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[191]W企画ノベライズエピソード 第1話「Aの捕物帳/猿を訪ねて三千里」C - 投稿者:matthew

――先を走るエーテルを追う雨と、さらにそれを追いかける零太。猿と人間二人の追跡劇は、センター街の通りを抜けて運河沿いへと繰り広げられていく。
「ホッホッホッホッホッホッ!」
「待てこの猿ッ! 人間を舐めるなよ!」
 バナナをかじりながら器用に逃げるエーテルを、血眼で雨が追いかける。そしてそれを追いかけて零太も必に食らいつく。未だに、自分の策が成功した喜びを引きずりながら。
「雨姐さん、僕間違ってなかったよね! 正しかったよね!?」
「だから今はそんなことを言ってる場合じゃないだろうが!」
「ウキャキャッ!」
 一瞬雨が零太に気をとられた隙に、1本のバナナを食べ終えたエーテルがその皮を放り捨てる。それに気づいた雨は反射的にそれを避けて目の前の標的を睨みつける。
「えぇい、こしゃくな真似を!」
 しかし――雨の後ろにいた零太は、足元に落ちたその皮を避けることは出来なかった。うっかりその上に足を乗せてしまった零太がバランスを崩し、前のめりに転倒する。
「うぉわわぁっ!?」
 運が悪いことに、この通りは急な下り坂であった。猿もスピードを上げ、雨も続いてスピードを上げる。そんな彼女が零太の身に起こった不幸に気づくことはない。
「待てこの猿ぅぅう!!」
「ウッキャキャキャキャキャ!」
「どわああああああああああッ!!」
 どんどんスピードを上げていくエーテルと雨の追跡劇に、それでも零太は必に食らいついていった。
ただし――坂道を文字通りに、転げ落ちながら。

 やがて、エーテルはバナナをのん気に食べながら運河沿いに辿り着いたところでその足を止めた。何とか追いついた雨が息も絶え絶えに口を開く。
「ようやく、追い詰めたぞ猿……覚悟、しろ……!」
「ウキ?」
 体力をひどく消耗させられて苛立つ雨の表情など意にも介さないかのように、エーテルが小首を傾げる。その姿に雨の怒りはまもなく頂点を迎えようとしていた。
「こ、こいつ……どこまでも人間を舐めくさって……ッ!」
「……ま、待って雨姐さん……ちょっとタンマ……」
 そんな雨の隣に、ようやく追いついた零太が並び立つ。ただし坂道を転げ落ちてきた零太のダメージは非常に深刻で――服はボロボロ、ゴミにまみれた何とも惨めな姿だ。思わず雨はその惨状に数歩後退した。
「……レフト、一体何があったんだ?」
「そ、そりゃないっすよぉ……こちとら災難だったのにぃ……」
 情けない断末魔を残して、零太がへたり込む。だが残念なことにそれに対して情けをかけるような優しさは、今の雨には少しもない。依頼を受けた零太本人以上にやる気に満ち溢れた雨は、エーテルをびしっと指差して言い放った。
「さあ、懺悔の時間だ。人間を散々馬鹿にした報いは受けてもらうぞ!」

「ちょ〜っと待ったぁあ!」
 が、そんな二人の前に猿を挟んで一人の乱入者がマウンテンバイクを駆って現れた。スポーティな細身のボディスーツに身を包んだその青年は、不敵に二人を見つめたままではっきりと言い放つ。
「その猿はこの運び屋の届け物だ、大人しく引き下がってもらうぜお二人さん!」
「運び屋……先斗か!」
 マウンテンバイクを停めた青年――紅院先斗はヘルメットをハンドルに引っ掛けると、エーテルを指差してにやりと笑みを浮かべた。
 この水都には、様々な物資が流れ込んでくる。それを運搬する運び屋という稼業の中でも、彼――先斗は特に有名であった。水都のあらゆる通りを知り尽くし、その中を縦横無尽に愛車のマウンテンバイクで駆け回る彼の手腕は業界でもトップクラスに位置するのである。
 そんな彼が、零太と同じくエーテルを届け物として扱っている。雨はそこに妙な引っ掛かりを覚えた。
「たかが猿1匹にキミほどの人間が出てくるとはな。そんなにこの猿に価値があるのか?」
「モノの大小はウチには関係ないね。大事なのはそこに秘められた想い、ってやつさ」
 ドライな雨の問いかけに対して、先斗が小粋な答えを返す。年齢で言えば先斗のほうがまだ下だが、その物言いには運び屋としてのプライドが確かに見え隠れしている。雨はわずかに肩をすくめてすぐに目を吊り上げた。
「ご立派なことだ。だが……引き下がるわけには行かないな」
「っと?」
「私はともかくだが、これはレフトの依頼だ。譲れないのはこちらも同じ……だろう、レフト?」
「……へっ。まあ、そういうこと……」
 ボロボロの服についた土ぼこりを払い落としながら、零太が再び瞳に光を宿す。プライドならば、零太にも探偵としてのプライドはある。ましてやこれは彼がもっとも得意とするペット探しだ、なおのこと引き下がるわけには行かなかった。
「……悪いけど、そっちが手を引いちゃくれないかな。僕にもペット探偵の意地ってものがあるんでね」
「そうかい、そいつは残念――」
 今度は、先斗が肩をすくめる番だ。しかし彼ももちろん引き下がるわけには行かない。水都トップクラスの運び屋として、依頼を途中で投げ出すのは言語道断だ。だからこそたとえどんな手段を使っても、仕事は果たさなくてはならない。そう――どんな手段を使っても。肩にかけたバッグを開いた先斗は、そこから小さな機械を取り出して見せた。
「だったら……力ずくだな」
 選ばれた人間だけが持つそのアイテム――デュアルドライバーを。

( 2010年05月16日 (日) 21時01分 )

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