ゾイド系投稿小説掲示板
自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。
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「了解した、直ちに戻るとしよう。」ティアから電話を借りたリーファは、案件を瞬時に把握していた。「どーしたんですか?艦長……」訝し気に首を傾げるミントに、リーファは悪戯っぽく笑いながら話しかける。「直ちにティアマトーに帰投する。どうもヴァイスの奴がお得意様と鉢合わせしたらしくてな……彼女を迎えなくてはならん。」そう言うなり、つかつかとサンドスピーダに歩み寄った。「さ、2人とも行くぞ。」「ところで艦長、お得意様って誰なんですか?」メインストリートを走行中、ミントは運転するリーファに聞いてみた(ミント&ティアは荷台で荷物ごと牽引されている)。「一種の『運び屋』というやつだ。しかし、超一流のな。」真後ろにいたので伺えなかったが、ミントにはその時リーファが微笑んでいる様に思えていた……….同時刻、ヘスペリデス湖東岸地区上空………「大佐、間もなくオリンポス基地領空域に入ります。」上空を飛ぶのは、銀色に彩られたホエールキング。その船体にはカルミナ大公国のマークがくっきり刻み付けられていた。その中のとある一室に、士官がやって来ていた。「ん…分かったわ。ダロム少佐にはすぐに向かうと伝えておいて下さい。それからオリンポスの管制室にも打電を………後どのくらいで基地に入るかしら?」部屋からは仄かな湯気の香りとシャワーの流れる水音が聞こえる。そんな中で、セレナ・リィン・ヴィステリオ大佐は士官からの報告を吟味していた。「は、この状態ならば3時間もあれば到着致します。」軍人とはいえセレナも女性。しかもルックスやスタイルが悪くないため、部下や下士官には人気がある。そんな人が扉の向こうでシャワーを浴びているとなると、自然と声も上擦ってしまう。「フフ……そんなに鯱張らなくて良いわよ。すぐに向かうから……えーっと………」シャワーを中断したセレナは、少し悪戯っぽく笑って着替え始めた。「は・はい!カリギュラ管制室CIC担当、ゴドウィン・デクスター軍曹です!!」余程緊張していたのだろう……下士官はぎくしゃくした口調で返事を返した。「そう……ではデクスター軍曹、オリンポス基地の管制室に『カリギュラは3時間後に到着する』と打電して。任されてくれる?」素早く服を纏い、上着を羽織ったセレナは、優雅な動作で扉に向かっていった。..ウィルから連絡を受けて暫くして、3人は町外れに到着していた。「?」砂地に降りたミントは、傍に停めてある真っ赤なグスタフに気付いた。トレーラーには何かコンテナらしき物体が鎮座している。「このグスタフ………あ、もしかして……!?」記憶が正しければ、これは彼女の知っている超有名人の機体の筈……しかし何故、これがここに………?「ミントちゃーーーーーーん!!」途端に、ティアマトーから聞こえてきた大声がミントの思考を中断させていた。「この声……まさか!?」反射的に声の方を見たミントは………「やっぱりミントちゃんだぁ♪うわぁい!!」どごっ……!!!「※〇*:☆‡×&@/!?」猛スピードで突っ込みできた翠色の物体に激突され、派手に吹っ飛ばされていた……そのまま砂地にひっくり返るミント。「おーい、今のは一体………うぉあ!!何じゃこりゃ!?」俯せで、半分砂にめり込みながら痙攣するミントの耳に、ヴァイスの声が虚しく木霊していた……「ぷはぁっ……」砂から頭を出したミントは、四つん這いのまま顔を上げる。すると……そこにはヴァイス、シュウ、ティアといった馴染みの面子の他にもう1人。小柄な眼鏡の女の子が………「ぇ……リアン…………貴女、まさかリアン・フローライト!?!?」気付いた時、ミントは自分の目を疑っていた。「そのリアンだよ!久しぶりだね、ミントちゃん♪」ミントの側に座るリアンは、シュウに見せた時と同じく子犬の様な笑顔で微笑んでいた。「何だ何だ、お前等知り合いか?」ヴァイスは、思ってもみなかった展開に驚きながらも近寄った。「あ、はいっ!!ミントちゃんとは小っちゃい時からのお付き合いなんです♪」リアンは、ヴァイスの問い掛けにはきはきした様子で応える。「ということは、………あっ!この間からミントさんが捜してた友達って、もしかしてリアンさんの事なんですか?」途端に、シュウが何かを思い出した様に手を叩いた。「あー……うん、そーゆーコト………なはははは……………」ミントは頭についた砂を払いながら、ゆっくり身体を起こしかけた。ちなみに余談となるが、今日のミントの格好はフリルをあしらった桃色の半袖シャツ。それからクリーム色のミニスカートとニーソックスというさっぱりした出で立ちだ。当然の事ながら、いつまでも四つん這いでいると斜め後ろにいるヴァイスにはさぞ嬉しい立ち位置で………しかも、吹っ飛ばされた拍子にスカートがめくれてしまっているわけで………「ぁ……」(シュウ)「はわわ、ピンクのストライプ……可愛い……(赤面)」(リアン)「み・ミントちゃん……そろそろ起きた方が良いですよ……」(ティア)「うぉあ!?」ブシュッ!!(ヴァイス)..「えぇぇエッチ!!スケベ!!!こっ………このヘタレ共がアアアァァァァ!!!!!!」数分後、砂漠に般若の如く恐ろしい声が響き渡った。
「ど・どうしたんですの……?」ティアマトーに待機していたジュリアは、ハッチの入口で言葉を失っていた。「ヴァイスはともかくシュウまで、何かあったのですか?」訝し気な顔をしたジュリアは、頬に盛大に紅葉の型をつけたシュウに聞き出した。「じ・自業自得というか不可抗力の末路というか、とりあえずはそうとしか言えないです……痛ぅ〜〜〜…………」「ぴ・ピンクのストライプが襲ってくる………」向こうでは、顔面引っ掻き傷だらけになったヴァイスがだらしなくノビていた。「ご・ごめんなさいです〜〜〜(泣)」更に後ろでは、リアンが頭に出来た盛大なタンコブを涙目で摩っていた。「ぁ・あら……2人とも、そちらはどなたですの………??」見慣れない面子に、ジュリアは戸惑いを隠せない様子だった。「あ、彼女はリアン・フローライトさん。ティアマトーに用があるからってムンベイさんが連れて来てくれたんです。」シュウは、後ろにいるリアンについて軽く紹介する。「ほぅ、あの『荒野の運び屋』が来ているのか……道理で見覚えのあるグスタフだと思ったよ……」すると、普段着に着替えたレナードが格納庫に入ってきた。先程までシャワーを浴びていたのか、髪の毛からほんのり湯気が立ち昇っている。「こんな所で会えるとは珍しい。久々に顔でも見せてくるか……」レナードは肩にかけていた上着を羽織ると、颯爽と外に歩き出した。途中、倒れてるヴァイスを丁寧に押し退けて…….「お、久しぶりねレナード。元気してたぁ??」グスタフのトレーラー付近にいたムンベイは、近付いてくるレナードに気付くと大声で手を振った。「暫くだなムンベイ。まさかここで会えるとは思わなかった。」レナードは、眉1つ動かさずに応じる。「む、レナードも来たのか。」「ちょうど良い、彼にも手伝って貰いましょう。」側では、何か作業をしていたリーファとウィルが思わぬ増援の到着に顔を綻ばせていた。.[よし、こっちだ。速度はそのままで左ドックに入れ。]インカムで指示を送りながら、レナードはコマンドウルフでグスタフを先導する。ブリッジでは、ミント、ティア、シュウ、リアンがその様子を眺めていた。「はわわぁドラグーンネストのブリッジって、こんなになってるんだね♪ホエールキングとは随分違うですぅ……」最もリアンの方は、グスタフよりもドラグーンネストのブリッジの方に御執心なのだが……「そーいやリアン、あのコンテナの中身って何なのさ?」ミントがリアンに質問を始めたのは、グスタフが完全にドラグーンネストの内部に入ってからだった。「そういえば……僕も気になってました。」シュウも思い出した様に相槌を打つ。「あの大きさだと、大型ゾイドでも入れそうですね……ミントちゃんのフューラーでも楽に入れますよ。」「そーねぇ……」ティアは、ミントと一緒になって何か考えてる様子。すると……ピー、ピー、ピー……不意にブリッジの通信機が音を立てて鳴り始めた。「はーい、もしもし?」とっさにミントが受話器を取る。[ミントか、すぐに2番ハンガーに来い。面白いものが見られるぞ。]連絡してきたのは、レナードだった。[それからリアン・フローライト、ムンベイと艦長から『早急に来い』と直々の御達しだ。]「それにしても、ミントちゃんがあの風神騎士団の仲間入りをしてたなんてびっくりだよ。何で教えてくれなかったのかな?」エレベーターで連絡通路に向かう途中、リアンはミントに話しかけた。「ん、あぁゴメン。あの時はデザートプレデターと揉めてたから忙しくて……けど、この間町に戻ったらいなかったよ。」「はぇ、あのデザートプレデターを相手にしてたんだ……それでそれで?」聞いているうちに、リアンの表情が嬉々としたものに変わっていく。「ミントさんは勝ちました。それもフューラーとミントさんだけで、あのデザートプレデターを壊滅状態に追い込んだんです!」隣にいたシュウが、リアンに負けず劣らず嬉しそうに言った。「あの時、ヴァイスとレナードさんがデザートプレデターに潜入してたんですが、ミントさんが襲われて一瞬で片付けちゃったんです。レナードさんのコマンドウルフと戦ったでしょう?」「?」話題を振られてミントは思い出す。そういえば、あの時岩の上からフューラーを狙撃してきた青いコマンドウルフと交戦したような……….「…って、あれレナードだったの?そりゃ悪いことしちゃったなぁ……」思い出したミントは、ばつが悪そうに舌を出していた。「でも、いくらフューラーに乗ってたとはいえ、あのレナードさんとまともに張り合うなんて凄いです。隊長や艦長がミントちゃんを引き入れたくなったのも分かりますよ」後ろにいたティアが、こちらも興奮した様に言った。やがてエレベーターは、連絡通路に到着した。2番ハンガーには、グスタフから降ろされたコンテナが鎮座していた。確かにティアの言う通り、かなりの大きさである。「確かに大型ゾイド並のサイズね……」フューラーと同等のゾイドが収まるくらいの大きさのそれを、ミントはしげしげと眺めていた。「あら?遅かったですわね、ミント。」コンテナの前では、ジュリアが何やらキーボードで操作していた。「ジュリア。ごめん、ちょいと遅れちゃって。」頭を掻いて謝るミント。「ほら、口を動かすより身体を動かして下さいませ。ティアとシュウもお手伝いなさい。」ジュリアは苦笑しながらも的確に指示を出して動かしていく。小数精鋭ならではの手際の良さである。直ちにミント達はそれぞれの作業に入る。その様子は不慣れながらも、中々板につくものだった。暫くして、コンテナの外装が果実の皮を剥く様に開放されていく。その中から現れたのは………「レッドホーン……?」(ミント)深紅に煌めく装甲。頑強な四肢。特徴的な襟飾りと、そこから生えた2対の突起。そして、鼻先に聳え立つ深紅の角。現れたのは、『動く要塞』と言われる角竜型のゾイド、レッドホーンだった……!レッドホーンとは、対デザートプレデター戦で戦った事がある(この時はミントの圧勝だったが)。しかし、件のレッドホーンには背中のリニアキャノンや対空ビーム砲が無く、代わりに物騒な装備がふんだんに設けられていた。肩にあたる部位には大型の8連装ミサイルポッドが装備され、背中には威力の高いキャノリーユニットと重バルカン砲を搭載。尻尾にも対空ミサイル2丁と、かなりの重装備となっている。「な・何ですの?この如何にもハリネズミみたいなレッドホーンは……」あまりの重武装っぷりに、ジュリアは思わず驚嘆する。「凄い……キャノリーユニットに8連ミサイルポッドを併用させるなんて、僕も初めて見ましたよ………」シュウは、その壮観振りに息を呑む。「ふっふっふ……動く要塞と言われるレッドホーンの長所を見出だし、この様に火力をふんだんに使用してみました♪どう?凄くない?」リアンは、驚く一同を見渡しながら誇らしげに胸を叩いた。「す…凄いじゃない。よくこんな高価な武器手に入れたわね」1人だけ感嘆していたミントは、レッドホーンを見渡しながら言った。
「ジャンク屋としての腕を使えば、特注パーツなんてちょろいです♪」リアンは、眼鏡を上げながら後ろのレッドホーンを見た。「…にしても、随分金かけてるわね〜……こんな高価なの、軍の施設からガメてこないと手に入らないんじゃないの?」ミントが訝る口調でリアンを問い質す。「あ〜〜大丈夫。そこんとこはあたしが仕入れといたから♪」途端に、入口からハスキーな声が響いた。見ると、ムンベイとリーファが入ってくるところだった。側にはヴァイスも控えている。「あ、艦長…それにムンベイさんも………」同時刻、メルクリウス湖中央、カルミナ大公国軍オリンポス山駐屯基地……メルクリウス湖の真ん中に位置する山「オリンポス山」……ここは通称『エウロペの屋根』と称される、大陸随一の山である。かつての大戦の折には、この山で中央大陸と暗黒大陸から来た大国同士が熾烈な戦いを繰り広げた事から、歴史を物語るスポットとして今尚多くの歴史家や軍事評論家の注目を集めている。また、時たま遺跡から旧時代の遺物やゾイドが見付かる事もあり、更には軍事施設を設ける上で最適な立地条件もあることから、カルミナ大公国も山頂に難攻不落の要塞を築いている。その山頂の要塞基地に、1隻のホエールキングが降り立とうとしていた。ホエールキングから、すらりとした影が颯爽と降りてくる。白い軍用コートに白い制帽を被っているが、時折見える艶のある頬と眼鏡越しの瞳から女性と判断出来た。そしてコートに刺繍された階級章から、彼女が『大佐』であることも……「遠路遥々ようこそお出で下さり、有難うございます。セレナ・リィン・ヴィステリオ大佐。」基地司令官の声を聞きながら、セレナは眼前に広がるオリンポス山要塞基地を見渡した。「受け入れを感謝致します、司令。」明らかに自分より年上の司令官に、セレナは凛とした動きで敬礼する。同時に、彼女の後方に控えていたダロム少佐も同様に敬礼した。「アムンゼン中佐から連絡を受けた時はよもやと思いましたが、まさか本当にお越しになるとは思っていませんでした……ささ、客間で旅の疲れを癒して下さいな。」基地司令官が、にやにやした笑みを浮かべてセレナに近寄る。「御気遣いありがとうございます……しかし御心配無く。早速ですが、まずはそちらの報告を聞きたいと思いますわ。」セレナは慇懃無礼な視線を一瞥すると、そのまま歩き出した。「ったく、何なんですか?あのハゲ……完全に大佐をバカにしてますよ、あれ。」セレナの側を歩くダロム少佐は、気分が悪そうに吐き捨てていた。「気にしちゃダメよ……貴族のお偉方は、私みたいな小娘が上官であることが気に入らないの。貧民でありながら士官をやってる事もね……!」本来、カルミナ軍の士官の大半は国を治める有力貴族や資産家、将軍、及びその親類縁者によって占められている。従って、平民や貧民が佐官クラスにまでのし上がった例はかなり稀なものだ(実際、ダロム家やノーティス家も下級であるが貴族の家柄である)。しかし彼女…セレナ・リィン・ヴィステリオは、類を見ない例外的な存在だった。本来は貧民街の中でも最も治安の悪いスラム地域の出身だった。しかし軍に入り、当時教官だったアムンゼンの指揮下に入ってからメキメキと才能を現してきた稀有な存在で、現在では若くして大佐の地位を得ている。元来、出自や家柄にこだわらずに資質や能力を優先するアムンゼンの指揮下にいたからこそ実を結ぶ事が出来た彼女だが、旧来の貴族、資産家出身の士官からは逆に煙たがられる事が多いのが現状だった。「少佐、執務室に着いたら早速作業に入るわ。補助の方お願いするわね。」しかし、そんな風に吹かれる事もなく彼女はテキパキと指示を飛ばしていった。「ホエールキングや中のゾイド部隊も、いつでも発進出来る様整備を始めさせておきなさい。」「了解…!」「まぁ確かに規格外のパーツも多いけど、武装や各部関節強化パーツの大半はガイロス帝国から仕入れてきたヤツだからね。品質は保証するわ♪」ムンベイがミントに向かってケラケラ笑いながら答える。「それにしても……リアンからちょっと聞いてたけど、かの悪名高き『翡翠色の姫騎士』がこんなに若い娘だったなんて驚きだわ。ヴァイスやティア達と会うまで、ずっと1人だったの?」だが……不意に真剣な眼差しでミントを見据えてきた。「そうですね……リアンには整備とか補給とか手伝って貰ってたんですけど、8年前にフューラーと会ってから最近までは、ホントに仲間なんていませんでした………」淡々と話すミント。しかしムンベイは、その表情に僅かな陰りが見えたのを見逃さなかった。「ふーん……8年前か………ってことは、ミントってロフト共和国の………」ムンベイは何かを察し、しんみりした表情で溜息を尽いていた。「あぁそうそうリーファ。これ知り合いから聞いたんだけど……」「どうした?」夕刻、ティアマトーのサロンに一同が集まった中でムンベイは不意に切り出した。「まだ確定情報じゃないみたいだけど、最近ミューズ森林地帯でゾイドやゾイド乗りが消息を絶ってるって噂があるの。カルミナ大公国の軍人も中には含まれてるみたいよ。」「ほぅ………」神妙な面持ちで語っていくムンベイ。リーファは、顔色1つ変えずに話を聞き続けた。「何だそりゃ?そんなの聞いてねーぞ。」ヴァイスは困惑した様にムンベイを見る。「そりゃそーよ。まだ確定情報じゃないんだし……」ムンベイはやれやれと言わんばかりに首を振る。「でも、こうして風神騎士団と会えたのはラッキーね。今の話、出来たら裏を取って欲しいんだけど……駄目?」しかし、すぐに気を取り直して今度はティアに向き直った。「ありますね……ミューズ森林地帯にある都市遺跡の調査隊が消息を絶ったって。しかも最近です……」ブリッジに戻ったティアは、早速端末を起動させて情報収拾にあたる。「えーと……『1ヶ月前、旧ロフト共和国首都、アルトハイムの遺跡を調査していた学術調査隊が突如として行方不明になる事件が発生。カルミナ大公国軍はゾイド3個小隊を伴った救援隊を編成して現地に赴いたが、調査隊、及び使用されたとおぼしき機材、随伴したゾイド等、全ての関係物が残らず消滅しているとの報告。だが数時間後、唐突に救援隊からの通信は途切れ、現在もその行方は知れない……』」しかし、声に出して読んでいるうちにティアの表情が次第に険しくなっていった。「旧ロフト共和国の首都、アルトハイム…………これって、まさかミントちゃんの国……!?」そう……ロフト共和国……それは、今はもう存在しないミントの故国…そして、首都アルトハイム……そこはかつて、ミントが全てを奪われて…尚且つフューラーと出会った街。まさに全ての始まりの地と言っても過言ではなかった………
カルミナ大公国北東部、ロブ基地……夕焼けの光をバックに、巨大な影が空から降りてくる。ホエールキングだ。悠然と滑走路に降り立つ赤い巨体は、管制塔からの指示に従って暫く前進した後…ゆっくりと停止した。その巨体から、長身の人影が降りてくる。「久方振りになるな、エウロペの地を踏むのも……」栗色の髪をたなびかせ、青年は優雅に空を見上げた。.「……リョウト?」軍用車両に揺られていたリョウト・ルティーナは、隣から聞こえてくる声にふと視線を移した。「シャロンか……どうした?」リョウトの隣にいたのは、灰色のポニーテールを垂らした女性…シャロン・ドゥーリットル少尉だった。「ん…何かボーっとしてたから。何かあったの?」訝る様な表情で、シャロンはリョウトに問い掛ける。時折、蠱惑的な笑みを浮かべつつ彼の腕に肢体を絡めてくるが、リョウトは微塵も戸惑いを見せなかった。「……俺とて、考え込む事もある。甘さ故、冷血人間にはなりきれないものだ………」「…?」自嘲する様な…そして孤独を隠せない表情で、リョウトはフロントガラス越しに聳える基地施設を見据えていた……やがて、2人を乗せた車両は施設の前で停車した。..暗い空間に、突如として証明が灯される。その中心に、リョウトは立っていた。『緊急の呼び出しとは、珍しい事もありますな。ジェネラル.θ。』彼の前に見えるのは、6つの大型モニター。うち5つが点灯していて、重厚な声は一番左のモニターから聞こえていた。「なに…事が滞りなく進んでいるか、気になったものでね……緊急の呼び掛けに集まって頂いた元老院の方々には御礼申し上げます。」リョウトの声は、薄暗い空間に低く響き渡っていた。.「……して、アルトハイムの方は、どうなっています?」『我々の技術陣が既に解析に乗り出していますが、何分欠けている部分が多いので少々時間を要するものと思われます……』モニターからの声に、リョウトは一瞬だけ眉をひそめた。「……分かりました。では何かあったら随時報告をお願いします……それでは時間となりましたし、本題に移りましょう。」やがて、リョウトの背後に何かの巨体な映像が映り混んだ。『このゾイドは……!』『バーサークフューラー……しかも、この色はまさか…………!?』モニターの向こうの面子は、不意に現れた映像を見て戸惑いを隠し切れない様子だった……モニターにくっきりと映り込んでいたのは、漆黒の虎‐ブラストルタイガー‐と対峙する巨大なティラノサウルス型ゾイド…バーサークフューラーの姿だった……!「これは以前、私が対峙したバーサークフューラーの映像です……この機体は6年前、旧ロフト共和国の首都…あのアルトハイムの軍事研究施設から姿を消したものと一致し、しかも我等の敵として立ちはだかっているのです……!」.『まさか、以前カルミナ軍を襲撃した連中の……!?』『あんな怪物がいるとは……これでは我等の計画にも支障が生じかねないではないか!』モニターの向こうにいる元老院の面子は、フューラーの映像を見るや否や狼狽する様にざわつき始めた。『…しかしジェネラル.θよ、このバーサークフューラーが一体どうしたというのか?如何に驚異とはいえ、たった1機の大型ゾイドに貴殿がそこまで固執するには、より大きな理由があるとしか思えんな……』右から2番目のモニターから低い声がしたのは、その時だった。「ブレイン.γ……!」リョウトは、今しがた一石を投じた男に向き直る。「……流石ですね。まさしくそうなると睨んでいます……皆様の手元にも間もなく届く頃でありましょうが、採取したあの機体の装甲から大層面白い物質が検出されました。」リョウトの言葉と共に、全てのモニター映像が不意に切り替わる。現れたのは、綿密に解析された何かのデータだった。『この元素記号は……』『なるほど、そうだったのか………!!』元老達は、それを見て一様に驚嘆している。『ほほぅ……只の実験機かと思えば、中々どうして面白い事じゃないか。』たった1人、[ブレイン.γ]と名乗った男以外は……『ミューズ森林地帯にのみ産出する希少金属[ロストジェダイト]……あの機体にそれが使われているとはな。我等イプシロンにとっては必要なあの金属が………!!ジェネラル.θよ、これはもはや貴殿等スティグマータのみの問題ではない。他の直轄師団や国軍にも召集をかけておくべきではないか?』ブレイン.γは、不気味な笑い声を放ちながらリョウトに申告し始めた。「無論……各々の師団にも、そして世界中の同士達にも、伝わるのは時間の問題……そうなった時の対応を皆様にして戴く旨を了承して貰うべく、今宵呼び掛けたのです。」しかしリョウトは物怖じする事も無く、淡々と…だがはっきりした口調で言葉を紡いでいた。その見えない気迫が伝わったのか、モニター越しに見える人影がざわめき始めた。『……よかろう。我が[ヒュペリオン]も、以後は貴殿の考えに賛同する様に取り計らっておく。皆もそれで良いか?』騒がしくなった空気を鎮めたのは、ブレイン.γの一声だった。「感謝致します……では本日はこの辺りで。」暫くして、リョウトは短く呟いた。..《我等はイプシロン。人類の導き手に栄光あらんことを!!》