【広告】AmazonからスマイルSALE初売り1月7日まで開催中

ゾイド系投稿小説掲示板

自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。

トップへ

投 稿 コ ー ナ ー
お名前(必須)
題名(必須)
内容(必須)
メール
URL
削除キー(推奨) 項目の保存

このレスは下記の投稿への返信になります。内容が異なる場合はブラウザのバックにて戻ってください

[277] ZOIDS−翡翠色の姫騎士 インターミッション@ 特殊任務 ケイ氏 - 2010/07/07(水) 12:27 -




中央大陸の西半分を統括する大国『ネオゼネバス帝国』。
その特務部隊に属する1人の少年兵のもとに、数奇なる任務が言い渡される………
それを受けた時、少年は何を見出だすのか………?



レナード・ヴィオリア

[278] ZOIDS−翡翠色の姫騎士 インターミッション@ 特殊任務 ケイ氏 - 2010/07/07(水) 12:37 -

中央大陸を左右に分断する山岳地帯………
雪と針葉樹が一面を埋め尽くすその地に今、衝撃と爆炎が舞い踊っていた。

.

「これが最後だ………直ちに武器を捨て、投降しろ。さもなくば、そちら側の命は保障しない!!」
鮮やかな赤に彩られた、山猫の様な小型ゾイド『ガンタイガー』が、噴煙を上げる洞窟に向かって警告を発する。
周りには、コマンドウルフやステゴサウルスに酷似した中型ゾイド『ゴルヘックス』、犀に似た黒いゾイド『ブラックライモス』が関節部や背中から煙を噴いて倒れていた。

暫くして、洞窟から数名の柄の悪そうな男達が手を挙げて這い出してくる。
ガンタイガーに乗るパイロットは、その光景を無言で見据えていた………




数日後、夜半、ネオゼネバス帝国ウラニスク工業地帯………

「以上が報告となります。今回の摘発で、共和国製小銃4ダースと特殊炸薬1d、及び起爆装置を押収致しました………人的被害は敵護衛パイロット4名が死亡、残りは中核メンバー共々拘束しました。こちら側の被害はありません。」
「そうか……御苦労、ダークフォックス。次の仕事まで下がって良い。」
俺の報告を聞いた司令官は、淡々とした調子で退室を命じた。
「はっ………」

.


『ダークフォックス(闇色の狐)』………
それが、帝国の特殊コマンド(奇襲兵)である俺を指す唯一の固有名詞だった。
名前もなく、戸籍もない俺が唯一許された呼び名………自分を自分たらしめる特別な名前………

.

物心ついた頃から、俺は『何者でもない』存在だった………
コマンドとして教育された者は、仮初めの名前や戸籍を用いての作戦行動を行う事が多い。そのため、オリジナルの名前や戸籍は存在しないものとして扱われるのが普通だ。
俺もその例に漏れず、幼い頃から人を殺し、欺くための教育を受けて成長した。ある時は異国からの敵を暗殺し、ときには国を裏切った者や逃げ出した同朋さえもその手で粛正してきた………

自らの心を殺し、国の為に命をかけて務める汚れ役………俺は終生その役割に従事し、他者と深く関わる事無く暗躍し続ける………


その生き方は変わるものではないと思っていたし、自分とて今更人並みの生活には戻れない事は承知している。
生き様を変えるつもりは毛頭無かった………

.


あの任務を受けたのは、まさにそう思っていた矢先の出来事だった………

.

.

「イプシロン………?」
聞き慣れない言葉に、俺はいつになく素っ頓狂な調子で聞き返した。
「詳しくはわからないが、どうやら何らかの組織名らしい…………我が軍の諜報部が断片的に入手して得たものだ。君にはしばし、これを調査して貰いたい………相手は世界の裏に潜む巨大な奴等だ、ぬかるなよ………!」

.


数日後、ネオゼネバス帝国南西部、ユビト港……


-君には、これからネオゼネバス帝国軍属『レナード・ヴィオリア少尉』として行動して貰う。そして、彼等と共に行動してイプシロンの真意を探れ………まだ詳細は不明だが、あの組織が我が国の味方でない事だけは確かだろうな。-

西方大陸に向かう船に乗り込みながら、俺は上官に言われた事を思い出していた。

.

事の発端は8年前……
西方大陸の北部、ミューズ森林地帯に位置する小国『ロフト共和国』が大陸北東部一帯に覇を唱える『カルミナ大公国』に進攻され、壊滅した事件があった………
当初は領土拡大を狙ったカルミナ大公国の仕業と思われていたが、調べているうちに諜報部は奇妙な情報を掴んでしまった……

ロフトの首都『アルトハイム』で、バーサークフューラーが目撃されたのだ。


この情報に、ネオゼネバス上層部は驚かされた………!!

バーサークフューラーは、現在では生産方法が失われた野生体ベース製法、通称『UX(アルティメットエックス)計画』によって生成されたゾイドだったからだ………

.


通常、金属生命体であるゾイドは兵器として運用される事が多い。
本来は野生体であるものに武装や人が乗り込む為のコックピットを設けたもの……これが現代における戦闘ゾイドの作り方である。
このシステムは、数の多い汎用機や制式仕様機を生産するのには効果的である……だが、同時に金属生命体本来の闘争本能を少なからず阻害してしまうというデメリットもあった。

そんな時、一部技術陣が画期的なプランを生み出した。それが、『UX計画』である………
これは、金属生命体の持つ本来の闘争本能を阻害することなく戦闘ゾイドへと強化する革新的な方法で、少数ながらも強力な機体を生み出す事を可能としたのである。
そのシステムの確立により、後に伝説の機体と謳われるゾイドが多く戦場を席巻する事になった………


だが、戦争が終結した後に残されたのは……誰もが予想すらしていなかった非常事態だった………


この計画においてベースとなった野生体ゾイドの急激な減少である。

UX計画は、ゾイド本来の闘争本能を損なう事無く戦闘ゾイドへと強化するプラン………確かにそれだけを見たら、画期的なものに違いは無い。

だが、これには大きなデメリットがあった。

この製法が適用されるのは、西方大陸特産の一部のゾイドだけなのである。特有の風土や各機体に見合った独特のシステムは、現存する中央大陸や暗黒大陸のゾイドに当て嵌める事が出来なかったのである………

このため、各国はこぞって西方大陸の野生体を狩り出しにかかった………だが、ここにも落とし穴はある。
該当する野生体は、厳しい環境と温暖な気候のせいか気性が荒く頑強なものが多い。その反面、数が少なく大量に取り寄せられないという事が分かった………

当然ながら野生体の数は減少し(最悪のパターンでは、総合個体数が50に満たなかった)、それに気付いた各国は即座にUX計画を凍結。直ちに保護活動に入った……

やがて当時の技術陣は世を去り、資料等も完全に破棄されていたため、製法を知る者はいなくなってしまった…………

.

だが、此度のアルトハイム進攻によって軍上層部の緊張は一気に高まった。

何者かが失われたシステムを無断で使用し、件のバーサークフューラーを生み出したと………



バーサークフューラーは、我が国でも歴史資料やデータでしか存在しないゾイド……それがこんな所で見つかるなど、ただ事ではない。
これを重く見た諜報部は、西方大陸に密偵を放って調査を始めた………そして数年に渡る活動の末、彼等……イプシロンという組織が、その背後にあることに気付いたのだ………

.


「ゲリラに溶け込み、情報を探る………か……………見事に張り合いの無い仕事だ。」
これまでにもスパイや潜入捜査をした経験は多々ある。しかし、今回の様に大掛かりな捜査に携わるのは初めてだ。
しかも、渡りをつけた人物が此れまた曲者だった………
(あの『荒野の運び屋』が仲介を引き受けた……か………噂には聞いているが、よもや軍の上層部や高官連中ともパイプがあったとは……中々侮れん女だ。)

.

「へい、そこの地底族のおに〜〜さ〜〜ん♪」
ロブ基地より数`南に位置するカルミナ大公国の港湾都市『アルシオーネ』に着いた俺を待っていたのは、褐色の肌を煌めかせた快感そうな女性だった。俺と同じく長身で、紙を幾つも編み込んだ特徴的なヘアスタイルが目立つ。

俺は彼女を一瞥すると、そのまま踵を返した。

[279] ZOIDS−翡翠色の姫騎士 インターミッション@ 特殊任務 ケイ氏 - 2010/07/07(水) 13:07 -

「貴様がムンベイ……高官連中の噂している『荒野の運び屋』だな?」
「そんなに殺気立ててちゃ近付けないわね〜〜〜♪私よりずっと若いのに、只者じゃないって雰囲気丸出しよ。」

あの後……引き止められた俺は、強引に喫茶店に連れ込まれてお茶会をやらされていた(彼女はアイスティー、俺はブラックコーヒーだが)。


「それにしても、今時ネオゼネバスにも君みたいな子がいるんだね」
一息ついた彼女は、俺に向かって言った。
「……別に珍しい事ではない。この御時世とはいえ、国を影から守る役目は必須だ………最も、そのために様々な代償は支払ったがな………」

誰もが忘れかけていることだが………平和というものは、実は非常に脆く危ういものだ。故に、それを維持し続ける為には影から国を守る存在が不可欠となる。

例えるならば政府の密命を帯びたスパイ、国の暗部に関する事象や公に出来ない汚れ役を請け負う警察組織、そして……俺の様に、物心ついた時からそれらの任務を死ぬまで遂行し続ける子供達……………


俺が戸籍や名前を持たず、スパイや諜報活動に従事していたのも、ひいてはその為となる……最も、赤子の頃からこの世界に入れさせられてしまった俺には選択肢など無いも同然だったがな………


「それで、レナード・ヴィオリア………だったっけ?君の名前……」(ムンベイ)
「今はその呼び名で良い。ま、どうせすぐに不要となるがな………」(レナード)

こういう時、自分が『何者でもない』という事は非常に有り難い。不要な名前やリスクを負いかねないコードネームなど、時が来れば捨ててしまえば良いのだから。
そうすれば、少なくとも追われる事は無いだろう……前の名前を持った俺は、その時点で死ぬ。後腐れも痕跡も無い……それで良い。この道に俺の世界があるのなら、本当に死ぬまでその生き方を続けていけば良い………


「……それで君、ゲリラに侵入して諜報活動をするんだったっけ?」
喫茶店を出た彼女は、街を歩きながら切り出した。
「既に通達はしていた筈だ。そのためのアポイントは、そちらで取り付けたと聞いている。」
一応の警戒心を忘れず、俺は再び彼女に切り出した。
「ふぅ………」
彼女はというと……何を思ったのか、意味深な溜息を尽いて俺を見ていた。
「随分疲れる生き方ね、それって………」
しかし、すぐにその色は消え去った。

「………ん、だったらあいつらに預けるのがベストね。」


やがて、彼女は俺に向かって快活に微笑んだ。

.

「何を考えてんのかは知らないけど、あたしが紹介するのは一緒にいるだけで面白い連中よ。もしかしたら、あんたも何か変わるかもしれないわね♪」



俺にはこの時、ムンベイの言った事が漠然と理解出来なかった………

そして数日後、
俺はその意味を身を以て知る事になる……………
そんな事など微塵にも考えていなかった………………

[280] ZOIDS−翡翠色の姫騎士 インターミッション@ 特殊任務 ケイ氏 - 2010/07/07(水) 21:59 -

数日後、ミューズ森林地帯より南35`地点、アレキサンドル台地……

.

「どう?そのコマンドウルフ、結構いけるでしょ??」
満天の星の下、俺は青いコマンドウルフに乗っていた。
「……申し分無い機体だ。アタックユニットとの適応性も悪くない。」

ムンベイが餞別とばかりに提供してくれたのは、乗り捨てられて放置されていたコマンドウルフだった(曰く、戦場跡の基地遺跡で奇跡的に見つけたものらしく、コアが半冬眠状態のまま自己修復が進行したものらしい)。
サルベージを済ませた後、冬眠しかけていたコアを再起動させて、破損箇所を修復する様に再生機構を調整する……彼女がそれら一連の作業を終えた後、性能確認を兼ねての試し乗り……現在はその真っ最中だった。

今更かもしれないが、俺もゾイドを操縦した経験なら幾度かある。
しかし、いずれも使い捨てやレンタルのつもりで使っていたため、機体に対して特別な愛着など起こらなかった……

何故だろうか………この機体は、特別よく馴染む気がする………
いつの間にか、キャノピーに映る俺の顔は微かに綻びていた………

.

センサーが巨大な熱源を捉えたのは、その時だった。
反射的に熱紋を照合して見ると、接近してきたのは巨大な海老に似た艦影………ドラグーンネスト級だった。

「これは……ドラグーンネスト?ネオゼネバスの母艦が何故………?」
俺は、警戒しながらも機体を一歩下がらせて、接近してくる巨大な影を見据えた。
[お出ましね。あんたの預かり先のみんなが♪]

.


「ほほぅ、こいつが俺等に紹介したいって野郎か?」
程なくしてドラグーンネストに案内された俺は、ブリッジに集まった面々を見渡した。

正面に立つのは、リーダー格とおぼしき赤黒い髪の青年(さっきの台詞を言ったのはこいつらしい)。そして、幼さの残る黒髪の少年と背の高い眼鏡の女性士官。
一歩下がった位置に、顔にコルセットの様なものを纏った男。逆隣には白金色の長髪が似合う少女と、妹とおぼしき琥珀色の髪の少女。


「初めまして……ネオゼネバス軍所属、レナード・ヴィオリア少尉だ。以後、貴公等の指揮下に入る。」
この様な艦にこれだけの人数というのも驚きだが、少数精鋭というならば確かに納得のいく話だ。
「驚いた?彼等が傭兵部隊『風神騎士団(シュトゥルム・ナイツ)』よん。」
内心で驚きを隠せない俺に、ムンベイがニヤリと笑って耳打ちした。

「なるほどな……ニューフェースの誕生ということか。」
正面に立つ眼鏡の女性が、感嘆した様に言う。
「面白いですわね。こうして私(わたくし)達と向き合っていても、全く隙が見えませんわ…………貴方が味方になっていただけるなら、さぞ頼もしいでしょうね………」
間髪入れず、白金色の髪の少女が猫の様に目を細めて呟いていた。



なるほど、確かに今まで接してきた連中とは違うらしい………一見ただの仲良しこよし集団に見えるが、纏っている雰囲気があまりに研ぎ澄まされている……そんな感じがしてならなかった。
しかし……俺はその事実を噛み締めながら、同時に一抹の不安を拭い切れずにいた。

.

.

こいつらと一緒に組んで、本当に大丈夫なのか………?

[281] ZOIDS−翡翠色の姫騎士 インターミッション@ 特殊任務 ケイ氏 - 2010/07/09(金) 12:42 -

「ん………?」
穏やかに降り注ぐ陽の光が、俺の意識を急速に覚醒させた。
「夢……か…………」

どうやら先程まで、自分の過去を夢見ていたらしい。

珍しい事もあるな……こうして過去を懐かしむなど、以前までは無かったというのに………



「あら……おはようございますわね??」
「こんな時間まで起きてこないのも珍しいですね。何かしてたんですか?」
サロンで待っていたのは、グリンスヴァールの姉妹。お嬢様言葉で話すパイロットの姉、ジュリアと、控え目な口調で話すオペレーターの妹、ティアだ。

「レナードさんの分の朝御飯、取ってありますよ。僕、コーヒー入れ直してきますね。」
幼い中に大人びた雰囲気を漂わせながら駆けていくのは、ジュリアと同じくパイロットのシュウ・ホウジョウ。艦長にして隊の副官でもあるリーファ・ホウジョウの歳の離れた弟だ(歳の差がありすぎる上に幼い容姿のせいもあって、端から見たら母子に見えなくもないが……)。


「お前達だけか……他のメンバーはどうした?」
サロンには、3人以外の人影は見えない。
ヴァイスはともかく後の2人はどこに行ったのやら………

.


あれから数ヶ月……
自分でも驚いたことに、俺はこの環境をすんなり受け入れてしまっていた。

この連中は、俺が今まで見てきた者達とはどこか違っていた………

.


本国の上官や軍にとって、俺は目的の為の道具に過ぎなかった。
役目を果たしても、褒められる事も労いの言葉ひとつ賜らず、ただ「国の為」と刷り込まれる様に躾けられる。時には過酷な任務を何の造作もなく押し付けられる事もあった。
同じ境遇で育った子供達も、過酷な任務を請け負う度に1人、また1人といなくなっていく………
いずれ自分もそうやって死んでいくのかと、あの頃は疑問にすら思わなかった………


だが、この連中は……
会って間もない俺を受け入れ、仲間として今日まで接してきた。
単なるお人好しの集団なのか、俺を最初から信じて疑わないでいるのか……

.

『絆』………

風神騎士団を少数精鋭たらしめる最大の要因は、彼等の絆そのものにあった………


あまりに巨大な組織で育った故に、最初は漠然として掴めなかった……
だが、暫く彼等に溶け込んでいるうちに朧気ながら見えてきた気がした……


彼等の背負うもの……
風神騎士団の絆………
いつしか、俺は任務などよりもそちらを見てみたいとさえ思う様になっていた………


「艦長ならブリッジにいる。こちらはやっと見張りの交代だ。」
くたびれた表情で現れたのは、片目を中心に頭にコルセットの様な部品を纏った男だった。

彼はウィリアム・ピースリー。かつてロフト共和国軍に所属していた兵士だったそうだが、かつてのアルトハイム進攻で片目と片足を喪失。以来、この艦の操舵と砲手を担当している(最初は彼からそれとなくバーサークフューラーの情報を聞き出そうとしたが、彼自身は何も知らなかった)。

「ヴァイスはブレードライガーの散歩に付き合うとか言って出ていった。あの風来坊め………!」
ウィル(彼の愛称)は、今度は呆れた様な表情で腰掛ける。そして、出された紅茶を気付けとばかりに啜り始めた。




風神騎士団………彼等は、互いの結び付きが非常に強い。それ故、仲間の為ならばいつでも命を張れる覚悟がある……
パイロットであるジュリア達はもとより、幼いシュウや非戦闘員であるティアでさえ、既にその覚悟を宿しているのだ………


これまで己を知らず、ただ国のために死んでいく生き方を辿ってきた俺にしてみれば、それは全く対称的な生き方だった……


無論、これまでの生き様を否定はしない。それもまた道ではあるし、何より自分には任務がある………しかし、一度命の重みを見せつけられた今は、もう以前の道には戻れないと思ってしまった…………

それと同時に、俺は大切なものを手に入れていた。

.

『レナード・ヴィオリア』

………そう、俺自身の名前である………!
潜り込む為の便宜上の名に過ぎなかったが、今の俺はそれを自らの名前と決めていた……!
かつての『何もない』自分ではなく、彼等と生きる為に………

.


しかし、共に行動するうちに俺は任務の事が段々と気掛かりになってきた……


俺が調査して突き止める筈だった『イプシロン』は、どうなったのか………
歴史の影に潜み、混乱に乗じて何かを企んでいるのではないかと……

.

信頼や開放感と共に、ふと沸き上がる不安。それは、まるで嵐の前の小さなうねりの様に染み出てくる……

更には、時同じくして北エウロペ大陸近辺に奇妙な噂が流れ始めていた………

.


『見たこともない翡翠色のゾイドを引き連れた女が、各地を荒らし回っている』


そして……いつしか、俺は暇さえあればその手の情報を集める様になっていた………

.

.

だが……

事件が起きたのは、それから間もなくの事だった。

[282] ZOIDS−翡翠色の姫騎士 インターミッション@ 特殊任務 ケイ氏 - 2010/07/09(金) 12:57 -

モンローハート(中央大陸西端にある、ネオゼネバス軍の大規模空挺基地)からの連絡に俺が気づいたのは、とある霧深い朝の事………

「……これは?」
一瞬、司令部からの定時報告の催促かと思った……だが、よく見ると通信コードが緊急連絡回線とリンクしていた。
緊急連絡の合図だ……!
あそこは確か、クック要塞やマウントアーサーと並ぶ難攻不落の拠点の筈……何かあったのか………?

頭に過った不穏な考えが、何故か俺の思考を捉えて離さなかった………

.

だが、その答えはすぐに現れた。
それも最悪の形で………

端末を開いた途端、俺の視界に見慣れない文章が入ってきた。

『イプシロンの仕業だ』

たったそれだけの短い文字。しかし、同時にとんでもないニュース速報が流れてきた。


『ネオゼネバス帝国ウラニスク工業地帯にある兵器工場から、特殊爆弾が消失。同時にモンローハート中枢司令部にて大規模爆発事故発生。』

.

本国の、それも一大軍事拠点であるモンローハートにて起こった未曾有の惨事に、俺は驚きを隠せなかった………

しかも、爆発に使われたのは共和国製の特殊炸薬だという結果が出た。


え……?

『共和国製の特殊炸薬』?
『ウラニスク工業地帯から消失した』?



俺の脳裏に、先日の任務がフラッシュバックの様に通り過ぎた………
そして、同時にとてつもない想像が全身を駆け巡る………!どこからともなく押し寄せてくる怖気と共に………


まさか………
いや、そんな筈は無い……!

『モンローハートに大打撃を与えたのは、あの時俺が押収した炸薬なのではないか』
と…そんな馬鹿げた事があるものか……!

だが…
もしそうだとしたなら、俺がした事は……国の危険因子を摘発したつもりで、本当はテロの片棒を担いでしまったと………そういう事なのか………!?

.

早鐘の様に脈打つ心臓を抑えつつ、慌ててその考えを打ち消そうとしたが…既に脳内に刻まれたそれを、どうしても拭い去る事が出来なかった………
ウラニスクの拠点ともコンタクトを取ろうとしたが、それに返ってくる答えは無かった。
ただ、無機質なノイズが響くだけで………



それは、恐怖を伴って押し寄せた『疑問』が『確信』に変わった瞬間だった………!



国を影から支えるべき俺の行動が、よりによって国に打撃を与える事になるとは………俺は非情な現実に、そして気付くのが遅すぎた自分の馬鹿さ加減に歯ぎしりするしか無かった………

もはや俺に出来る事は1つ……惨事を引き起こした『イプシロン』を、この手で引きずり出す事………

それ以外に、贖罪の方法など無い………

.

直ちに本国に連絡を取った俺は、調査継続を申請。承諾を得た後、今度は以前調べていた謎のバーサークフューラーについての情報収集に取り掛かった。


そして、俺はある考えに到達した。

翡翠色のフューラーが現れる場所は、大抵ミューズ森林地帯やレッドラスト、オリンポス山近郊を中心とした北エウロペ大陸に集中している………
場所によってはカルミナ大公国の駐留軍と鉢合わせになる可能性もあるのだが、余程肝の座ったパイロットなのか……?いや、寧ろカルミナ軍を恐れていないと言った方が正しいのか……?


幸いなことに、そういった疑問は程なく氷解した。
確定情報ではなかったが、件のフューラーがカルミナ軍の兵隊崩れを壊滅させたという噂が入ってきたのだ。


しかし、同時にその活躍は思わぬ展開を呼ぶ事になってしまった。

.


「バーサークフューラー……今じゃ資料とかでしか見れねぇらしいが、こいつを俺等の陣営に加えたらどーなると思うよ??」
昼食を終えた後、俺を呼び出した青年はそう言った。
隣には、眼鏡をかけた怜悧な女性が控えている。


声を上げたのは、ヴァイス・フォン・アーセナル。
風神騎士団のリーダーで、優秀なパイロットでもある青年だ(愛機は黒いブレードライガー)。

隣にいる眼鏡の女性はリーファ・ホウジョウ。
この母艦『ティアマトー』の艦長を務める士官で(メンバーの中では最年長。更にはシュウの姉でもある)、同時に風神騎士団の副隊長でもある。
突出しがちな隊長やお嬢様を諌める大役を引き受けているせいか、普段はヴァイスより頼りになる女傑である。

「ふむ……確かに面白いですね。実際にはデータでしか知りませんが、バーサークフューラーの機体性能はジェノザウラーを上回る。しかも、記録を見る限りパイロットは相当な腕の様だ………多少粗削りな戦い方に見えますが、もしも風神騎士団に加われば、面白い事になりますね…………」

あの艦長がそこまで言うとは……
確かに、俺もハッキングした映像から幾度かフューラーの動きは拝見している。
多少荒々しい動きではあった。しかし、その戦い方はカルミナ軍きってのエースと謳われたウォルター・アムンゼンやランス・ノーティスに勝るとも劣らぬものがあった………

.

その瞬間、俺の脳裏に天啓が下った………!

もしや…この翡翠色のバーサークフューラーを取り込めば、イプシロンは尻尾を出すのではないか………!?

.

「ヴァイス、艦長……その案には、俺も加勢する!」
気付いた時、俺は立ち上がってそう提言していた。
「な・何だぁ!?」(ヴァイス)
「レナード……?」(リーファ)
これにはヴァイスも驚いていた。
「レナード、お前どーした?いつも控え目なお前が何ムキになって……」
「そんな事はどうでも良い……この機体とパイロットの強さは折り紙付きだ、是非とも我等の戦力に推薦したい。」
熱くなっているのは分かっていたが、それでも自分はこの機を逃すまいと思っていた。
もし見過ごしてしまえば、2度と奴等の手掛かりを探れなくなる……とさえ思ってしまう程に………!


「そこまで言うかよ……ま、良いわ。そんじゃあ決まりだな。」
やがて、ヴァイスは意を決した様に立ち上がった。
「今回は重要事項だ。ジュリアやティア達には悪いが、俺等3人で進めさせて貰うわ……ま、あいつ等は事後承諾でも了承してくれるだろうし、後はそのフューラーを見つけて探るだけだな。」
「その様だな……最新の報告や過去の記録をもとに、早急に進行ルートを割り出すとしよう。」
早速、戦術予報に長けた艦長が頷いて席を立った。


賽は投げられた………!!


自らのエゴで半ば風神騎士団を利用する形になってしまったが、こうして俺の戦いは始まった。
そして、俺自身も……『ダークフォックス』ではない。ましてや『何者でもない存在』としてでもない……
過去の罪を購う為………風神騎士団の『レナード・ヴィオリア』として、俺はイプシロンを摘発する………!


「待たせたな……確率は高くないが、予想されるルートを絞り込めたぞ。」

.


この時、俺は知る由も無かった……
これから更に数ヶ月の時を経て、追い求めた翡翠色のバーサークフューラーを間近で見る事になるなど………
そして、その暴竜を操る幼いパイロットと共に戦う事になると………



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】AmazonからスマイルSALE初売り1月7日まで開催中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板