[60]仮面ライダー罪[クライム]初犯・第三罪 - 投稿者:エクスチェンジャー
不知火裕は不敵な笑みを作って、同僚に見せるのだった。 「・・で?俺に頼みたい仕事ってーのは何なのよ?大道寺ちゃん?」 裕の不真面目な問いかけに二人組みのうちの男のほう、大道寺悠は顔色一つ変えず応じた。 「先ずはこれを見てもらおう。」 大道寺は右手に持っていたファイルをデスクに載せ、裕を含めた数人を促す。 あくまでもへらへらした態度を崩さず、裕はファイルの中の資料を広げる。 中には相当な量の紙の束が見える。 薄っぺらなファイルに容量以上のプリントを挟み込むのは大道寺の悪い癖だ。 面倒になったのか、ファイルの残りを部下に任せ、裕は内容に目を通して始めた。 彼の目は活字を次々と弾いていき、だんだんと事件の様相を彼は掴んでいった。 「殺人事件・・か・・しかもわざわざ俺を呼んだってことは並みの話じゃ・・・」 あらかた読み終わり、一枚めくって次の資料に目を通した裕の口から言葉が消えた。 「・・・普通じゃないだろう?」 大道寺の言葉が酷く皮肉じみて聞こえた。 資料には事件現場を撮った写真がプリントされていた。 いや、それが殺人現場だと知覚できたのは大道寺の言葉よりも後だった。 「こいつぁ・・・ひでェ・・・」 同期の中では最も修羅場に立ち会ってきた彼にそう言わしめたのはやはりその写真であった。 公園の一角、公衆トイレの壁に、本来描かれていなかった朱色の紋様を作った夥しい量の出血の跡。 足元の草むらには何かが無数に転がっている。 ーーーああ、人の肉かーーー 四肢どころか30パーツくらいに″分断″されていた。 さらに良く見ると壁の側にも幾つかその残りが貼り付いていた。 よくよく考えれば人の手が重力に逆らってあんなところにぶら下がっていることも十分におかしい現象だったのだが、割とすんなり受け入れられたのは一種の感覚マヒに陥っていたからかもしれない。 もう資料を一枚めくってみる。 不運にも、別の角度から撮った写真が目に飛び込んできた。 さらに不運だったのは、写真の中で転がる頭蓋の目が彼を見ていたことだ。 裕は資料をデスクに静かに置いた。 「・・・不知火裕・・いきます」 彼はさっき入ってきたドアをもう一度勢いよく開けると、猛スピードである場所まで駆け出した。
「・・ご愁傷様」 大道寺は皮肉屋だ。
男子手洗い所から不気味な叫びが木霊した。 一拍おいて、さらに強烈な音が鳴り響いた。
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2005年01月14日 (金) 22時24分 )
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