[11]ざ・ふぇすてぃばる 「我、覚醒セリ」後編 - 投稿者:イシュ
「むぅ、揉めるほどの大きさではないが形はいい・・・こりゃ今後の発育が楽しみだ。」 せっかくなので視界に飛び込んできた夢の詰まった卵をマジマジと鑑賞してみる。 金髪ロリ「あの・・・ちょっと・・。」 ヤバイ、見れば見るほど美味しく見えてくる。野生の本能を抑えろ、俺!このままではあの人外鬼畜(※認めたくないが親父のことだ)と同種と認定されてしまうぞ! 金髪ロリ「もしもし・・?」 「ハッ・・!」 男の葛藤と格闘中の俺を現実へと強制送還する声。やっと夢の詰まった小さな卵に釘付けだった俺の視点が初めて上昇する。 金髪ロリ「・・・・。」 「・・・・。」 俺の視点に入ったのは顔を赤く染めて目元にはじわりと涙まで一粒の涙まで浮かべている先ほどの金髪ロリが全身を振るわせて立っていた。 「えっと・・・何故そこに?」 金髪ロリ「・・・その言葉、そのまま返す。」 俺達が互いを威嚇して(ということにしよう)身動き取れない状況の中、ギシギシと床を轟かせ(少々行きすぎた表現)あの医者が登場。 佐伯「言い忘れていたが、お前の隣の部屋には私の娘(仮)がいるから、気を付けてな。」 コノ野郎(仮)って何だ、(仮)って。否、それよりも・・。 「オメェ、狙ったな?狙ったろ?正直に言えば、ゴろしデやるガんな!」 佐伯「何のことだ?」 「クソッ、俺のピュアなハートを傷つけた代償は高くつくぜ!」 この大敵を前にジャングルで親父に叩き込まれた虐殺拳法窮極武葬「魅亡御呂死」の構えをとる。差し違える覚悟もある。それだけコイツの罪は許し難い。 佐伯「ところで、夕飯の準備が出来たが。」 「マジ?行く行く!」 魔のキーワードの前に、俺の牙はあっさりもがれた(0.2秒)
しかし…。
「なんディスか、これは?」 食卓に並んでいるのはホカホカと湯気を立てる日珍カップヌードル(地獄味) 佐伯「カップ麺を見るのは初めてか?」 「ちげェよっ、ボケ!」 この男を相手に一瞬でも心を許した自分が憎い。 「ヴハ−ッ!しかも辛ッ!」 赤々と染まった麺に、ラー油、ねりわさび、黒こしょう、七味唐辛子、マスタードect…が考えなしにぶちこまれたスープに美味さなど皆無だ。「辛けりゃいいだろう」という知能の欠けた制作者側の思惑がひしひしと伝わってくる。 あまりの刺激の強さに必殺極技「バーニングファイヤー」を覚えてしまった。 金髪ロリ「ズズズ・・・。」 「そこっ!当てつけみてーに幸せそうに食ってんじゃねぇっ!」 どういう味覚をしてるんだ、コイツハ。さっきのささやかな仕返しのつもりか? 佐伯「むぅ、やはり失敗だったか。新製品は信用できんな。」(ゴソゴソ) さりげなく自分の分の日珍カップヌードル(地獄味)を俺の方へ退け、懐からシーフード味を取り出す医者。 「ちょっと待てや、そこのクサレ医者。」 佐伯「残さず食えよ。」 何て事だ、まるで会話が絡み合わない。ATフィールドが肉眼でも確認で来るくらい強力なのが張られている。 「・・・ズズズ。」 戦力の衰えを感じて涙を呑んで前戦を退く俺は、この医者への復讐を考慮しつつ日珍カップヌードル(地獄味)をすする。嗚呼、この無意味に舌を刺激する香辛料の塊が次々と俺の脳裏に浮かんだ復讐計画を侵していく。 いかん、目の前が白くなってきた。う・・・意識が・・・。
金髪ロリ「・・・動かなくなったね。」 佐伯「その内復活するだろう。ほっとけほっとけ。」 くそ・・・こんな奴が人命を救う仕事に就いているとは、腐った世の中だ。そして人を棒で突くな、小娘。 金髪ロリ「あ、動いた。」 佐伯「なんだ、もう復活したのか。ゴキブリ並の生命力とはよく言ったモノだな。」 「ざけんなっ、コノ野郎!」
スチャッ
猛然と立ち上がる俺の喉に何やら冷たく尖った物が触れた。 佐伯「佐伯先生、だろ・・?」 眼鏡を光らせて手に持った医者の専用装備・メスを俺の喉先に突きつける医者。コイツ、マジだ。 「や、やめましょうよ・・・こういう事に使うモンじゃないでしょ?佐伯先生。」 このサイコドクターを前に俺のテンションは一気に檄落する。しかし、俺の紙のように薄っぺらなプライドと神から授かった命とでは天秤に掛ける必要もない。 人間、引き際が肝心だ。 佐伯「それでいい。それと・・・。」 満足気に物騒なブツを懐に仕舞うと、またそこから今度は一枚の紙を取り出す。隣の金髪ロリといい、コイツ等の懐は四○元○ケットか? 佐伯「この書類にサインしろ 。」 聞きましたか、奥さん?しろですよ?命令形ですよ?やんなっちゃいますね。 「どれどれ。」 差し出された書類を手に取る。 「ヴッ!」 その檄文とも言える無いように思わず吹いてしまう俺。
契約書
私は下記の条件を快く受け入れ、この家の一員になることを誓います
1.先生の物は先生の物。私の物も先生の物。この家における私の所有権も先生の物。
2.自分の生活費は自分の手と足と頭で稼ぎます。先生の手は煩わせません。
3.私は先生の犬です下僕です道具です。
以上の条件を受けるなら該当するいずれかにマークせよ。
YES
「・・・・・・。」
ビリビリビリビリッ
俺はこの人権を完全否定した契約書、否、怪文書を徹底的に引き裂く。しかも拒否権は無しかよ! 佐伯「これが呑めないなら、帰れ。」 「クッ、卑怯な・・!受けるしかないのか・・?」 金髪ロリ「・・・てか、なんでそこまでされて出ていかないの?」 「そんな自殺行為が出来るかッ!」 今まで背景と同化していた金髪ロリの提案を完膚無きまでに蹴り倒す俺。一文無しの俺がこの大都会に1人身を置くなど怖くても考えたくもない。やはり後ろ盾は必要だ。 「あの、これ何とかなりません?」 散り散りになった契約書(だった物)の一部を手に、文書の改訂を申し出る。 佐伯「フフン、君の態度によっては考えてやらなくてもいい。」 クソッ、この医者め・・完全に見下してやがる。しかし、ここで逆らったらどんな目に遭わせられるかわかったものではない。 俺の脳が警告音を鳴らしてるぜ。 「せめて人間として最低限の扱いをしてくだせー。」 紙のプライドを灰にして、俺は土下座をする。 佐伯「そこまでされると、考慮せざるを得ないか・・・私とて鬼ではない。」 十分鬼ですよ、アンタ。
そして悪戦苦闘すること数時間、俺はやっとこの家の一員として認められた。代償として家事一切を任せられるが…。クソ、結局はこうなるんかい。 「あー・・・疲れた。死ぬ。」 その後も俺は洗濯、掃除等々を強制的にさせられ、心身ボロボロでやっと、相変わらず何もない部屋の床に寝っ転がる。時計はもう夜の10時を指している。
コンコン
「んー・・?」 この家の犬であるこの俺(自虐発現)に誰が何の用だ?傷ついた体を起こし、ドアを開ける。 ???「・・・・・。」 「・・・・?」 俺の目の前に待っていたのは、宙に浮いた毛布と枕だった。 「これが噂のポルターガイストってやつか。」 金髪「・・・布団持ってきたんだけど。」 布団の横から金髪ロリがひょこっと顔を出す。笑える構図だが、ここはこらえねば。 「そりゃどうも・・・。」 そのちっこくて華奢な身体とは裏腹に、金髪ロリは平然と、自分の身体を包み込みそうな布団を持っている。 「・・・重くない?」 金髪ロリ「ん、平気。」 ハッタリではないようだ。
「・・そういえばさ。」 金髪ロリ「?」 受け取った布団を床に敷きながら口を開く俺を、金髪ロリは入り口で突っ立ったままきょとんと眺める。 「名前、まだ訊いてなかったような・・?」 金髪ロリ「・・・そだね。」 「・・・・・・。」 金髪ロリ「・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・教えてくんないの?」 金髪ロリ「・・・さっきの事を謝るなら、教えてあげるけど。」 「さっきの?」 はて、覚えがない。 金髪ロリ「・・・私の着替え、見たでしょ?」 「あ、あー・・・。」 つーかまだ根に持ってたんかい。しかし、自己とはいえ男の方が非を押しつけられるのは、何故か古来よりの異性同士の関係だ。ここは謝っておこう。 「ゴメンナサイ、ワタシガワルゥゴザンシタ。これでいいか?」 金髪ロリ「・・・・なんか勘に障るけど、ま、いいか。」 そういうと金髪ロリはバックターンする。 「うぉいっ!」 金髪ロリ「クスッ・・・私はレイだよ。じゃ、おやすみ。」 甘い笑みを浮かべ、金髪ロリ改めレイは隣の自分の部屋へと去っていた、迂闊にもドキンとしてしまった。 俺はこの身体の中に確実に流れるあの鬼畜外道の血に恐怖した。俺も将来あんな人間になるのかと思うと身震いまでする。 「ガタガタブルブル……寝よう。」 存在すらまだ未設定の姉さん、いきなりこんな家に住むことになって僕は不安です。無事、成人式を迎えることが出来るのでしょうか?(現在19歳) それ以前に、明日の夕日は見れるんでしょうか?教えてください、姉さん。
続く
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2004年08月22日 (日) 04時37分 )
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