[174]鉄の森へ観光旅行 〜日常的な光景〜 - 投稿者:オックス
多いな…
それが、当機が手に持ったカタログに目を通した時に思った率直な感想だった。
カレーライスという料理の調理方法を調べ、初心者はカレー粉よりもカレールーの方が望ましいという情報を手に入れたのだが、どうやらこのカレールーはさまざまな種類があるらしい。そして、それぞれに様々な特徴があり、使用するルーによって味が大幅に変化するようだ。 更には「複数の種類のカレールーを組み合わせる事で更に美味しくなる」という未確認情報もあり、もしそれが事実であるならば、選択肢は無限大である。 情報が少ない……サンプルとして10品ほどカレールーを購入し、成分を細かく分析し比較してみるべきだろうか。
「お〜い、エイシュ」 横から『超鉄鬼A種試験型』を略した愛称で呼ばれ、思考を中断する。 当機に声を掛けたのは正式名称『高月誠』、29歳。当機達が所属する高月観光の社長であり、主に高月社長などと呼ばれている、眼鏡と悪趣味な赤ネクタイくらいしか特徴の無い男だ。 「今は一応勤務時間だろ? 机の上に堂々とスーパーのチラシを広げんでくれ」 確かに、基本的な終業時刻である19時までは後4時間32分掛かるので、勤務時間内である。 「しかもツバサに至ってはソファーで寝ているし……頼むから、もうちょっとまじめに仕事をしてくれ」 ツバサ。『超鉄鬼B種試作型』であり、当機のパートナーである存在だ。見た目は10代前半の少女で、貧相な体格と艶の無い灰色の髪と瞳が特徴である。 現在、彼女は来客用ソファーの上で、私物の枕と布団を装備し睡眠状態にある。呼吸音を出さず、また身体を微動だにしないのは彼女なりの周囲への気遣いなのだろうが、まるで人形が置かれているようにも見えた。
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2007年08月13日 (月) 00時05分 )
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