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[47]仮面ライダー罪[クライム] 初犯・第二罪 - 投稿者:エクスチェンジャー

そんないつもの業務をこなした男はとぼとぼと町を流離っていた。
誰も彼もこの街で普通に暮らしている。
だが彼らのほとんどは街の裏側を知らないだろう。
暴力団の勢力争い、違法ドラッグ、売春、頭のいかれた人間達の末路。
男はそういう汚い世界を必死に焼き付けてきた
忘れたら自分は今の自分を抑えることが出来ないだろう、そして自分も汚いものになってしまうだろう事が彼には解っていた。
一番忘れてはいけない記憶がそれを許さないのだ。

「不知火さ〜〜ん!!」
男の耳に若い男、おそらく巡査だろう男の声がズカズカと入り込んできた。
男の後方から自転車に乗った警官が猛スピードで走り寄り、男の前で急停車した。
「不知火さん!もう探しましたよ〜」
若い巡査は自転車から降りると額から滴る汗をふき取った。
「・・・誰だっけおまえ?」
怪訝した目で男は巡査を見た。
「いやだなあ〜、いい加減覚えてくださいよ!」
巡査は息を整えてから背筋を伸ばして言った。
「轟衛!!不知火刑事と同じく岩波署勤続の巡査であります。」
---思い出した。最近配属になった時代錯誤の熱血野郎がいたっけな。---
男は心の中で確認した。
「で、なんか用か?」
男はいたって冷静に話しかける。
巡査、轟は一瞬硬直する。
---コイツ、何話すか忘れてやがんナ---
轟ははっとすると目を大きく見開いて叫んだ。
「携帯の電源切ってらっしゃるでしょ?不知火さん!」
轟の言葉で内ポケットの携帯を確認してみると案の定だった。
「あ・・・・」
「「あ・・・・」じゃないでしょ!署長が招集かけてるンですよ!」
---なるほど、どおりで今日はのんびりしてたわけね---
「と、とにかく一旦署に来てくださいよ!」
と息巻く轟の眼前には既に男の姿はなく、側に止めてあった自転車も消えていた。
「ってええええぇぇぇぇーーーー!!?何すかそれ!?」
哀れな新米巡査はグータラな刑事によって置いてけぼりを食らったのだった。

ものの30分ほどで男は職場、岩波署に出戻っていた。
「不知火さんどこにいたんですか?皆さん探してましたよ?」
署内を行きかう同僚達に幾度もそんな言葉を投げかけられた。
男はしれっとした表情でそんな周りの目を掻い潜り、刑事課のドアを勢い良く空けた。
その刹那、まるで爆音のような大音声が課を揺さぶった。
「不知火裕ァァァァァァ!!!!一体今まで何をしておったこのヴァカモオォォォンンン!!!!」
まるで衝撃波だった。
課長の頭の実り無い草原はむき出しになった大地を赤く輝かせていた。
他の刑事達は一様に耳を塞いで怯えていた。
それでも男だけは余裕たっぷりに課長のデスクまで歩を進めていた。
「あんまり大きな声を出すと持病の発作が再発しますよ課長?」
皮肉交じりで歩く彼に課長は苛立った。
「お前が一向に連絡をよこさんからじゃアホタレェ!」
課長の大きな拳が机を叩く。毎度同じところばかり叩くので部分的にへこんでいた。
「いや聞いてくださいよ。携帯の電源が切れちゃってまして・・朝起きたときは・・どうだったかな?」
あくまでおちょくるつもりなのか、へらへらした態度で男は切り出す。
「このゴクツブシが!刑事なら自覚をもたんか自覚を!!」
「はいはいスミマセンでした。それで用件は何でしょう?」
まるでわがままな子供を諌めるように男は話を切り替えた。
「おお、それか・・実はな・・・・」
「それは俺の口から話しておこうか?不知火?」
男が振り返るとそこには一組の男女が立っていた。
「もっともお前みたいなのに力を借りたくないんだがな・・不知火裕」
男女のうちの男は冷ややかにこちらを見ている。対する男も口元に笑みを造って見せた。
「へ・・上等・・!!」
今更ながら、不知火裕、それが男の名であった。

( 2004年10月31日 (日) 10時32分 )

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