[203]W企画ノベライズエピソード・第2話「Aの捕物帳/愛こそすべて」B - 投稿者:matthew
「調べて欲しいことぉ?」 みぎりが雨から頼みを聞いたのは、そうして先斗が零太に連れられている最中のことだった。 「君の検索エンジンなら、裏の事情にも的を絞れるはずだ。それを駆使して少々調べてもらいたいことがある」 妙に思いつめた雨の態度が気掛かりで、みぎりは不思議そうに首を傾げる。確かに彼女の持つ検索エンジンはひとつではない。様々な名義のHNを持つみぎりは、それを利用してあらゆる情報を引き出すだけのスキルも有してはいた。だから、雨の言う裏情報でもその例外にはならない。 「うん、まあいいけどぉ……ならあの探偵さんにも相談したほうがいいよね?」 「いや。事実がはっきりするまではレフトには黙っておきたいんだ」 さらにみぎりが腑に落ちなかったのは、そうして雨がパートナーの零太に秘密にしたいということだった。 先斗との間柄に置き換えれば、そんなふうに秘密にしなくてはならないことはなるべく少なくなるようにしている。パートナーとはそういう、不信感や疑いからくる秘密をなくすことが大前提にあって初めて成立すると考えているからだ。 「なんで?」 「レフトが聞いたら動揺するだろうからな……とにかく、頼む」 果たしてそれが本当に気遣いと呼べるものなのか、それはまだ分からない。しかし、みぎりにはそれをキッパリと断る理由もなかった。 「ぅゆ……わかった。それで、何を調べるの?」 渋々でも引き受けてくれる動きを見せたみぎりに雨は静かに頷く。 ずっと胸に引っかかっていたものの正体を、ようやく知ることが出来る――そんな予感に僅かに高ぶる鼓動を抑えながら、彼女はキーワードを口にした。
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2010年08月07日 (土) 09時49分 )
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