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ゾイド系投稿小説掲示板

自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。

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[271] ZOIDS−翡翠色の姫騎士…侵略の影 C ケイ氏 - 2010/06/04(金) 10:31 -

「ミント……」

月明かりの満ちた部屋。その窓際に備え付けられたベッドには、ミントが横たわっていた。
ジュリアとティアは、眠るミントにそっと毛布をかけていく……
「お姉ちゃん、その黒い虎型ゾイドに乗ってたのが……本当に、ミントちゃんの…………」
俯きながら姉に問い掛けるティア。しかし、ジュリアは小さく首を横に振っていた。
「今はおやめなさい、ティア。ミントの傷を抉ってしまうだけです……後で、私からみんなに話しますわ………」

ジュリアが寂し気に見つめるミントの寝顔……その頬には、何かが流れ落ちた跡が微かに残っていた………



翌朝……
「で、昨日何があった?あの黒い虎型ゾイドは何物だ?おぉ?」
ブリッジに集まった一同を代表して、ヴァイスが口を開いた。
「そ・それはですね……(どこから話して良いものかしら……)」
ヴァイスは今にも掴みかからんばかりの勢いでジュリアに詰め寄ってくる。
「ヴァイス……か・顔近いですよ……」
これにはシュウもたまりかねたのか、さりげなくヴァイスを諌める。
「確かにそうだが……だけど、分からない事が多過ぎる。こちらも知る権利が無いわけじゃない……」(ウィル)
「そうかもしれないな……相手の目的を掴む以前に、何も知らなければ手の打ち様が無い。」(レナード)
しかし、レナードとウィルはヴァイス寄りの姿勢を見せていた。

「いずれにせよ、少しでも情報が欲しい。ジュリア、知っている事は全て話して貰おうか……」
リーファは、指揮官らしい落ち着いた口調でジュリアを促していた。
「そうですわね……ですが、私にも詳しい事は分かりません。断片的なものでも宜しいなら……」
これにはジュリアも折れるしか無かった。


ブリッジの扉が開いたのは、その時だった……


「ジュリア……大丈夫だよ。私が話すから…………」
現れたのは、さっきまで眠っていたミントだった……

「ミント…貴女、起きて大丈夫ですの!?」
ジュリアは驚いて立ち上がる。
「ごめんね、心配かけて……でも、これは自分で言わなきゃいけない…そんな気がするんだ………」
ミントは、そんなジュリアを労る様に小さく笑いかけた。

.

「あの人は……あの黒い虎に乗ってたのは、リョウト・ルティーナ……私のお兄ちゃんなの………」

.
「マジかよ……!?」
ヴァイスは、ミントの言葉に息を呑んでいた。
「でも、わかんない……どうしてお兄ちゃんがカルミナ軍になったのか……6年の間に何があったのか…私には全然わかんないの………」
悲痛な声で淡々と語っていくミント。
ヴァイス達は、流石に返す言葉が見つからなかった。
「それじゃあ、あの異様な熱反応は……!?」
「えぇ…十中八九、あの黒い虎……確か[ブラストルタイガー]とか言ってましたわね。」
シュウの問い掛けに、ジュリアは冷静な調子で応えた。
「ブラストルタイガー……つい最近、ネオゼネバス帝国がZi-Armsとの共同開発でロールアウトしたばかりの最新鋭機だって………」
モニターに向かって作業していたティアが、真剣な表情で言う。
「今の私に分かるのは、ホントにこのくらいしか無いの……ごめん………」

.

.

「こちらヴァイス、扉の前に着いたぜ。」
先日に比べると、やけに閑散としたニケアコロニーに到着したヴァイスは、先日立ち寄った詰め所に向かっていた。
[了解、こちらもいつでもOKですわ。]
携帯からは慎重気味なジュリアの声がする。
「お姉ちゃん、そっちからは何か分かりますか?」
ヴァイスの隣で拳銃を構えるティアが、小声で囁く。
[今のところ、変わった様子はありませんわね……ともかく予定通り、2人は堂々と正面から入って下さい。]
「了解。」


.

ライフル銃を携えたジュリアは、裏口から詰め所の様子を伺っていた。
(昨日の黒い虎……それにゴジュラスや磁力誘導兵器を含めた大規模な敵部隊……あまり疑いたくはありませんが、クライアント自体が我々を謀っていた可能性もなくなったわけでは無いですわ……)

ぎり…と歯を食い縛りながら、ジュリアはライフル銃に弾を込める。
(向こうが怪しい動きをするなら、こちらも相応の姿勢を取らざるを得ませんわね……ヴァイス、ティア、そちらは任せます……!)

正直、クライアントを疑いたくはない。だが、万一のことがあれば……

(私の仲間を悲しませたこと、許しませんわ………!!)
ジュリアの瞳が鋭く吊り上がったと思うと、ライフル銃を持つ手がギシリ…と音を立てた。

.

(……全く、本当に今日はイライラしますわね………不甲斐ないことこの上ありませんわ………!!)
いかに知り合って日が浅いとはいえ、ミントのあんな辛そうな顔を見るなんて、正直ジュリアにはキツすぎた。
しかも、自分には慰めることは出来ない……そのもどかしさが、一層ジュリアを苛立たせていた……


だが……

「……!?」

奇妙な香りが鼻を突いたのは、その時だった……!

.


「すいませ〜〜〜ん、自警団の方はいらっしゃいますかぁ〜〜〜?」
ヴァイスは、乱暴にドアを叩きながら叫んだ。
しかし、奇妙な事に誰も出てくる気配はない。
「おかしいですね……前はすぐ出て来てくれたんですけど、どうしちゃったんでしょう……?」
ティアは、分からないといった様子で首を傾げている。
「まさかトンズラしたんじゃねぇだろうな……だとしたら、今回のクライアントは完全に黒だぜ。」
ヴァイスは、拳銃を構えながら静かにドアノブに手をかけた。

「…?」
「ぇ…?」
だが……ドアの向こうからふと流れてきた微かな匂いが、2人を一瞬強張らせていた。
この鼻につく鉄臭い香り……それに一瞬だけ吐き気の様な感覚を覚えてしまう………

[ヴァイス、ティア、今すぐ強行突入しますわ!!!]
同時に、電話越しにジュリアの鋭い声が響いた。

ドガァ……ン……

一瞬遅れて、ヴァイスは扉を蹴り飛ばしていた。
だが……


「ウッ……!?」
目の前に広がった光景を見て、思わず立ち止まっていた………

床一面に広がる赤黒い水溜まり。
頭を半分吹き飛ばされて横たわる死体。
心臓を一突きにされて絶命している人影。
そして、血溜まりの中でこちらを見る青年……


自警団の面々は、既に殺されていた。

「見るな、ティア!!!」
ヴァイスはとっさに腕を張り、真後ろにいたティアの視界を覆い隠していた。

.

「こいつは……まさか!?」
嫌な予感がヴァイスの全身を駆け巡る。


「その声は……昨夜ミントを助けに来た、黒いブレードライガーの男か…?」


血溜まりの中に立つ青年は、翡翠色の双眸をヴァイスとティアに向けていた……

[272] ZOIDS−翡翠色の姫騎士…侵略の影 C ケイ氏 - 2010/06/04(金) 10:48 -

「てめぇ……やっぱり昨日の野郎か!?」
ヴァイスは反射的にティアを庇う様な形で後ろに押し退け、懐から銀色の何かを取り出した。
「こんなに早く再会出来るとは思わなかったぜ……今回の依頼も、俺等に盗賊連中をけしかけたのも、ついでにウィプスタウンを壊滅させたのも……全部お前等の仕業だな?」

ヴァイスが取り出したのは、小型の護身用ナイフだった。その刃を青年‐リョウト‐に突き付け、油断無く睨んでいる。

「ほぅ、流石に気付いていたか……」
一方、刃を向けられているリョウトは、怯えるどころか逆に口を吊り上げて不気味に笑っていた。
「最初は自警団の連中に嵌められたと思ったけどな……あんたが直接連中を始末しにきたお陰で気付かせて貰ったよ。えぇ?カルミナ軍さんよぉ……!」
ナイフを突き付けるヴァイスも、殺意を込めた視線で眼前のリョウトを睨む。

「ククク……確かに俺はカルミナ軍だよ、表向きはな……!!」
リョウトが不意に足を動かしたのは、そう言った瞬間だった。
途端に…

ビシャッ!
「っ!?」
ヴァイスの視界が不意に赤黒く染まった。
同時に……

ゴスッ!
「!?」

ヴァイスの胸部に鋭い衝撃が走っていた。

「ふん、脆いものだな。血の目眩ましだけでこうも接近を許すとは……ゾイドの操縦は得意でも、バーリトゥードはあまり慣れていない様だな。」
辛うじて倒れはしなかったが、全身が痺れた様に動かない。その隙に、リョウトはヴァイスの頭を掴んでいた。
そして、耳元に口を寄せて何か囁いた。

「てめ……っ……!!」

だが…
途端にヴァイスの表情が豹変した…!

「フ…怖い顔だ。」
リョウトは、そんなヴァイスを一瞥しつつ不敵な笑みを浮かべた。

ドゥン!!
「2人から離れなさい!」
途端に…壁を突き破って、ジュリアが飛び込んできた。
「ほぅ、その声……誰かと思ったら、昨日のガンスナイパーのパイロットか……」
リョウトは、乱入してきたジュリアを気にする様子も見せずに銃口を向けた。
「我が愚妹とつるんでいる連中が勢揃いとは、中々見られるものではないな……」


「………ふざけないで下さい!!妹に対してあまりに無礼が過ぎますわ!!!貴方、それでもミントの兄上なのですか!?」
リョウトの物言いに、先程から苛立っていたジュリアは思わず声を荒げていた。
「あぁ、そうだ………奴と俺の間にも、れっきとした血の繋がりはあるのだからな。」
しかし、リョウトは悪びれるどころか更に不愉快な口調で言葉を叩き付けていた。
「だが、血の繋がりが何だというんだ?所詮は皆他人。どれだけ困ろうがくたばろうが、俺に迷惑がかからなければ良いだけではないか。」
「っ………戯れ事を!!!」
これに激昂したジュリアは、とっさにライフルを突き付けて引き金に指をかけていた。

ところが………

「何だ?口で勝てなきゃ暴力か、随分と短絡的だな……」

リョウトは薄ら笑いを浮かべながら……

ガシャッ!!
「きゃ…っ……!?」

恐ろしい勢いでライフルを蹴り上げていたのだ。


「まぁ、君達が俺に敵意を有しているのはよく分かった……故に、敬意を表してこちらも敵とみなそう。次に会う時は、各々がより洗練されていることを祈るよ……」
リョウトは、そのままの態勢で懐から何かを落とした。ソフトボール大のそれは、床に落ちたと思うとコロコロと転がっていく。
……だが次の瞬間、

バッ!!!
「ぐぁ…っ!?」(ヴァイス)
「きゃ……??」(ティア)
「な……!?」(ジュリア)

3人の視界が、不意に強烈な白に覆われたのだ。

.

.

「……!?」
ヴァイス達の身を案じつつ待っていたミントは、不意に何かを感じ取った。
「ミント……?」
休憩を取っていたウィルが、それに気付いて顔を向ける。
「何だろ……何だか凄い嫌な予感がするよ………!」

.

.

バッ!!
強烈な刺激に、ヴァイス達は思わず目を伏せる。
途端に、すぐ側からガラスが割れるような鋭い音が聞こえてきた……
(くっ……!)
音のする方に思わず顔を向けるジュリア。
しかし、目眩ましが予想以上に効いているせいか、3人ともその場から動くことは出来なかった……


やがて光が晴れた時、そこにはもう彼の姿は無かった………

.

.

その夜……
「そっか……やっぱり、お兄ちゃんが……」
戻ってきたヴァイス達の証言で、ミントは確信を抱いていた。
「あの野郎、やるだけやっといて勝ち逃げしやがった……ご丁寧に、[迷惑料]だけ置いてな……」
机の上には、十数aにも及ぶガロス(惑星Zi国家郡共通の通貨単位)紙幣が積まれていた。数えると相当な額になるのは間違い無い。
「あの兄貴、何考えてんだろーなぁ……」


「まるで、私達みんなを『試して』たみたいでした……」
だが…不意にティアの放った一言に、ブリッジにいた全員が静まり返った。
「ぇ……?」
突然の言葉に、ミント達は一斉にティアを凝視する。
「試していた……だと?」
暫くして、レナードが眉をひそめつつ問い掛けた。
「ぁ、はい……あんまり上手く言えないけど、あの人……敵意は凄くあったけど、何だか楽しんでる……そんな感じがしたんです……」
ティアは、少し困った様な顔で言葉を紡ぐ。
「……いずれにしろ、警戒は必要だな。そうと決まりゃ、早いとこ離れるぞ。」
やがて、ヴァイスはぽつりと呟いた。

(そうだ、あいつ等には注意しやきゃいけねぇ……あの野郎、俺の秘密を知ってやがった………!!)
いつの間にか、ヴァイスは固く拳を握り締めていた。

.

「結局、お友達の情報はありませんでしたね……」
小さくなっていくニケアコロニーを尻目に、シュウは残念そうに溜息をついた。
「でも、お兄ちゃんは生きてた………」
しかし、ミントは鋭い口調でシュウの言葉を遮る。

(6年間の間に、何があったの……どうして、カルミナ軍になっちゃったの………お兄ちゃん……!!)

.

ミントの心の叫びは誰にも届かないまま、月はいつもと同じ様に上り始めていた………

[274] ZOIDS−翡翠色の姫騎士…侵略の影 C ケイ氏 - 2010/06/10(木) 08:53 -

同時刻、カルミナ大公国軍司令部。

.

カッ、カッ、カッ、カッ………明るい大理石貼りの廊下に、4人分の足音が木霊する。
先頭を歩くのは、セレナ・リィン・ヴィステリオ大佐。その隣に、体格のしっかりしたウォルター・アムンゼン中佐が付き添う。

「それで……アムンゼン先生、上層部の此度の要請、どう思われます?」
セレナは、訝る様な表情で隣のアムンゼンに問い掛けていた。
「大佐……生憎、軍では貴官の方が格上だ。やはり『先生』というのはプライベートのみに限局して貰いたいな……」
仏頂面のアムンゼンは、厳かな口調でセレナを窘める。
「そうでしたね…」
長い裾を翻し、セレナは優雅に先を進んでいった。

「……だが上層部の意向はともかく、私もあの連中を野放しにしておくのは危険と考えています。恐らく閣下も同じ考えなのでしょう…………」


.

「しかし……大佐、おこがましいのは存じていますが、果たして自分が参加しても宜しいのでしょうか?」
その後ろを歩くのは、先日槍玉にあげられていた士官-オーガスタス・ダロム少佐-である。


「少佐…貴方、悔しくないの?」
困った様に口を開くダロムに、セレナは先程とは違う鋭い口調で問い質した。
「確かに貴方は作戦を見誤り、結果としてミッション1つを不意にした。しかも、それによって我々は多大な損害を被ったわ……確かにこれはただじゃ済まされない…だからと言って、軍の規律に基づいて処断すれば、確かにみせしめにはなるかもしれない。けど、帳消しになるわけじゃないわ………だったら、別の形で償う事ね。それが死んでいった仲間達への手向けにもなる………!」
立ち止まり、セレナはダロム少佐を一瞥した。
「幸い、人選は私と中佐に任されている…貴方には、旗艦となるホエールキングの艦長をして貰うわ。」
「は……了解!!」
セレナの激励を受けて、ダロム少佐は先程より実の入った態度で敬礼していた。

「それでは早速、仕事ね……調査班を編成し、バーサークフューラーのデータを洗いざらい転送して。」

.


(なるほど……この2人が指揮する専任部隊か、だとしたら上層部も本気の様だな………)
他の3人から1歩離れて、ランス・ノーティス中尉はほくそ笑んでいた。
(加えて俺まで指揮官に抜擢してくれるとは、爺ィ共も気が利いている……)

先日、かのバーサークフューラーと手合わせした彼にとってはまさしく因縁の相手であった。
(俺は無傷で済んだが、奴等によってこっちは多大な損害を被った……あいつ等、確かにこのまま野放しにしとくには危険すぎるぜ……それに何より、雪辱を晴らすには絶好の機会よ!!)
ノーティス中尉は、不気味に笑いながら後をついていった。

.


今、風神騎士団に対してカルミナ大公国も本格的に動き出そうとしていた………!!!



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