ゾイド系投稿小説掲示板
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ZAC2173年 6月18日北エウロペ地方 赤の砂漠(レッドラスト)南部 メルクリウス湖畔都市「ミナス」
レッドラスト南部に位置する湖、メルクリウス湖。その湖畔に位置する都市ミナスに、少年の声が響き渡る。「あ、この魚いいですね。いただきます。」「あいよ、毎度ありぃ!坊ちゃん中々気前が良いねぇ!!」.ミント達風神騎士団は今、この湖畔にあるリゾート街で食料調達を始めていた。(パンや米類はミントさんとティアさん、野菜類は姉さん、水の類はヴァイス……それから僕が肉、魚を買い揃えたら、とりあえずは大丈夫ですね。)肉や魚は結構かさばるので、幼いシュウには多少骨が折れそうだった。それでも引き受けた以上、持って帰る必要があった。(まぁ、流石に肉が無かったらヴァイスが五月蝿いですからね……)好物にありつけずに癇癪を起こす隊長の姿を連想し、シュウは思わず苦笑する。「さてと…うわぁ、随分買い込みましたね……」弾薬や武器、予備パーツはともかく、毎日の糧となる食料はすぐなくなってしまう。故に、手に入れられる時には手に入れておいた方が良い(賞味期限も考えなければならないが)。とはいえ、流石に合計30`は重過ぎる。「あの……すみませんが、荷車か何か貸していただけませんか………?」.「よ…っと……!」荷車に荷物を乗せたシュウは、汗を拭きながら空を見上げた。快晴の青空で、天気としては申し分無い。加えて、リゾート街だけにレジャー施設やホテル等も数多く立ち並んでいる(壮観だな……出来ればもう一度、今度は遊びに来たいものですね………)やはり子供なのか、周りで遊んだり寛いでる人達は羨ましい様子………うららかな陽射しを浴びながら、シュウは思わず物思いに耽っていた。「ふえぇ〜〜〜ん、ど・どいて下さ〜〜〜〜い!!!」奇妙な叫び声が聞こえてきたのは、その時だった。「?」物思いに耽っていたシュウは、その声でハッと我に返る。見ると……湖畔に隣接する坂道の上から、大きな荷車が転がってくるのが見えた。それも、今自分のいる方角に………!!「いぃ!?」とっさに自分の荷車を引いて回避しようとする。しかし……(あれは……!?)よく目を凝らして見ると……荷車の上には、荷物と一緒に何かが乗っていた。「ふゃあああああぁ〜〜〜〜〜〜」否、それは荷物にしがみついて動けなくなった人間だった!!.「マズイ!このままだと………!?」今シュウと自分の荷車がいるのは、メルクリウス湖に面した湖畔の道。後ろは柵を隔てた湖である。つまりは……シュウが避けたら、荷車の上の人物は荷物もろとも湖にダイブしてしまうということだった!!「っ…!!」流石に携帯で助けを求めている暇は無い。「ほえぇぇぇぁぁ〜〜〜〜〜〜………」そうこうしているうちに、荷車は後10b近くまで迫ってきていた。(こうなったら……えぇい、もう知りません!!!)不意にシュウは、荷車を掴むとそのまま逆向きに押し出していった。迫ってくる荷車の真正面に向けて………ガッシャアァァァン………………一瞬の後、盛大な音が湖畔に響き渡った………..「んぁ〜〜〜〜食った食った。リゾート街のアイスクリーム屋さんって、サービス良いね♪」米の袋を手押し車で運びながら、ミントは満足感に浸っていた。「み・ミントちゃん……流石に3つは食べ過ぎです。お腹壊しても知りませんよ?」隣では、アイスクリームを堪能しながらティアが苦笑していた。「まーまー、甘いものは別腹って言うじゃない。ついでにジュリア達の分も買っちゃったしネ♪」ミントは、肩に下げた小型の保冷パックをポンポン叩いた。そうこうしているうちに、2人は湖畔に面した道に辿り着いていた。「む?そこにいるのはミントにティアじゃないか、奇遇だな。」カフェテラスでお茶を愉しんでいたリーファは、通り過ぎる2人に気付いて声をかけた。「あ、艦長♪」ミントは、リーファの姿を見つけるや否やトテトテと駆け寄っていく。リーファは、かけていた片眼鏡を直しながらその様子を見つめていた。「こちらの買い物は済ませてある。そのついでに、牽引用の[サンドスピーダ]をチャーターしておいたし……この際だ、お前達もその荷物を入れておけ。」リーファは優雅に紅茶を啜りながら、傍らに止めてある小型のビークルと荷台を顎で指した。「中々用意周到ですね、艦長……はむ。」ミントはというと……さっきアイスクリームを平らげたばかりだというのに、もうアップルパイを頬張っていた。「なぁ…前から言いたかったのだが、ミント……お前の胃袋は底無し沼なのか…………(汗)」アイスクリームを3つも食べて、その後更にアップルパイを注文するミント。これは常人の摂取量を軽く越えている。これには、流石のリーファも返す言葉が見つからなかった………..「あ痛たたたぁ………」土煙の中で、間の抜けた様な声が聞こえる。「ぅ……ぐぁ………」そして、苦しそうな呻き声も………「はぅっ!?だ・大丈夫ですかぁ!?」シュウの意識が最初に感じたのは、全身を襲う鈍い痛み。そして……「ふえぇん、しっかりして下さい!寝たら死んじゃいますよ!!」耳元にけたたましく響く可愛らしい少女の声だった。恐る恐る目を開けてみると………くりくりした大きな瞳がシュウの眼前に現れた。「ぅわ!?」突然の光景に、思わず声を上げて仰け反ってしまう。しかし……ガン!途端に、後頭部から景気の良い音がした。「ぐおぉあぁぁ〜〜〜〜…………」同時に、洒落にならない激痛が流れ込んでくる。その痛みに耐え切れず、シュウはのたうち回るしか無かった…………「はわわわわぁ〜〜〜!?」その一方で、耳元に聞こえる声は明らかに狼狽していた。..「そういえば……以前ニケアコロニーに行く前、友達を探しにオアシスに立ち寄っていたな………」紅茶を飲み終えたリーファは、アップルパイを頬張るミントに向けて思い出した様に切り出した。「ぁ……」途端に、ミントの様子が僅かに変化した。「あ、そういえば……結局空振りで、それからもあんまり情報が寄せられなかったですけど………」ティアは、手にしたティーカップを置いてミントを見つめた。「そっか………ティア、ごめん。自分の我が儘に使っちゃって。」「ん、別に良いですよ。ミントちゃんの友達なら、私達だって友達ですから。」申し訳なさそうに俯くミント。それに対し、ティアは屈託の無い笑みで応えた。「確かにな………それにその娘、聞いた話によればジャンク屋なんだろ?我々の仲間に加えれば、整備や修復、物資補給ルートにおいてなにかと楽になる筈だ。」リーファも、ニヒルに笑いながら頷いていた。.「それに、お前の仲間なら会ってみたい気もある。これは、作戦云々よりも私の本心だな………」
「ふぁ……」ヴァイスは、退屈そうに欠伸しながらメインストリートを闊歩していた。「水は一応確保した。後はミント達と合流するだけか………」優雅に背筋を伸ばす姿は、美男子であるヴァイスの姿を見事に絵にしていた(無論、本人が気付いているわけ無いが……)。「…にしても、あいつ等何処行ってんだ?こっちは一仕事終えたばかりだってのによ……」ガッシャアァァァン………………湖畔に面した道から、盛大な音が響き渡る。「何だ!?」メインストリートを歩いていたヴァイスは、思わず辺りを見回した。見ると、湖畔の道の一箇所に人だかりが見えた。(あそこか……)ヴァイスは、好奇心が沸いたのか人だかりに向かって駆け出していった。「ちょいとゴメンよ〜〜〜」何人かのざわめく群衆を無造作に掻き分けて、ヴァイスは人だかりの中心に首を突っ込んだ。そして………「…………」その光景に絶句した。前半分が潰れた木製の荷車が、金属製の荷車に突っ込んでめり込んでいる。辺りには木片や車輪が多数散らばり、土埃が微かに舞っている。そして、その中心にいるのは……「あいつ………もしかしてシュウ……?」自分の物凄くよく知っている少年だった。その隣には、何やら緑っぽい色の小柄な影が座り込んでシュウを心配そうに見つめ続けていた……….「ぁ痛たたた………」シュウは、先程の激痛が治まったのか頭をくらくらさせながら回りを見渡した。すると、「はぇ…」すぐ近くにへたり込んでいた人物と目が合った。そこにいたのは、緑のワンピースとクリーム色のカーディガン。そして大きな眼鏡を纏った小柄な少女……先程荷車の上で悲鳴を上げていた少女本人だった………「ぁ…あの……」最初に口を開いたのは、少女の方だった。その子犬の様な雰囲気に、シュウは思わず呆然としてしまっていた。「だ・大丈夫ですか?怪我はありませんかぁ?」愛嬌のある幼い声で、少女はシュウに話し掛ける。「ぅ…と・とりあえずは何とか………」シュウは、反射的にそれに応えた(実際は物凄く痛いのだが、敢えてそこは伏せて)。「よ……良かったですぅ…………」少女はそれを聞いた途端、安心したかの様にへなへなとへたり込んだ。「貴女…さっきの荷車の………」記憶が正しければ、シュウの前にいるのは荷車の上で見た人物の筈。「ぁ……ご・ごめんなさい」だが、問い掛けようとした途端…彼女は不意に申し訳なさそうに頭を垂れたのだった。「ぁ、いや…何も怒ってなんかないです。寧ろ、湖に落ちなかっただけ幸いですよ。」思わず反射的に振る舞うシュウ。しかし………次に少女の口から放たれた言葉には、流石に驚きを隠せなかった。「それが………ちょっと買い物してたつもりが衝動買いしてしまい、しかも転んだ拍子に荷車が転がって……慌てて捕まえたのは良いけど、坂道に来た途端、今度は風でスカートがめくれて、お尻を押さえた拍子に荷車を押しちゃって……そのまま加速しちゃって、揚句の果てに降りられなくなっちゃったんです」どうやら、1つ1つの些細な出来事が想像を絶する惨事に発展したらしい。しかも容易に想像出来るのがまた恐ろしい………「そ・それで………こんな…ことに………???」シュウの問い掛けに、少女は涙目で頷いた。「ん〜〜こりゃ天性のドジっ娘だな。しかも相当の。」すぐ側にいたヴァイスが、何故か顎に手を当てて頷く。「そうですね……家事手伝いしてる時のジュリアさんと良い勝負です………」そして、シュウも反射的に頷き………「……ってヴァイス!?!?」これまた素っ頓狂な顔で跳び上がった。「よっ、こんな所で馬鹿面下げて何やってんだヨ?」呼ばれたヴァイスは、呑気にしゃがみ込んで手を振っていた。.「しっかし、派手にやらかしたなぁ……こりゃ酷ぇ。」群がってくる野次馬を追い散らしたヴァイスは、改めて荷車の様子を確認していた。肉や魚を満載した金属製の荷車は、衝突した位置のフレームが大きくひしゃげていた。しかも車軸も曲がってしまったらしく、少し傾いている。積み荷が潰れたり投げ出されてないだけでも奇跡に近かった。「……ったく、シュウに感謝するこったな。こいつがいなきゃ、今頃あんたは荷物ごと湖に放り出されてたぜ。」「め・面目次第も無いですぅ………」ばつが悪そうに俯く少女を一瞥しつつ、ヴァイスは半ば呆れ口調で振り返った。「それでシュウ、どーするよ?ミント達に応援でも要請すっか?」ミント……その言葉を聞いた途端、少女は不意に身体を震わせた。「へ……ミント……?」しかし、ヴァイスもシュウも残念ながらそれには気付かなかった。.ピコーン、ピコーン、ピコーン………どこからか、如何にもファンシーな音色が流れてきたのはその時だった。「発信音…?」(シュウ)「誰かの携帯か……?」(ヴァイス)2人が?マークを浮かべつつ辺りを見渡すと、少女がおもむろに手を懐に突っ込んでいた。そして、薄緑色の可愛らしい携帯を取り出していた。「もしもし………あ、ムンベイさん!?ど・どーもすみません(汗)」電話に出た少女は、いきなり慌てた様に平身低頭の姿勢を取った。[遅ーーい!!こっちは時間割いて装備調達したってのに、当の本人が来てないとは何事よ!?]電話の向こうからは、ややハスキーな女性の声が微かに聞こえてくる。聞いた限り、結構気短な性格らしい。「ああああの、これには深いわけがありまして、はい……ていうか助けて下さい!こっちはこっちで可愛い男の子をぶっ倒しちゃって、そしたら今度は怖そーな男の人に絡まれて……とにかくてんてこ舞いなんです!!」「…えぇ!?」(シュウ)「ってオイ!このガキどさくさ紛れに何言ってやがる!?」(ヴァイス)少女がとんでもない事を言ってしまったのに2人が気付いたのは、通話が始まってからきっかり1分後の事だった。[ちょ・ちょっと……だ・大丈夫なの?ねぇ!?]「はい、そういうわけでして……あ、僕は全然気にしてません。相方はお冠みたいですけど…………」数分後、明らかに混乱してる少女に変わってシュウが事態を事細かに説明していた。[なるほど……あの娘、またやらかしたのね………]シュウの言葉に、電話越しの声は呆れた様に呟いた。「また………ですか…………」[こうなったら仕方ない…電話の向こうのあんた達、その娘連れてちょいと街の北まで来てくれない?]暫く考え込んでいた声は、不意に突拍子もないことを言い出した。「へ?」唐突に放たれた言葉に、シュウは一瞬困惑した。「あ・あの……僕達、仲間と待ち合わせしてるんですが………」[だったら協力して貰ったら?あの娘の相手してくれるくらいだから、融通くらい聞かせてくれるでしょ?]しかし…返ってきたのはあまりに無茶苦茶な理論だった………[あたしは北のゲート前にいるから、赤いグスタフが目印よ。あ、それから……拒否権は一切無いんで、そこんとこ御了承ね♪].「おいおい……電話で話したばっかの、見ず知らずの俺等にそーゆー事頼むか!?」事情を聞いたヴァイスは、癇癪を起こしてシュウを問い詰めた。「僕に言われても…もしかしたら向こうだって、のっぴきならぬ事情があるかもしれないですし……とにかく行きましょう。」シュウは、ヴァイスを諌めつつも内心で溜息を尽いていた。「しかし赤いグスタフか……まさか…な……?」
ミナス北門前…「あ、そーいや……俺等まだ自己紹介してなかったな。」ヴァイスは、思い出した様に手を鳴らした。「そーいえばそーでしたねぇ。まだ自分の名前言ってなかったです。」少女も気付いた様に声を上げる。「此処で会ったのも何かの縁……ということですね。あ、申し遅れました。」シュウはこほんと咳払いすると、少し改まった様子で言った。「僕はシュウ・ホウジョウ。こっちは僕達の仲間のヴァイス・フォン・アーセナルです。」そして、自分とヴァイスの紹介をさりげなく行った。そして、少女も………「こちらこそ宜しく!『華麗なるジャンク屋美少女』、リアン・フローライトです!!」これまでの中で、最も強い口調で言い放っていた!が………「華麗なる………」(ヴァイス)「ジャンク屋美少女………?」(シュウ)2人は茫然としていた。132aのシュウよりも少し高いだけの身長。ボブカットに切り揃えた深緑の髪。そして、如何にも近眼を思わせる大きな眼鏡。確かに、子犬みたいな雰囲気を纏っていて可愛らしい感じはある。しかし、美少女と言われると……明らかに難がありすぎる様だ。ましてや、先刻の騒動を見ていると………お世辞にも、『華麗』には程遠く感じてしまう。「……お前さァ、つかぬ事聞くかもしれねーけど………歳幾つ?」暫くして、ヴァイスがぽつりと口を開いた。「はぇ?まだ15ですけど……」少女‐リアン‐は、頭上に「?」を浮かべながら答えた。「じゅ…15って、ミントより年上じゃねーか………あいつの方が背ぇ高いぜ………」ヴァイスは、驚きを隠せないと言わんばかりに顔を押さえた。「ま・まぁ人それぞれって言いますし……あ、そろそろ北門に行かないと………」(シュウ)「あ、そーでした!」(リアン)「お、もうそんな時間か……ったく、さっさと済ませるぜ。こっちは疲れてんだから早く帰って寝てーんだよ。」(ヴァイス)やがて時計を確認した一行は、北門に向かって歩き出した。「そーいえば…」リアンが傍らを歩くシュウに話しかけたのは、北門が近くに迫ってきた頃だった。「2人とも、さっき『ミント』って言ってましたね。誰かのお名前ですか?」「ミントさんがどうか……?」唐突な質問に、シュウは少し戸惑う。が、すぐに落ち着き払って答えた。「ええ…僕達の掛け替えの無い仲間です。」.「ほほぅ、やけに聞き覚えある声だと思ったら……まさかあんた達だったとはねぇ♪艦長ちゃんとお嬢様姉妹は元気してる?」北門で待っていたのは、褐色の肌が似合う長身の女性だった。「こっちも、まさかこんな所で再会するなんて思わなかったぜ……ムンベイ……」女性の眼前では、ヴァイスがげんなりした様子で溜息を尽いていた。「まさかリアンさんの待ち合わせ相手が彼女だったとは……僕も驚きです。」「私もです…まさか、ムンベイさんが2人とお知り合いだったなんて知りませんでした………」脱力するヴァイスを横目に、シュウとリアンは顔を見合わせて苦笑していた。彼女の名はムンベイ。真っ赤なグスタフを愛機とする運び屋で、如何なる悪路だろうと危険地帯だろうと荷物を届けてくる凄腕のパイロットである。彼女の知名度は大きく、運び屋仲間のみならずカルミナ大公国、果ては海の向こうの大国たるヘリック共和国、ネオゼネバス帝国、ガイロス帝国の高官や王族関係者から依頼を受ける事もあると言われている。.「あーそうそう。リーファの話じゃ、あんた達のとこに新入りが入ったって聞いてるけど……今日はお留守番?」ヴァイスと話し込んでいたムンベイは、ふと何か思い出した様に言った。「ん?あぁミントの事か。あいつはティアと一緒に買い物だ。」ヴァイスは、これまた思い付いた様子で返す。「食料は買える時に買っておいた方が良いですからね。今日は骨休めを兼ねてみんなで買い出しをしてるんです。」続いてシュウも付け加えた。「なるほど……だから肉と魚と水を満載した荷車があるわけだ………」傍らに停めてある荷車を見て、ムンベイは納得していた。「そーだ、ちょいとリアンに頼まれてゾイド掘り出して持ってきたんだ。あんた達にも見せてあげる♪」ピリリリリ………ティアの携帯電話が鳴ったのは、ちょうどミントがアップルパイを平らげた時だった。「んぁ、電話??」「そうみたいですね、お姉ちゃんかな……?」おもむろに携帯を取り出すと、ディスプレイには「ヴァイス・フォン・アーセナル」の文字が表示されていた。「隊長から…何かあったんでしょうか………?」一抹の不安を覚えつつ、ティアは通話ボタンを押した。同時刻、ティアマトー艦内ブリッジ……「何……本当か?シュウ。」ウィルがシュウからの連絡を受けて目を丸くしていた。「やっほ、久しぶりねウィル。義眼の調子は悪くなってない?」[こちらは問題無いな。添付の説明書通に逐一メンテナンスしているが、やはりガイロス製のものは精度が良い。]シュウから電話を受け取ったムンベイは、電話越しにウィルと会話していた。[…貴女には、色々と世話になっている。こちらとしては感謝してもしきれないくらいだ。]「まぁそう言いなさんな。あたしだってあんた達には色々助けられてるんだし……おあいこってところよ。」どうやら彼女との会話には、ウィルも話を弾ませているらしい。[そういうことなら、一度ティアマトーに顔を出したらどうだ?紹介したいメンバーもいる。]「お、それ上等!!こっちもちょいとドックを使いたいし、よろしく頼むわ♪」「というわけ。久々にティアマトーにお邪魔させて貰うわ♪」電話を終えたムンベイは、嬉々とした表情でヴァイスの肩を叩いた。「あぁ、こっちは問題無しだ……んっ………ぷはぁ」ヴァイスは、吹っ切った様子で手元の缶コーヒーを煽った。「そうですね。ムンベイさんなら姉さんやレナードも大歓迎でしょうし、それにミントさんとも話が合うかもしれませんし……」シュウもミルクティーを飲みながら相槌を打った。「ミントって……例の新入りの子?」「はい。僕より1つ上ですが、中々強いです。何たって、あの『翡翠色の姫騎士』なんですから♪」同時刻、ミナス南西部機獣置場の様な施設で、ジュリアは暗緑色のそれを見つめていた。「最新素材のステルス塗料……ん〜〜〜〜中々ワイルドになりましたわね♪♪」暗緑色に彩られていたのは、紛れもなくジュリアのガンスナイパーだった。「塗装に加えてバレルの交換とバランサーの再調整。ついでに四肢をマイクロホーミングミサイル内蔵型に強化……だいたいこんなところだね。」機獣置場の主とおぼしき大柄な作業員は、すかさず電子計算機に何かを打ち込んでジュリアに見せる。「成立……ですわね♪」.「はぁ〜〜ったく……ゾイドは戦争に使う兵器だってのに、あんな実戦的な改造しやがって………金にはなるが、セレブってのはわからんねぇ〜〜」去っていくガンスナイパーの影を見ながら、作業員は誰に聞かせるわけもなく呟いていた。まさか、この『お嬢様風の少女』が本物の傭兵であろう事など知る由もなく………