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ゾイド系投稿小説掲示板

自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。

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[385] ”メロゥ・イエロゥ”  (上) gaia-73 - 2013/04/14(日) 22:07 -

 「誰にも共感されない苦悩を持つ者は孤独だが、その苦悩を武器に変換できれば、愚鈍な世界に対して強大な威力を行使することも可能だ。しかしそれで孤独が救われることもない」
            (―――霧間誠一『虚空の帝国』より)





    (1)

 黄色い、というと語弊があるかもしれない。
 これは、そう、オムライスを包むタマゴ焼きの色だな。
 そう言ってもラローシュ・アポリネール中尉には通じなかったようで、「それは宗教用語ですか?」とマジな顔で聞き返されてしまった。「合成ランオウの色だよ」と答えて、どうやらそれで彼女にも、やっと分かってもらえたようだった。まぁ俺だって合成食品じゃない“ランオウ”がどんなものなのかなんて知らないのだから、なんとも間抜けな会話ではあったのだが。
 俺と彼女の見上げた先では、今さっき基地の倉庫に搬入されたばかりのEZ-034、≪ジェノブレイカー≫と呼ばれる機体が整備のために細かいロボットアームや、足場の上で小躍りでもしそうなほどいきいきとしている整備兵たちによって、小さい火花を散らしたりしながら立っていた。……やはり、最近の出番のなさにはみんな鬱屈していたのだろうか。
 紫色の士官服を着たアポリネール中尉は、機械端末のタブレットを見ながらこのジェノブレイカーについての情報を、いろいろと報告してくれながら不安そうに俺の方へと、ちらちら視線を送ってきていた。本土の田舎で育ったというこの貴族の令嬢は、17歳だというのに随分と落ち着いた雰囲気を持っていたが、こういうちょっとした動作は年相応の幼さがほの見えて、けっこう微笑ましいのだった。
「ところで中尉。こいつの名前は何がいいかな?」
 突然に話しかけられて彼女は「え?」っと硬直してしまったが、それこそこちらの狙いだった。年下の女の子にあんな心配そうな顔をされていては、こちらの面子も立たないというものではないか? 戦場で死ぬ時も「お母さん」の類は口にしないと心に決めている硬派な俺としては、まぁ、これくらいは当然の処置と言えるだろう。
「呼び名だよ。何がいい?」
 彼女はちょこんと頭にのせた軍帽を、首を傾げたせいで落としそうにしながら、青みがかった瞳を宙に向けて、
「あ……、メ、メロコトン……とか」
 と恐縮しながら答えた。
「“メロコトン”か、うん、………なんで?」
 メロコトンというのは、大昔に異星から伝わったといわれる言葉で、たしか「桃」のことだったと思う。
「いや、その黄色で最初に思いついたのが、黄桃だったものですから……」
 タブレットを抱え込んで身を縮める彼女を見ていたら、俺がいじめているようでなんだか後ろめたくなった。視線をジェノブレイカーの方に向けて視界から彼女を放逐してから、俺は努めて穏やかな声色で言った。
「なるほど。じゃ、こいつはメロコトン――略して“メロ”かなぁ」
「メロ……」
 彼女もジェノブレイカーを見上げている様子。
 これからこの戦闘機械獣は、俺の愛機となるわけだ。
 黄色い塗装が施された、砂漠地戦線(デザート)仕様の≪魔装竜≫。
 ただ問題があるとすれば、ここが砂漠じゃないことくらいだろうか。


   (2)

 ZAC暦2100年の8月という22世紀を目前に控えた世紀末の夏(この大陸は南半球だから冬なのだが)にも、この惑星では休むことなく大戦が続いている。我が基地もその他聞に漏れず、激しい戦いの連続だったらよかったのに……。
 南エウロペ大陸はエルガイル海岸から北西に数百キロ、山地に囲まれただだっ広い草原がある。ヘメラ盆地――エルガイル湾からガリル遺跡への最短経路となる場所だ。五か月ほど前に上陸した我が帝国の機動陸軍も、このルートを通ってガリル遺跡へと到達した。地図を見ると湾に流れ込んでいるレテ川を遡った方がよほど近いように思えるが、この川の周辺は大湿地帯であり、ゾイドでの進軍は不可能だった。
 よってガリル遺跡への侵攻を防ぐためにはこの盆地を見張っていればよく(後は空だが、こちらは南方のガイガロス航空基地が見張っているはずだから問題はないだろう)、そういったわけで我がマッコーラム山岳要塞は盆地を見渡せる山地にあるのだった。
 ちなみに、マッコーラム大佐は死んだ。
 老衰だった。
 着任後わずか2週間で逝ってしまわれた……。
「……………………………」
 …………。


 ハッとそこで我に返った。
 何だか悲しい夢を見ていた気がする。
 俺は今、一瞬だけ意識が飛んでいたみたいだ。
 スピードをグッと緩める――いきなり時速300キロは流石に無謀だったかもしれない。
 昨日まで乗っていたセイバータイガーより100キロ近く、速いわけだからな……。
 岩と草だらけの景色が後ろへ流れていくのが、いつもと同じくらいの速さにまでゆっくりになる。もちろんそれは錯覚で、これでもいつもより速い。対Gスーツを着ていなければとっくに、生命維持に支障をきたしているはずだ。
『――ど、どうしました、大尉?』
 管制室からの無線通信でアポリネール少尉がすかさず心配そうに尋ねてきた。
「いや、――なんでもない。ちょっとスピードの、出かたに驚いてさ」
 まさか気絶したとは言えまいよ。
 俺はハハハっと乾いた笑いをこぼしながら、
「そろそろ到着しますけど、少佐たち、準備はよろしいですか?」
 と俺は今回の戦闘演習のお相手へと、通信回線を開いた。
『おお、いつでもいいぞぉ!! グァアッハッハァア、久しぶりに暴れてやるぞォォオ!!』
 この方はマッコーラム大佐亡き後の基地司令官、エイクリー・トリマルキア少佐である。
 生まれながらのゾイド乗りで、言ってみれば戦闘おバカさんである。ちなみにアイアンコングは彼がモデルだという説がなかったので俺が流しておいた。
『……お手柔らかに願いますよ、大尉』
「そっちこそ、間違えて殺さないでくれたまえよ少尉?」
 もう一人の青年はイノック・ミザーヴ少尉。
 ゾイドの戦闘技術は天才的だが、出身が農奴みたいな最低身分からの叩き上げだったため中央司令部から疎んじられて、ここに左遷みたいな形でやってきた可哀相な奴だ。
 政府も軍司令部も、下から這い上がろうとする輩に冷たい。
 少しでも身分に問題があれば「士気が下がる」という理由で更迭されたり、昇級を見送られたりしてしまう。逆に身分が高くても、上官より上の身分だったりすると同じような目にあって、苦労することもあったりする。
 ピピっとタイマーが鳴り、演習――EZ-034≪ジェノブレイカー≫の始動試験――の始まりを告げた。
 俺は緊張しながら、機体を走らせていたマグネッサシステムとロケットブースターを切って機体を着地させた――慣性でガリガリガリガリっと地面を削りながら(嫌な音だ)“メロ”が止まり前傾姿勢で仁王立ちになって、迫りくる二体のゾイドに対峙する。
 方や機動性を強化したアイアンコング・マニューバ。
 方や火力を補強したヘルキャット・アサルトタイプ。
 二体から浴びせかけられる集中砲火をメロの両側に着いた可変シールドで軽々と弾き返しながら、まず80ミリビーム砲と140ミリ衝撃砲で牽制する。
 放たれる熱線と弾丸―――そして、

 ――ドンッ――

 
 という衝撃。
「えぇ?」
 メロが後方へ数メートル弾き飛ばされていた。
『うっおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
 トリマルキア少佐のアイアンコングが雄叫びを上げながらもの凄い勢いで拳を叩きつけて来る。俺はメロのフリーラウンドシールドでそれをなんとか受け止めて、その場に踏みとどまった。
『オラオラオラオラオラァ――!!』
「無駄無駄無駄無駄無駄ァ――!!」
 二人でもの凄く原始的な殴り合い(一方的)を演じながら、俺はガクガクと揺れる視界でビームも砲弾も発射されていないことを確認する。
「何でだ!!」
 ヘルキャットが背後に回り込んでくる。
 シッポで何とかいなす。
 今度はアイアンコングが掴みかかってきた。
 素早く回頭してコングにシッポを叩きつける。
 そのまま距離を取り、再び砲撃のためにトリガーを引いた。
「出ない――」
 俺は動くのをとめないようにしながら、二体のコンビネーションを崩そうと常にどちらかの角に入りこむようにし、牙と爪で何とか抗戦しようと奮闘するが、二体の火力とオッサンの覇気によってどうしても分が悪くなる。
 ちなみに相手へと、コンバットシステム停止信号を撃ち込めた方が勝ちだ。俺のそれは頭部にビーム式のもので取り付けてある。
 だが隙が突けない。おかしい。これならセイバータイガーで戦った方が勝てる気がする。
 試しにもう一度トリガーを引く。
「やっぱり出な――」
 そこで俺はコクピットパネルに、今まで見たこともないような表示を見つけ、愕然とした。

≪ゾイド生命体(コア)によって武装への動力伝達が拒否されました≫

「はぁ?!」
 俺は即座に、この試験運転の中止を訴えた……。


   (3)

「“リリリヴァド”ってのはァ、こういうことだったんだなァ」
 トリマルキア少佐がメロに関する資料を読みながら言った。
 試験戦闘をする前に読んでおけよと思ったが、この人はそういう人だ。基本的に指揮官に向いていない。ここに送られたのも多分、この性格のせいなのだろう。(いや、今回ばかりは知っていながらあの戦闘をやらせた可能性もある――基本的に戦えればそれでいい人だからな……)
 いま基地の喫茶室には、先ほどの戦闘に関わっていた4人が集められていた。
 つまり俺と少佐とミザーヴ君とアポリネール中尉である。まぁこれ以外だと整備士と衛生兵くらいしかこの基地にはいないが。
「つまり、メロは使えないってことですか?」
 そう言うアポリネール中尉は、なぜか少し嬉しそう。
 俺が自分のゾイドに愛称を付けることは少佐も知っているので、特に聞き返すことなくうなずいた。
「そォいうことだろうな。闘争心が見られないせいで第一線から退けられたと、まァ要するにそんなことが書いてある」
「オーガノイドシステム搭載機にあるまじき性質ですね」
 ミザーヴ君もあきれ顔で言う。
「こりゃホントに、甘いメロコトン(桃)だな……」
 俺は小声で呟いた。
 ≪ジェノブレイカー≫は先月上旬に、リッツ=ルンシュテッド大尉の要望によって共和国軍の新鋭機≪ブレードライガー≫を、サシで倒せるようにと我が軍の≪ジェノザウラー≫を改造した機体だった。数体が作られ実戦に投入されたが、その中には装甲にソナーを吸収する特殊塗料コーティングを施した漆黒のステルス機、≪ジェノブレイカーJET(JETは黒玉(こくぎょく)――黒い琥珀のことである――という意味の古語)≫など実験的に多様な機体が製作された。
 メロもその中の一体であり、砂地でも足を取られないような工夫がなされた機体であったが気弱で砲撃も拒否するという使えなさから、うちで現役だったセイバータイガーを体よく徴収するための捨て駒にされたのだということらしかった。そしてメロの奴につけられていたコードネームは≪ジェノブレイカーLily-Livered≫――Lily-Livered(リリリヴァド)は異星の言葉で「臆病な」という意味の形容詞だそうだ。
 なんとまぁ……。
「この要塞にぴったりじゃないか……」
「……なんだってェ?」
 少佐に咎められる。小声で言ったはずだったのだが。
「クラーカッシュ大尉殿。表へ出よォか?」
 満面の笑みだった。
「しかし事実というか、1度でもエマージェンシーがありましたかね?」
「何回死にたい?」
「将来的に一回でお願いしたいですね」
 少佐殿はヤル気満々な様子(まぁいつもそうなんだが)。
 不完全燃焼なのは俺も同じことで、脊髄から首の両端を通ってこめかみに至る直線がじくじくと痛む。肋骨の内側に二枚の金属片があって、それを触れ合わせれば今すぐにすべてを壊せてしまえそうな気分だった。
 ジャケットを脱ぎすてて顎を上げながら、首を大げさに左右へ揺らす。ごきごきという音と一緒に、俺の気合いも空気振動に変って、部屋中に響いていくようだった。
 少佐も紫の詰め襟を床に叩きつけ、もりもりと肩の筋肉をたぎらせていた。
 だが部屋を出ようとした二人に、小さい影が立ち塞がる。
「し、私闘は御法度です!」
 アポリネール中尉が両手を広げて、涙目で訴えてくる。
「安心しろ中尉! これは私闘ではなく制裁だ!!」
 少佐が素敵な笑顔で反論した。
「私刑(リンチ)も御法度です!」
 中尉は一歩も引かない。
「大尉! あやまって下さい!」
 なんか俺の方に中尉の矛先が向いてきた。
「――……お嬢ちゃんはもう向こう行ってなさい」
 俺はそう言って適当に流そうとしたが、何だか部屋の空気が変だった。
「あァ〜〜あ……」
 と言ったのは少佐で、吹き出したのは少尉だった。
「まァ、あれだ。中尉に免じて許してやるァ」
 そういって床の詰め襟を拾い、ノブを捻って廊下に出ていく少佐。
「ただその代わりに、午後は組み手に付き合えよ!」
 バタンっというドアの音が、いつもより大きく感じられた。
「で……」
 俺は残った二人の方を振り向いて、
「――何で中尉は、泣いているんですか?」
 と、思わず敬語になりながら言った。



   (4)

 空を突き刺そうとするかのように伸び伸びと屹立する遠い山脈は、濃すぎて少し黒っぽいくらいの紺色の冬の地平に、赤くその輪郭を浮かび上がらせていた。方向からしてローナ山脈だろうか。メロのコクピットからでも、南エウロペ大陸特有の肥沃な土の匂いを、濃く感じることができた。
 ヒーターはなかなか効かず、寒い思いをさせてしまっていることに、申し訳なさを禁じえない。コクピットは本来一人しか乗れない作りだから、二人で乗るのはそれなりに神経を使った。
 具体的にはアポリネール中尉が座席にしゃがんで、俺がその前に浅く腰かけるといった風情である。彼女の足が痺れる前に、目的の湖に到着したいものだった。
「大尉はその、……女性の友人とか、いらっしゃいますか?」
 中尉が間を保たせかねたのか、そんな他愛無い話題を振って来る。
 どうしてこんな状況になっているのかといえば、少佐が勧めてきたからだった。
 午後は組み手をやるんじゃなかったのかと聞いたら、その役はイノックで充分だと言われた。 当のミザーヴ君も爽やかな笑顔でうなずくので、彼の銀髪に免じてそうすることにしたのである。
「――うん、……いるよ。殴った女子を友達と呼べるならね」
 俺はこんな話をしても彼女が退屈するんじゃないかと心配だったが、アポリネール中尉は「へぇ」と相槌を打って興味津々だという風に、身体を左右に揺らし始めたので安心した(……単に寒いだけかもしれないが)。それにしても少佐と少尉は、何のもくろみがあって俺達をこんなピクニックに送り出したのだろう? あるいはあの二人はデキているのかもしれない(だとすると明日からあの二人にどう接していけばいいのか、悩ましいところだな)。
「――俺がまだヴァルハラ帝大にいた頃のことなんだが、そこにクーリム=リンという奴がいて、いわゆる名門の出で、まぁそれは俺もなのかもしれないが。……そいつは虚心坦懐な奴でね、自分の信じた道を疑わないような奴で、すごいまっすぐな目をしてた」
 俺は話しながらこの話が、中尉の求めているような軽いものには、きっと向かっていかないだろうことに気付いた。この辺でやめるべきだろうか。俺は出かかった言葉を飲み込もうとして、その瞬間にびくりと、背を震わせた。中尉が驚くが「ちょっと寒くてな」、と言い訳をした。メロの「核(コア)」が、先を促したのだ。俺はメロの初めての存在感に驚きながら、話を続けるために口を開く。普通ゾイドというのは、このくらい自己顕示欲が強いものなのだ。
「……俺は逆に、スレててね。小さいころから汚い大人を見過ぎたんだろうな。だから、そいつの生き方とかモノの見方とかに反発して、よく議論してた。」
 メロの気配はまた空気のように息を潜めて、ヒーターの作動音に隠れてしまう。
「――で、あるとき殴りあって……。最初に手を上げたのは向こうなんだが、俺は周りの制止を振り切って三発殴り返しちまってね……」
 ここまで来たら、もう言いたいことを全部言い切るしかあるまいよ。
「高位な貴族の御令嬢の顔に傷を、付けたというわけだ。――多分そのせいで、士官就任後すぐに激戦地に送られて……単機でだぜ? あれは酷かったなぁ。でもそのおかげで一気に大尉にまでなって……ざまぁみろって感じだったけど、運が悪かったというか。いっぺん奇襲にあってゾイドをパーにしたら、こっちに飛ばされちゃった……」
 暗い結末だなぁと自分でも思う。
 中尉は無言で、俺も自然と軽口を叩く気分ではなくなる。
「………………………………」
 進行方向の地平に、きらきらとした青さが見えてきていた。
 三時のおやつには、ちょっとまだ早い。日差しは弱いが、景色に暗さはなかった。
 俺は愚痴だと分かっていながら、ついつまらないことを言ってしまう。
「人生の意味って、なんだろうな」
「意味なんか、――ないのかもしれないですよ」
 中尉の言葉が、なんだか力強かった。
 俺のことを、励まそうとでもしてくれているのだろうか。
「――人生は夜の果てへの旅だと、セリーヌも言ってます」
 この子は意外としたたかなのかもしれないな。
 そんなことを少しだけ、思ったりして。
「セリーヌって誰だよ?」
「誰かですよ」
 そして二人とも、少し笑った。




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