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[146]file.03-8 - 投稿者:壱伏 充

 ドラクルがクラストを押し始めた。一撃一撃に力を込めたラッシュを捌くクラストだったが、徐々に勢いに圧倒されて後退していく。
 裏腹に。
「ツェア!」
 クラストのパンチがドラクルの胸甲に吸い込まれる――しかし、ドラクルはビクともしなかった。
「効かねェんだよ!」
「ッガ!」
 ドラクルの拳が逆にクラストを打ち据え、火花を散らした。とっさにガードしたクラストだったが、衝撃を殺しきれずにたまらず一歩下がる。そこへ、
「うおおおおっ!」
「チィッ!」
 突っ込んできたドラクルの左ストレート。クラストは反射的に身をよじり、裏拳でドラクルの胸板を打つ。だが――ドラクルは退かない。
 逆にドラクルの左手が、動きを止めたクラストの肩装甲を掴んだ。
「捕まえたぜ……今度はまともに喰らっちまえ!」
 振りかぶるドラクルの右拳が“ジェットナックル”モードに変形する。
 この状況では、もう後ろへは跳び退がれない。
「やった……!」
「どうかな?」
 勝利を確信し呟くモビィに、しかしテイラは余裕を崩さない。

 ――この瞬間を待っていた。
「“ジェットぉ……”」
 改造“シュリンプ”の右腕がブースターに点火した、そのタイミングに合わせて、
「――“ナックル”!」
「っらァ!!」
 クラストはシュリンプの腕――スピードの乗り切っていない二の腕に、ピンポイントで左のカウンターパンチを打ち込んだ!
「!? ァギ……ッ!」
 自らの加速の分だけ拳を二の腕にねじ込まれて、シュリンプが苦悶の声を上げる。クラストに届かなかった腕から空しく薬莢が飛んだ。
 そのままクラストは腰を落として一歩踏み込み、
「ヌァ……ァァアラァッ!」
 左の拳を振りぬいていく。
「イ……ガァッ、アアアアアッ!」
 そして拳が肩口に突き刺さる。シュリンプは骨を軋ませて、大きく後ろへ吹き飛んだ。

「――ふぅっ」
 クラストは左拳を軽く振って、指を開いたり閉じたりした。
 大丈夫だ。手に異常はなく、殴った感触も覚えている。目を向けると、シュリンプが左腕のブースターを起動させているところだった。
「やってくれるじゃねェか。このドラクルを……俺をここまでコケにしやがって!」
「やかましいわ魔改造エビ。衣でも剥がれたか?」
 ドラクル、というのが即応外甲の銘だと初めて知ったクラストだったが、わざわざ記憶するのは面倒くさいのでやめた。
「うるせェ! てめぇは殺す、絶対にぶっ殺す!」
 吼えるシュリンプに、クラストは親切心で手を振ってやる。
「よせよ。勝負はついてる。第一俺ァ、相模さえ無事に連れて帰れればいいんだ」
「ふざけるな、まだ終わってねェ!」
 こうした手合いにはつき物だが、どうやら言うことを聞いてはくれないようだ。
 絶叫にすら等しい声を上げ、シュリンプが地を蹴る。
「しょうがねェ野郎だ……」
 クラストは右手の親指、人差し指、中指をそろえ、低く重心を落とした。
 そして応えるように、クラストもまた駆け出す。

 ドラクル――トガは、ただ目の前の敵を倒すことだけを考えていた。
 右腕はもうしばらく使えそうにない。即応外甲ではなく、生身の体が悲鳴を上げている。だが、自分にはまだ幻の左が残っている。
 たとえライダーそのものが無事でも、敵の中の人間までは“ジェットナックル”の直撃に耐えられまい。
 最後に笑うのは俺だ。いつもそうやって力で相手をねじ伏せ、君臨してきた。
 相模を抱き込み、最強のライダーギャングを作り上げ、やがては湖凪町だけではなく、関東制覇をも成し遂げてみせる――
「うぉるぁぁぁぁぁっ!」
 左腕を振りかぶる。しかしその瞬間、迷いがトガの心に差し込んだ。
 ――本当に勝てるのか?
 それは先刻も心に兆した問い。ベーススーツがリフォームされたことで新たに生まれた違和感と、そこから生じた猜疑心。
 ――突然壊れたりしないよな?
 疑念はやがてトガの内で、消えないシミとなって広がりだす。それを振り払うように、トガは全力の拳を突き出した。
「“ジェットナ…………”ッ!!?」
 しかし最後まで叫びきるよりも早く。
 クラストはドラクルのリーチの内側にいた。
「――でィやァァッ!」
 クラストの指がドラクルの鳩尾に突き刺さる。
 ――バカめ。ドラクルの装甲は生半可な衝撃では……!
 心中で勝ち誇る声が、止まる。クラストの指はドラクルの認識を裏切って、装甲に亀裂を広げ――ついに、貫いた!
「ぐぼっ!?」
 全身を貫く衝撃に、トガの目玉がでんぐり返り、意識が遠のく。
(まさか、さっきからずっとこの一点だけを狙って……)
 次の瞬間トガの意識を引き戻したのは、胃からこみ上げてくる熱く苦酸っぱい感覚だった。

 体を離したクラストの前を通り過ぎて、ドラクルがジェットナックルの推力に引きずられるように転び、しばしのた打ち回って、やがて動かなくなる。
「あ……ああ……」
 絶望しきった声を上げるモビィを一瞥して、テイラは変身を解いた。
 ドラクル――トガと言う男が動きに迷いを見せていたことは、相模にも分かっていた。
「ま、なるようになったか」
 相模はため息混じりに言う。犯罪を実行する前に壊れてしまえば、ドラクルを改修した相模に責任は発生しなくなる。
 相模はドラクルの改修に当たり、一切の手抜きはしなかったと神に誓って言える。結局トガという男が、相模の腕を信じ切れていなかったのだ。
 その前にも、トガはモビィの前で相模に再リフォームを要求した。
 人様の仕事を尊重できずに他人に手を加えさせようという男に、即応外甲に命を預ける真似ができるわけがない。
 ――コンマ数cmの誤差も許されない精密一点集中打撃など、夢のまた夢だろう。
 もちろん、画一的な独りよがりのチューンを施して回って悦に入っていたモビィにも問題がある。
「――今度俺たちに手ェ出してみろ。蜂の一刺しどころじゃねェ、全身蜂の巣にだってしてやる。そう伝えとけ」
 そのモビィに脅しをかけて、さらにまだ動けそうな即応外甲たちを気絶させて回り、クラストは変身を解いて渡良瀬に戻った。
 渡良瀬はどこか居心地悪そうに、バックルを外す。
「ありがとよ、信じてくれて」
「こちらこそ」
 相模は苦笑して歩き出した。
 渡良瀬はこの2年の間も節制を怠らず、相模はそれに対し最高の調整で答えた。
 信頼の勝利だ――とは照れくさくて言えたものじゃないが。
 しかし渡良瀬は周囲を見回すと、いっそう表情を曇らせる。
「やりすぎちまったかな。やっぱ、加減が難しいわ……俺にゃ過ぎた力だよ」
「かもな」
 相模は小さく頷く。“ドラッヘ”の面々が薙ぎ倒された光景は、死屍累々と表現して差し支えあるまい。
「でもワタちゃんなら心配ないさ」
 しかし相模は、その中に死者・重傷者がいないことを知っている。
「ワタちゃんは今でも、俺が信じたまんまのワタちゃんだ」
 振り返って相模が言い切ると、渡良瀬はバツの悪そうな顔で、外したリストマスカーをコートのポケットに突っ込んだ。
「バカヤロ、ンなこと言われたら返しづれェじゃねェかよ」
「いいさ。お代は2年前に頂戴してる。2年越しの忘れモンだ、大事にしろよ」
 相模は言って、ヒトミの待つサイドカーに手をかけた。
「さ、それじゃ予定通り、ワタちゃんの大家さんに会わせてもらおうかな」

(考えてみりゃ)
 倉庫の天井からぶら下がるリボルジェクターを引き抜いて、渡良瀬は心中でひとりごちた。
(軽トラの回収やら、ヒトミの紹介やら、あと神谷にこの件誤魔化さにゃならんし、思い出してみれば浮気調査も終わってねェ。
 やること多すぎじゃねェか)
 個人的感情で借りは返したが、やったことといえば暴力沙汰だ。
 不良連中も後ろ暗いところがあるから、自分から警察に駆け込むことはまずないとしても、いろいろこれから八方丸く収めなくてはなるまい。
「……俺たちの戦いはこれからだ!」
「何やってんのいきなり」
 やけ気味に拳を握る渡良瀬の様子に、相模が首を傾げる。
「にゃ〜」
 太陽の位置も低くなり、夕日に目を細めたヒトミが眠そうに鳴いた。

 二人の台風が去った倉庫。
 即応外甲を脱ぐこともできず、呻きもがくドラッヘたちを見下ろして、一人の青年が踵を返す。
 最近このチームに入った新人だ。
「……?」
 モビィは両手両足を動かせないまま彼を見上げて疑問符を浮かべた。
 なぜ彼は無事なのか、なぜ自分たちを助けないのか――なぜそんなに、嬉しそうなのか?
 しかしモビィが問いを発する前に、新人は涼しげな声で歌うように囁いた。
「全ては我が主の夢のままに……見てみますか、夢の続きを?」
「……」
 誘うような問いかけに、モビィはなぜか疑うことも忘れて、自分でも覚えがないほどはっきりと頷いた。

 モーターショップ石動。
「……まあ、リフォーマーは欲しかったところだったからな」
『イェイ♪』
 石動の了承に、渡良瀬と相模はハイタッチを交わした。これで相模は住居と職場を手にしたも同然だ。
「まったく、今度からは無茶しないでくださいねっ。ところで、それは?」
 渡良瀬の勝手な退院――相模の救出に関しては、"連中が仲間割れした隙に相模が自力で逃げたのを渡良瀬が途中で拾った"ことにした――にむくれていた千鶴が、瞳を入れたカバンに気付く。
 相模は渡良瀬と顔を見合わせた。
「ペットのヒトミ……だけど」
「にゃ〜」
 ヒトミも答えるように、まだ眠そうに鳴く。千鶴は手を打ち合わせて聞いた。
「わぁ、抱っこしていいですか?」
「……まあ、俺は」
 相模はそっとカバンを開ける。そしてヒトミを抱き上げた千鶴は、その場で凍りついた。

 ウサギの体躯にハトの羽毛を備えた、奇妙な生き物。その下顎が左右に開いて、口腔の粘膜を露にする。
 やけに喉の奥から聞こえてくるのは、あくびにも似た「にゃ〜」という声。

 一拍遅れて、千鶴の悲鳴が向こう三軒両隣まで響き渡った。

――――――――To be continued.


次回予告
file.04 "仮面ライダーはじめました"
「変身で何でも解決しようとか思うなコノヤロー」

( 2006年05月26日 (金) 19時42分 )

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