
 嶋田の号令で全員がそれぞれの準備を終える。ある者は刃物を用意し、ある者はヴィックスバックルに手をかけ、またある者はパンツのゴムを確かめる。
 嶋田も読んでいた本を椅子に置いた。
 そして――鉄扉がノックされた。
『昭彦っす。彼女連れてきました』
「おう、よく来たな。まあ入れよ」
 フレンドリーな昭彦の上司、といしての声色で嶋田が招き入れる。
 扉が開く。手はずでは昭彦が明菜を突き飛ばし、メンバーが奥に引っ張り込むことになっている。
 そして、白いワンピースがつんのめるように部屋に転がり込んできた。

「キャッフゥゥゥゥ!」
「お姉さんようこそお姉さん。はーい一名様ごあんなーい!」
「オラ足持て足!」
 三人がかりでベッドの上に運び入れ、さらには刃物版がワンピースを切り裂くべく圧し掛かる。
「動くんじゃねーぞ。キレーな顔や肌が血まみれになんぜ? もうすぐ別まみれにすっけどな!」
「あーもうガマンできねっす。いただきまーす!」
 はしゃぐプレイ役を遠巻きに見ながら、メンバーの一人が扉に近づいた。
「かっかっか、がっついてやがんなァ。どーよ、彼女が目の前でコマされちゃうシチュば!?」
「……?」
 馴れ馴れしく笑いかけたメンバーの声が剣呑な音とともに途切れる。嶋田はそちらに視線を向け、目を見開いた。
 そして異変はベッドの上でも起こっている。ひん剥いたワンピースと帽子の下から現れたのは――
「げ。こいつ女じゃねえ!」
「……昭彦だ! 顔変形してっけどコイツ昭彦だ!」
「うわ俺下脱いじゃったよ!」
 異変が、部屋を蝕む。嶋田は扉のそばに立つ――メンバーの一人の顔面を壁に叩きつけた男に問うた。
 こいつが犯人だ。
「テメー、誰だ!?」
「……へっ」
 男は鼻で笑って問いに返すと、服の肩口をつかんで脱ぎ去った。
「邪魔するぜ――殴り込みだ」
 その下から現れたのは、どうやって着込んでいたのかトレンチコートにボルサリーノ姿の、人を食ったような表情をした見知らぬ男だった。

 何とかしてくれると探偵は言ってくれた。だが篠原の不安は晴れない。
 昨夜はおとなしく家に帰り、そして今、妻とともに、自宅の居間にいる。
「あなた。いつまで持っているの、それ?」
 妻が小さく、少し無理して笑って教えてくれる。篠原は自分が電話機の子機を握り締めたままだったことに気づいた。
 こんな隠し事をする自分を、それでも心配してくれる妻に対し、後ろめたい気持ちが強くなる。
 いつも、こうして甘えてきた。だが、自分の幸せのためにはそれだけでは足りない。
 わがままを言うなら、それなりに一歩を踏み出さなくてはいけない。そして今がその瞬間なのだろう。
 無限にも、永遠にも思える時間が過ぎて、それが時計の秒針の一巡りでしかなかったことに気づいたその時。
 古めかしいチャイムが鳴った。

( 2006年04月15日 (土) 18時37分 )

- RES -


[125]Masker's ABC file.01-3 - 投稿者:壱伏 充

 モーターショップ石動。
 その食卓に陣取った渡良瀬は、事の成り行きを大家に話してため息をついた。
「んで、俺はどうしたらいいと思う、おやっさん? 奥さんに報告書出さなきゃいけないしさ」
「とりあえず人にバラす前に自分で考えろ」
 モーターショップ石動店主、石動信介のもっともな答えに渡良瀬は肩をすくめた。
「いや、考えたこたぁ考えたけどよ。このまんまほっとくのがベターなんだろけどさ」
「ならそうすればいいだろう」
「でもま、あのお父ーさんの顔見てっとなぁ……」
 石動は煮え切らない態度の店子を半眼でにらんだ。だからあえて言ってやる。
「他人のプライベートに踏み込むのが探偵の仕事でも、限度ってものがある。違うか?」
「……ま、そりゃそうなんだけどさ。あ、おかわりね千鶴ちゃん」
「というか、当たり前のようにうちで食べてますよね渡良瀬さん」
 あきれた様に行って、石動の娘、千鶴が茶碗を受け取った。渡良瀬は悪びれずに答える。
「いや、今月ピンチでさ」
「先々月からですよね」
 高校二年の娘にあっさりと返されて渡良瀬が鼻白むのを見つつ、石動はしみじみと呟いた。
「一人の父親として分からなくはないが……お互いにお互いの家族があって、物心つく前の話なら、いまさら蒸し返すことはあるまい」
「うん。それ正論。分かってるんだけどね……今何か音しなかった?」
「そうか? ……よし渡良瀬見てこい」
「鬼」
 渡良瀬が短く言い捨てて席を立ち、廊下に出た。
 千鶴がそれを見送って小声で父に聞いてくる。
「やっぱり渡良瀬さん、本当のことを奥さんや娘さんに教えてあげたいのかな?」
「あいつは欲張りだからな」
 石動は短く答える。とはいえ、渡良瀬の”欲”が向かうのは、もっぱらお節介の方向だ。
 そこへ、廊下から声が飛び込んできた。
「おいオッサン、しっかりしろ! おやっさん千鶴ちゃん、布団と救急箱!」
 渡良瀬の声が先刻とは一変して切羽詰った色を帯びる。
「待て、今行く」
 石動は顔をしかめ、お椀を置いた。
 石動父娘が、渡良瀬が店のシャッターを開けて引っ張り込んだ怪我人が件の篠原教授だと知らされたのは、篠原の頭の怪我に応急処置をした時だった。

「いやはやお恥ずかしい。すみませんなこんな姿で。名刺を頼りに来たもので」
「いえ。案外大丈夫そうで安心しました」
 目を覚ました篠原は見た目とは裏腹にはっきりとした口調で小さく頭を下げた。
 しかしその目の奥には、深い憤りを湛えた光がある。
 渡良瀬は座布団に腰を下ろした。石動が千鶴を連れて居間から出て行くのを確かめて、渡良瀬は少しライトに訊ねてみた。
「それで、わざわざ俺を訪ねてくれた理由ってのは何でがしょ。警察、今から呼んどきます?」
「それは……待ってください」
 篠原は目を伏せ言葉を濁す。
「待ちますよ。篠原さんがどうしたいか、決めるまで」
 渡良瀬は姿勢を正し、自分の胸を指差した。
「でも、俺んトコに来た以上は、俺に事情を話してください。吐き出したいことがあったから、来てくだすったんでしょう?」
「…………」
 篠原は短い逡巡の跡に、口を開いた。
「あれは渡良瀬さんと別れて、子供たちとも別れて……家路に着いた時でした」

 渡良瀬には「これが最後」といいながらも、子供たちに「また着てね」といわれては「もうこられない」とは告げられない。
 どうしたものかと思案しながら歩く篠原は、とりあえず帰宅を少しでも遅らせたくて、やや遠回りして別の公園に立ち寄った。
 マンション前の建物や道路の隙間に設けられた小規模なものとは違い、こちらは噴水や遊歩道を備えた大き目の市民公園だ。
 まだ日も沈みきっておらずさほど危険があるわけではない。すれ違う家族の光景にかつての自分たちを重ねたりしつつ、篠原はのんびりと公園を歩いていた。
 公園にはこうした憩いの場のほかにも、たとえばローラースケートやスケボーを用いてトリックを競うようなスペースもあり、篠原がたまたま迷い込んだのもそうした一区画だった。
 タハラ発動機のヴィックスをはじめとする即応外甲たちが障害物を乗り越えて、タイムやフォームを競う”スカイウォーカー”のエリアだ。
 こうした競技は夜の方が盛り上がるのか、まだ1チームしかその場にはおらず、ディスクプレーヤーから流れる音楽もさほどうるさくはない。まだまだウォーミングアップ中というところか。
 そこにいた若者たちが一瞬篠原に目を向けて、また談笑に戻る。
(おっと失礼)
 篠原は踵を返し、元の遊歩道に戻ろうとした――その時。
「で、どうだったんだよその後よ?」
「こんな時にここで遊んじゃっていいわけ、昭彦チャン?」
 下世話な調子で交わされる会話に、聞き覚えのある人名が滑り込んできた。
「いーんだよ。土曜の夜も会えねーくらい忙しいって思わせときゃ。その分明日は昼間っから、な」
 さらに聞こえてきたのは、聞き覚えのある声だ。
 そして別の声が近づいてきて昭彦と呼ばれた男にヘッドロックをかけた。
「んで、いつになったら俺たちにも紹介してくれるんだ? ん? お前主演のビデオじゃ、売れないんだからな」
「わ、分かってますよ嶋田さん。それじゃあ今度、明菜を連れてきますから、場所と機材を……」
 明菜。最愛の娘の名前。
 昭彦。娘の結婚相手の名前。
 耳から飛び込んできた情報が、篠原の頭の中で最悪の回答として結実する。
 恐る恐る振り返ると、そこにいたのは筋肉質の大柄な男にへつらって娘の恋人の声でしゃべる男と、昼間娘たちに絡んできた不良少年たち。
 気がつくと篠原は、彼らに向かって走り出していた。

「無我夢中でした。あっさり返り討ちにされて。他のチームが来たとかでそこのライダーたちに運び出されて。何とか隙を見て、大通りに出てここまで歩いてきました。
 事情を知っているのは渡良瀬さんだけでしたから」
 篠原が語り終えると、渡良瀬は組んでいた腕を解いた。
「被害届けは出さないんですか?」
 篠原は一瞬息をつまらせ、目をそらした。
「私のことはどうだっていいんです。でも今日のことで万一、私と明菜のつながりが知れたら、やつらが社会復帰したあとで標的になるのは明菜です。
 それに、もう遅いんですよ……あいつは、すでに明菜とのビデオを握っている……それだけでも!」
「でも今放っておいたら取り返しのつかないことになる……事件が起きなきゃ警察は動かないし、事件が起きたら被害者が動けない場合が多い。
 前の奥さんの再婚先、どこぞの資産家でした、っけ」
「八方……塞がりです」
 渡良瀬が言うと、篠原は頷き、左手で布団を強く握り締めた。
 渡良瀬はその様子を見て息を吐き、頭を掻いた。
「……オッサン。あんたずるいわ。俺がそれで同情するの待ってるでしょ。もしかして俺なら、誰も傷つかない裏技で何とかしてくれるって、期待して」
「……ええ」
 篠原が小さく頷いて認める。
「格好悪いですよ。分かってます。でも私にはこうするしか……」
「いるんすよね。探偵って職業に、警察とかじゃ出来ない裏技期待するヒト」
 渡良瀬は首を振ってきっぱりと立ち上がった。
 篠原が頭を下げる。
「すみません。こんな事をお願いして……忘れてください。
 警察には今から行けば間に合うでしょうし」
「――だーからそれじゃダメなんでしょうが」
 渡良瀬が言うと、篠原が顔を上げる。渡良瀬は頭を掻いた。
「だからオッサンはずるいってんですよ。そんな話聞かされて、はい分かりましたサヨナラサヨナラなんて出来ますかって。
 いいでしょう。やれる限りやってみますよ。娘さんの名誉に傷が付かない方向で」
「本当ですかっ!?」
 渡良瀬は手を打ち、踵を返した。そして首だけで振り向き、付け加える。
「そこまで体張った立派なお父ーさんの頼みだ。格安料金で承りましょ。ただし……なりふりかまわず幸せになる覚悟、できてるよな?」
「は……はい」
 不得要領ながらも頷く篠原に笑いかけ、渡良瀬は携帯電話を取り出した。
「それじゃあまずは一歩目、踏み出しておくんなさいお父ーさん」

( 2006年04月13日 (木) 19時16分 )

- RES -


[124]Masker's ABC file.01-2 - 投稿者:壱伏 充

 彼女に会った後は、いつもここに来る。ひところの時勢に比べて落ち着きと賑わいを取り戻した、この思い出の公園に。
 篠原政重は公園に足を踏み入れ、”当番”の主婦に頭を下げた。主婦も穏やかに笑って会釈する。
 4年前。ここに訪れた時には大層怪しまれたものだ。
 持ち回りで”仮面ライダー”を身に着け、弱者しか狙えない卑劣間から子供たちを守ろうとする。主婦たちからすれば当然のことなのだが、あの時の篠原はさぞや怪しかったことだろう。
 津波のように自分を押し包む衝動を持て余し、逡巡の末にこの公園にたどり着いてしまったのだ。切羽詰った表情になっていたかもしれない。
 篠原が片手を上げると、子供たちが気付いて駆け寄ってきた。
「あ、はつめいのおじーちゃん!」
「今日は”くうきでっぽう”やんないの?」
「ああごめんね。でも今日はその代わりに……」
 篠原は子供たちの前では科学実験のおじさんとして振る舞い、実際に幾つかの科学手品などを見せている。そのせいでどうやら、発明家に間違えられてもいるようだが。
 ベンチの定位置に、とりわけ活発な男の子が引っ張っていく。篠原は笑って腰掛けた。その時。
「誰ですかッ、あなたは!」
 かつて篠原が浴びせられたような鋭い声がした。見ると、先刻の主婦と誰かが言い争っている。
「いや、俺怪しいもんじゃないっすから!」
「嘘おっしゃい! うろうろして公園を覗き込んで! だいたいなんですか、この季節にコートなんて!」
 主婦がバックルのスイッチに手をかけて威嚇すると、コートの男は困ったように後退りする。
「いや、この格好は何つーか、探偵アイテムって言いますか」
『探偵?』
 訝しみ聞き返す主婦とほぼ同時に成り行きを見守っていた篠原も同じように声を上げる。
 その声が思いのほか響いてコートの男にも伝わり、コートの男と篠原の目が合う。
 男の口が「あちゃー」という形に動いたのが、やけにはっきりと見えた。

「なるほど、妻にですか」
 番人主婦の監視の下、公園の端っこの東屋で洗いざらい白状させられた渡良瀬と向かい合って、篠原は呟いた。
 渡良瀬は居心地の悪さを覚えながら頷いた。
「なら仕方ありませんな。全てをお話ししますよ……波佐本さんは公園を見ていてください」
「あら、そうですか。じゃあごゆっくり」
 篠原の頼みで番人主婦が、ほんの少し残念そうにして去っていく。
 篠原は水筒の茶を渡良瀬に進めつつ顔を綻ばせた。
「あ、ども」
「実は少しだけほっとしているんです。今まで誰にも話したことがなくて。
 彼女――明菜は私の娘なんです」
 篠原が昼に会っていた教え子の名を上げる。渡良瀬は黙って茶をすすり、篠原の告白を聞いた。

「もう23年にもなります。別れた前の妻との間に明菜が生まれてから。
 あの当時、大学で私はあるプロジェクトに従事していましてね。仕事が楽しくて仕方なくて、ついつい家庭を省みる事を忘れてしまっていた」
 懐かしさと悔いの同居した、穏やかな口調で篠原は語りだした。
「娘が病気になっても、妻が収入の足しにパートをしたいと言ってくれても、私の頭の中は仕事のことでいっぱいで、話をロクに聞いてやることも出来なかった。
 だから、それに耐えられなかったゆかり――ああ、あの子の母親の名前です――は、明菜を連れて出て行ってしまった。風の頼りで、ある資産家と再婚した事は知りましたが、それっきりで……。
 ですが4年前、明菜が私のいる大学に入学してきましてね」
「娘さんに、会って伝えたと?」
「とんでもない!」
 渡良瀬が問うと、篠原が慌てて手を振った。
「離婚したのは明菜が物心つく前ですから、私のことなんて覚えてもいません。
 あの子にとっての父親は、今のゆかりの夫なんです。今さら父親面なんて出来ませんよ。
 ただ血の繋がりの不思議って奴ですか。よく私に相談を持ちかけてくれましてね……おっと」
 東屋にボールが飛びこんできた。
「おじちゃーん、おじーちゃーん、ボールとってー!」
「これかーい! ああ、私が」
 篠原はボールを取って投げる。キャッチした子供がペコリと頭を下げてまた遊びの輪に入っていく。
「……この公園はね。昔、ゆかりと明菜と三人で来たんです。珍しく休みの取れた日に、ベビーカーを押して。
 まだ仮面ライダーなんてなくて、物騒だった時期ですから、閑散として長く居ることもなく……。
 私も上司に勧められて今の妻と再婚しましたが、子供が出来なくて。
 妻はそれでも満足しているんですが。私はこうしてここの子供たちと遊ぶことで、昔の罪滅ぼしをした気になっているんです。
 大学の縦の序列を初めて使ったのが、科学手品のタネ作りになってしまって」
 篠原は自嘲気味に言って、渡良瀬に振り返った。
「ですが、もう潮時なんでしょうね。こんあ自己満足に浸るのも」
「いや、それは……」
 かける言葉を失って、渡良瀬は手を振った。まるで自分が篠原の生きがいを奪ったみたいでますます居心地が悪い。
 その様子を見て取ったのか、篠原が言った。
「気になさらないで下さい探偵さん。それに、もうしばらくすれば何にしろ娘と会うことも出来なくなりますから、ちょうどいいんですよ」
「?」
 意味が分からず渡良瀬が首を傾げると、篠原が寂しげに笑った。
「明菜はね。もうじき結婚するんですよ。何でも、絡まれているところを度々助けてくれた人らしい。
 娘の危機に、遠巻きに見ているしか出来ない中途半端な父親の出る幕は、もうないんです」

( 2006年04月11日 (火) 01時41分 )

- RES -


[123]Masker's ABC file.01-1 - 投稿者:壱伏 充

 ――――俺はその時、確かに見た。
 “飛翔”、“獣王”、そして“刃心”――埃の向こうに揺らめく影を。
まるで俺たちをぶった切ろうとするように閃く赤い光を。
 奴らの噂は俺も知っていた。知らなきゃ業界じゃモグリ扱いされちまう。
 だから俺は思ったね。同じように即応外甲振り回したところで、連中みたいには動けない。ああ、もうこれで終わりなんだと。
 出来ることなんざ、玉砕覚悟で突っ込んでいくか、背中を向けて逃げ出すか、目をただ固く瞑ってただその時を待つか。
 突っ込んでいってもぶちのめされる。逃げ出しても追いつかれてぶちのめされる。
 その時にゃ俺も、そのっくらいは分かってた。だから俺は大人しく待つことにしたのさ。
 ……え? 怖くなかったかって? そりゃビビっちゃいたし、悔しくもあった。
 だけどな。その時意地張ってつまらない怪我なんかしたってしょうがねえだろ?
 どうせ取って食われるわけじゃねえんだ。
 なんたって奴らは、“警察”だったんだからな。
(出所直後の、ある暴力団構成員の述懐)


Masker’s ABC file.01
“これもひとつの仮面の世界(マスカー・ワールド)?”


「なぁ、ちょっと来てくれない? ちょっとそこのお店まででいいからさ」
「いやっ、はなしっ……離してください!」
 休日――昼食時の繁華街。一人の女性が腕をつかまれて声を張り上げる。
 しかし、騒がしい街中のこと。あるいは誰も関わり合いになりたくないのか、足を止めるものはいない。
 大人しい服装の女性を囲むのは、アクセサリーで無駄に飾り立てた5人ほどの少年たちだ。
「だからさ。5分でいいんだって。な? ちょっと俺たち、話を聞いて欲しいことがあってさー」
「その前に私の話も聞いてくださいっ!」
 女性のもっともな意見に耳を貸さず、少年たちは女性を囲んだまま退路を断ち、巧みに目当ての店へと誘導していく。
 その時。
「待て待て待てェッ!」
 女性と少年たちの元へ、駆けつける“人影”があった。
 走るたびに揺れる装甲。光を吸い込むつや消しブラックの合金繊維。腰にすえつけられて存在感を主張する巨大なバックル。
 もちろんのこと、そんな姿形の人間が、ただの人間であるはずがない。
 しかし、それを目撃した人々の反応には、驚きはあっても畏怖や奇矯の念はない。

 21世紀。人類の進化は、ほんの少し道を踏み外していた。

 “人影”は不良少年の一人の襟首をむんず、と掴み上げ、無造作に放り出す。
「あでっ! ……何だよテメ……え?」
 尻を強かに打った少年が闖入者を見上げて、目を丸くする。
「……うげ」

 即時対応型着装外部装甲システム、の名で総称されるそれは、ヒトの身体能力を著しく強化するものだった。
 オリンピック選手の五割増かそれ以上の走力を発揮するスピード。
 その気になれば乗用車すら持ち上げられるパワー。
 銃弾をものともしない耐久性。
 そして、質量のデータ化保存再生技術により実現した携帯性と装着時間の短縮化。

「この人に汚い手で触るな!」
「昭彦さんっ!」
 女性が表情を輝かせて、“彼”の名を呼ぶ。
 “彼”は振り返り、小さく首を傾げた。もしかするとウィンクしたのかも知れないが、それを外部から知る術はない。
 なぜなら“彼”は、顔をすっぽりと覆う仮面を着けていたのだから。
 取り囲む不良少年の一人が、一歩退いて声を掠れさせる。震える指で“彼”を指差し、苦々しく言葉を紡いだ。
「か……っ」

 初めは戦場に持ち込まれ、やがて民生用として普及し、今や軍事警察消防の分野からファッショナブルな街乗り用までヴァリエーションも多種多彩。
 こうして世界に広がった即応外甲は、最初に実用化したセプテム・グローイング社の商標から一般にこう呼ばれることとなる。

「仮面ライダー……かよっ!」

 仮面ライダー――――と。

 すごすごと去っていく不良少年たち。拍手を浴びた“仮面ライダー”が女性を芝居っ気たっぷりに抱き上げる。
 その光景を複雑そうな表情で見つめる一人の老人が踵を返して立ち去ろうとする。
 渡良瀬悟朗は歩調を合わせてその後を尾行した。

 話はその日の朝にまでさかのぼる。
探偵事務所の戸を叩くものは、大抵何かしらの厄介ごとを抱えているものだ。でなければ、当然だが探偵になど用はない。
 東京都湖凪町、モーターショップ石動二階。
 渡良瀬探偵社を訪れた女性もその例に漏れることはなかった。
「調べていただきたいのは……うちの主人なんです」
 年齢は50前後。篠原眞由美と名乗った女性が差し出した写真の男性は、どうも還暦を超えているようだった。
 渡良瀬は写真をつまみ上げる。眞由美はどこか疲れたような表情でポツリポツリと語り出した。
 夫の名前は篠原政重。塔星大学の元教授だという。
「先日退官したばかりなんですけど、最近様子が変なんです。仕事もないのに、わざわざ同じ日の同じ時間に出かけて……」
「ほう。それから?」
「……それから、と言うと?」
 訊き返す眞由美に、渡良瀬は肩をすくめた。
「いえ。ただ散歩の日課ってんでしたら俺のところには来ますまい」
「……実は、どうも……」
 言いづらそうに眞由美が打ち明けた。
「どうも、教え子の若い子と会っているみたいなんです。それもしょっちゅう」
 その声にはやりきれなさと悔しさが滲んでいた。
「退官してから、いつも土曜の12時が近くなるとそわそわして。ちょっと出てくるよ、なんて言って嬉しそうに出かけていくんです。そしたら夕方まで帰ってこなくて」
「はあ」
 生返事をして、渡良瀬は適当に頷く。眞由美はなおも続けた。
「おかしいなと思ってたら、この間主人の大学の人が教えてくれまして――ああ、私も同じ大学に勤めていた時期があって、そこで主人とも」
 当時の事を思い出したのか、懐かしむような表情を浮かべて、ふっと沈める。
「多分、主人のゼミの学生さんだろうと。その方と主人とが本当に会っているのか、どういう関係なのか……調べていただけますか?」
「ええ、もちろんです」
 渡良瀬は頷いて答えた。なるほど、夫を支え続けた妻として、裏切りに憤り何らかの決着をつけたくなる気持ちは理解できる。
 ただ、渡良瀬に出来るのは真実を突き止めることまでだ。そこから後の選択にまで関わることはできない。
「それで、依頼料の件なんですがこの場合は……」
 渡良瀬は真摯そうな表情を崩さぬまま、ファイルから料金プランの紙を取り出した。
 
 そして今、渡良瀬は篠原政重を尾行している。
 とりあえず女性との密会現場――とはいえ、ただ話しているところを遠目から確認しただけだったが――は押さえ、証拠写真も撮った。だが彼が帰宅するまでまだ時間がある。もしこれで、他の女性とも親しげな関係にあるとしたら、より依頼人の怒りと報酬を跳ね上げさせられるかもしれない。
 次いで篠原が訪れたのは、とある団地近くの小さな公園だった。

( 2006年04月10日 (月) 08時17分 )

- RES -


[76] - 投稿者:M

ど〜も、おひさしぶりです。壱伏さん仮面ライダーREM 第三話ですね。
その節は、個人的な要望(ライダーの設定)を聞いていただいてありがとうございました。
最近はここの掲示板も投稿される方々(ちよすけさん、罪さん、matthewさん、影さんetc)が減ってさびしいかぎりです。
私的には“仮面ライダージーク”が投稿されてた頃が懐かしいですね。
これからも投稿楽しみにしております。

( 2005年08月16日 (火) 21時23分 )

- RES -


[75](削除) - 投稿者:システムメッセージ

ユーザーの希望により削除を行いました。
(返信記事が存在している為、削除メッセージに変更されました。)

( 2005年08月11日 (木) 10時32分 )

- RES -

[77] - 投稿者:M

ど〜も、おひさしぶりです。オオッ!“仮面ライダーREM”第三話ですね。
その節は、個人的な要望(ライダーの設定とか)を聞いていただいてありがとうございました。
最近はここの掲示板も投稿される方々が減ってさびしいかぎりです。
私的には“仮面ライダージーク”が投稿されてた頃が懐かしいですね。
これからも投稿楽しみにしております。

( 2005年08月17日 (水) 17時55分 )


[65]第T話 - 投稿者:ヤミ

そこは赤に彩られていた
「何でこんなことに…」
惨劇の後が残る、廊下を走りながら少女は思う。
初めはただの遊びだった悪魔召喚、軽い気持ちではじめた結果が今目の前に惨状となって認識させる。
夢なら覚めて…お願い神様…助けて……
だが現実はあくまで現実であり、それ以上でもそれ以下でも無い
――――この世に不思議なことなど何一つなくて――――
――――取り返しのものなど一つもないのだから――――

あるものは腕がなく、あるものは腹と胸の境界が何処にあるか解らないほど穴があき、そして首のないもの、欠けている部位は様様、だが例外なく死んでいるという理だけは共通していた。
「いやぁ……いやぁぁぁぁぁっ!」
空には深紅の月、それは血潮が作った赤い霧か…


――――――――――――――――――第T話「The Crimson Air」



キィィィンと耳障りな音が鳴り響く、そこに怪しげな二人と、変な格好をした一人が居た。
「いやぁ、帰ってきましたねぇ…ずいぶんと久しぶりです日本の地は」
真っ黒い背広に黒いサングラス、果てはネクタイまでも真っ黒一色という長身の男が脇に居る二人に向かって言う。
「ここまで遅くなったのもアンタのせいじゃないのーッ!」」
そして黒い背広の少女の鉄拳が男の顎に綺麗入った。そしてその後ろで
「あ、あのー…この後はどうしたらいいんでしょう…」
アッパーから首絞めへのコンボを経て痙攣している男を心配そうな目で見つめているごく普通の少女らしき姿をした人物が問う。
「知らないわよ、コイツに聞いてコイツに」
ようやく首しめから開放された男はというと
「……………」
意識が無かった。
「………………脆くなったわねー、年?」
「ど、どどどどどどうするんですかーーー!?」
わたわたと慌てる少女らしき人物に黒服の少女が答える。
「はいはい、どうせ数分で目覚ますわよ、あ、あそこでご飯でも食べに行こうか、行くわよベル」
気絶した黒服の男を放っておいて二人の少女は歩き出す。
「………最近酷いですねぇ、やっぱりイラついてるんでしょうか」
そして数秒で目が覚めた男があとを付いていく。



埋葬機関13課   
        埋葬の徒 The Fools


「さてさて、やぁっと古巣に戻ってきましたねぇ」
黒い背広から神父服に着替えたジェラルドがヴァチカン本土に戻る前に残しておいた椅子に腰掛ける。
「本来なら古巣はあっちのこと言うんじゃないの?」
同じく背広からシスター服に着替えたヴァルジュリアが椅子に腰掛け、机に肘を乗せておよそ上品とは言えない姿をしている。
「ベルもこちらに来てください、椅子なら腐るほど余ってますからどうぞどうぞ」
そわそわと立ちっぱなしだったベルを見兼ねてジェラルドが椅子を勧める
「あ、じゃあ失礼します…」
カチコチになっている姿を見てヴァルジュリアが思いっきり背中をたたく。
「まーたまた、そんなに堅くならなくてもいいわよ、どうせここは馬鹿の集まりなんだから」
「は、はぁ…」
そこへ一人の黒いマントを上に羽織った胸元には赤い紐で作ったリボンの形にしている黒い首輪をした少女がやってきた。
「………誰?」
ヴァルジュリアが不信そうに見ていると少女は胸にあるポケットから手紙紙を一枚ジェラルドに渡す。
「ご苦労様でしたキーリ、確かに受け取りましたよ」
それだけ渡すと少女は自分の部屋らしい所へまた戻っていった。
「さっきの誰よ?」
不信がるヴァルジュリアにジェラルドが人差し指を上げて説明する。
「エルステル・ユスティーツア・L・キーリ、私たちと同業ですよ。埋葬機関13課のgX、それなりの古参ですね、ああ、中々強いですよ」
「ふーん…それで珍しくここにいるけど、それは?」
「それは私たちが前回ヘマやらかして本土で謹慎受けてましたから、その代わりに日本に派遣されて代理でここの管理をしていたって訳です」
何時の間にかテーブルに3つカップを並べてコーヒーを入れているジェラルドを横目で見ながらヴァルジュリアが質問を続ける。
「じゃあもう帰るんだ、あー、珍しいまともな人かも知れないしちょっと話したかったかも」
少し残念そうな顔をしてカップに口をつけると
「ああ、彼女もしばらくここに滞在するそうですよ、また活発になって万年人手足らずの13課は局所的殲滅系能力持ってる人だけを置いてこっちに送ってるそうですから、戻る必要はないからそこに居ろ、ってわけですね」
「ふーん、でも本当に多いわね、半分以上こっちに着てるじゃない」
「ま、集まる所には監査を置いて、13課に一人殉死者が出ているのなら仕方ないとは思いますけどね…君の仲間になるかもしれない人物、紹介しておいたほうがよいですか?ベル」
突然話を振られたベルがわっと我に返り
「あ、お、お願いします」
まだ緊張しているのかぎこちない答えをしながらベルが答えるのを見て元から細目の目をさらに細くしてジェラルドが答える。
「ではbフ若い順に説明しますか、まずはgUセレス・フォゾリーデ、一応の名目は我々の監査監視を対象としていること、gWは殉死してしまい、今はいないので省きますか、それでさっきのエルステルがgX、私たちの代理ということですが、そのまま共同戦線を張ることになりました」
「そしてgYが私、フルネームはヴァルジュリア・レイピット、他はいいよね?そしてgZは今頃何処にいるのかもしれないけど弓、って呼ばれてるわ、g[が…誰だっけ…」
その一言にジェラルドが吹き出してこっそりと耳打ちする。
「ツェロスですよ、ツェロス・エンディミット」
「そう、それそれ、影が薄いので有名」
何気に酷い事を無神経に述べているが、あながち外れてもいない
「影が薄い……」
「無視して続きを言いますが、g\が私ことジェラルド・リア・カーソンで」
「色ボケ神父よ、あんたもこいつの毒牙には気をつけなさい」
「……うわ、酷いですね、泣きますよ?」
「泣けば?」
「にゃー」
「……………」
一陣の風が過ぎ去った。
「それで無視して言うけど、g]、それがベル、あなたがここに配属されることになった場合の席、つまり今は空席ってこと」
「そしてg]Tがミツルギという少年ですよ、あなたと同じようなくらいですかね、まだ神父見習ですが剣系を扱う戦闘技能は飛び抜けています」
「最後はg]V、これは有名かな、首切判事、アクスト・アンドゥル…あれも一種のバケモノだわね」
適当というか適当過ぎる説明にベルはただ「は、はぁ…」と答えるしかなかった。


 本日午前十時三十五分二十八秒、この小さな島国『日本』に二つの災厄が舞い降りた。だが、その事を露知らない世界は、毎日がそうであるように静に時が流れ、時計の針は正午を指した。
 その頃、災厄は……
「もふもふ、ぐぁふっがふっ!」
 恰も獲物を捕らえた獣のように殺気を剥き出しにし、鬼気迫る表情で『宙華食堂』と刻印された皿に盛られた麻婆豆腐を、その口へと吸い込むように注ぎ込む。その吸引力はまるで、ブラックホールは大袈裟すぎるとして、ゴミを吸い込む掃除機のようだ。
「なんで、あんな真っ赤な塊を兵器で食べられるかなぁ…。美味しそうを通り越して、命張って」
 やや引きながらヴァルジュリアは、驚くような呆れるような蔑むような目で、麻婆豆腐に命を賭ける男ジェラルドを見る。別にこの光景を見るのはこれが初めてでは無いが、やはり目に映る変態は変態なのである。
「でも、はふはふ、美味しい、はふはふ、ですよ、はふはふ、コレ」
 香辛料とラー油の塊とも言えるあっつあつの豆腐を口に放りながら、落ち着きのない息づかいと言葉を器用に交わすベル。顔いっぱいに汗を浮かべているものの、彼はこの麻婆豆腐に十分適用できているようだ。だが、これがいけなかった。
「食べるか喋るかどっちかになさい、ベル。飛ばしたら、殺すから」
「は、はい……」
 全く笑みを浮かべていない口から放たれた、ヴァルジュリアの氷のように冷め切った一言に、ベルが直前まで身体全体に蓄えていた熱が一気に引いた。
「ヴォウ、ヴァフヴァフヒヴァイデヴハハイホ。ヴィファハイッヴィヒ、ヴヴェハフホ」
「喋るなつってんだろォッ!つーか、何言ってるか分からないしっ!」
「ああっ!?」
「オヴフッ!?」
 口から弾丸のように赤い塊を放射しながら、どこの星の言葉か見当も付かない謎の言語で何かを訴える麻婆豆腐に命を賭ける男の顔面に、彼がこよなく愛する麻婆豆腐が盛られた皿が直撃する。ただしそれは、ベルが先程まで食べていた物だったりするのだが。可愛そうに彼は、ヴァルジュリアの光速とも言える手捌きによって、一瞬にして昼食を失う羽目になった。
「あー…、無駄なことに体力使ったら、疲れちゃった。私、寝てくるわ。ベッド、借りるね」
 酷く理不尽な物言いと共に、他人の住居をそれとも思わない図々しさと、それを全く気にした様子もない図太い神経を疲労しつつ、ヴァルジュリアは寝室へと続くドアを開ける。
「………」
「ギャァッ!」
 開かれたドアの先には、見たことあるような無いような、いまいち記憶と照合できない男が立っていた。流石のヴァルジュリアも、この誰も予想し得ない不意打ちに、思わず悲鳴と共に飛び退く。
「やー、ツェロスじゃないですか。お久しぶりです」
「………」
 香辛料とラー油と緑野菜と豆腐まみれで判別も出来ない顔で、麻婆豆腐をこよなく愛する男が、ツェロスと呼んだその男に軽く手を振る。ツェロスはやはり無言で、手を振り替えしてみせる。麻婆豆腐を(中略)男と同じ服装から、彼もまた神父と推測されるが、ひどく暗く感情の失せたその顔は、とても神から祝福を受けているようには見えなかった。
「ア、アンタ…、いつからここに…?」
「……君達がやってくる前から…。ちなみに、この部屋にもさっき居た」
「ぜっ、全然気付かなかった…」
「ツェロスらしいですね〜」
 気配など微塵も感じさせず、背景と完全に同化していたツェロスの存在は、彼女達はおろか世界を見下ろす神でさえも気づけないだろう。それほど、彼の存在感そのものが、極めて希薄なのだ。それはもはや人間と言うよりは、ゴーストや悪魔と言った類に近いかもしれない。それを退治するのが、彼らの仕事でもあるわけだが。
「もしかして、この人が影の薄いツェロスさんですか?」
「………」
「…そんな、恨めしそうな目で見ないでよ…」
 悪気は無いのだろう。だが、しかし、本人の汚点でもあるべき影の薄い云々の部分を、意図的かと思わせるほどにはっきりと大声で口にするベル。
 ただでさえ暗いツェロスが、さらなる漆黒のオーラーを身に纏って、哀しみと避難と恨み辛み以下略の隠った視線で、ヴァルジュリアを刺す。
「それで、何故あなたがここに?」
 ベルから渡されたタオルで、やっと赤々としていた顔面をすっきりさせた麻婆豆腐と身を共にした男が、ツェロスに尋ねる。
 自分に声が掛けられたことで心の深い蟠りが解けたかのように、先程までの陰湿極まりない黒いオーラが彼の体からかき消えた。
「……セレスの頼みで君達を待っていた…」
「だったら、もっと早く声を掛ければ……はっ」
「………」
 蚊の泣くような今にも空気の中に、消え失せそうな声でボソボソと呟くように言うツェロスの言葉に、自らの意見を率直に返そうとするヴァルジュリアだが、すぐにそれを後悔した。
 再び黒のオーラを纏って自分を恨めしそうに睨む彼の様子から、何度も何度も声を掛けていたのにもかかわらず、全く気付かれなかったという凄惨な経緯が容易に推測できたからだ。
「……ごめん」
 自分に非があると大々的に認めたわけではないが、とりあえず謝ってみるヴァルジュリアだった。それほど、ツェロスの身震いするほどの寒気を与える視線が、耐え難かったからだ。
「なかなか、お茶目な人なんですね、ツェロスさんって…」
「何考えてるか、全然読めないんだけどね」
 小声で自分に話しかけるベルに、ヴァルジュリアは実に率直に物を言う。
「ところで、セレスの言いつけで私達を待っていたからには、それなりの用件があるのでしょう?」
「……」
 一人の男の、全てを引き込むかのような黒いオーラをものともせず、麻婆豆腐と身を共にした男がこの如何ともしがたい、居づらいことこの上ない空気を断ち切る。
 ツェロスは忽ち黒のオーラを消し、無言でスローに頷く。
 物事を深く考えないマイペース男もこういう時には役立つ、とヴァルジュリアは思った。
「…では、セレスの言葉をそのまま伝える…。コホン…えー、ジェラルド、ヴァルジュリア、長旅ご苦労様。せっかく帰ってきたというのに、直接で迎えることが出来ない非礼をお許しください。非礼ついでに……」
「キモイから、やめれ」
 声質まで出来る限り女性のそれに近づけ、セリスという人物を真似たと思われる極めて上品で端正な口調で、語り始めるツェロス。本人としては、軽いジョークのつもりなのかもしれないが、周囲に与える悪寒と精神的嫌悪感は相当な物であった。
 結果、程なくして表情を引きつらせたヴァルジュリアの一言の元、それは潰えた。
「…コフン。…単刀直入に言うと、最近この辺りで多発している事件の捜査に、二人も加わって欲しい、らしい…」
「事件、ですか…」
 再び声質口調を常時の物に変えたツェロスの言葉に、麻婆豆腐と(以下略)改めジェラルドの顔が険しさを帯びる。と言っても、元が元だけに、つくり自体が笑っているような顔に、変わりはない。
「帰ってきたばっかなのに〜」
「……そう言ってサボらせないために、直接がオレが来た…」
「なるほどなるほど、さすがはセレス。抜け目がありませんねぇ〜」
 姿見えぬセレスに、ジェラルドは感心したように、うんうんと何度も頷いてみせる。実際、彼女のこの配慮がなければ、そうなりかねなかったからだ。


 時が進むことを止めない限り、必然的に昼から夕方、そして夜が来る。
 街を彩る闇が深まるにつれて静寂だけが、その夜を支配する。―――ハズだった。
「ハッ…ハッ…!」
 一定の間隔で短く漏れる呼吸音。それからは、疲労と焦り、そして恐怖が感じられた。
 少女だ。高校生ほどの少女が、何かに追いかけられているかのように切迫した表情で、夜の路地を駆ける。だが、その背後には人影はおろか、犬や猫などの獣の姿さえない。ただひたすら、闇が広がっているだけだ。
「誰か…誰か、助けて…!」
 今にも号泣してもおかしくないほどに顔を歪め、瞳に涙を浮かべながら助けを求める少女。
 だが、それに応える人間は誰一人いない。周囲に人がいないわけではない。彼女を囲む塀の向こうにはいくつも人家があり、灯りも点いている所から生活の様子があるのは一目瞭然だ。それにもかかわらず、少女の元へと歩み寄る者は誰一人としていない。それどころか、関わりたくないようにカーテンを閉める家が続出していた。
「誰かぁ―っ…!」
 夜を支配していた静寂を、少女の恐怖に染まった悲痛な声が侵す。ただ、それだけだった。


「……ちょっと、自販行ってくる」
 麻婆豆腐と(以下略)もといジェラルドが『古巣』と称する古びた教会。その主用出入り口のドアの前に、ヴァルジュリアは立つ。その表情は、僅かながら苦悶に歪んでいた。心なしか、唇も紅く染まっている。
「おんやぁ?どうしたんですか、ヴァルジュリア?もう夜も遅いですよ?」
 その原因と思しき1容疑者が、脳天気な顔を部屋の扉から覗かせる。それは当然、彼女に忽ち火を注いだ。
「どうか、したぁっ!?あんたが無理矢理あの赤い塊を食べさせたりしたから、口ン中が辛くて熱くて痛くてしょうがないのよ!どうしてくれんのよっ!バカァッ!!」
 妙に説明的な愚痴を大声で叫びながら、彼女の目からは涙が溢れ出ていた。彼女の言う赤い塊とは考えるまでもなく、ジェラルドがこよなく愛するアレだろう。
「好き嫌いはいけませんよ〜。シスターたる者、何でも食べれるようにしないと……」
「あんなモン、喜んで食うのはアンタくらいよっ!」
 今まさに迷える子羊に教えを説く神父そのもののようなジェラルドの言葉を最後まで聞かず、ヴァルジュリアは飛び出すように、教会を後にする。
 だがその後も、延々と講釈を続けるジェラルドの姿があったそうな。


「自販機自販機、っと。それにしても、妙に静かね…」
 冷たい飲み物をたんまり詰め込んだ自動販売機を求めて、ヴァルジュリアは暗い路地を、一人歩く。
 まだ一般的な就寝時間には早いというのに、次々と通り過ぎる人家からは、生活の気配が全くしない。閉められたカーテンから僅かに灯りが漏れているところから、人がいることは確かなのだが。
「あ〜、気味悪…。早く、何か買って帰ろ」
 と、やや早足で、彼女がひたすら闇の中を歩いていると、
「だ、誰か…!」
「ん…?」
 前方から弱々しい声と入れ替わりに、人影が近づいてくる。闇の中、人間らしい形としか把握できなかった影は、次第にその風貌を露わにしていく。
 少女だ。自分と同じくらいの少女が、ひどく引きつり青ざめた表情で駆けてくる。
「た、助けて…!」
「ちょっ、どうしたのよ…!?」
 少女はヴァルジュリアの胸に飛びつく、というよりは突撃するようにその身に縋ると、気持ちが先行して上手く喋れないという風に、彼女に訴えかける。
 当然、ヴァルジュリアには目の前で起こっている現状が、全く把握できない。この急展開に、完全に置いて行かれている。
「アイツが…アイツが…!」
「アイツ…?」
 何か得体の知れない恐怖に怯えきった少女の様子に、ヴァルジュリアの視線は自然に、彼女の背後へと映る。
 その先に広がる闇には、血のように真っ赤な眼光が、まっすぐこちらを見据えていた…。


---------------→Alternation

( 2005年02月15日 (火) 00時26分 )

- RES -





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