[13]ざ・ふぇすてぃばる 「参上!我らがキャプテン・ナイス!」 中編 - 投稿者:イシュ
暁の邂逅 黄昏の喪失 天意 破滅の狭間に生まれしは 小さな光 祈りにこだまする星たち
The crying small light in the dark Reverberant the voice of Calling 幾たび迎える深淵 遠く近く導くさが The crying small light in the dark Reverberant the voice of Calling
歳月綾織り 全てを呑み込み しずかに流れる 次なる未来へ
The crying small light in the dark Reverberant the voice of Calling
………。
……。
…。
EDまで流れたが幕は未だに降りない。スタッフが「はいお疲れさん」と寄っても来ない。冷静に考えると意識ははっきりとしている。恐る恐る目を開けると…。
チンピラ2「イテテテテテテッ、なんだァッ、テメェはァッ!?」 よく見るとチンピラの攻撃は何者かの手によって阻まれていた。ギリギリともの凄い音を立てて鉄パイプを持ったチンピラの腕を握りしめる。 チンピラ2「アガアァァ〜〜ッ!!」 「あなたは・・!」 たまらず大声を上げて鉄パイプを落とすチンピラ。それを見計らってチンピラの腕を離す誰かさん。突然現れた正義のヒーローのその風貌を確認しようかと思った、が。 正義のヒーロー?「弱き者に暴力を振るい、その希望をも蝕む者・・・人、それを悪党と言う!」 セリフは1歩譲って正義のヒーローであると肯定しよう、しかし・・・。何処の世界にもう春先だというのに全身コートに身を包みマフラーまで巻き、追い打ちに覆面で素顔を隠す正義のヒーローがいますか? そういうと仮○ライ○ーやその類も十分怪しいが、これではまだこのチンピラ達の方が常識に満ち溢れていると言えよう。 チンピラ1「テメェッ!何者だッ!!」 正義のヒーロー?「このキャプテン・ナイス!悪党に名乗る名は無いッ!」 チンピラ3「・・・名乗ってるじゃねェか。」 キャプテン「・・ム。」 しかもバカだった。 チンピラ2「ウォ〜ッ!?腕の骨が折れた〜〜ッ!」 オーバーリアクションで腕の激痛を訴えるチンピラ。 チンピラ1「おーおー、どうしてくれるンじゃ。こいつァ、慰謝料をたんまりと貰わなアカンな。」 ここぞとばかりにキャプテン・バカもといナイスに迫るチンピラ。あれではどこかのヤッさんだ。 チンピラ2「アンギャアァ〜〜〜ッ!」 チンピラ3「おいおい、演技が過ぎるぞ。」(ヒソヒソ) チンピラ2(ブラーン) チンピラ3「ヒィッ、腕があらぬ方向に曲がっているゥッ。」 チンピラ1「テッ、テメェッ!何しやがったッ!」 予想もしなかった急展開。見かけはともかく、このキャプテンなんたらはしっかりとヒーローしているらしい。何が起きたか俺には理解できないが。 キャプテン「なに、少し強く握りしめただけだ。」 そう言いながら、怪人、じゃなかった、ヒーローは足下に転がっている掌よりやや大きい石を手に取り、そして…。
バキャッ
握ったその石を鈍い音と共に粉々に握り砕く。 チンピラ共「なんと!!!」 見事にピッタリと声をハモらせて、驚きを表現するチンピラ達。コイツ等、どっかのお笑いユニットか? チンピラ3「あ、兄貴ィ、コイツヤバイゼェ?」 チンピラ1「しかしここで逃げたら、後でシャッチョさんにどんな目に遭わされるか・・・。」 さっきまでの威勢は何処へ行ったのか、弱腰になるチンピラ達。まぁ、こんな怪人、いやいやヒーローに出くわしたら俺でも一目散に逃げるが…。 キャプテン「さあ、悪党共!観念して正義の鉄槌を受けろ!」 ……何言ってんだ、コイツ?降伏も許しませんか、この正義のヒーローは。 チンピラ1「えぇいッ!毒を喰らわば皿まで!その拳を俺に味わわせておくれぃッ!!」 チンピラ3「えぇっ!?敗北前提ッスか!?兄貴!」 玉砕魂を力に変えてキャプテンに特攻するチンピラとその部下。しかし、ページの都合でこの漢の戦いは省かせてもらおう。
ドガガガガガガガッ チンピラ共「ぶう゛ぇらっほぉうっ!!?」 「おー、飛んだ飛んだ。」 キャプテンの拳によるガトリング砲の如きラッシュを受け、豪風に飛ばされた紙のようにお空の彼方へと吹き飛ぶチンピラ達。 チンピラ2「ひーん、シャッチョさ〜ん!」 折れた腕をぶらーんぶらんさせながら今まで放置されていたチンピラは逃げていく。 「・・・・・。」 恐ろしく不格好に逃げていくチンピラの後ろ姿をしばらく見つめる。あ、こけた。 「………じゃ、俺はこれで。」 何事もなかったかのように立ち去ろうとする俺。 キャプテン「待ちたまえ。」 「……はい?」 甘かった。というか何故呼び止められているのだろう、俺は。 キャプテン「この辺りは『シザースブレイン』の息の掛かったブロックだ。1人で出歩くのは止した方がいい。」 「ハ?シザースブレイン…?」 なんちゅーネーミングじゃ。マフィアの一組織でももっとマシな名前を付けるぞ。 キャプテン「ほれ、あそこに大きなビルが見えるだろう。」 キャプテンの指さした方向を向く。 犬「きゃんきゃん。」 「……犬?」 キャプテン「…もっと上だ。」 視点を更に上に上げる。 鳶「ピ〜ヒョロ〜」 「鳶だな。」 キャプテン「…もっと下だ。」 犬「きゃんきゃん。」 「……バカにしているのか?」 キャプテン「君に言われたくないな。」 真顔(だと思う)で返された。 「どれどれ…。」 埒が明かないので、もっと下でももっと上でもない中間に視点を置いた。視点の真正面に飛び込んできたのは、今俺がいるこの寂れた街を見下ろす巨大なビルだった。いくつかのビルの集合体であるそれは一つのタワーとも呼べる。 キャプテン「あれがシザースブレインの本拠に当たるビルだ。表向きは日本の63%を占める巨大企業だ。」 微妙な数字だった。 キャプテン「しかし裏ではさっきのような輩共を使って悪行の限りを尽くす悪党の総本山だ。」 心なしか燃えているな、キャプテン。 「わかった、アンタは頑張ってその悪党共を根絶してくれ。じゃ、俺はこれで。」 俺はすかさず立ち去ろうとする。これ以上関わってはダメだ。ビンビンに感じるぜ。しかし…。 キャプテン「まぁ、待ちたまえ。」
ムンズッ
去りゆく俺の襟を豪快に掴むキャプテン。 「何か御用でしょうか?」 石をも握り砕く握力だ。抵抗しても血を見るだけだろう。 キャプテン「うむ、栄える悪党があるならば、当然それに立ち向かう正義の軍団も存在する…。それが…。」
だだだだだだだだっ キャプテンに掴まれていた上着をパージし、俺はこの男の視界から離脱するために一目散にダッシュした。何処を走っていようが、この先に何があろうが構わない! 今は何が何でもこの男の居ない所へ!この男の目の届かないところへ!この男の気配が無い所へ!走れ俺!駆け抜ける嵐のように!
そしてこの先の角を曲がる。 キャプテン「満足したか?」 唐突に俺の前方に沸いて出てくる恐怖の対象。…わかっていたさ、こんなオチだってのは。 キャプテン「いやいや、君に取り付けた発信器が思いの外役に立った。」 「いつの間に付けやがった!?」 心当たりはまるでない。唯一この男と接触した際に取り付けられそうな上着は律儀にこの男が未だに掴んでいる。 キャプテン「それは私がキャプテン・ナイスだからだッ!!」 このバカに常識的解答を求めた俺がさらにバカだった。 キャプテン「まぁ、それはそこに置いといて。ああ…すまないが、ちょっとそこに置いといてくれまいか。」 通行人「はぁ・・・。」 何も収まっていない両手を通りすがりの通行人に差し出すキャプテン。困りながらもキャプテンから何かを受け取り、適当なところへ置いて去る通行人。どうやら俺には見えていないだけらしい。そう思っておこう。 キャプテン「さて、さっきの続きだが…栄える悪党があるならば、当然それに立ち向かう正義の軍団も存在する…。それが…。」 律儀に先ほどの言葉を繰り返すキャプテン。録音再生でもしてるかのように一寸の狂いもない発音だった。 キャプテン「……」 ホントに録音再生だった。再生が終わるとキャプテンはおもむろにテープレコーダーを懐に仕舞う。懐の件はもう既に慣れた。 キャプテン「善人社だ」 唐突に己が口で喋るキャプテン。先ほどの続きのつもりなのだろう。
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2004年08月28日 (土) 18時51分 )
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- RES -
[14] - 投稿者:イシュ
挿入歌「天意悠久」 作曲編曲:磯江俊道 作詞:江幡 育子 歌:いとうかなこ
ただ単にEDな曲を当てただけなので、本編との繋がりとはまるでありません。以上。
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MAIL
2004年08月28日 (土) 18時55分 )
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