【広告】Amazonからクリスマスまとめ買いフェア2点以上で5%OFF

何でもノベライズ掲示板

何か記念に書いてください!

ホームページへ戻る

Name Message
Subject
URL
Mail
Color
Delete Cookie

このレスは下記の投稿への返信になります。内容が異なる場合はブラウザのバックにて戻ってください

[134]file.02-6 - 投稿者:壱伏 充

 珠美の無事を確認した鷲児だったが、想定外の積載に、すでに木造の機体が悲鳴を上げっぱなしだった。
「まずいです、あいつ速くて……このままだとあいつに追いつく前に機体がバラけます!」
 同乗する渡良瀬探偵に告げると、渡良瀬は自分の懐をまさぐりながら返してきた。
「えぇい……そうだ、ちっこい双子連れて来い! デカい蛾をおとなしくするにゃ、昔っからちっこい双子のハーモニーって相場が決まってる!」
 言われて鷲児は著名な双子を頭の中に浮かべた。
「……マナカナとかですかっ!」
「とうに四十路だバカヤロウ! 他に出てこないのか、っつーか呼べるんか!?」
 21世紀も、すでに4分の1を過ぎている。
「すみません……ああっ!」
 謝りつつ機体を進ませる。リモコンを見ると、麻袋越しに赤ランプの点灯が見えた。
「どうした!」
「探偵さん、もうバッテリーが!」
「ったく……それじゃチャンスは一度っきりか」
 渡良瀬はぼやいて、懐から銃を抜いた。

「うそ、何してるのよあなたたち!?」
 典子は思わず声を荒げた。自分たちの身も危険に違いないが、渡良瀬たちの行動はもはや自殺行為だ。
 左右に頼りなくゆれながら、やがて二人を乗せた飛行機(?)はレピードの真後ろにつけた。
『おや? 何が来たかと思ったら、あれ……まさか渡良瀬さんじゃないですよね?』
「残念ながら本人みたいよ」
しばし、いかんともしがたい感覚を共有する。
 全く、何をしにきたのだ。民間人のくせをして。――ほんの少し、嬉しいではないか。
 そして渡良瀬が握っているものを確かめると、典子は闘志がよみがえるのを自覚した。即応外甲のバックルだ。
『しかし何をしに来たのやら。あの人はもう……おや、まだ墜落していない』
(……?)
 呟く声に、典子は気づく。このレピードを通じて得た視界でたびたび渡良瀬を見失っているのだろうか。
 渡良瀬たちに気づいたのも、典子が先だ。
(そうか!)
 典子は気付いた。その思考プロセスを言語化するのももどかしく、直感がたどり着いた答えを、叫ぶ。
「渡良瀬、右から回りこんで! そこが死角よ!」
『…………っ!』
 レピードの向こうで息を呑む気配が、典子の推測を裏付けた。

「聞こえたか? 右下15m以内まで接近してくれ」
「軽く言ってくれますね!」
 鷲児は渡良瀬の注文に答え、機体を滑り込ませた。不吉な音がいっそう強くなる。内部エンジンに鱗粉が入り込んだのかもしれない。
 そう、チャンスは一度だ。
「で、何するんです?」
「こいつを使う」
 実質頼りの渡良瀬は、言ってバックルを見せた。鷲児はとたんに不安になる。
「ライダーだと溶けちゃいませんか?」
「ま、俺が使うんじゃねぇけどな。心配ご無用、なんてったって」
 渡良瀬は次いで奇妙な銃の銃身を回し、蛾に狙いを定めた。
「こいつは正真正銘本物、セプテム・グローイングお墨付きの仮面ライダーだから、な」

 仮面ライダー。その言葉は、即応外甲を作り上げたセプテム・グローイング社の商標であり、同時に即応外甲全体を指す俗称でもある。
 だが、前者の意味で用いられることは少ない。街を行くのは三友かタハラの即応外甲、農業と医療の現場にはアレックス・コーポレーション製が大半だ。
 ”仮面ライダー”をその目で見た者は数少ない。
 ゆえに、一部の人間――鷲児もそうだが――にとって、仮面ライダーという響きはある種特別なものだった。
 噂では、とんでもない高性能機らしい。

 目を丸くする鷲児のリアクションに気をよくしつつ、渡良瀬は蛾を見上げる。
 何が原因か、足元もガクンと揺れた。限界だ。
「探偵さん!」
「ああ。行ってくる――あとで飲みに行こうぜ、鷲児!」
 叫び返して、渡良瀬は銃を撃った。圧搾ガスの勢いで飛び出したのは銃弾ではない。
 石動の娘、千鶴に作ってもらい”リボルジェクター”と銘打たれたこの特殊銃には3つの機能が備わっている。
 ひとつは強力スプリングの力でスタングレネードなどを射出する”ソリッドスローワーモード”。
 ひとつは強力ポンプの圧力でカラーインクなどを噴射する”リキッドシューターモード”。
 しかし今解き放つのは――――
「ぃ行けやぁ!」
 渡良瀬の手首がスナップを利かせると,”ワイヤーで繋がれた”アンカーが蛾の胴体に巻きつく。第三の機能、”アンカーウィップモード”!
「んじゃ、グッドラック」
 渡良瀬は鷲児に小さく敬礼すると、機体を蹴って跳び、ウィンチで自らの体を持ち上げた。
 典子と、目が合う。
「渡良瀬!」
 急かされなくても分かっている。あと少しで街に着く。そうすれば大惨事は免れない。
「ちょーっと痺れるぜ、いいな!」
 宣言し、渡良瀬は答えも待たず親指でもうひとつのボタンをクリックした。このモードでのみ使えるスタンガン機能だ。
 パンッ、と乾いた音を立て、蛾の体が傾く。
「キュィィィ!?」
 そして触手から一瞬力が抜けて――体を引っ張り上げる渡良瀬に向かい、典子が触手から振りほどいた手を伸ばした。

 滑空しながら鷲児は、バックルのボタンに指をかけた。
 即応外甲が鱗粉で溶け切るより速く着地すれば重傷は負わない。
 そんな目論見のまま地上を目指す。道路には立ち往生する車が列を成していた。
「どいてどいてどいてぇぇぇぇェェェェ!」
「……うわなんだありゃあ!?」
 スキー初心者のように叫ぶ鷲児に気付いてか、車の持ち主たちが道路の脇へと逃げる。
 その後に機体が一台の車の屋根にぶつかり、バウンドして鷲児の体を撥ね飛ばす。
「っっうわあああああ!」
 悲鳴を上げながら鷲児はそれでもバックルのスイッチを入れ、変身を終えてから地面に叩き付けられた。
「――――っ!」
 さすがに衝撃は緩和しきれず、痺れが脳天まで突き抜ける。
 鷲児は頭を振って見上げた。
「珠美っ、探偵さん!」
 だが、呼びかけに答えたのは、幼馴染のものでも探偵のものでもない、凛とした女性の声だった。

「アルマ……変身っ!」

 珠美の眼前で、女性の姿が光に包まれる。
 ――その中から飛び出した手刀が、珠美を拘束する触手を断ち切った。
「ひ――っ!」
 刹那、支えを失い落下しかける珠美の体。
 思わず目を閉じる珠美だったが、今度は腕が優しく抱きとめた。
「もう大丈夫よ……渡良瀬」
「おう」
 死を覚悟した珠美だったが、予期していた加速度も衝撃も彼女を襲いはしなかった。
 その代わりに、緩やかに着地する感覚。頼りなくへたり込んだ尻の下は、固いコンクリートだった。
「目を開けて。もう心配はいらないわ」
「……?」
 言われて珠美は目を開ける。目の前にいたのは装甲を纏った女性、だった。
 全身に一分の隙なくフィットしたベーススーツ。コバルトブルーに染め上げられた装甲に、鷲を象った仮面と右胸の”飛翔”の二文字が映える。
 左胸の桜の代紋と両肩の赤色灯を誇らしげに輝かせ、彼女はすっくと立ち上がり、耳元の通信機に手を添えた。
「仮面ライダーアルマ……現着しました」

 東堂は入ってきた通信にニヤリと笑った。
「遅かったじゃない神谷君。連絡取れないから心配しちゃったよ〜」
『申し訳ありません。みすみす被害を出させてしまいました』
「いいさ。ここから全力で取り戻してちょーだいな」
 東堂は軽く受け流し、改めて命令を出した。
「そんじゃ、怪獣退治……行ってらっしゃい」

( 2006年04月28日 (金) 19時21分 )

- RES -





Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】Amazonからクリスマスまとめ買いフェア2点以上で5%OFF
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板