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[302] エウロペ戦記 5章 前篇 ロイ - 2011/04/10(日) 02:24 -

ZAC暦2099年8月22日・・・・帝国によるゲリラ組織に対する支援の疑いが確実視され
帝国と共和国の関係は一触即発の状態となっていた。
その最中ガイロス帝国軍が大演習を行うという名目で10個師団をレッドラストに派遣すると発表したことを受けた共和国軍も急遽7個師団をレッドラストに監視のため派遣することとなった。



―――――――レッドラスト――――― 



ここは大異変前には幾つかの都市があったが、それらが廃虚となり砂嵐によって地表から姿を消しており、唯の不毛の大地となっていた。

共和国軍は5日以内に帝国軍が侵攻してきた場合には戦力差を補うため設置されたスリーパーガイサックや地雷と特殊工作師団の遅滞戦闘によって進軍を遅らせたのち中央大陸からの増援部隊6個師団と同盟国軍によって増強された部隊によって決戦を行うということとなっていた。

しかしこの計画には共和国海軍がエウロペ・中央大陸間の制海権を掌握しつづけておく必要があった上、制空権についてはまったく書かれていないという欠陥があったのだった。
というのもこれが大異変後20年ほどの前の飛行ゾイドの性能が今と比べて大異変の影響で強大化した電磁嵐によって低下していた時期に作成されていたもので当時の飛行ゾイドはドッグファイト等望めるものではなく、精々COIN機として近接航空支援に従事できる程度の物だったためである。


無論共和国上層部もこの点を鑑みて最新鋭の装備を持つ対空部隊や開発されたばかりのプテラス改良型、プテラスストライカーの優先配備、同盟国に空軍を派遣要請するなどの対策を取っていたが、帝国空軍のレドラーに対抗できるかどうかは不安だった。



――――――――共和国軍第57基地―――――――――


当初レッドラストの天候データ採取のため建設されたこの基地は元々、ゾイド3個小隊ほどしか駐屯していなかったが、帝国軍大演習に伴う7個師団派遣のためこの基地も有事に備え、大規模化されることとなった。
しかし、もともと盗賊退治用の装備しかなかったこの基地にはすべての部隊を格納庫内に収容しきれず、あぶれた部隊のゾイドが炎天下と砂塵に身をさらしていた。

基地にはAZ砲や重砲が並べられており、グスタフやサプリトータスが補給物資を降ろしていた。

「まったく、こんなんで帝国軍が攻撃してきたとき戦えるのかよ!」

電気駆動のジープを運転しながら、ジャックは毒づいていた。

「ちゃんと前見て運転しろよ」

隣の座席に座るコルトが注意する

「わかってるよ」

「ならいいが、いやだぜ帝国のヤカン頭どもと遣り合う前に事故って死ぬのは・・・」

「あのう・・本当にガイロスと戦争になるんでしょうか…」

後部席に座っていた新兵の一人が言う

「なったら、ここに曝しものにされてる連中は真っ先にシンカーD型辺りに空襲されるな」
ジャックが言う
「だから運転に集中しろ、大丈夫だぜ。どーせ今回も小競り合いしてしまいさ、ノエルちゃん
」「すいませんが、その呼び方やめていただけますか、僕も男なので」
「!?・・・・」
「ははは、こりゃあ傑作だぜ」運転席でジャックが大笑いする。
「てめえっ」
「お前ら漫才はそこまでだ」

後部座席で携帯ゲームをしていたアルフ中尉が言う。

彼は本来であればコルトの席に座るべきなのだが、このエウロペ特有の強烈な日差しが苦手だった彼は
幌のある後部にいたのだった。


――――――――第3格納庫―――――――――



内部にはデリケートな電子戦機や大型ゾイドが優先して置かれていた。
愛機のシールドmkUの前でアルバート少佐は技術士官と機体の装備変更について話していた。

「主な変更点としては、各部の防塵処理、ビームキャノン砲のエネルギータンクを最新型に交換しました。」

「これで性能はどれほど上がる?」

「まず稼働時間が30%ほど向上します、それから、磁気を帯びた金属が含有されている砂嵐に巻き込まれている状態でも機器への影響は最小限におさえられるはずです。」

「少佐殿!新しく配属される兵をお連れしました。」

アルフが新兵らを連れて現れる。

「いま技師と話すことがある。それまで兵舎で待機していてくれ。」

「了解しました!」

アルフはその場で直立不動の姿勢で敬礼すると新兵をつれて去っていった。

「これが貴官の部隊に新しく配備される機体のリストです。」

技師が隣の金属製の机の上に置かれた書類を渡す。

書類にはゴドス2、カノントータス2、ダブルソーダ1と書かれていた。
「(ダブルソーダか、微弱ながら航空兵力が付くのは頼もしいな)」

アルバートは飛行ゾイドが大異変の影響で砂漠化した北エウロペ大陸では偵察に役立つと考えていたため、ダブルソーダが配備されることは幸運だと思った。

その後、新兵に対しての訓示や自己紹介等を終えた後、ブルー・ファイヤー隊は他の補給が完了した部隊同様、追い出されるようにして防衛ラインに向かうこととなった。

――――――――――防衛ライン――――――――


防衛ラインには多数のゾイド部隊が配置され、AZ砲やトーチカ、対ゾイド障害物が設置されていた。
しかし急遽建設されたためトーチカの中には未完成のものも多くあった。

「これで守れるのか・・・・」

防衛ラインに到着したアルバート少佐は未完成の部分の多さに驚いていた。

「おっ、その部隊マークはアルバートか?」

後方からコマンドウルフ改とコマンドウルフ、ゴドス2機、カノントータスレドーム、ステルスバイパー2機が現れた。

「ジェフじゃないか。お前もこの地区の防衛か?」

「ああ、まったく司令官殿はこれだけ穴だらけなのに、どうやって防衛するつもりだ?」

「ゾイドで補うつもりなんだろう…」

「ならいいが・・・」

「隊長!!帝国軍です!!距離2000に多数、少なくとも60機はいます!!」

「機種と数は?」

「前列にモルガ、中列にイグアン、ヘルディガンナー、ゲーター、後列にキャノリーモルガ、また前列、中央にはレッドホーン、ダークホーンが数体います」

アルバートは望遠レンズの設定を最大にして血のように赤い砂嵐の向こうを見た。
砂嵐で視界は最悪だったが、そこには地平線を覆うように展開する帝国軍機甲師団の姿が確認できた。


――――――――ポイントE1‐444−3336――――――――


そこには西方大陸大演習のために集結した帝国軍第30師団とその後謀反人の私兵として悪名高くガイロス帝国軍の歴史に名を残したPK師団が待機していた。

地を圧するかのごとく第16師団のモルガ、レッドホーン、レッドホーンBG、モルガ、、イグアン、ヘルディガンナー、ゲーター、アイアンコング、PK師団のアイアンコングPK、セイバータイガーPK、レッドホーンPK、ディメトロドンMk−U、ツインホーン、ハンマーロックが赤い大地に展開していた。

空にはレドラー、サイカーチス、生産が開始されたばかりのサイカーチス改やブラックレドラー、レドラーBC、レドラーインターセプターが展開していた。

「あの私兵どもめ・・・盛りよって!!」

ダークホーンに乗るハインケル大佐は周囲を威圧するように展開するPK(プロイツェンナイツ)師団を苦々しく見つめていた。

彼が気に入らないのは昨日の作戦会議の席でのPK将校の傲慢な態度とアイアンコングPKに搭乗するPK師団の女性将校、ハンナ・ハンナ少佐が二階級上の彼に対して、対等に話してきたことであった・・・PK師団将校は同階級の一般部隊将校より二階級上とされていたが、この特権はPK師団の秘密警察的性格、最新兵器の優先配備と相まって多くの帝国軍将校の反感を買っていた。

「ノンキャリアの分際で、軍歴20年の私を侮辱するとは・・・」

「大佐、・・・ザザ・・・エアカバーのレドラー部隊が燃料補給のため、基地に帰還します・・・ザザ・・・」
ゲーターに搭乗するハインツ少尉が報告する。
上空の磁気嵐の影響で通信に雑音が入り始めていた。

「全部隊、対空警戒レベルを1から3に上げろ!警戒を怠るな!」
彼は命令を下したが通信を中継するゲーターが電磁嵐で性能低下してきていたため、直ちに伝わらなかった。

「くそ!何故ディメトロドンがPKの奴らだけにしかないんだ!!」
PK師団が直ちに命令に従う姿を見た彼は憤った。

この時期、ディメトロドンは一部の試験部隊に配備されている以外はPK師団のみに配置されていたのである。

このことはかつて士官学校の卒論でゼネバス帝国軍がバレシアに上陸後、1年で失地回復できたのはディメトロドンが電子戦で共和国のゴルドスに勝利したことだと書いた彼にとって許しがたいものだった。

「ふう・・・ん?・」
彼が東の空を見上げたその時、彼は雲の切れ間に数十個ほどの黒い機影を見とめた。

「なんだ?鳥か?」
その彼の楽観的な考えはすぐさま否定された・・・・・彼が鳥と判断したものによって・・・・次の瞬間雲間からミサイルが放たれ第30師団のサイカーチス4機撃墜される。

「ミサイル!?」
第4サイカーチス小隊の指揮官、ヨーゼフ・クーパー軍曹は突然の攻撃に驚愕した。

「軍曹!!プテラスです!!共和国の奴らです!!」部下の一人が叫ぶ。

「何だと!!」

全機!チャフ・フレアディスペンサーを作動させろ!!と彼が言おうとした瞬間、師団の最前方にいた彼のサイカーチスはバルカン砲をコックピットに受けて木の葉のように落ちて行った。

後を追うように部下のサイカーチス2機も撃墜された。
最後の1機はプテラスに突っ込み、最後尾の1機と空中衝突した。

「何が起きている!!敵の数は??」
レッドホーンに乗る士官が狼狽気味に言う。

「空襲です!!数は不明ですが、機種はプテラスが中心です!!」
ゲーターの通信兵が報告する。

その刹那プテラス3機が爆弾を投下、モルガとゲーターが撃破される。

プテラス15機に対してサイカーチスは88機いたが、帝国軍は未だに襲撃してきた部隊の数さえ把握出来ず、更に対空砲火も統制がとれておらず、サイカーチスの中には味方機に撃墜されるものさえあった。

「己れ!!卑怯者どもが!!」
モルガAA16機が濃密な対空砲火をプテラス隊に浴びせ掛ける。
プテラス3機が被弾し墜落する。

プテラス12機はPK師団に向かっていく、サイカーチス隊が阻止しようとするが
ミサイルによって8機撃墜され、突破を許してしまう。

「ハンナ少佐、データを送ります!」

ディメトロドンmkU部隊の指揮官を務める、マンフレート・ホルバイン中尉がいうと同時にアイアンコングPK、レッドホーンPKに湿度、気温、風速、プテラスの速度等のデータが送られる。

数秒後、アイアンコングPK、レッドホーンPK、ディメトロドンmkUの大型ビームランチャーが火を噴いた・・・青白い奔流が迸り、射線上のプテラス9機を薙ぎ払い蒸発させた。残り3機も虫の息で、第2射が行われる前に第30師団に撃墜された。

同じ頃、共和国側でも後方の補給物資集積所が旧ゼネバス帝国軍特殊部隊が使用したモルガ改造機、ダークポイズンの部隊に襲撃されるという事件が発生していた。

「全軍進軍せよ!!卑劣なる共和国軍を叩き潰せ!!」

それが第二次大陸間戦争の幕開けであった。・・・・

―――――――――帝国軍第43空軍基地――――――――――



「開戦だ!!!全機出撃せよ!全機出撃せよ!全機出撃せよ!」

「これは演習ではない!!繰り返すこれは演習ではない!レドラー部隊発進せよ!!」

「共和国の卑怯者どもに、俺たちの訓練の成果を見せてやれ!」

帝国軍が設営したレッドラスト各地の仮設飛行場がレドラー部隊が次々と発進する。
その数は1200機に及んだ。

――――――――――防衛ライン――――――――


レッドラストの空を埋め尽くすレドラー部隊は次々と防衛ラインの共和国軍に空爆を開始した。

「なんだ?帝国軍の奴ら、なんて数だ。何!わああ」

レドラーR型の500キロ徹甲爆弾を受けたトーチカが砕け散る。

「くたばりやがれ!」
シンカーD型が低空飛行で爆弾を投下、並べられていたAZ砲が爆発する。

だがカノントータス対空型の30mm対空機関砲を受けシンカーD型は火達磨になって墜落する。
ステルスバイパー部隊の対空ミサイルがレドラー8機2個小隊に迫る。

「ミサイルだ! 爆装を捨てるんだ!」
指揮官のハンス・ファルケンハイン大尉が部下に命令する。

しかし爆装を捨てるのが遅れた3機が被弾、空中に炎の花を咲かせた。

指揮官機のゴルドスが爆撃で撃破され、中隊の指揮系統に混乱が生じる・・・・その隙を逃さず、レドラーR型やシンカーD型が攻撃をかける。

ダブルソーダが爆装したレドラーR型の可変レーザーブレードに叩き切られ、レドラーR型の両翼にマウントされたロケット弾が地上部隊に発射された。

共和国空軍もただ手をこまねいているわけではなく、最新鋭機のプテラスストライカー、少数配備された旧大戦の名機レイノスから対地攻撃機のシルバープテラス、プテラスボマー、果ては骨董品同然のペガサロスやグライドラーまで空軍基地にいる全飛行可能ゾイドが動員され帝国空軍を迎撃に向かったがその結果はすでに見えていた。

―――――レッドラスト上空、高度4000m――――――

「はは、すごい数だ。何機落とせるかな・・」
レドラーBCに搭乗するゲルト・アハゲリス中尉は、向かってくる共和国軍航空隊を見てまるで子供のようにはしゃいだ。

「あまりはしゃがんで下さんよ、隊長」
それを見たヨアヒム・メルダース少尉が窘める。

「わかっているよ。全員!!共和国軍の奴らに今までの訓練の成果を見せてやれ!!全員生き残ったら、
俺の奢りでニクシーの酒場で戦勝パーティをしてやるぞ!」

「ほんとですか?」
エーリヒ・ハウプトマン少尉がうれしそうに言う。

同時に共和国軍航空隊からミサイルの白煙が上がった。

「ビビるな!!格闘戦に持ち込めばこっちのもんだ!」

ミサイルの中にはAIが搭載された精密誘導のものもあったが多くは、旧式のミサイルで中には誘導装置が故障したものさえあった。

これはグライドラー、ペガサロスでも運用可能だったために搭載されたものでほとんど多少早いロケット弾程度のものだった。

「あたるか!」

レドラーに鉛筆のように尖ったミサイルが迫る・・・・だがレドラーは軽々と回避・・・したとパイロットが思った直後、突如ミサイルが反転しレドラーに向ってくるのを見た彼は目を剥いた。

「何…!」

直後、腰部にミサイルが突き刺さったレドラーは四散した。

被弾、撃墜されるレドラーもいたが、次第に戦闘は格闘戦に移行しつつあった。
プテラスストライカーが下の空域にいたレドラーにバルカン砲で攻撃する。

回避したレドラーは可変レーザーブレードを展開プテラスの左翼を切り裂く、次にプテラスがバルカン砲を乱射しながら、向って来た。

レドラーもガンポッドを連射、プテラスは翼の付け根に被弾し黒煙を吐きながら落ちていく。

「旧式が!」

ラルフ少佐率いる試作型ブラックレドラー部隊12機が同盟国部隊のプテラスT型改20機に襲い掛かる。
正面から通過と同時にプテラスT型改が6機墜落、5機が編隊から脱落する。

対するレドラーは1機たりとも損傷すらしていなかった。

「ミューラー!ボック!脱落機はお前らが仕留めろ!」

2機の試作型ブラックレドラーが脱落機を追跡する。

同時に10機の試作型ブラックレドラーがレーザー砲とロケットランチャーを発砲
残り9機のプテラスT型改は瞬く間に撃墜された。

脱落機ももはや1機のみとなっていた。

「悪いが俺がいただくぜ!」

「どうかな」

2機の漆黒の飛竜は獲物を追うあまり視野が狭くなっていた。

その隙をレイノスが横から襲いかかった。

「!?ボック!ミューラー!レイノスだ!回避しろ!」ラルフが言う。

「しまった!この!?」

「なに!?ぐわぁっ」

ミューラーは何とか回避に成功したが深追いしすぎていたボックは3連装ビーム砲をもろに浴びてしまった。

「ボック!!こいつめ!」

ラルフと旗下のブラックレドラーはレイノスに攻撃を浴びせ掛けるが、
レイノスはアフターバーナーと軽快な運動性を生かして軽々と回避する。

「なんてやつだ…ボック少尉大丈夫か?」

奇跡的にボックのブラックレドラーは安定性が大幅に低下しながらも飛行できていた。

「大丈夫です!少佐!まだやれます!」

「・・・・少尉、その損傷ではプテラスどころかグライドラーと戦えるかさえ怪しい、脱出しろ」
「しかし!まだ!」

「ゾイドはいくらでも作れる。だが優秀なパイロットは一人補充するのも大変なんだぞ!」

「・・・わかりました少佐・・・」

試作型ブラックレドラーの頭部が火薬で吹き飛びコックピットモジュールは青空の高みに放り投げられた・・そして一定の高度でパラシュートの花を開いて降下していった。

ブラックレドラー隊は地上にモジュールが着地するまで護衛を続けた後、敵機に向かっていった。

[303] エウロペ戦記 5章 中篇 ロイ - 2011/05/03(火) 00:12 -

レドラーがプテラスを可変レーザーブレードで撃墜する。
レドラーR型はプテラスストライカーに向かうが別のプテラスストライカーのバルカン砲をコックピットに受けて、ガラスと赤黒い液体を噴出しながら墜落していく。

「馬鹿な奴だ。僚機を失った時点でてめえは負けてるんだよ」
プテラスストライカー2機は別のレドラーR型に襲いかかっていった。

レドラーBCとレドラーR型8機がシルバープテラス16機に襲いかかる。

「邪魔だ!」

ゲルトのレドラーBCがストライククローをプテラスに叩き付けるとブースターキャノン砲を発砲、グライドラー3機とペガサロス2機を撃墜する。

「いただきだぜ!」

エーリヒのレドラーR型がシルバープテラス2機を撃墜する。
シルバープテラス隊は脱出しようとするが、ヨアヒム・メルダース率いるレドラーR型4機が退路をふさぐ、シルバープテラス部隊は次々と撃墜され、全滅した。


―――――――高度2000メートル――――――――


2000メートル上で空中戦が繰り広げられている中、レドラー46機に護衛された爆装レドラー、シンカーD型188機が挺団を組んで飛行していた。

「これだけの数で守りきれるのか…」

護衛のレドラー隊の指揮官、ヘルマン・へスラー少佐は守りきれるのか不安だった。
当初護衛機は80機だったが、航空殲滅戦を優先するという作戦方針のため部隊が引き抜かれてしまい、56機で護衛する羽目になってしまったのである。

無論彼も護衛機の引き抜きを止めようとしたが爆装したレドラーでも空戦能力はある、と突っぱねられてしまった。
彼らの上空では共和国空軍と帝国空軍が交戦しており魔女の竈の様になっていた。

次の瞬間シンカーD型5機が600m上空にいたシルバープテラス6機の対地大口径機関砲を受けて粉々に砕け散った。
「なんだ!」

「隊長605m上空にプテラス6機確認」

「シュパッツ3此方も確認した。隊長!撃墜します」

3機のレドラーR型が上昇する・・・同時に3時方向からプテラスを中心とした混成部隊が現れる。

「3時方向に敵機!」

プテラス部隊がミサイルを発射する。
それを見た爆撃部隊は欺瞞紙、フレアを発射、回避運動に入る。

護衛のレドラー隊はプテラス部隊を迎撃する。
プテラス隊は2機がかりでレドラーに挑む。

アリソン・グリーン大尉率いる第32戦闘機中隊は12機すべてが最新鋭機のプテラスストライカーで構成されており、すでにシンカーD型5機(脱落機とおもわれる)、レドラーR型3機を撃墜していた。

「全機!手筈通り連携して挑め!孤立はするなよ」

「了解!」

同時にレドラーR型7機が可変レーザーブレードを展開して急降下してくる。
アリソンのプテラスストライカーはレドラーの攻撃を回避するとインメルマン・ターンで追撃する。

「マイク!いまだ!」別方向からレドラーを追撃していたマイクのプテラスストライカー2番機が攻撃を仕掛けた。

レドラーは左翼と胴体に被弾、直後、火球と化した。

別のレドラーもハリファックス少尉のプテラスストライカーとカーチス少尉のプテラスストライカーに撃墜される。
だがレドラー部隊もただではやられず、被弾したレドラー一機が自機の何倍もの煙の尾を引きながらカール少尉のプテラスストライカーに特攻した。

「カール!」

それを見た僚機のミッチェル少尉は思わず叫んだ。

ジャック・カーター准尉のプテラスストライカーがレドラーの後ろを占位した。

「喰らえ!!薬缶頭(帝国軍のヘルメットの形状を揶揄した共和国兵のスラング)」

彼は舌舐め吊りしながら20oバルカン砲の引き金を引いた。
その攻撃をレドラーは軽やかに横滑りで回避する。

「この!」

左上方からケリー・マグワイア准尉のプテラスストライカーが両翼の13o機関砲を撃ち散らすが、レドラーは横滑りで回避する。

「糞!逃がすか!!っしまった!」

カーター准尉のプテラスストライカーはブーストを駆けてレドラーを追撃だがレドラーは失速寸前まで減速、プテラスストライカーは追い越してしまう。

その隙にレドラーがガンポッドを叩き込んだ。
プテラスストライカーは尾の付け根から出火、錐もみ状態になりながら落ちていく。

「畜生!」

辛くもカーターは射出座席が自動で作動したため脱出に成功した。
レドラーは離脱を図ったが9番機のフェリックス准尉に撃墜された。

10機のプテラスストライカーとプテラス7機は爆撃部隊に向かう。
同じ頃、8時方向からプテラスタイプ17機が出現する。

「またか!」

次の瞬間へスラーの目の前で最後尾のシンカーD型がミサイルを受けて爆発した。

「やった!」

メアリーのプテラスストライカーは20oバルカン砲を爆装レドラーに叩き込んだ。

別のプテラスも次々とミサイルを発射5機のシンカーD型が撃墜される。
しかしその報復はすぐに行われた。

「よくも!爆撃隊を!」

ウルリケ・ヘフナー大尉率いるフレック隊の白銀のレドラー12機がプテラス部隊に襲いかかった。

彼ら第211試験飛行隊は当初、ブラックレドラーと同時に並行開発されていた次期主力機シルバー・レドラーの装備が予定されていたのだが開発遅延のため急遽、レドラーを装備していた。
それでも彼らは各部を強化・改良されたレドラーを装備していたため、その高い技量と相まって脅威だった。

プテラスがレドラーの可変レーザーブレードを受けて真っ二つに引き裂かれる。

「わあああ」

シルバープテラスが自慢のガトリングガンを乱射するがミサイルを受けて四散する。

12機の白銀の戦乙女たちの攻勢の前に17機のプテラス部隊はまたたく間に撃ち散らされ、爆撃隊の攻撃どころではなくなってしまった。
同じくアリソン隊もレドラー隊の前に爆撃部隊を攻撃できなかった。





―――――――――防衛ライン――――――――――








既に各所では帝国陸軍と共和国陸軍との地上戦が発生しており、戦況は帝国軍が優勢に進んでいた。
ダークホーンのビームガトリング砲が掃射されゴドス5機が蜂の巣にされ、加速ビーム砲を受けて後を追うようにガイサックが砕け散った。
その横ではモルガ部隊がレーザーカッターを展開して突貫をかけていた。
進軍するモルガ部隊に陣地からAZ砲が放たれ、被弾したモルガが煙を上げて頓挫するが、別のモルガに破壊される。

さらに後方のキャノリーモルガ部隊の砲撃を受けたカノントータスが爆散する。
カノントータス部隊からも砲撃が行われ後方のキャノリーモルガ部隊も被害を受ける。

イグアンとモルガの混成部隊がレッドホーンの支援を受けて進軍する・・・・次の瞬間、指揮官機のイグアンがビーム砲をコックピットに受けて崩れ落ちる。

シールドライガーmkUが飛び出す。

「隊長!そんな・・ぎゃあ」

僚機のイグアンPBが胴をコマンドウルフに食い破られる。
モルガが側面装甲を飛び出してきたハルドのコマンドウルフに噛み破られて各坐した。
シールドライガーmkUが背中に装備した二門の大型砲が発射され、モルガ3機、イグアン5機が溶けた鉄屑に変換される。
レッドホーンがシールドライガーmkUに砲口を旋回させようとしたが・・

「させるか!」

撃破したレッドホーンの残骸から飛び出したジェフのコマンドウルフ改が大型キャノンを発砲、レッドホーンの背中の砲塔が破壊される。

その隙を逃さず、シールドライガーmkUが飛び掛かりレッドホーンの頭部を胡桃のように噛み砕いた。
偵察用ビークルが推進機を作動させて離脱しようとするがコマンドウルフの2連装ビーム砲を推進機に撃ち込まれて、推進剤を誘爆させ内部から砕け散った。

隣にいたレッドホーンBGがビームガトリング砲を乱射、シールドライガーmkUは後退する。

付近のイグアン部隊が追撃するが同時にカノントータスから砲撃を浴びせ掛けられて全滅した。
それでも帝国軍の数は一向に減らなかった。

「数が多い!」

帝国軍の数の多さにアルバートが毒づく。

「このまま後退します?」

別部隊のアロザウラーに乗る指揮官が言う。

その時、カノントータスレドームから通信が入る。

「隊長!司令部より12地区からの後退命令が出ました!通信によると10分後に陸上戦艦の艦砲射撃が行われるそうです」

「!!第4地区にセイバータイガーとヘルキャットを中核とする高速部隊が侵入してきているようです!」

別部隊の通信兵が言う。

「なんだと!中尉!第4地区に救援に向かうべきと思うが貴官は?」

「決まっているでしょう!我隊も続きます!」




――――――――――第4地区―――――――――――




そこにいた共和国部隊の多くは重砲部隊が中心でとてもセイバータイガーを中心とする高速戦闘隊の敵ではなかったとおもわれた。

「わああ」

セイバータイガーにゴドスが叩き伏せられる。

「こいつ!」

ジム少尉とラインハルト軍曹のカノントータスが液冷式荷電粒子ビーム砲を発砲、セイバータイガーは危なげなく回避する・・・だがデュランのコマンドウルフが電磁牙を青白く光らせセイバーの喉笛に食らいついた。
横転するセイバータイガー。

「中尉!後退して」

エミリアのキャノニアーゴルドスが頭部の側面のロングレンジガンを横転したセイバータイガーの胴体に叩き込んだ。

碌に装甲で守られていなかった内部機関をめちゃくちゃにされ火達磨になるセイバータイガー。
別のキャノニアーゴルドスがセイバータイガーのレーザー機銃を頭部に受けて崩れ落ちる。

「この!」

カノントータス隊が反撃の砲火を挙げるが赤い砂地に空しく砂柱を上げるだけだった。

「くそ!早すぎる!」

セイバータイガーとヘルキャットの機動性の前に共和国軍はきりきり舞いさせられていた。
セイバータイガーのビーム砲を受けたカノントータス・スーパーキャノンが爆散する。
装備されていたゴジュラスキャノンの砲弾の威力は凄まじく巻き沿いを食ったカノントータスが横転する。

帝国軍高速戦闘隊の攻勢の前に共和国軍は密集して弾幕を張ることしかできなかった。

「よし!連中は俺達が引き受ける!第二部隊は進軍してくれ!」

セイバータイガー・スナイパーに搭乗する第一高速部隊指揮官のヨーゼフ中佐は第二高速部隊の指揮官を務めるアストリッド大尉に先に進撃するよう命令した。

「了解!」

アストリッド大尉の白無垢のセイバータイガー以下12機のヘルキャット、セイバータイガーが本体から離脱する。
「行かせるか!」
コマンドウルフ3機が追撃するが・・先頭の一機が頭部を吹き飛ばされる。
「ここが貴様らの墓場だ!」
ヨーゼフ中佐のセイバー・スナイパーの大型狙撃砲が火を噴いた。

コマンドウルフが機体をくの字に折り曲げ、大破した。

最後のコマンドウルフに飛びかかろうとした次の瞬間、セイバータイガー2機が強力なビームをくらって大破した。

「エイラ!マインツ!増援か?」

数秒後、アロザウラーとゴドス6機、シールドライガーmkU、コマンドウルフ改、コマンドウルフ2機、カノントータス2機が現れる。

「デュラン無事か?」

「なんとかな、ジェフ」

デュラン少尉のコマンドウルフは後退する。
同時にコマンドウルフ改が援護のミサイルを発射する。
ヘルキャット2機が被弾し動きを止める。

「そこだ!」 

ノエル軍曹のゴドスが背中の2連装対空レーザー機銃をヘルキャットに叩き込み撃破した。
ヘルキャットの2連装対ゾイドビーム砲をコックピットに食らったゴドスが糸の切れた人形の様に崩れ落ちる。

セイバータイガーがキラーサーベルを光らせ、ゴドスに飛び掛かり、胴を切り裂いた。

「ばっばけもの!」

ガイサックが30oビームライフルを乱射する。
セイバータイガーはワルツでも踊る様に回避すると地対地ミサイルポッドからミサイルを発射、ガイサックは木っ端微塵に吹き飛ぶ。

セイバータイガーが次の獲物を探そうと機首を巡らせたがアルバートのシールドライガーmkUにビームキャノンを叩き込まれて爆散した。

ヘルキャット6機が全火器を叩き込むが、Eシールドで防御したシールドライガーmkUはミサイルを発射し、4機を撃破する。

「指揮官機は奴か!」

アルバートがヨーゼフのセイバータイガー・スナイパーを認めたのと同時にヨーゼフ中佐もシールドライガーmkUを確認していた。

「奴が中核戦力か!」

ヨーゼフは自機の背中に装備された中世の騎士の槍を彷彿とさせる大型狙撃砲の照準をシールドライガーmkUに合せる。
対するシールドライガーmkUもビームキャノン砲の照準をセイバータイガー・スナイパーに合せた。 


・・・・そして二人は同時に引き金を引いた。

[304] エウロペ戦記 5章 後篇 ロイ - 2011/05/05(木) 20:09 -

高出力ビームがセイバータイガー・スナイパーに迫ると同時に大型狙撃砲から電磁加速された徹甲弾がシールドmkUに迫る。

「ちっ」

シールドmkUは攻撃を回避することができたが、セイバー・スナイパーは完全に回避しきれず左肩装甲の一部が飴の様に溶けた。
シールドmkUはEシールドを展開して突撃する。

「なにっ!」

ヨーゼフは大型狙撃砲の引き金を引いたが、生憎通常弾だったためシールドを打ち破れず突撃を受けて体勢を崩してしまう。

「いまだ!」

アルバート少佐はミサイルを発射、固体燃料の白い尾をひいてミサイルが迫るが、寸前で体勢を立て直したセイバー・スナイパーは辛くも回避する。

「全機撤退する!!」

このままでは全滅すると判断したヨーゼフ中佐は撤退命令を下した。

「しかし!アストリッド隊が孤立する恐れが!」

部下の一人が異論を唱える。

「もう直ぐ増援が来る!それまで我々が消耗する意味はない」

「わかりました。」

幸い彼らを共和国軍は追撃しなかった為彼らは撤退に成功した。
同時に高度600mからシンカーD型42機が接近する。

「高度600にシンカー!!いずれも爆装していると思われます」

「全員!!対空防御!!!奴らの狙いは57基地だ!」

同時にシンカー隊の一部が急降下する。
キャノニアーゴルドスのバスターキャノンが発射され、数千個の弾子をシンカーの予想進入空域に巻き散らかした。

「わああ」

急降下に入っていたシンカーは回避しきれず煙を上げて墜落する。

「落ちろ!」
アロザウラーの2連装ビーム砲が一機のシンカーD型の左翼をもぎ取る。

「いかせるか!」

アルフのマンモスのマクサービーム砲を受けたシンカーD型がバランスを崩す。

「吹っ飛べ!」

ケレア少尉のカノントータスが突撃砲を発射、シンカーは爆散する。

13機のシンカーが撃墜されるが、29機のシンカーが突破した。

同じ頃・・・・・防衛ラインを突破したアストリッド隊は共和国軍部隊と交戦状態に入っていた。

「みんな!この部隊を撃破したら、すぐ先には共和国軍の補給所よ!」

指揮官のアストリッド大尉が激を飛ばす。

「ここから先は通さんよ!!」

ヘンリー大尉率いる共和国軍第24中隊とクリメント中尉の第25中隊が立ちふさがる。

「全機砲撃!十分距離をとれ!ダブルソーダ・ボマー部隊は連中の足を止めろ!数を減らす!」

ダブルソーダ・ボマー6機が低空に降りて機銃掃射を敢行する。
2機のヘルキャットが被弾し速力を低下させる。

アストリッドの白無垢のセイバータイガーに一機のダブルソーダ・ボマーがビーム砲を放つ、だが

「甘い!!!」

セイバータイガーはジャンプすると、コックピットにストライククローを叩きつけて撃破した。

「ボブ!!畜生!!」

別のダブルソーダ・ボマーが空中で回避運動ができないセイバーにロケットランチャーを放つ。

「そんなもの!」

セイバーは対ゾイドビーム砲を発砲、ロケット弾ごとダブルソーダ・ボマーを撃墜した。

「滞空状態で飛行ゾイドを撃墜するとは・・・ダニー・ダンカンか!?」

ダブルソーダ・ボマー部隊を率いるゲイリー少尉は驚愕した。

次の瞬間彼の目の前で一機のダブルソーダ・ボマーがブレイクソードを白無垢のセイバータイガーに咥えられて地面に叩き付けられた。

セイバーはそのダブルソーダ・ボマーのコックピットを叩きつぶすとゲイリーのダブルソーダ・ボマーに投げ付けた。

「なにぃ」

予想だにしない攻撃にゲイリーの思考は一瞬停止した。
彼が最後に見たものはダブルソーダ・ボマーの灰色の胴体下部装甲だった。

2機のダブルソーダ・ボマーは縺れ合いながら地面と激突した。

最後の2機はコックピットを別のセイバータイガーに対ゾイドビーム砲を受けて大破した。
既に戦闘は格闘戦に移行していた。

「くたばれ!!」

ヘンリー大尉のベアファイターが電磁キャノン砲を発射、ヘルキャットが胴体を貫かれ崩れ落ちる。

コマンドウルフが電磁牙でヘルキャットの頭部を噛み砕くが背中のAZ2連装ビーム砲を別のヘルキャットに破壊される。
そのコマンドウルフにアストリッドのセイバータイガーが飛び掛かる。
叩き伏せたコマンドウルフの首にストライククローを叩き込み機能不全に追い込んだ後、ゴドスのコックピットを3連衝撃砲で粉砕した。

「撃て!!砲撃戦で撃破するんだ!!」

指揮官機仕様カノントータスに搭乗するクリメント・メレツコフ中尉が怒鳴る。
カノントータスやMLRSトータスの砲撃を並みのパイロットなら失神してしまう程の激しい動きで掻い潜ると側面に回り込む。

「なに!」

「いただき!!」

アストリッドは射撃演習の的の様にたやすく照準を合わせると引き金を引いた。カノントータス隊の列は次々と紅蓮の業火に包まれた。

「おのれ!!」

怒りに燃えるコマンドウルフ、ゴドス2機が接近する。

アストリッドは左のゴドスに3連衝撃砲を連射した。

ゴドスの胴体は内部機関がむき出しになるほどの損傷を受けていた。
幸い頭部は無事だった様だが、戦列復帰は不可能だろう。

右のゴドスが左足で蹴り掛けるがそれを最小限の動きで回避するとキラーサーベルで頭部に噛み付き、コマンドウルフ目掛けて投げ付けた。

「二度目は食わん!!」

コマンドウルフは何とかジャンプで回避するが、セイバータイガーは着地と同時に対ゾイドビーム砲を着地点に発砲した。
「しまったあ!」

コマンドウルフは胴体をビームに貫かれ爆発炎上した。

ヘンリー大尉の部隊は残り6機になりつつも何とか奮戦していた。

「もう直ぐ空軍が来るんだ!!そうなりゃ連中はおしまいだ」

そう言って彼は部下を鼓舞していたが、全滅は時間の問題だった。
次の瞬間、ゴドス2機のコックピットが砕け散った。

「なにっ!」

「大尉白いやつです!!こいつ、くたばりやがっわあぁ・・・・・ザ・・ザザ――――――」

部下の一人が報告する。
数秒後、その声は不自然に途切れた

「!?」

彼が振り向こうとした次の瞬間彼を強い衝撃が襲った。

「くっ!」

ベアファイターの左腕をもぎ取った白い影・・・・セイバータイガーは反転すると対ゾイドビーム砲を右脚に叩きこんでベアファイターの動きを止める。

「よくも!」

ベアファイターは6連ミサイルを乱射する。
セイバータイガーはそれを回避すると、ベアファイターの口腔目掛けてレーザー機銃を叩き込んだ。

「・・・わああ」

コックピット内の計器が爆発し、コックピットは煙と炎に包まれた。

[309] エウロペ戦記 6章 前篇 ロイ - 2011/06/15(水) 23:29 -

「ばっ、化物め・・・」

重傷を負い、薄れゆく意識の中でヘンリー大尉は或るものを見た・・・白いセイバータイガーの左肩の上に白い影≠、それはヘンリー大尉の幻だったかもしれない。

その刹那、ベアファイターのコックピットは爆発した。

指揮官の戦死を見たゴドスとカノントータスの搭乗員はゾイドを降りて帝国軍に降伏した。
だが帝国軍は捕虜を取らず、コックピットを破壊するだけで進軍を再開した。
そのため搭乗員は後に敗残の友軍部隊に回収された。

彼ら以外の部隊も第43基地に向かっていた。

レッドラストの赤い大地を9機のイグアンと3機のゲーター・レドームが行軍していた。

「はあ・・・・暑い・なんて暑さだ・・」

イグアン5番機に搭乗するヨハン・クルーゲル軍曹はエウロペ派遣軍に配属されることになって本土防衛隊に所属している最年長の妹と別れるときに貰ったハンカチで額の汗を拭った。
セスリムニル出身の彼はこのエウロペの気候に完全に参ってしまっていた。

「5番機遅れるな!我々は一刻も早く降下したPK師団と合流せねばならんのだ!」

指揮官機からの通信が入る。

「了解!」

彼は馬鹿らしいほどの大声で復唱した。
2日前には4番機のハンス軍曹が、昨日は6番機のホート軍曹がヘマをして立て続けに修正≠ウれていたため彼としては必死だった。

「(生きて帰って妹たちに会ったときにはきれいな顔でいたい!!)」

彼は本土の妹達の顔を思い浮べつつ、心の底から強く思った。

「中尉!此処から67キロ先に金属反応!恐らくPK師団のものと思われます!」

ゲーター・レドームSに搭乗するアヤ軍曹が言う。


3分後・・・その地点に彼らは到着した。

そこにはゾイドの残骸・・・コックピットを粉砕されたガイサック、胴体を蜂の巣にされたハンマーロック、背鰭を叩き潰されたゴルヘックス等が転がっており戦闘の激しさが窺えた。
其処から少し離れたところに輸送機が墜落していた。

「こりゃ、42oにやられたなあ」

この隊では珍しいベテラン兵のヘルベルト曹長が輸送機の残骸を見て言う。

「(ざまあみやがれ!)」

ホート軍曹はPK師団の屍を見ながらそう思っていた。
というのも、彼は以前模擬戦闘でPK師団に見事に完敗してしまった挙句、戦闘後に修正≠ウれた経験があったのである。
元々ゾイド適性がアヤ軍曹にすら劣っていた彼は一番上官のテオドール中尉の修正≠受けており今ではベテラン兵のヘルベルト曹長に隊長殿のサンドバッグ≠ニ揶揄されていたのである。

「生命反応なし・・・生存者はいません」

ゲーター・レドームS3番機のウラソフ軍曹が報告する。

「中尉!我々だけで敵基地に向かうのは無謀です!他部隊と合流しましょう!!」

副官のマルヒ少尉が意見具申する。

「なにをいっている!帝国空軍の爆撃で共和国軍の基地は混乱している!攻撃の機会は今をおいて他にない!!!」

指揮官のテオドール・アイゼンベルガー中尉は口角泡を飛ばさんばかりの大声でそれを撥ね付けた。
無論、彼も名誉欲からそう言ったのでは無かった。
彼は後退していく爆撃隊の軽微な被害状況から現状の戦力でも可能と踏んでいたのだ。

5分後・・・彼らは43基地に到着した。

基地の周囲は爆撃によってクレーターが多数生まれ、所々にゾイドの残骸が転がっていた。
基地自体も幾つかの壁が崩れ、中の施設も多くが倒壊していた。
部隊は倒壊したメインゲートを一斉射撃で破壊すると、内部に侵入した。

「全機!哨戒行動を開始する。」

部隊はイグアン3機でゲーター・レドームS3番機を護衛する形で、哨戒行動を開始した。

「暑い…クーラーの故障か?」

クルーゲルはクーラーの性能の劣悪さにぼやいた。

「大丈夫か?ヨハン、ちゃんと水分補給しろよ。」

ウラソフはそういうとニクシーの酒保で購入した天然水を飲み始める。

「全く、共和国の奴らがバカやったせいでこっちは散々だ。」

そして指揮官機のイグアンがクレーンの残骸を通過した瞬間、付近の瓦礫から対ゾイドミサイルが発射され、ウラソフのゲーター・レドームS3番機の背鰭を無様な鉄屑に変えた。

「やったぞ!」

共和国兵はすぐに地下道を使って離脱した。

「おのれ!(隊列を一列にしたのが失敗か!くそっ!)」

テオドール中尉は瓦礫にインパクトガンを叩きこんだが既に共和国兵は撤収していた。

さらにまた対ゾイドミサイルが発射され、ウラソフのゲーター・レドームS3番機に命中する。
ウラソフは脱出しようとしたが、コックピットの爆発に巻き込まれた。
ウラソフは噴き上がった炎の中で悶えながら砂の様に崩れ去った。

「くそおお!!」

先ほどまで隣で会話していた同僚の死を見たホート軍曹は錯乱し、インパクトガンを乱射し始める。

「軍曹!やめるんだ!!」

次の瞬間ホートのイグアンのコックピットをレーザーが貫いた。

「新手か!」

「此方、ゲーター1番機!格納庫に付近にガイサックを確認!!」

ゲーター・レドームS1番機から報告が入る。

「此方、マルヒ!ゴドスを含む有力な敵部隊と遭遇!!」

マルヒの小隊の側面を衝く形でゴドス2機、メガトプロス5機が兵員輸送トラック3輌を引き連れて現れる。
それを支援するかのように幾つかの廃墟からロケット弾の白煙が上がる。

ゲーター・レドームS1番機がチャフ・フレアディスペンサーを作動させる。

「こいつ等!!」

ヘルベルト曹長のイグアンがゲーター・レドームSの盾になる形で布陣すると同時に
3機のイグアンは迫りくる敵部隊へ四連装インパクトガンを連射した。

これには堪らずゴドスは山積みされていたコンテナの陰に隠れる。
兵員輸送トラック1輌が被弾し、瓦礫やコンテナと激突、爆発した。

24ゾイドでは比較的重装甲のトリケラトプス型24ゾイド、メガトプロスも次々と各坐し、
特徴的な半透明の装甲に守られた内部機関から黒煙を上げて機能停止に追い込まれる。
何とか2機のメガトプロスがコンテナの陰に隠れる。

「よし!今のうちに中尉達と合流するぞ!!」

マルヒ少尉がそういったと同時に後方からゴドスが襲いかかる。

「ハンス!後方に敵機!」

ハンスは機体を反転させようとしたが、それよりも早くゴドスのクラッシャークローがイグアンのコックピットを叩き潰していた。

「よくも!」

ヘルベルト曹長のイグアン7番機がインパクトガンを叩きこみ撃破した。
だが、その隙に何時の間に陣地転換したのか蠍型ゾイドガイサックの部隊が廃墟の陰に隠れて尾部のレーザーライフルを発砲、マルヒは回避したが、ヘルベルトのイグアンは彼ほど幸運ではなかった。

幾条もの細長い糸の様な青白いレーザーに機体を射抜かれて彼のイグアンはゾイドコアが自壊して大爆発した。

「ヘルベルト曹長!?まずいゾイドコアが!」

例え小型ゾイドのコアでも暴走した際の爆発は高性能爆薬にも匹敵する・・・・士官学校時代教官から聞いた話を思い出したマルヒはあわてて機体を後退させた。

マルヒは何とか後退できたが、アヤ軍曹のゲーター・レドーム1番機が巻き込まれ大破する。

数刻までヘルベルトのイグアンが立っていた辺りは、溶鉱炉の鉄の様に真っ赤に色づき、さながら地獄の門が開いたかの様だった。

ガイサック部隊はマルヒのイグアンに盛んにレーザーで射撃を加えるが、先ほどの爆発の熱と電磁波で照準が乱れているのか、レーザーは掠める事さえなかった。

マルヒは腰部のフレキシブルスラスターを全開にしてまだ無傷のロスナー隊と合流しようとしたが、隠れていた歩兵が対ゾイドミサイルを発射、ミサイルは固体燃料の白い尾を曳きながら、イグアンのフレキシブルスラスターを吹き飛ばした。

マルヒのイグアンは尻もちをつく形で各坐した。

「くそっ!」

各坐した際にマルヒは運悪く頭をぶつけてしまい、それによって数秒、反応が遅れてしまった。

それはこの状況では致命的な遅れだった・・・マルヒは何とかイグアンを立ち上がらせたが、同時にゴドス2機が銃撃を浴びせ掛けた。

「なに!」

駆動系を損傷していたマルヒのイグアンは胴体を穴だらけにされて崩れ落ちた。


ロスナー・ヴァルケンバーグ少尉の小隊もアタックゾイド部隊と交戦していた。
ロスナー少尉のイグアンに3機のパワードスーツがマシンガンを撃ちながら接近する。
先頭の機体が右腕に装着されたレーザーソードを展開する。

「こいつめ!」

ロスナーは頭部側面に装備されたビーム砲を叩きこみ撃破すると、スマッシュアップテイルで一機を跳ね飛ばした。
跳ね飛ばされた一機は施設のコンクリート製の壁を打ち抜きその施設を崩壊させた。

だが最後の一機は、ロスナーのイグアンを突破し、ミハエルのゲーター・レドームSに迫る。
ミハイルは前足に装備された対人機銃を叩き込んだ。

パワードスーツは貫通されることはなかったが、驟雨の様な銃弾の雨に動きを止める。
そこをヴァルター曹長のイグアンが容赦なく踏み潰した。
灰色のコンクリートの地面が赤黒い血液と粘ついた黄色い伝導液で汚される。

間髪いれずに彼らを包囲するかの様にアタックゾイドや歩兵が廃墟から飛び出す。

格納庫から光学迷彩シートを被って隠れていた蟷螂型小型ゾイド、スパイカーがハイパーサーベルを振り上げて側面からヴァルターのイグアンに飛び掛かる。

「なに!」

不意を突かれたヴァルターのイグアンは回避しきれず、左腕をもぎ取られる。
スパイカーは素早く、廃墟に後退する。

「歩兵多数!!!アタックの数は少なくとも10機以上!!!わああ」

ゲーター・レドームSに共和国兵の放った自動小銃が着弾する。
流石に5・62o弾ではゲーターの装甲板が貫かれることはなかった。

「こいつら!!!」

ミハイルは半ばパニック状態で対人機銃を乱射した。
歩兵は防弾服を着用していたが15o炸裂弾の前では無意味だった。

「ぎゃあ!」

 「ぐわ!」

「バーミット!」
前の黒色の防弾服で身を固めた屈強な兵士達が全身から血を噴き出して肉塊に姿を変えるのを見た整備兵のニック・ロバート一等兵は蒼ざめた。
整備兵の彼には自動小銃と吸着爆雷でゾイドに挑むことがいかに無謀か十分すぎるほど理解していた。
彼は手に持っていた自動小銃をゲーター・レドームSのコックピットに乱射した。

民間の工場技師上がりの彼も軍用ゾイドの装甲を自動小銃で射撃することの無意味さを痛いほど認識していたが、そうでもしなければ正気ではいられなかった。

「このままじゃやられちまう!!ぐぁ」

ニックが堪え切れず叫んだ、その刹那、彼の胸部を15o炸裂弾が貫いた。
彼の着用していた機械油とゾイドの血液で汚れたヨレヨレの黄色い整備服は紙の服ほどの効果も無かった。
それでも数名の共和国兵が接近し対ゾイドライフルを発砲、レドームが破損する。

「仲間の敵だ!背びれ野郎!」

別の共和国兵が匍匐前進で側面から接近し、対ゾイドミサイルを発射、ゲーター・レドームSはコックピットを破壊され各坐した。

「ミハイル!!」

ヴァルターのイグアンはビーム砲を歩兵部隊に向けたが、後ろからクロスウィングが胴体下部のロケット弾頭を発射、左脚部関節に命中し、イグアンの動きを止めた。

ヴァルターのイグアンに止めを刺すべく歩兵部隊が対ゾイドミサイルを四方から発射した。
ヴァルターのイグアンは回避しようと必死であがいたが、3発目がコックピットを吹き飛ばした。残りのミサイルはすべてイグアンに着弾し、イグアンは爆砕した。

「あっ!,ヴァルター曹長が!そんな!」

ロスナーの隊と合流しようとしていたヨハンはヴァルター曹長のイグアンが爆砕するのを見て思わず声を上げた。

「ヨハン!今は感傷にひたるな!お前も後を追うことになるぞ!」

同じく合流しようとしていたテオドール中尉が叱咤する。
彼らの目の前に突然、スパイカーが現れる。

「側面を晒すとは、おろか者め!」

テオドールは側面を晒したスパイカーの搭乗員を嗤った。
スパイカーも機体後部の30mm連装対空砲で2機のイグアンを迎撃するが、銃手の腕が悪く、近くにあった水タンクを穴だらけにしただけだった。

イグアンの四連装インパクトガンがスパイカーの脇腹に突き刺さった。
華奢な構造のスパイカーは粉々に砕け散った。

廃墟の各所から対ゾイドロケット弾が2機に発射される。

ロケット弾の数が少なかったこともあってヨハンのイグアンには命中弾はなかったが、
テオドール中尉の機体には数発命中してしまう。

「中尉殿!」

「大丈夫だ、連中は時間稼ぎが目的だ。放っておけ!」

彼らが前進を再開しようとした次の瞬間、近くの瓦礫から蛇型小型ゾイド、ステルスバイパーが現れる。

「なに!」

ステルスバイパーの頭部側面のヘビーマシンガンが火を噴いた。

ヘビーマシンガンをテオドール中尉のイグアンは回避するが、テイルスマッシュを受けて
コンテナに叩きつけられる。

「中尉殿!援護します!」

ヨハンはステルスバイパーを4連装インパクトガンで牽制しながら接近する。
その隙にテオドール中尉のイグアンは体勢を立て直しステルスバイパーに攻撃を仕掛ける。

ヨハンはさらに援護しようとしたが、
しかし、瓦礫から歩兵が現れミサイルランチャーを放った。

「歩兵!?」

イグアンの左肩アーマーが吹き飛び、左腕が力なく垂れ下がる。
脚部にもミサイルが着弾し、ヨハンのイグアンは膝をついた。

「こっ、こいつ!」

ヨハンは生身の歩兵を前に如何すればいいのか分からなくなっていた。
無論制圧用に開発された歩兵ゾイドであるイグアンには、対人機銃が装備されているが、彼はそのトリガーを引くことができないでいた。

さらに別の歩兵がロケットランチャーを放った。
固体燃料の白い尾を引いてロケット弾がコックピットに迫る。
この至近距離から回避不能ということはだれの目にも明らかだった。

「(そんな・・俺は死ぬのか?・・俺が死んだら俺とレナの仕送りで生活してる妹達はどうなる!?死んでたまるか!?)」

コックピットの中でヨハンは迫りくる死を逃れようと彼は震える手足で機体を操作しようとあがいたが、それは徒労に終わった。

「畜生!」

次の瞬間イグアンの首にロケット弾が着弾し、すぐ上にあるコックピットが爆発に飲み込まれパイロットが一瞬で生きたまま火葬された。

「(お前ら、強く生きろよ・・)」

意識が焼失する最後にヨハンが思い浮かべたのは本土にいる妹達のことだった。
その直後、テオドール中尉のイグアンもステルスバイパーに締めあげられて機能停止に追い込まれた。
テオドール中尉は自爆しようとしたが、その前にコックピットを破壊された。
また、既にロスナー隊もガイサック隊によって沈黙させられていた。

廃墟と化した基地の各所からマンモスmkU、ゴルドス、コマンドウルフ市街戦仕様、コマンドウルフ、ゴドス、ステルスバイパー、スパイカー、ガイサック、カノントータスが現れる。

「中尉、敵部隊に生存者はいるか?」

司令機のマンモスmkUがステルスバイパーに通信を送る。

「センサーで確認しましたがいません。」

第1小隊指揮官のステルスバイパーに搭乗するジョン・グラント中尉が報告する。

「了解した、第1小隊、被害は?」

「スパイカー1機喪失、パイロットは重傷ながら生存、グスタフ・トレーラーに移送願います。機械化歩兵6名死亡」

「第2小隊、被害は?」

「はっ、ゴドス1機とメガトプロス3機、兵員輸送車1喪失、歩兵多数死傷、補充を求みます」

第二小隊指揮官のマーク・パーシング中尉が報告する。

「第3小隊被害は?」

「エクス・グランチュラ1機中破、パイロット負傷」

ガイサック・カスタムに搭乗する第3小隊指揮官のカイル・スコット中尉が報告する。

「中佐、帝国軍部隊接近!数は少なくとも50機以上、機種は小型が大多数でレッドホーン等大型機は1機しか確認できません」

ステゴサウルス型電子戦ゾイド・ゴルドスのマイ・ミナツキ大尉が報告する。

「全部隊配置につけ!!連中は機械人形を叩き潰して油断している。ガイサック部隊とステルスバイパーはゲーターを攻撃して連中の目を潰した後、重砲部隊に攻撃を仕掛けて離脱、重砲部隊はその後砲撃を開始、コマンドウルフ部隊は敵部隊を撹乱、仕上げは強襲部隊が行う。」



「「「「「了解!」」」」」







――――――帝国軍部隊―――――――





スリーパーガイサック部隊を掃討した帝国軍第56大隊は第43基地へ向け進軍していた。

「全機進め!PKの連中よりも先に共和国の基地を陥落させるんだ!!」

ダークホーンに搭乗する第56大隊長を務めるアルベルト・ゼッゲンドルフ中佐は共和国軍の動きの無さに油断しきっていた。

ゲーター8機は索敵行動に従事していたが、周辺に転がる残骸が未だに熱を帯びている上、電波状況が悪化していたため、余り意味はなかった。

このような状況では音響索敵を中心に行い、歩兵を展開させることで見張りとすることで敵の奇襲に備えるべきなのだが、この開けた土地で奇襲攻撃を仕掛ける部隊は無いだろうと彼らはそのいずれも怠っていた。

カイル中尉率いるガイサック・カスタム部隊とグラント中尉の部隊は側面から地中に潜航することで56大隊に忍び寄っていた。

一定の距離でガイサック・カスタム8機は手筈通り尻尾のみを地表に露出させた状態でレーザーライフルを一斉に発射した。

8条の紫の細長い光線がゲーター部隊を貫いた。

レーザーライフルの貫徹力は小型ゾイドの装備火器の中でも最高レベルの物で、ゲーター16機の内9機が背鰭を吹き飛ばされるか、大穴を開けられるかして電子戦機としての機能を完全に喪失した。

「敵襲だと!」

「此方ゲーター隊!我索敵能力の過半を喪失!ガイサックです!」

ゲーター隊の指揮官、ハインリヒ・ルッサー少尉が報告する。

「4時方向に敵機!ガイサックです!」

同時に最後尾のキャノリーモルガ部隊の側面を衝く形で、ステルスバイパーとガイサックが砂から飛び出した。

キャノリーモルガがステルスバイパーのヘビーマシンガンを背中のグラインドキャノンに受けて爆散した。
ガイサックのビームライフルでコックピットを撃ち抜かれたゲーターが頓挫する。
別のガイサックが両腕のレーザークローを器用に使ってキャノリーモルガを横転させる。

護衛のイグアンがグラントのステルスバイパーに飛び掛かるが逆に機体に絡みついて締め上げて機能停止させる。
別のイグアンが銃口を向けたが、味方機ごと撃つ勇気が無くヘビーマシンガンで一方的に撃破された。
キャノリーモルガ部隊はグラインドキャノンを放棄して離脱をはかる。

「これで仕上げだ!」

止めとばかりにステルスバイパーとガイサックの混成部隊は砲弾運搬仕様のモルガや旧式のカタツムリ型小型ゾイド・マルダーや竜脚類型小型ゾイド・ザットンに集中砲火を浴びせ掛けた。

それらに搭載されていた弾薬が爆発しさらにその爆炎は放棄されたキャノリーユニットを次々と巻き込み大爆発に発展した。

「全員ずらかるぞ!もたもたするな!」

ステルスバイパーとガイサック部隊は足早に砂中に潜航した。

爆発を確認した重砲部隊のカノントータス14機が液冷式荷電粒子ビーム砲の砲身を上に向けて発射する。
紫色の荷電粒子ビームが地球由来の磁場操作技術によって実弾砲と同じ様に綺麗にカーブを描いて帝国軍部隊に吸い込まれた。

数十秒後、帝国軍部隊の各所で閃光がひらめき、無数の爆発と黒煙が上がった。

続いてカノントータス・ヘビーガンとゴルドスガナーのロングレンジバスターキャノンが咆え、
火柱が上がると共に付近に展開していた歩兵やアタックゾイドが軽やかに舞い上げられる。

「此方!電子戦部隊!!指揮官以下多数戦死!」

「第四小隊壊滅!重砲隊は何をしてるんだ!」

「5番機大破!脱出します!」

立て続けに攻撃を受けた帝国軍の混乱に乗じてアンソニー・グリゾム大尉率いるコマンドウルフ部隊が突入をかける。
コマンドウルフのAZ50mm連装ビーム砲にゾイドコアを撃ち抜かれたイグアンが崩れ落ちた。

「いかせるか!」

アルベルトのダークホーンがビームガトリングを掃射するがコマンドウルフ部隊は容易く回避する。

「わああ」

イグアンが四連装インパクトガンを乱射する。

「邪魔だ!」

アンソニーのコマンドウルフ市街地仕様がロケットランチャーを叩き込んで撃破する。

コマンドウルフ市街地仕様はモルガ部隊目掛けてロケットランチャーを連射した。
モルガ部隊で胴体装甲に攻撃を受けた機体は爆発炎上、大型ゾイドに匹敵する強度を持つ頭部装甲は貫かれなかったが、被弾の衝撃に中の搭乗員が耐えきれず戦闘不能となった。

部下のコマンドウルフが電磁牙で逃げ惑う兵員輸送用モルガの一機を葬る。
降り注ぐ重砲弾から逃げ惑う背びれを失ったゲーターがコックピットを噛み砕かれる。
噛み砕いたコマンドウルフの牙からオイルとも血液つかない赤黒い液体が零れおちた。

背中のロングレンジビーム砲を吹き飛ばされたヘルディガンナーが不用意に黒煙の中から飛び出す。

「くたばれ!!」

マテュー少尉のコマンドウルフが電磁牙で首筋のエネルギーチューブを引き裂いた。
ヘルディガンナーはスパークを上げて機能を停止する。
マテューのコマンドウルフの横からダークホーンが突っ込む。

「!?」

マテューのコマンドウルフは回避しきれず、クラッシャーホーンに跳ね飛ばされ地面に叩き付けられる。

「止めだ!!」

ダークホーンが加速ビーム砲を連射する。
華奢な構造のコマンドウルフは蜂の巣にされて爆散した。

「かこまれた!!離脱できない!!ぐわぁ・・」

ウィン・ドーセット少尉のコマンドウルフが小型ゾイド部隊に群がられ、袋叩きにされる。

「潮時か!後退するぞ!仕上げは本隊がしてくれる!」

コマンドウルフ部隊は煙幕発生装置を作動させ、その隙に後退した。

[311] エウロペ戦記 6章 中篇 ロイ - 2011/08/14(日) 04:54 -

「いまだ!全員突撃!!」

コマンドウルフ部隊が後退するのを見たマンモスMkUに搭乗する司令官が命令を下す。
マンモスmkUを先頭として、ゴドス、カノントータス突撃型、カノントータス、スパイカーが進軍した。

「共和国軍部隊、12時方向より接近中!!」

「なに!」

部下の報告を聞いたアルベルトは驚いた。

次の瞬間彼と彼の僚機のダークホーンと犀型ゾイドブラックライモス2機に砲弾が降り注いだ。
左にいたブラックライモスが砲弾の弾着によって生まれた砂柱で姿が見えなくなる。

「ペーター!」

砂煙が晴れたとき其処にはブラックライモスの無残な姿が転がっていた。

キャノリーモルガ部隊が接近する共和国部隊に砲撃を浴びせ掛ける。
既に先ほどの奇襲攻撃で16機いたキャノリーモルガは5機にまで減っていたが、それでも兵士たちの技量は決して侮れるものではなく、グラインドキャノン砲も大型ゾイドを葬る威力を秘めていた。

初弾は共和国部隊の手前の地面を抉ったのみだったが、第2射で共和国部隊に被害が出た。

前列のゴドス2機が無残にも粉々に砕け散った。
搭乗員は即死していた。

その報復は速やかに行われた。
マンモスMkUの背中のバスターキャノン砲が火を噴き、キャノリーモルガ2機が大破した。

帝国軍もダークホーンが背中に装備していたビームガトリング砲を掃射した。
かつて旧大戦時代のダークホーンにはもっと威力のあるハイブリッドバルカン砲という兵器が装備されていたが、今は整備の問題等で普通のビームガトリング砲を装備している。

だがそれでも、その威力は軽装甲の共和国軍の小型ゾイドには十分な脅威だった。
ガトリングの銃口から無数の光弾が吐き出され、ゴドスがばらばらに砕け散り、その足元にいたカンガルー型アタックゾイド・ショットダイルとオルニトレステス型アタックゾイド・バトルローバーが地面ごと抉られた。

共和国側もカノントータス突撃型と後方の砲撃部隊が砲撃する。
尤もカノントータス突撃型の砲撃は殆ど移動射撃のため、命中率は低かった。
それによって帝国軍の砲撃が中断され、共和国軍部隊は接近戦に持ち込む事ができた。
ヘルディガンナーのロングレンジビーム砲がカノントータス突撃型の装甲を撃ち抜き爆発炎上させた。
マンモスmkUのストライクノーズがイグアン2機を跳ね飛ばし、
後退するキャノリーモルガを鼻先のマクサービーム砲で牽制する。
イグアンがカノントータス突撃型の放った突撃砲弾を受けて胴体を粉砕される。
一時後退していたコマンドウルフ部隊も攻撃に参加する。
コマンドウルフ市街地仕様がロケットランチャーを撃ちまくる。次々と小型ゾイドが撃破される。
イグアンがコマンドウルフに叩き伏せられ、モルガが側面装甲をかみ砕かれて撃破される。

「おのれ!!」

怒りに燃えるダークホーンがビームガトリング砲をコマンドウルフ部隊に掃射した。
運の悪いコマンドウルフ2機が内部機関から火を吹いて爆発する。
カノントータス突撃型が突撃砲を撃つが、ダークホーンの漆黒の装甲に弾かれる。
逆に三連リニアキャノンで正面装甲を撃ち抜かれて撃破された。
別のカノントータスも砲撃するが、ビームガトリングで蜂の巣にされた。
偶然、コマンドウルフの放ったAZ50mm連装ビーム砲がダークホーンのビームガトリングの基部を撃ち抜いた。
ビームガトリングは数瞬の間光弾を吐き出しながらダークホーンの背中から零れおちた。

「こいつめ!!」

ダークホーンはミサイルを発射、コマンドウルフの前足があらぬ方向にねじ曲がる。
ダークホーンは蹲るコマンドウルフをクラッシャーホーンで跳ね飛ばした。
ホルガー少尉のブラックライモスが超硬度角でカノントータスを撃破する。
「これ以上は…やらせん!!」マンモスMkUがビームタスクを振り上げてダークホーンに突撃する。
ブラックライモスが大型電磁砲を発砲する。
だが、それはマンモスMkUの正面装甲板を凹ませただけだったが、マンモスMkUの動きを鈍らせるのには十分だった。
ダークホーンはギリギリでビームタスクを回避すると、高圧濃硫酸噴射砲を浴びせ掛けた。
濃硫酸を浴びたマンモスMkUの右脚装甲が溶け始め、マンモスMkUが悲鳴を上げ、痛みのあまり統制を失ったかのように暴れる。
マンモスMkUは元々古いタイプのコンバットシステムが採用されていたため、ZAC2099年当時のおおかたのゾイドに備わっている痛覚遮断機能が備わっておらず、濃硫酸噴射砲のようなゾイドの痛覚センサーに侵食してダメージを与える兵器には滅法弱かった。
「そこだっ!」

アルベルトのダークホーンはがら空きになったマンモスMkUの懐に飛び込もうとする。

「しまった!」

マンモスMkUの搭乗員は必死で体勢を立て直そうとしたが、とても間に合わないのは明らかだった。

「やらせるか!」

それを見たカイル中尉のガイサック・カスタムが至近距離からレーザーライフルを発砲、
ダークホーンの鼻っ面に命中した。

その攻撃でダークホーンは火器管制系統に異常が発生し、戦闘不能に陥った。

「おい!うごけ!」

追い打ちを掛けるべく、ガイサックやステルスバイパーが砂地から飛び出す。
ガイサック3機が攻撃を仕掛けようとしたその刹那、
横から砲撃が浴びせ掛けられた。

構造が華奢なガイサックは一溜まりもなく砕け散った。

「なに!」

ステルスバイパーはあわてて後退しようとしたが、胴体をブラックライモスに大型電磁砲で吹き飛ばされた。
「ホルガーか!」

「中佐殿御無事で!」

「何とかな・・火器管制をやられた・・・後退する。」

ダークホーンは部下の機体に護衛されながら後退した。
「こいつ!」

ホルガー少尉のブラックライモスが大型電磁砲をガイサック・カスタムに発射した。

「あぶねっ!」

ガイサック・カスタムはあわてて地中に潜航した。

「にげるか!」

ホルガー少尉はなおも加速衝撃砲で地中のガイサック・カスタムを攻撃しようとしたが、

「ぐわぁ!」

突如ホルガー少尉は強い衝撃に襲われた。
同時に彼の視界は独楽のように回転した。

マンモスMkUは跳ね飛ばしたブラックライモスに近づくと、後ろ脚だけで立ち上がり、その頭部を前足で踏みつけた。

ブラックライモスの頭部は無残にも潰され、内部機関の赤い部品が飛び散った。

マンモスMkUはひるむ帝国軍機にバスターキャノン砲を発射、マンモスMkU撃破のため砲火を集中させるために密集隊形を採っていた帝国軍小型ゾイド部隊は大損害を被った。

キャノリーモルガの最後の1機が残骸の陰からマンモスMkUに忍び寄るが、

「いかせるか!」

直掩機のカノントータス突撃型の突撃砲を頭部に受けて大破した。

「こんな砂漠で死んでたまるかよ!!」

搭乗員が恐慌状態に陥ったイグアンが戦線から逃亡を図った。
だがそのイグアンは砂地に脚を捕られて動けなくなる。

「うごけ!こいつ!」

何とか搭乗員は砂地から抜け出そうと機体を操作するが、もがけばもがくほどイグアンは砂に沈んでいく・・・

「このポンコツが!」

下半身が完全に砂の海に沈んだのと同時にイグアンの搭乗員はイグアンを乗り捨てようとコックピットの強制解放レバーに手をかけたその時、
イグアンの頭部にコマンドウルフのAZ50mm連装ビーム砲が命中し、コックピットごと搭乗員を蒸発させた。

「全員!敵を逃がすな!全滅させるぞ!」

マンモスMkUに搭乗する司令官が敵味方に聞こえるように通信周波数を調整して叫んだ。

無論周波数の違う帝国側には雑音混じりの音声しか聞こえなかったが、
むしろそれが帝国兵の恐怖心を煽り立てた。

「これじゃ、みんなやられちまう!!」

帝国兵の誰かが絶望のあまり叫んだ。

「落ちやがれ!」
電磁牙を光らせながらコマンドウルフがイグアンに飛び掛かろうとする。

だが、4時方向の稜線からレーザーやビームが放たれ、コマンドウルフを貫いた。
コマンドウルフはそのままの勢いで地面に突っ込んで大破炎上した。

同時に白のセイバータイガーを先頭にしてヘルキャット16機とセイバータイガー2機が鶴翼陣形を形成して共和国軍部隊に迫った。

「増援だと!」

「これ以上好きにさせない!!」

先頭を行く白いセイバータイガーが発砲、スパイカーがレーザーに貫かれ爆発した。

「重砲部隊!」

命令を受けて各所に分散配置されていたカノントータス、MLRSトータスが砲撃を始める。
その多くはアストリッド隊の後方にむなしく着弾するばかりだったが、3発の榴弾がアストリッド隊の前方上空で炸裂した。

驟雨のように無数の破片が降り注ぎヘルキャット2機が関節部に被弾し、部隊から脱落する。
間を置かず、対地ロケットの雨が降り注ぎその姿を爆炎が飲み込んだ。

同時にアストリッド隊は、共和国軍部隊の陣形に飛び込んだ。

ヘルキャットのレーザー機銃を全身に浴びせられたゴドスが爆砕する。

至近距離からカノントータスが液冷式対空自動キャノン砲を砲身が焼け付かんばかりに連射するが、
アストリッドのセイバータイガーはトランポリンの上の大道芸人さながらに軽やかに跳躍、
カノントータスを飛び越えて、後方に着地すると同時に前方のゴドスに高圧濃硫酸噴射砲を浴びせて撃破する。

反転すると、先ほど飛び越えたカノントータス3機に3連衝撃砲を叩き込んだ。
カノントータス3機は機体後部装甲を打ち抜かれ爆発炎上する。

アストリッドのセイバータイガーは行く手を塞ごうとした生意気なゴドスをキラーサーベルで容易く屠ると全速力で離脱した。 

共和国軍は砲撃を加えるが、後続のヘルキャット、セイバータイガーから銃撃を受けて中断させられる。
帝国軍高速戦闘隊は背中のレーザー機銃や30oビーム砲を共和国部隊に叩きこむと次々と殴り込む。

それはかつてこのレッドラストで興亡した民族の戦いを彷彿とさせた。

燃え上がる残骸の横をヘルキャット隊が駈ける。

慌ててガイサック3機が砂中から飛び出すが、集中砲火を浴びせられスクラップと化した。

「てめえら!やってくれるじゃねーか!!?」

グラントのステルスバイパー部隊がヘルキャット3機小隊に襲いかかる。

付近にいたヘルキャットにヘビーマシンガンを叩き込んで破壊する。

別のヘルキャットが飛び掛かってきたが、テイルスマッシュで跳ね飛ばす。

地面に叩き付けられたヘルキャットは体勢を立て直そうとするが、カイル中尉のガイサック・カスタムにレーザーライフルで止めを刺された。

「助かったぜ!カイル!」

グラントは士官学校の頃からの親友のカイルに感謝すると最後のヘルキャットを照準に捉え引き金に指を掛けようとしたその刹那、彼の意識は消滅した。

頭部をレーザーで射抜かれた彼のステルスバイパーは力なく赤い砂地に崩れ落ちた。

「!!」

カイル以下周囲にいた共和国兵は一瞬何が起きたのかわからなかった。

次の瞬間白いセイバータイガーが別のステルスバイパーの喉笛を噛み切った。

白いセイバータイガーはステルスバイパーの残骸を蹴り飛ばすと、ヘルキャットの手前に着地した。

「セイバータイガーだと!」

アストリッドの白いセイバータイガーはヘルキャットを庇う様にカイル達の前に立ち塞がった。

「こいつが隊長を!死ね!」

グラントの部下だったピョートル曹長のガイサックが背中のロングレンジガンを乱射しながら、
アストリッドのセイバータイガーに襲いかかろうとする。

「よせ!そいつはただもんじゃねえ!」

カイルが制止するがそれは遅すぎた。

彼のガイサックは両腕を三連衝撃砲で吹き飛ばされて動きを止めたところ頭部を踏み潰された。

「ガイツ軍曹!今のうちに早く離脱して!」

アストリッドが部下のヘルキャットに通信する。

「了解!」

ヘルキャットが後退すると同時に彼女の白いセイバータイガーは共和国軍に咆哮した。

「ひるむな!!撃て!!」

カイルの命令でガイサック・カスタム部隊がレーザーライフルを一斉に発砲した。
アストリッドのセイバータイガーは回避すると一番近くにいたアイザックのガイサックに飛び掛かった。

「くっくるなあああ!」

ガイサックはロングレンジガンで迎撃するが、それは藁を重ねて暴風をやり過ごすのと同じくらい無謀だった。
セイバータイガーの背中から銀色に輝く何か≠発射した。

アイザックがそれをミサイルであると知覚した時にはミサイルはガイサックの機体に突き刺さっていた。
同時に信管が作動しミサイルの爆発でガイサックは木端微塵に砕け散った。

「全機潜航!!」

カイルの命令を受けてガイサック・カスタム部隊は次々と赤い砂地に身を隠す。

「逃がさない!」

アストリッドのセイバータイガーはカイルのガイサック・カスタムに飛び掛かるが、
すんでの処で潜航に成功し、ストライククローは赤土を拭っただけだった。

「隊長!」

後方に回り込んだガイサック・カスタムが尾部レーザーライフルを発砲、大型ゾイドといえど軽装甲のセイバータイガーの装甲を貫くには十分だった。

「よし!」

ガイサック・カスタムの搭乗員は勝利を確信した。

だがアストリッドのセイバータイガーは背中に目が有るかのごとく
発砲と同時にジャンプして回避すると空中で尾部の高速キャノン砲を発砲した。
ガイサック・カスタムは背中の二基の化学燃料タンクを撃ち抜かれた。

その刹那毒々しい緑色の炎に包まれた。

「モーリス!!!」

セイバータイガーの着地するであろう地点にレーザーライフルを向けた。
「喰らえ!」

カイルだけでなく部下のガイサックもレーザーライフルを向ける。

「これで終わりだ!」

彼は引き金を引いた。
アストリッドのセイバータイガーが着地すると同時に幾筋もの細く青白い光の糸がガイサック・カスタムの尾部から放たれた。

アストリッドは着地の直前に右後脚と胴体以外が原形をとどめないほど破壊されたコマンドウルフの残骸目掛けて
三連衝撃砲を発射、黒煙がアストリッドのセイバータイガーの白い機体を包んだ、その直後レーザーが殺到した。

その直後爆炎が吹き上がった。

同時にゾイドが破壊された際に発生する電磁波が周囲に展開していたゾイドのセンサーを狂わせた。

[312] エウロペ戦記 6章 後篇 ロイ - 2011/08/28(日) 17:00 -

「やったのか?」

ガイサック・カスタムに搭乗するバルテルス曹長が恐る恐る言う。
全機友軍の援護に向かうぞ!カイルがそう言おうとした次の瞬間、

「ぎゃあああああ」

ガイサック部隊の通信回線を悲鳴が満たした。

「まさか生きて・・」
バルテルス曹長は言い終わらない内に乗機とともに砕け散った。

「ウィンのコマンドを囮にしたのか?!全機散開!!」
ガイサック・カスタム部隊は慌てて散開しようとするが、
その姿はアストリッドのセイバータイガーと部下のヘルキャット2機にとってその姿は鴨も同じだった。

「ふふ・・」
蜘蛛の子を散らすように逃げる彼らを見て彼女は滑稽に思ったのか微かに笑みを浮かべていた。
その美しくも怪しい笑みはすぐに消え失せた。

「撃て」
無感動に彼女が言うと同時にセイバータイガーの背部対ゾイド30o2連装ビーム砲が、対ゾイド三連衝撃砲が、レーザー機銃が、ミサイルポッドが、ヘルキャットの小口径2連装レーザー機銃が、ガイサック・カスタム部隊に叩き付けられた。

大型ゾイド1台を撃破できるほどの火力を叩き付けられたガイサック・カスタム部隊は瞬く間にせん滅された。
アストリッドのセイバータイガーは次の獲物に飛び掛かっていった。

次の獲物に選ばれたのはアーサー・ハイランド少尉のコマンドウルフだった。

ハイランド少尉は、ミハイル・グラードル軍曹のヘルキャットを撃破したことで警戒心が希薄に
なってしまっていたため、セイバータイガーに気付いた時には地に叩き伏せられていた。

アストリッドの白いセイバータイガーはストライククローを何度もハイランドのコマンドウルフに叩きつけた。
丁度カイルは大破したガイサック・カスタムから這い出ることに成功した。

「・・・・」彼の眼には白いセイバータイガーが嗤っているように見えていた。

ハイランドのコマンドウルフの胴体は、ズタズタに引き裂かれ内部機関から煙とスパークが上がっていた。

「ハイランド!」

アンソニー大尉のコマンドウルフ市街戦仕様とコマンドウルフ2機が三方向から襲いかかる。
やった!やっちまえ!カイルは負傷しているため声にこそ出さなかったが、勝てると確信していた。


・・・だがその目算は甘すぎた。


アストリッドの白いセイバータイガーは、対ゾイド30o2連装ビーム砲を発砲した。
蒼紫の2条の閃光がコマンドウルフ市街戦仕様に吸い込まれた。

「ちぃ!?」

アンソニーはセイバータイガーの背中が光ったのを確認すると同時に操縦桿を力一杯引き倒した。

ビームはコマンドウルフ市街戦仕様の左肩装甲をわずかに掠めただけだった。
ほぼ同時にコマンドウルフ2機が左右から50mm2連装ビーム砲を連射した。

アストリッドの白いセイバータイガーはバックステップでその攻撃を回避したが、その攻撃はフェイクだった。

「こいつはどうだ!?」

アンソニー大尉のコマンドウルフ市街戦仕様が背中のロケットランチャーと50mm2連装ビーム砲と頬の小型ミサイルポッドを一斉に発射した。

「!!」

一瞬アストリッドの眼にはコマンドウルフ市街戦仕様が炎に包まれた様に見えた。

アストリッドの白いセイバータイガーは右に横っ跳びに回避する。

正面からコマンドウルフが電磁牙に青白いスパークを纏わせ飛び掛かった。

「邪魔よ!」

アストリッドはコンソールにコマンドを入力し、セイバータイガーを後退させた。

「なに!」

必殺の一撃をひらりと回避されたコマンドウルフは次の瞬間キラーサーベルを首筋に突き立てられていた。

コマンドウルフは糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。次に左にいたコマンドウルフが50o2連装ビーム砲を連射する。
さらに正面にいたアンソニーのコマンドウルフ市街戦仕様も砲撃を浴びせてきた。


「隊長!」

ヘルキャット2機がアストリッド大尉を援護しようとコマンドウルフ市街戦仕様に襲いかかったが、
コマンドウルフ市街戦仕様はロケットランチャーを連射、ヘルキャット2機は爆散した。

「次は貴様の番だ!!」

アンソニー大尉はロケットランチャーの発射ボタンを連打した。
背中の祭りの山車の様なロケットランチャーから火山弾の様に赤熱したロケット砲弾が放たれる。

アストリッドは回避したが、後方にあったイグアンの残骸が砕け散った。

「火力は侮れないわね」

猛攻を回避しながらアストリッドはまずコマンドウルフから先に撃破しようと方向転換しようとした
その時・・・セイバータイガーの左前足のストライククローを黄色いビームが弾いた。

「!?新手!」

咄嗟に背部に搭載された後方警戒用のセンサーを見たアストリッドは思わず眼を見開いた。

センサーからの映像が映されたモニターにはコマンドウルフのビークル型砲塔だけが浮かんでいたのだ。

アストリッド自身士官学校で仮想敵としてシールドライガー以上にその存在を頭に叩き込まれ、
大陸間戦争時代に鹵獲された機体を操縦したこともあった。

だが、彼女には不運なことにそのコマンドウルフは砲塔の遠隔操作機能がオミットされた初期型だったため
この機能を知らなかったのである。

「外したか!!一発しか撃てないのに!」

遠隔操作を行っていたコマンドウルフのパイロットは慌ててビークル型砲塔を後退させようとしたが、
ビークルは既に叩き落され彼がアンソニーと合流しようと判断した時には遅く、
コマンドウルフは左肩をキラーサーベルで抉られて撃破された。


「マークス少尉!マジックショットを回避するとは?!」

驚愕するアンソニーを尻目にセイバータイガーは接近戦に持ち込もうとする。
格闘戦が苦手なコマンドウルフ市街戦仕様は小型ミサイルポッドと背中のロケットランチャーで白いセイバータイガーを牽制しつつ後退する。

それでも白いセイバータイガーは回避しながら接近する。
そしてアンソニーにとって恐れていた事態が起きた。

「!弾切れか」意を決したアンソニー大尉は逆にセイバータイガーに向けて直進した。

「自殺する気!?」アストリッドはアンソニーの行動の真意が解らず思わずつぶやいた。

「くらえ!」

セイバータイガーがコマンドウルフ市街戦仕様に噛付こうとした瞬間、アンソニーは赤いボタンを押した。
乾いた炸裂音と同時にコマンドウルフ市街戦仕様を覆っていた増加装甲や武装が弾け飛んだ。

「っ!こんな子供騙し!」

アストリッドはレーザー機銃のボタンを連打した。その刹那増加装甲の1つが閃光を放った。

「喰らえ!部下の仇だ!」

増加装甲を脱ぎ捨てたアンソニーのコマンドウルフはアストリッドの白いセイバータイガーに噛付いた。

「きゃあ!」

コマンドウルフに噛付かれたセイバーは感電したかのように激しく痙攣した。
脇腹の内部機関の一部が小爆発を起こし、コックピット内の計器類にも被害は及んだ。

「やったぜ!」

その光景を見たカイルは自分のことの様に歓喜した。

だが、それはすぐに絶望に変わった。
突然白いセイバータイガーは疾走した。

「!?」

コマンドウルフは振り落とされないようにしがみ付くがそれが仇となった。白いセイバータイガーの向かう先にはブラックライモスの残骸があった。

「しまった!」残骸にぶつけるつもりか!気付いた彼は咄嗟に白いセイバータイガーから離れた。

白いセイバータイガーはよろめきながらもドリフトターンで方向を転換、
30mm2連装ビーム砲を発砲、アンソニー大尉は回避しようとしたが、コマンドウルフは首筋を撃ち抜かれ横転した。

「もう終わりだ・・」

カイルは先ほどとは打って変わって完全に絶望していた。
あたりを見ると司令機のマンモスMkUはセイバータイガー2機と戦うので精一杯で
今あの白いセイバータイガーが加勢すれば3分と持たないだろう。

コマンドウルフ部隊は残り4機にまで減少し、それによってヘルキャット部隊が縦横無尽に暴れまわっていた。
さらに先ほどまで圧倒していた敵部隊も無事な部隊が接近してきており、全滅は時間の問題といえた。

彼は白いセイバータイガーを見た。

セイバータイガーは噛付かれた首の部分の内部機関が剥き出しになっている以外は傷や汚れ一つ無く、白い装甲がまるで大理石か何かの様に白く輝いていた。

それはこの絶え間なく赤い砂嵐が吹き荒ぶレッドラストの大地には場違いに見え、
この世の物とは思えないような不気味さを醸し出していた。

「・・・あ、」

彼は白いセイバータイガーの肩に白い靄の様なものが沸き出ているのに気づいた。
そして戦慄した・・・なぜならそれは人の姿をしていたからだ。

そしてその″白い影≠ヘ嗤っているように見えた。

「白い狩人(weißer Jäger)・・・」

そうつぶやいた後カイルは負傷から意識を失った。彼が意識を失う前に言った言葉、
それは嘗て彼が子供の頃中央大陸戦争に若い時従軍した祖父が話した戦場伝説の名だった。

[338] エウロペ戦記 7章 前篇 ロイ - 2012/02/22(水) 01:26 -

「全員降車!」

同時に彼のガイサック・カスタムの残骸の近くに兵員輸送用モルガが停車した。
其処から帝国軍兵士達が降車しようとした
次の瞬間、緑色の光弾がモルガの背中に命中、帝国軍歩兵は何が起こったのか把握できぬまま一瞬で火葬された。

後を追うように護衛のモルガも高出力ビームの直撃を胴体に受けて大破した。
他にも何機かの帝国ゾイドが攻撃を受けて大破した。

「増援か!」

マンモスMkUに飛び掛かろうとしていたセイバータイガーがミサイルとビームを受けて大破した。

アストリッドの白いセイバータイガーにもミサイル3発が向かってきたが、瞬く間に撃ち落とされた。

砂丘の向こうからシールドライガーDCS−Jを指揮官機とする高速戦闘隊が次々と出現した。
この部隊にはノーマルコマンドウルフだけでなくコマンドウルフACや生産が中止されたコマンドウルフNEWが
配備されていた。

「隊長!如何します!」

マンモスMkUとの戦闘を中断して合流してきたセイバータイガーのパイロットから通信が入る。

「撤退よ!ここで踏み止まっても私達の全滅しかないわ、後続の部隊にも伝えて!」

アストリッドが即断するや否や、コマンドウルフ2機が飛び掛かってくる。

「邪魔よ!」

白いセイバータイガーはバックステップで後退、3連衝撃砲で1機の左脚部を吹き飛ばし行動不能にして叩き伏せる。
もう1機のコマンドウルフは背中のAZ30mmビーム砲で左前脚を切断して体勢を崩したところをコックピットを撃ち抜いた。

動揺する共和国軍部隊、その隙を縫ってアストリッド隊は後退した。
共和国軍部隊も負傷者を回収すると脱兎のごとく撤退していった。





同じ頃、共和国軍の3層にわたる防衛ラインは、すでに2層が突破されていた。
さらに帝国軍の一部の部隊には防衛ラインを突破し、共和国軍総司令部の置かれている地点に迫るものもあった。


総司令部となっている陸上戦艦が4門の51cm砲を撃ちあげる中、周囲では帝国軍と共和国軍の死闘が繰り広げられていた。
迫るモルガ部隊にアロザウラーが火炎放射機を浴びせ掛け、先頭の3機が炎に包まれて大破した。
損傷したモルガを部下の乗るゴドスとガイサックが止めを刺す。
だがアロザウラーはセイバータイガーに叩き伏せられ、コックピットを破壊された。

「あのデカブツをやれ!あれを撃破すれば共和国軍は総崩れだ!」

セイバータイガーに搭乗する指揮官がそう言って部下を鼓舞する。

彼のセイバータイガーは立ち塞がるゴドス部隊をなぎ倒し、
正面のゴドスの頭部をストライククローで跳ね飛ばす。

別のセイバータイガーがゴドスの左脚をもぎ取る。
部下のセイバーも彼に続けと、立ち塞がろうとする共和国軍機を屠る。

友軍のレッドホーンやキャノリーモルガもセイバータイガー部隊を援護した。

セイバータイガー2機が大破するが、6機のセイバータイガーが防衛ラインを突破した。
セイバータイガー6機が陸上戦艦の右舷側から接近する。

それを見た陸上戦艦も小火器を発射、どれも主砲に比べれば玩具の様なものだが、それでも装甲の薄い高速機には十分脅威だった。
一番左にいたセイバータイガーが胴体にミサイルを喰らい、動きを鈍らせたところを集中砲火を浴びて砕け散った。

「マンスフェルト!」

セイバータイガー5機も撃ち返すが、200キロ近い高速で走行しながらの射撃で命中率は低く、仮に命中しても陸上戦艦の分厚い装甲に染みを残すのが関の山だった。
さらにもう一機、セイバータイガーが穴だらけにされて爆砕する。

「全機散開! 接近すればこっちのものだ!」

セイバータイガー4機が散開しようとした次の瞬間、横から2筋の閃光が最後尾のセイバータイガーを貫いた。

「隊長!シールドライガーです!」

彼が言い終わるよりも早くシールドライガーDCSが稜線から飛び出す。

「俺が囮になります!」

セイバーの1機が踵を返してシールドライガーに向かう。
シールドDCSは背中のビームキャノン砲以外の全火器を発砲した。
セイバータイガーは被弾しながらも、シールドDCSの右側のビームキャノン砲に噛付いた。

「わあぁ」

パニックに陥ったパイロットはトリガーを引いた。
エネルギーが暴発し、セイバータイガーの赤い頭部は一瞬で蝋の様に真っ白になって吹き飛んだ。
シールドライガーの方も無事で済むはずがなく、背部と頭部は大きく焼けただれていた。

グウゥゥ・・・弱い声を上げながらもシールドライガーDCSは体勢を立て直そうとしたが、剥き出しになった内部機関に流れ弾が飛び込み無残にも砕け散った。

2機にまで減ったセイバータイガー隊だったが、陸上戦艦の懐に飛び込もうとしていた。

「中尉!後部甲板にとび乗る!援護しろ」

「了解」

指揮官機のセイバータイガーに銃撃を浴びせ掛けてくる甲板のアタックゾイド部隊に部下のセイバータイガーがビーム砲を叩き込み沈黙させる。
指揮官機のセイバータイガーは後部甲板へと跳躍する。

少し遅れて部下も続こうとしたが、同時に後部副砲が火を噴いた。
至近距離からの砲撃にセイバータイガーは回避できず、正面から1トンの巨弾を受けて砕け散ると同時にセイバータイガーが甲板に着地する。

特殊難燃ゴムを敷き詰めた後部甲板表面が僅かに震えた。
驚いた整備兵が鼠の様に逃げ惑う中、セイバータイガーは使用可能な火器を乱射した。
甲板に配置されていたプテラスストライカー3機の翼が弾け飛んだ。

次の瞬間、後部格納庫ゲートが内側からこじ開けられた。
こじ開けられた格納庫からセイバータイガーに銃撃が浴びせ掛けられる。
セイバータイガーは機体各所からスパークをあげて崩れ落ちた。
格納庫からゴジュラスMkU量産型が現れる。

「何っ」

セイバータイガーは格納庫に特攻をしようと跳躍したが、ゴジュラスはクラッシャーテイルで跳ね飛ばした。
頭部を砕かれたセイバータイガーは地面に叩き付けられ、爆砕した。

甲板の敵機を排除したゴジュラスMkU量産型は地上に降り立った。
奇しくもそれは偶然左舷側から接近していた帝国軍部隊と相対する形となった。

「ゴジュラスだと!」

先頭を行くレッドホーンBGの搭乗員のアーデルベルト少佐は突如現れたゴジュラスMkU量産型に恐怖した。
さらに彼だけでなく部下も同様の思いに囚われてしまっていた。

「臆するな!こいつを倒せば飛龍十字章ものだぞ!」

彼は部下を奮い立たせると、ビームガトリング砲のトリガーを引いた。
部下も恐怖に呑まれまいと砲撃を浴びせる。

砲弾が、ビームが、レーザーが、ミサイルが、白い巨体に吸い込まれていった。
その直後、ゴジュラスMkU量産型の姿が爆煙に包まれて見えなくなる。
各種センサーも熱と電波障害で飾り同然で確認不能だったが、アーデルベルト少佐を含む多くの帝国兵士が撃破したと判断していた。

「やったのか・・」

モルガの新兵が縋る様な声で呟いた。
だが、その希望は荒々しい咆哮に掻き消された。
その咆哮を聞いた帝国ゾイドの多くがコンバットシステムフリーズに陥ってしまい陣形が乱れてしまう。
中にはコントロール不能に陥り、味方機と衝突するものまでいる始末だった。

この好機を逃すほど、ゴジュラスMkUのパイロットは無能でも親切でもなかった。
ゴジュラスMkU量産型はバスターキャノン砲を発砲、混乱の渦中にあった帝国軍部隊はそれを正面から受けることとなった。
小型ゾイドの中では重装甲のモルガが数機纏めて爆発炎上する。
さらにレッドホーンBGのやや後方にいたブラックライモスにバスターキャノン砲弾が直撃した。
砲弾はブラックライモスの頭部を貫き胴体のゾイドコアの手前で炸裂、ゾイドコアが崩壊したブラックライモスは周囲を巻き込んで爆砕した。

ブラックライモスが立っていた地点は、砂が熱と衝撃で溶けたガラスの様に変質、
至近距離にいたレッドホーンBGの尾部搭乗員は一瞬でコックピットごと蒸発した。
隣にいたイグアン対空型も左脚部が赤熱化して崩れ落ちた。


一撃で帝国軍部隊の戦力の相当数を鉄屑に変換したゴジュラスMkU量産型は胴体の火器を連射しながら帝国軍部隊に止めを刺すべく吶喊する。

帝国軍部隊の砲撃も前の砲撃に耐え抜いたゴジュラスには時間稼ぎにも成らなかった。

「!?」

アーデルベルト少佐はレッドホーンBGを後退させようとしたが手遅れだった。
ゴジュラスMkU量産型はクラッシャークローでレッドホーンの頭部を引っ掴み、自慢の怪力で捩り切った。

続けて頭部を失ったレッドホーンBGの胴体にクラッシャーテイルが叩き込んで横転させると、後方にいたモルガ3機にヘビーマシンガンを叩き込んで撃破する。
ゴジュラスは左手に戦利品の様に持っていたレッドホーンBGの首を投げ捨てた。
残ったイグアン4機とモルガ2機が逃亡を図ったが、後方にいたカノントータス部隊に砲撃を受けて撃破された。 

「支援に感謝する。」

そういうとゴジュラスMkU量産型に搭乗するエドガー大佐は、陸上戦艦に迫りくる帝国部隊にバスターキャノン砲を叩き込む。
赤熱化した砲弾が独特の悲鳴の様な音を纏いながら、突撃する帝国軍部隊に突き刺さる。
爆炎が巻き起こり、隣接していたゾイドを薙ぎ倒した。
キャノリーモルガの援護を受けてハンマーロック7台が肉薄する。

キャノリーモルガが砲撃を浴びせ掛ける中、ハンマーロック7機が至近距離から2連装ビーム砲を叩き込む。

だが、ゴジュラスMkU量産型は物ともせず、接近しすぎた指揮官機のハンマーロックを頭からハイパーバイトファングで胡桃の様に噛み砕き、その左にいたハンマーロックにリニアレーザーガンを叩き込んで撃破する。
その隙に後に回り込んだ二機のハンマーロックは、クラッシャーテイルで薙ぎ払われた。

残りのハンマーロック3機は後退していく、そこにゴジュラスMkUは左腕の4連衝撃砲を乱射する。
一機は頭部に直撃を受け、その横にいたハンマーロックも両腕をもぎ取られ倒れ伏した。
生き残ったハンマーロックも左腕を喪失しながらも背中の対空ミサイルで攻撃する。
全弾ゴジュラスMkUの頭部に命中、爆炎に包まれる。

だが、ゴジュラスの頭部には傷一つ付いていなかった。


白いゴジュラスが赤い砂漠を掛ける度、ガイロスのマークの付いたスクラップが積み上げられていった。
エドガーとゴジュラスの活躍はさながら神話の英雄のごとく暴れまわったが一機の活躍には限度があり、何機かの帝国機が突破する。

セイバータイガー・ビームランチャーがゴジュラスMkU量産型の脇をすり抜けて陸上戦艦に向かう。
ゴジュラスMkUは追撃しようとするが、ヘルキャットとセイバータイガーの混成部隊が立ち塞がる。

「くっ、誰か奴を止めてくれ!」

陸上戦艦は後退していたが、セイバータイガー・ビームランチャーにとってそれは亀の歩みに等しかった。
セイバータイガー・ビームランチャーの背中にマウントされたビームランチャーの砲口に青白い光が吸い込まれ、発射されようとしたその刹那、
ビームランチャーに細いビームが突き刺さった。

[339] エウロペ戦記 7章 中篇 ロイ - 2012/02/23(木) 10:44 -


「大佐殿!援護します!」

シールドライガーとコマンドウルフ8機が乱入し、ヘルキャット部隊を駆逐していく。

「オーウェル大尉か!撃ち漏らしは任せた!」

ゴジュラスMkU量産型が、小火器を連射、被弾したヘルキャットの動きが鈍る。

「了解しました!」

シールドライガーは全身に収納された火器を展開、ヘルキャット部隊に叩き付けた。
運良く生き残ったヘルキャットには、コマンドウルフが襲い掛かった。

シールドライガーは護衛のイグアンを蹴散らして、レッドホーンに飛び掛かる。

シールドライガーのタックルを受けたレッドホーンは跳ね飛ばされ、地面に叩き付けられた。ライガータイプと2tしか重量差が無いという軽量さが仇となった。

すかさず部下のコマンドウルフがレッドホーンの脇腹に砲撃を叩き込んだ。
内部機関を貫かれたレッドホーンは機能停止した。

別のゴジュラスが我も負けじと、レッドホーン部隊の砲撃を撥ね退けて前進、肉弾戦に持ち込んで指揮官機を捻り潰す。

その左にいたレッドホーンは突進したが、ゴジュラスのクラッシャーテイルに横倒しにされた。

右のレッドホーンの背中の砲手は半狂乱でリニアキャノンを撃ち続けた。

即座にゴジュラスの左腕のリニアレーザーガンがリニアキャノンの基部を撃ち抜いた。

支えを失ったリニアキャノンは偵察ビークルに突き刺さるように落下、強化キャノピーは何の役にも立たなかった。

同時に右のレッドホーンの頭部に76o速射砲が至近距離から浴びせ掛けられた。
レッドホーンの頭部はトマトの様に弾け散る。

後ろからイグアン部隊が銃撃を浴びせたが、それは背中に火花を散らせただけだった。

「鬱陶しい!」

ゴジュラスはクラッシャーテイルを振り回し、その直撃を受けたイグアンが文字通り粉砕される。

「前衛部隊を援護しろ!」

体勢を立て直したキャノニアーゴルドス、カノントータスBC、カノントータスで構成された共和国軍重砲部隊が支援砲撃を再開し始める。

無数の砲弾がカーブを描いて突撃するレッドホーンやモルガに降り注ぎ、彼らを吹き飛ばした。

阿鼻叫喚の巷と化した頭上を余所にエアカバーのサイカーチスが低空で侵入を図った。

「行かせるか!」

オーウェル大尉のシールドライガーが低空を飛ぶサイカーチス部隊に立ちはだかる。

シールドライガーは背中に装備された加速ビーム砲を連射した。

低空を這うように飛ぶサイカーチスが次々と撃墜される。

それでも数機が突破したが、彼らの前方の砂が舞上がりそこからステルスバイパーが現れた。

「!?」

サイカーチス部隊の兵士が予想しない事態に驚愕する。

「喰らえ!」

ステルスバイパーは対空ミサイルを発射、それに対応する暇もなくサイカーチスとパイロットは生きたまま火葬された。

ゴルドスが105o高速キャノンで忍び寄るヘルディガンナーの頭部を狙撃、撃破する。

次の瞬間ゴルドスと護衛機にミサイルが降り注いだ。

ゴルドスの周囲にいたゴドスやガイサックが爆発炎上した。

「何!」

ゴルドスの横にアイアンコングMA(ハイマニューバ)が着地する。

ゴルドスは方向転換する暇さえ与えられずそのパワーに叩き伏せられた。

アイアンコングMAは背中の高機動スラスターを点火して陸上戦艦に向かう。

「ここから先は寸土たりとも通さん!」

エドガー大佐のゴジュラスMkU量産型が咆哮をあげてアイアンコングMAの前に立ち塞がる。

並のゾイドならシステムフリーズを起すこともある咆哮にも怯むこと無くアイアンコングMAは左のハンマーナックルを振るう。

ゴジュラスMkU量産型も左のクラッシャークローでそれを受け止める。

ゴジュラスMkU量産型は右のクラッシャークローでアイアンコングMAの頭部を狙う。

アイアンコングMAもそれを右腕で受け止めた。
両者ともに力が拮抗しているために膠着状態に陥る。
アイアンコングの肩のミサイルランチャーもゴジュラスの背中のバスターキャノン砲も射角の限界で攻撃することが出来なかった。

「大佐殿!」

部下のゴドスが援護に駆け付け、アイアンコングMAを包囲して至近距離から銃撃を叩き込む。

アイアンコングの重装甲を貫くことのできる火器はゴドスには無かった。

しかし関節部に命中させれば、小型ゾイドの火器でも十分通用するはずだった。

だが、包囲していたゴドス隊にミサイルが降り注いだ。
何が起こったのか理解する間もなくゴドス隊は鉄屑と化した。

前方から2機目のアイアンコングが現れる。

「勝った!」

アイアンコングMAのパイロットは思わず叫んだ。

「しまった!」

エドガー大佐は何とかアイアンコングMAを引き離そうとするが、アイアンコングMAのパイロットもゴジュラスMkUを拘束しなければ負けることが判っていたため中々離さなかった。

そうしている間にもアイアンコングは膠着状態の2機に迫っていた。

万事休す・・・エドガー大佐の脳裏にその言葉が浮かんだ。

[340] エウロペ戦記 7章 後篇 ロイ - 2012/02/24(金) 06:22 -


その時、アイアンコングに無数の砲弾が降り注ぎ、アイアンコングは転倒した。

「!!」

突然の攻撃にアイアンコングのパイロットは驚愕する。

その攻撃はカノントータス隊によるものだった。

カノントータス部隊は絶え間なく砲弾を浴びせ続けた。

アイアンコングの頭上には、徹甲弾、榴弾の区別無く砲弾が降り注いだ。

それらの多くは、周囲に大穴を開けるばかりで、当たっても強固な重装甲の前に弾かれるばかりだったが、中のパイロットには相当の衝撃を襲われていた。

それでも優秀なアイアンコングのパイロットは、絶え間なく砲弾が降り注ぐ中でもパニックを起こす事無く、機体を起そうとした。

突然示し合わせたかのように砲撃が止んだ、同時に後方からシールドライガーが飛び掛かった。

コングのパイロットはハンマーナックルでシールドを跳ね飛ばそうとする。
それよりも早く、青白く輝くレーザーサーベルがアイアンコングの頭部コックピットを貫き、パイロットの肉体を一瞬で焼き尽くした。

「なに!」

アイアンコングMAのパイロットは、突然の事態に狼狽した。

「油断したな!!」

エドガー大佐はその隙を逃さず、機体の出力を限界寸前にまで引き上げる。

そのパワーの強大さにゴジュラスMkUの四肢の関節部から火花が飛び散った。

「こらえてくれ!相棒=I」

先ほどまで膠着状態に持ち込ませていたアイアンコングMAにそれを抑え込むことはできなかった。

アイアンコングMAの左腕を引き離したゴジュラスMkUの左腕のクラッシャークローが、アイアンコングMAの胸部装甲に突き込まれた。

分厚い胸部装甲が段ボールの様に突き破られた。
傷口からオイルとゾイドの血液が滴り、アイアンコングMAは悲鳴を上げた。

ゴジュラスが左腕を引き抜く
そのクラッシャークローには臓器の様なものが握られていた。

それは、動力系に関わる内部機関だった。

それを失ったアイアンコングMAは力なく赤い大地に倒れ伏した。

アイアンコングMAのパイロットは尚も機体を立て直そうとしたが、4連衝撃砲を受けて消滅した。

しかし、アイアンコングMAのパイロットによるものか、単なる誤作動なのか背中に装備された2発の大型ミサイルが発射された。

地面擦れ擦れで発射された2発の大型ミサイルは、偶然前にいたレッドホーンに直進した。

当たり所次第ではゴジュラスやウルトラザウルスといった大型ゾイドに致命傷を与えることさえ可能な威力を持つ大型ミサイルにレッドホーンが耐えられる筈が無かった。

鉛筆カバーを連想させる形状の大型ミサイルはレッドホーンの頭部付近で炸裂した。

レッドホーンの頭部は真下から吹き上がる爆風に跳ね飛ばされ、空中で分解した。
更にレッドホーンの両前足が吹き飛び、レッドホーンは各坐した。

各坐したレッドホーンを一瞥するとエドガー大佐とゴジュラスMkU量産型は、次の敵機に襲いかかっていった。

部下のシールドライガーやコマンドウルフ、マンモス改、マンモス、カノントータス、ゴドス、ガイサックも後に続いた。

帝国側からレーザーとビームの眩い閃光が彼らに吸い込まれる。
シールドライガー数機が飛び出し、機体名称にもなったたてがみのEシールドを展開した。

桃色の光の盾がレーザーとビームを弾き返した。

お返しとばかりに共和国側も後方のキャノニアーゴルドス、カノントータスが支援砲撃する。

綺麗な弧を描いて砲弾が帝国軍機に降り注いだ。

落下の運動エネルギーを得た徹甲弾が重装甲の帝国ゾイドを突き破り、その体内で信管を作動させた。

爆炎が噴き上がり、黒焦げになったかつてゾイドの手足やパーツだった物が天高く舞い上がる。

遅れて榴弾が、内部に詰め込まれた無数の弾片を予定の高度で撒き散らした。

弾片のシャワーをもろに浴びた小型ゾイドはズタズタに引き裂かれる。

装甲の厚い大型ゾイドもレーダーやセンサー、火器が破壊される。

乱れる帝国側の陣形、そこにシールドライガーとコマンドウルフが吶喊した。

シールドライガーがレーザーサーベルでレッドホーンのコックピットを狙う。

本来ならレッドホーンの背中の多彩な火器の前に倒されるところだが、先ほどの榴弾によって背中の火器は殆ど使用不能となっていた。

レッドホーンのクラッシャーホーンを避けると、シールドライガーは頭部コックピットに
サーベルを突き立てた。

別のシールドライガーはレッドホーンをシールドアタックで吹き飛ばした。

コマンドウルフがモルガの関節部を電磁牙で引き裂き、撃破した。

鋼鉄の獅子と狼の爪と牙が帝国軍機を引き裂き、混乱を拡大させた。

その直後、ゴジュラス、ゴドス、ガイサック、カノントータスが殴り込んだ。

レッドホーンがゴジュラスのクラッシャーテイルに頭部を叩き潰される。

「逃がすか!」

ゴドスとガイサックの銃撃でイグアン3機がもんどりうって倒れた。

榴弾片で火砲を破壊されたレッドホーンが至近距離からのカノントータス隊の十字砲火を浴びて大破した。

マンモスがストライクノーズでモルガを横転させる。

突撃を続けようとする帝国軍の勢いはここで完全に削がれた。

その間に陸上戦艦は撤退していった。


総司令部直掩部隊の奮戦もあって総司令部の壊滅という最悪の事態を免れることができた。


しかしそれと同じ頃、前線の共和国軍基地の多くが帝国軍の攻撃を受け陥落、壊滅していた。
未だに残っている基地も苦戦を強いられていた。

[343] エウロペ戦記 8章 前篇 ロイ - 2012/02/29(水) 12:28 -


――――第67基地、防衛陣地――――――




開戦前には比較的後方に位置していたこの基地は、計画では大演習監視のための物資の集積所として機能するはずだったが、そのあまりに楽観的な予想はすでに崩壊し、帝国軍内で第一装甲師団と並ぶ精鋭部隊PK師団を含む帝国軍部隊の攻撃を受けていた。


さらに不運なことに西方大陸に配備されたアイアンコングPK10機の内、1機が攻撃部隊に配備されていた。

「くそ!あの赤い奴め、涼しい顔してやがるぜ!」

「臆するな!集中砲火をあびせるんだ!」

生き残った陣地はアイアンコングPKに持てる火力を結集して集中砲火を浴びせる。

中にはかつてゲリラ軍が放棄した攻城砲まであった。

多種多様な砲弾が先頭を行くアイアンコングPKに吸い込まれていく・・・無数の爆発が巻き起こり、周辺にいたモルガやハンマーロックが巻き込まれ、瞬く間に砕け散る。

「どうだ!見たか!」

浅黒い肌の大型砲台の砲手が大声で叫ぶ。

その刹那、火山の噴煙の様な黒煙を青白い閃光が切り裂き、中型砲台に突き刺さった。


中型砲台は内部の弾薬が誘爆して吹き飛び、オレンジ色の爆光が周囲を照らした。

「へ?生き・・」

大型砲台の砲手は何が起こったか判らなかった。

彼はそれを理解する十分な時間を与えられないままに地上から消滅を余儀なくされた。

彼が最後に見たのは、黒煙の中に佇む赤い巨人とそこから放たれた青白い光だった。


黒煙のなかからアイアンコングPKが現れる。
その姿は胸部を中心に機体各所に矢傷の様に弾痕があったが、殆ど無傷だった。

「奴は不死身なのか!」

砲台の砲手の1人が思わず叫んだ。

生き残った砲台は砲撃を再開するが、アイアンコングPKの分厚い装甲に弾かれる。

逆にアイアンコングPKのビームランチャーが青白い閃きを放つ度、共和国軍の陣地は砂の城の様に砕け散っていった。


「このままでは嬲殺しにされる・・突撃!」


砲台の苦戦ぶりを見た第27中隊のアレックス大尉が突撃命令を下した。


彼のコマンドウルフを中核とする中隊が陣地から飛び出してアイアンコングPKに突撃した。

後方にいたハンマーロック部隊がその突撃を迎え撃つ。
ハンマーロック部隊は密集して右肩の連装ビーム砲を連射した。

ガリウス改とエレファンタスがビームの雨を受けて砕け散った。

コマンドウルフが指揮官機のハンマーロックに飛び掛かり、電磁牙で頭部を噛み砕き、隣の機体にビーム砲を叩き込んで陣形を乱した。

別のガイサックがハンマーロックに尾部のビームライフルを胸部に叩きこんで撃破する。

そのガイサックも別のハンマーロックにコックピットを殴り砕かれた。
ゴドスがハンマーロックの胴体に蹴りを叩き込み、コアを粉砕する。
こうした部下の決死の援護を受けてコマンドウルフはアイアンコングPKに肉薄することが出来た。

「くらえ!」

コマンドウルフは、アイアンコングPKの喉元に喰らい付こうと電磁牙を光らせて飛び掛かった。

だが、その動きはアイアンコングPKにとって止まっているも同然だった。

アイアンコングPKは長い腕で空中のコマンドウルフを捉えた。

容赦なくコマンドウルフは地面に叩き伏せられた。



普通なら動けなくなる程のダメージにも係わらず、コマンドウルフとパイロットは尚も立ち上がろうとした。

そこにハンマーロック部隊から容赦なくビームが浴びせられた。

コマンドウルフは無数の重金属粒子に貫かれ爆発した。


敵機を排除したアイアンコングPKとハンマーロックは進軍を再開した。




――――少し前、第67基地、第2仮設格納庫――――――――――



開戦前には所狭しと、ゾイドが並べられていたここも今では、グスタフ3台と数機の小型ゾイドのみが待機しているだけだった。

唯一整備兵らのみが活発にアタックゾイドを使用してコンテナを運搬していた。

彼ら整備兵は大部分が第28独立中隊、ブルー・ファイヤー隊と第35独立中隊、グリーン・アローに所属していた。

それはその他の部隊の整備部隊は多くがグスタフなどの移動手段がなかった為、開戦とほぼ同時に司令官の判断で基地の非戦闘員とともに輸送機で後方の基地に撤収していたためであった。

そして取り残された形となった彼らはこの基地に貯め込まれた物資が敵の手に落ちるのを防ぐために破壊せよ、という命令を受けていた。

「積めるだけ積めよ!全部灰にするのは勿体無いからな!」

パワードスーツで高性能爆薬を運搬しながらリックス曹長が他の整備兵に指示する。

「了解!」

指示を受けた整備兵達は3台のグスタフの荷台に次々と物資を積み込んでいく、内容はゾイドの整備部品、食料、水、燃料、弾薬であった。

彼は、格納庫を出ると設置ポイントに高性能爆薬をセットすると、その横に置かれていた黄色いコンテナの一つを持ち上げ、グスタフの荷台に積み込む。


「曹長殿何ですかそれは?」


肩にM-ZAC67自動小銃を架けた整備兵が尋ねる。

「飲料水、これから先いるだろう。お前もコンテナから取れるだけ取っといてくれ」

「わかりました!」

整備兵は敬礼すると、駈け出して行った。

「急げよ!」

「曹長!ダブルソーダはどうします?積み込みますか?」

整備兵の1人が聞いた。

予定ではダブルソーダのパイロットは今日の朝には到着しているはずだったが、書類上のミスでダブルソーダのみが届いてしまっていた。


「いや、そんなもん積むより整備部品とか積んだほうがいい、誰か操縦できる奴は?」


「いません。貴方と俺とジル軍曹はグスタフですし、ファーデン軍曹はガイサック、それにこいつは飛行ゾイドですよ。並の奴じゃ無理ですよ。」

「・・・処理するしかないか…」

ここでもたついていては降伏か、自爆の二者択一を強いられる・・彼が爆破の指示を出そうとしたその時、格納庫の外で何かが叩き付けられる音がした。

「なんだ!」敵か!最悪の想像が脳裏をよぎる・・

「班長!友軍機です!」

外にいた若い整備兵が駆け足で戻ってきた。

「機種は?」

「ダブルソーダです、パイロットは生きてい「敵が来るぞ!」

若い整備兵を押しのけて、浅黒い肌の大柄の若いグリーンのパイロットスーツの男が現れる。

「なに!わあっ」

銃撃と同時に格納庫の屋根に無数の穴が開く、リックスは頭上を6つの影が通り過ぎるのを見た。

「サイカーチスか!」

「そうだ。しかもあっちは地上部隊までいた。とてもここの戦力じゃあ守り切れない!」
大柄の男が言う。

「貴官は?」

「バート・スティーブン准尉だ。ところでこのダブルソーダはパイロットはいるのか?」

「いない、乗り手がいないから爆破する予定だが乗るか?」

「当然!あのカブトムシどもを蜂の巣にしてやるよ!」

バート准尉はダブルソーダに突っ走っていった。

「エアカバーは任せた!全員撤収するぞ!グスタフに乗れ!」

「了解!!」


グスタフが発進したすぐ後にアイアンコングPKによってメインゲートが打ち破られた。

[346] エウロペ戦記 8章 後篇 ロイ - 2012/03/03(土) 11:15 -

――――第67基地―――――――



メインゲートを突破した帝国軍部隊は脆弱な抵抗を排除しつつ、基地内の制圧に入ろうとしていた。


イグアン部隊の正面に現れた作業用ゴドスがインパクトガンを浴びて崩れ落ちた。

その直後モルガやマルダーから次々と歩兵隊が吐き出された。

「全員!倉庫エリアを制圧する!気を抜くなよ!狙撃兵やトラップが潜んでいるかもしれんぞ」

その装甲服を着た歩兵隊の指揮官の予想とは裏腹に彼らの行く手を阻むものは瓦礫位のものだった。

これは動力炉制圧に向かった部隊が自動銃座やワイヤー爆弾で損害を被っていることを考えれば、異常なことだった。

数分後彼らは、格納庫にたどりついたが、其処は無人だった。

「・・・まさか・・・これは罠か!」


隊長が部下に撤退命令を出そうとした直後、
格納庫の各所で爆発が起こり格納庫全体が振動した。

「全員、外に出ろ!崩壊するぞ!」
彼も逃げようとするが、それは既に遅すぎた。

天井の鉄骨の1本が彼の頭上に落下、彼の頭を粉砕した。
「隊長!」
爆発で負傷した兵士の一人が叫んだが、程無く格納庫は崩壊し、其処にいた者全員を押し潰した。

命からがら外に脱出できた兵士達も物資集積所の爆発に飲み込まれ地上から消滅した。




「やったぜ!作戦成功だ!」

爆発を背に何とか基地を脱出した整備部隊だったが、10分も経たぬ内にその姿はサイカーチス部隊に発見されてしまっていた。

「隊長、ガイサックとグスタフ3両を確認荷台に物資を満載しています。如何しますか?」

「護衛のガイサックを仕留めた後、威嚇射撃を浴びせろ。荷台には当てるなよ」

サイカーチス部隊の指揮官が命令を下す。

ガイサックがビームライフルでサイカーチス部隊を迎撃するが、軽々と回避されてしまう。

「無駄なことを!」

嘲笑するかの様にサイカーチスは攻撃隊形を整える。

だが後ろから彼らに迫る機影があった。

突如、サイカーチス6番機が後ろからビームに貫かれ爆散した。

「何!」

「ダブルソーダです!ぎゃああ」

サイカーチス3番機は報告の直後、無残にもブレイクソードに引き裂かれた。

「よくも!」

さらにサイカーチス5番機が銃撃を受け被弾する。

「軍曹!機体を持ち上げろ!突っ込むぞ!」

隊長は警告したが、パイロットは既に死亡していた。

サイカーチス5番機は砂漠に激突した。

「次は貴様だ!」

バート准尉のダブルソーダは2連ビーム砲を隊長機に発砲した。

「あたるか!」

隊長機のサイカーチスはなんとか横滑りして回避する。

「隊長!」

サイカーチス2番機と4番機がバートのダブルソーダの後方に回り込み、攻撃する。


「あぶね!」

バートのダブルソーダは高度30mまで急降下、隊長機のサイカーチスはその隙に離脱する。

「撤退するぞ!航続距離も限界だ!連中は地上部隊が始末してくれる。」

部下のサイカーチスもそれに続く。

「ちっ」
バート准尉はグスタフの護衛のため追撃しなかった。

グスタフ3台とガイサックが前進を再開したが、彼らの姿は程無くして地上部隊に発見されてしまった。


「曹長!3時方向に敵部隊!30機はいます!」

グスタフ2番機のジル軍曹から報告が入るとほぼ同時にイグアンやモルガが現れ砲撃を浴びせてきた。

周辺に砂柱が上がり、赤い土煙が舞い上がる。

ファーデン軍曹のガイサックがビームライフルを撃ち返す。

不用意に突進したモルガがコックピットを貫かれて動きを止めた。

他のモルガがファーデン軍曹のガイサックにミサイルを放った。

ファーデン軍曹のガイサックは尾部のレーザーライフルを発射した。

レーザーに触れた1発が火球にかわったが、残り2発がガイサックの両腕を吹き飛ばした。

直後、モルガの頭部ガトリング砲の火線ガイサックの左脚4本を砕く。

ファーデン軍曹は助かったが、ガイサックは機能停止した。

「軍曹!!こいつら!」

バートのダブルソーダも攻撃を受けており、援護どころでは無く、逃げるので精一杯だった。

グスタフ3機は離脱しようと増速したが、追いつかれるのは時間の問題だった。




攻撃を加えるイグアンやモルガの奥に2機のヘビーイグアンとレッドホーンがいた・・・・
よく見るとレッドホーンは、幾つか通常機と異なる点があった。

まず、カラーリングは悪趣味な紫で塗装され、角が金色になっており、
背中には、雄牛の角を想起させる2門の大型砲が装備されていた。

「コンテナは壊すなよ?」

レッドホーンカスタムに搭乗する金髪の男、ヴァルター・シュトレッサー少佐は、顎髭を右手で撫でながら部下に命令すると以前ニクシーで手に入れた酒を呷った。

無論今は戦闘中で飲酒は軍規違反だが、誰も彼を止めなかった。


「・・・」

副官のヘビーイグアンのシュタイナー大尉も上官の問題行動を前にしても憮然と腕を組んでいるだけである。


「予備部隊で演習やるだけの退屈な任務と思ったら、ツキは俺にあるようだなあ」


ディスプレイの画面上で砲撃の中を逃げ回るグスタフ隊を見ながら彼は、コンテナの中身が何なのか想像していた。

「少佐あ、中身の物はどうするんで?」

横流し£S当のゲーターのペーター少尉が猫なで声で尋ねる。

「報告書にはグスタフ1機てことにして、残りの2機と物資は頂いちまおう。グスタフは高く売れるからな」


彼はグスタフ2機と物資を横流しする積りだった・・元々この部隊は開戦前、
ブロント平野での反帝国武装勢力の掃討任務に就いていたのだが、次第に規律が弛緩し、物資の横流し、略奪等の違法行為に手を染めはじめた。

酷い時には偶然遭遇した商人から通行税を取り立て、押収したゾイドや兵器を闇市に売り飛ばした事さえあった。

勿論これ等の行動が発覚しないはずもなく、ある武装勢力との戦闘後に提出した報告書の不備から幾つかの違法行為が発覚したが、運よく降格と予備役編入で済んだことで彼らは反省するつもりなど全くなかった。

「仕上げだ!やっちまえハンス!」

彼の命令をうけてグスタフの前方にイグアナ型ゾイド・ヘルディガンナーの砂漠戦仕様ヘルディガンナーDTとモルガ2機が飛び出した。


飛び出したヘルディガンナーDTは背中のパラライズガンを発射した。

高圧電流の矢が先頭のリックス軍曹のグスタフの正面装甲に突き刺さり、電子機器の機能を停止させた。

「わっ」

この兵装は本来野生ゾイド捕獲用のもので正面戦闘に用いるべきものではないが、余計な破壊を行いたくない彼らにとってはこの兵装は好都合だった。

「へっへっへ、」

薄気味悪い笑みを浮べながらハンスはヘルディガンナーDTを進ませた。

「くそ!うごけ!」

リックス曹長は操縦桿を動かしたが、グスタフは石の様に動かなかった。

その間にヘルディガンナーDTはパラライズガンの再チャージを終えていた。

「次はお前だ」

2機目のグスタフに照準が合わさった。

ハンスが引き金を引こうとした刹那、パラライズガンの基部にビームが突き刺さった。

砂丘の陰からシールドライガーMkUが飛び出した。

直後、パラライズガンを失ったヘルディガンナーDTにシールドライガーMkUが飛び掛かった。

シールドライガーMkUは、同時に空中で脇腹に収納されたミサイルポッドを展開した。

直後、ミサイルの雨がヘルディガンナーDTとモルガ2機に降り注いだ。

3機が炎に包まれ、鉄屑に変換された。

同時にグスタフ隊を守るようにシールドライガーMkUが帝国軍の前に着地した。

そのシールドライガーMkUの左肩には、蒼い炎の部隊章があった。

「アルバート少佐!」


続いて、コマンドウルフ改、コマンドウルフ3機、ゴドス6機、カノントータス4機、
カノントータス・レドーム、ステルスバイパー、マンモス、キャノニアーゴルドスが現れた。


「全員!グスタフを守れ! なるべく深追いはするなよ!」


「「「「「了解」」」」」


シールドライガーMkUがビームキャノン砲を発砲、ブラキオスは胴体を貫かれ、爆発した。

デュラン中尉のコマンドウルフがブラキオスの後方に回り込みコックピットを噛み砕いた。

「動きが鈍いぜ!」

ゲイル少尉のコマンドウルフがモルガの胴体に噛付き、内部機関の一部を抉った。

カーク曹長のカノントータス・レドームの榴弾砲がモルガの頭部に炸裂、モルガの甲冑の様な頭部装甲が醜い痘痕面に変貌した。

そのモルガはパイロットが死傷したのか、動きを止めた。

別のモルガがレーザーカッターを展開して突撃、カノントータス・レドームのレドームが紙の皿の様に引き裂かれる。

モルガは追撃しようとしたが、ジェフ大尉のコマンドウルフ改の大型キャノン砲を胴体に受け、大破した。

ダブルソーダがブレイクソードでイグアンを薙ぎ倒し、その隙をついてゴドス2機が襲いかかる。

「・・・」

ヘイル曹長のゴドスがイグアンの胴体を小口径荷電粒子ビーム砲で撃ち抜いた。

ゾイドコアが炭化したイグアンは崩れ落ちた。

「どけ!」バルスト曹長のゴドスも別のイグアンをガンポッドで蜂の巣にする。

コルトのゴドスも援護に回り、ゲーターの背びれをクラッシャークローで引き千切る。

「敗残兵ごときに!」

シュタイナー大尉のヘビーイグアンが左肩の大型ビーム砲を狂ったように乱射する。

「わっ」

ノエルのゴドスの左肩をビームが掠め、左肩装甲が溶けた。

「こいつ!」

割って入ったラインハルト軍曹のカノントータスが液冷式対空自動キャノン砲2門を至近距離から連射、高初速の徹甲弾の豪雨をほぼ零距離から浴びたヘビーイグアンは崩れ落ちた。

時同じくしてリックス曹長がグスタフの機能を回復させることに成功した。

移動を再開したグスタフにレッドホーンカスタムが襟飾りを振りかざして突撃する。

「ここまでか!?」

リックス曹長がそう思ったその時、レッドホーンカスタムとグスタフの間に黒い影が割って入った。
「やらせるか!」

黒い影・・アルフ中尉のマンモスは、違法改造を施されて通常よりも出力強化されたホーンカスタムの突撃を何とか受け止めることが出来た。

「マンモスだと!作業機風情が、このホーンに勝てると思っているのか!」

彼はホーンカスタムの出力を上げようとした。

次の瞬間、接近警報をヴァルターの聴覚が認識すると同時に彼を強い衝撃が襲った。

シールドライガーMkUの体当たりを受けたホーンカスタムは跳ね飛ばされ、赤い大地に叩き付けられる。

ホーンカスタムは衝撃で行動不能に追い込まれた。

「お、おのれえええ」

ホーンカスタムのメガビームガンを撃ちまくる。

狙いも滅茶苦茶の攻撃に味方機であるはずのイグアンが巻き込まれた。

「そんな、少佐っ」

パイロットの肉体は胴体から吹き上がった炎に飲み込まれた。

「落ちろ落ちろ落ちろ!落ちろ!落ちろ!!!」

ヴァルターは血走った眼で目の前の敵機に呪詛の言葉を吐きながら、トリガーを引き続ける。

「なんて火力だ。まともに近づけねえっ」

デュラン中尉のコマンドウルフをビームが掠めた。

アルバート少佐のシールドライガーMkUは、Eシールドを展開した。

「エミリア中尉!あの背中の大型砲を潰してくれ!弾種は徹甲弾を頼む!」

「了解」

顔色一つ変えずエミリア中尉はトリガーを引いた。

ゴルドスの背中にマウントされたバスターキャノン砲が火を噴いた。

その反動をゴルドスは太い4つの足で吸収した。

赤熱化した砲弾がレッドホーン・カスタムに命中した。

背中のメガビームガンとエネルギータンクが、根こそぎ吹き飛んだ。

同時にアルバートのシールドライガーMkUが突撃した。

「くっくるなああああ!!!」

ヴァルター少佐は、襟飾りのビーム砲を乱射したが、シールドライガーMkUを止めることはできなかった。

シールドライガーMkUのレーザーサーベルがレッドホーンのコックピットを切り裂いた。

主を失ったホーンカスタムは動きを止めた。

指揮官がやられたことで雨合の衆と化した帝国軍は算を乱して壊走した。

ブルー・ファイヤー隊は追撃せず、戦場から離脱した。






第2次大陸間戦争、開戦の原因となった第一次レッドラスト会戦は、ここ数十年間の間に軍備を整えてきた帝国軍の勝利に終わった。



敗走した共和国軍は、多くのゾイドと兵士を失い、少なくない数の部隊が、取り残されることとなった。

取り残された部隊の中には、第26独立中隊・ブルー・ファイヤー、第35独立中隊・グリーン・アローも含まれていた。



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