ゾイド系投稿小説掲示板
自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。
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[正面ハッチ開放。バーサークフューラー、射出準備完了です!]「了解……ミント・ルティーナ、行きます!!」ティアマトーの胸部ハッチが開き、バーサークフューラーの巨大な体駆が砂漠に踊り出る。一瞬後、今度は左のハサミがゆっくりと開いた。そして、ガンスナイパーが顔を覗かせる。[続いて左舷ハッチ開放。お姉ちゃん、気をつけてね……]「心配無用ですわ。私もすぐに戻りますから……こちらジュリア・グリンスヴァール。ガンスナイパー、出ますわよ!」暫くして、バーサークフューラーとガンスナイパーが砂漠に降り立った。「ジュリア、悪いけどフューラーに掴まって。」不意にミントは、ジュリアに向かって言った。「ミント……?」「スラスターで一気に飛ばすから、背中に乗ってて欲しいの。」思いがけないミントの提案に、一瞬首を傾げるジュリア。しかし、「……分かりましたわ、落としたら承知しませんわよ。」すぐにガンスナイパーはフューラーの背中に飛び乗った。そのままアンカークローで身体を固定する。「よぅし……スラスター展開。フューラー、翔んで!!」ガンスナイパーが乗ったのを確認すると、ミントはすかさず背部のハイマニューバスラスターを噴射した。そして、スロットルを操作する。次の瞬間、ガンスナイパーを背負ったフューラーは砂塵を巻き上げながら加速した。..ティアは、ブリッジに座ったまま身動き1つせずにモニターを凝視していた。(何だろ……何だか嫌な予感がするよ……)沸き上がる胸騒ぎを覚えつつ、ティアは無意識のうちに胸を押さえて俯いていた……「そんな顔すんなよ……」ふと、震える肩に誰かが手を掛ける。「隊長……?」いつの間にか、後ろにはヴァイスがいた。「……心配すんのも分かるけどよ、ここでいらついてたって何も出来ねぇ。今はミントとジュリアを信じて待つ……俺等に出来んのは、そんだけだな…………」ぶっきらぼうな物言いだが、ヴァイスは彼なりに気を遣ってくれているらしい。それでもティアの胸の奥には、歯痒い思いがいつまでも燻る様に残っていた…….「けどさ、あいつらだけじゃども心配なんだよな………俺ちょいとブレードライガーの整備してくるから、合図したらすぐハッチを開けれるようにしとけよ。」.「もうすぐ谷間に差し掛かりますわ…」「了解、そろそろ減速させるね。」夜の砂漠を進んでいたフューラーは、少しずつ減速していった。.「ミント……どう思います?さっきの熱反応……」不意に、ジュリアは怪訝そうな表情でミントに問い掛けた。「摂氏1000℃の高熱…確かに、並の兵器やミサイルじゃこうはならないわね。ナパームでも、流石にここまで高い温度にはならないし……」「可能だとすれば、荷電粒子砲くらいですね……それも、デスザウラーやセイスモサウルス級程の大出力でなければ難しいですわ。」互いに意見を交わすものの、良い結論は出ては来ない。だが……「…?」ふと、遠くに見える谷間から赤々とした光が見えてきた。「あそこですわね……」ジュリアは緊迫した声で呟き、同時に唾を飲み込んだ。「急ごう、もしかしたら何か分かるかも……!」ミントも頷くと、すかさずフューラーを走らせた。.それは、まさしくこの世のものとは思えない光景だった……真っ赤に溶ける大地に、赤熱化、もしくは融解した無数のゾイド達が骸を曝している。中には、小さく見える黒い点もちらほらと見え隠れしていた。「な・何…これ……!?」これには、2人とも言葉を失うばかりだった……赤々と燃え上がっているのは、昼間交戦したゴジュラスやアロザウラー、コマンドウルフの軍勢だ。しかも、その回りやコックピットにあたる部分には、黒い炭の様な何かが見て取れた。「……う!?」何気なく拡大表示したジュリアは、その黒い何かを見てしまう。そして引き攣った様に呻いた。黒いものの正体は……それは、高熱で真っ黒に焼け焦げた『人間』の残骸だった……ある者はコックピットに座ったまま…ある者は、逃げ出そうとして地面を這いずり回った恰好のまま…ある者は、立って喉を掻き毟った姿のまま……皆、黒く炭化して憐れな骸を曝していた……「な・何よ……一体、何がどうなって、こんな事に……!?」6歳の頃から各地の戦場を渡り歩いてきたミントも、その凄惨な景色に顔が青ざめていた……「グルルルゥ……」フューラーが何かの気配を感じ取ったのは、その時だった。「…?」同時に、ミントの全身にも戦慄が走る。その瞬間……ミントは見てしまった。小高い岩の上から地獄を見下ろす、黒い虎の姿を…….「オォォ……」ブラストルタイガーが、不意に下に向かって威嚇する様に唸る。「何者だ…?」リョウトは、愛機の微かな変化に、一瞬だけ眉をひそめていた。ブラストルタイガーの視線の先……そこにいたのは、翡翠色のティラノサウルス型ゾイドだった。「あれは…バーサークフューラー……!?」そのゾイドには見覚えがあった。以前、黒いブレードライガーやレイノス、コマンドウルフAC、ガンスナイパーと共にカルミナ軍に大打撃を与えたあの機体……リョウトが憎悪と皮肉を込めて呼んだ『翡翠色の姫騎士』の名に相応しい暴君龍……そして、自身が何より捜し求めていた『ロフトの負の遺産』…………!だが、その存在に気付いた時……「ふ…クククッ……よもやこんな所で奴を目の当たりにする事になるとはな………」突然、リョウトの双眸が妖しく光った。「ブラストルタイガー……奴を殺せ!!!」.ミントの全身に、強烈な殺気が走る。「!?」途端に、岩の上にいた黒い虎と目が合った……そんな気がした。だが、次の瞬間……「フューラー!!!」「グオオオオ!!!」ミントとフューラーは、いきなりスラスターを全開にして躍り上がったのだ。同時に、黒い虎も岩から飛び降りてフューラーに襲い掛かる。「え…ミント!?」突然の行動に、ジュリアは驚きを隠せない。しかしうろたえている間に、フューラーは岩から降りてきた黒い虎に肉薄していた。同時にバスタークローが前方に突き出される。そして、黒い虎も鋭い牙と爪を閃かせて跳躍した。.ギィン!!!!!両者が交わったのは、僅か一瞬の出来事だった。交差すると同時に、甲高い金属音が響き渡る。「ミント!?」その瞬間、ジュリアはガンスナイパーを走らせていた。.「…!?」(ミント)「ほぅ……やるな……」(リョウト)バーサークフューラーは右肩の装甲を食い千切られていた。剥き出しの肩に一筋の傷が走り、そこから火花が散っている。ブラストルタイガーの牙は装甲を突き破り、フューラーの肩を浅く切り裂いていたのだ。対するブラストルタイガーも、バスタークローで右足の装甲をえぐり取られていたが……「こいつ…只者じゃない……!!」だが、謎の敵の力はミントを戦慄させるのに十分だった…….「ふ…クックックッ……まさか俺のブラストルタイガーに手傷を負わせるとはな……!」一方、ミントと対峙していたリョウトは、ミントとフューラーの力を目の当たりにして……高らかに笑っていた。「面白い!!!」
「……お姉ちゃん!?」ティアの見ていたモニターに、ガンスナイパーからの通信が表示される。エマージェンシーコールだ。「みんな、大変です!お姉ちゃんとミントちゃんが!!」考えるより先に、ティアは通信機にかじりついていた。[ティア!!]途端に、格納庫からヴァイスの通信が入る。[俺が現場に向かう!ミント達の位置情報をこっちによこせ!!]「は・はい……!」ティアは、少し狼狽したものの、すぐに気を取り直してデータ送信を開始した。[何だか知らねぇが、とにかくヤバいってのは間違い無いみてぇだな……ヴァイス・フォン・アーセナル、出るぜ!!].バーサークフューラーは、唸り声を上げながらブラストルタイガーを睨む。対するブラストルタイガーは、足の装甲をえぐられたにも関わらず、ゆっくりと距離を縮めていった。さしたるダメージにはなっていない様だ。(どうする…こうなったら荷電粒子砲で……)ミントの考えは、あながち間違いではない。敵がどんな奴か掴めない以上、過小評価は死を招きかねない。ましてやジュリアがついて来てる今では、自分やフューラーのみならずジュリアさえも巻き込んでしまう恐れがある。それならば確実に倒しておくべきなのだ。しかし荷電粒子砲は強力な反面、チャージするのに時間を要する武器…すなわち両刃の剣に限りなく近いのだ。あの黒い虎が、おいそれと見逃してくれるとは到底思えない。(それなら、バスタークローでダメージを蓄積させていくしかない……!)フューラーはすかさずバスタークローを展開し、内蔵されたビームで狙い撃つ。黒い虎は、先程より少しぎこちないものの軽快な動きで回避する。そして、そのまま肩の装甲を開いた。「甘いな…射撃とは、こうやるんだよ!」肩の内側に隠されていたのは、2門のレーザー砲だった。しかも砲口がうっすらと光っている。(嘘…避けきれない!?)至近距離に迫った黒い虎は、そのまま肩をフューラーに向けた。「……死ね!」ドグ……ン………!!.轟音と共にミントの視界が瞬いた…….「くっ………!!!」思わず目を閉じるミント。しかし、轟音はしたのに衝撃も爆風も訪れなかった。(……?)恐る恐る薄目を開けてみると……モニターに映っていたのは、脇腹から煙を噴き出してよろめく黒い虎の姿だった。[ミント、大丈夫ですか!?今のうちに態勢を立て直して下さい!!]同時に、通信機からジュリアの声が聞こえてきた。振り向くと、フューラーの上の岩場には狙撃態勢を取ったガンスナイパーが陣取っている。「ジュリア……!」「ガンスナイパーだと……砂煙に紛れていたのか!?」突然の襲撃に、流石のリョウトも動揺を隠せなかった。幸い内部機関に損傷はないものの、完全に虚を突かれた今の状態は不利極まりない。(ちぃ…こんなことなら、盗賊如きにサーミックバーストを使うべきじゃなかったな……!!)ぎりり…と歯を食い縛る。しかしながら状況が好転するとはとても思えなかった。だが…不意に怒りに歪んだ顔が冷静さを取り戻し始めた。まるで潮が引いていく様に…….「ジュリア、ナイスだよ!」ミントは、黒い虎から目を離さずに応えた。「油断は禁物ですわよ。相手はダメージを被ってる様には見えません……!」ジュリアの方も、油断無く照準モニター越しに黒い虎を見据えていた。ピー…ピー…ピー………フューラーとガンスナイパーの通信機が鳴り響いたのは、その時だった。「テレパス通信……?」通常、ゾイドの通信機構には2つのパターンが存在する。1つは、個別の通信機を使用するもの。これは特定の団体や組織に所属する者が、仲間内のみで通信する際に多様されている。個別のチャンネルを使っている為、これなら相手に傍受される危険は少ない(といっても、ごく小数ながら専用の盗聴器が存在しているのが現状だが……)。もう1つが、本来金属生命体が有している意思疎通能力を転用した『テレパス通信』である。これは一定範囲内における機体ならば所属、機種を問わず可能な通信であり、国際救難信号や他の団体との共同作戦で用いられる事が多い。今回ミントとジュリアが受けたのは、後者の方だった。.(いきなり通信なんて、どういうつもり………?)(何にせよ、油断出来ませんわね……!)「あの黒い虎、一体……?」ミントが思わず首を傾げた時……[中々やるじゃないか、翡翠色の姫騎士。2人掛かりとはいえ、この私とブラストルタイガーをここまで押すとは大したものだよ。]突如、通信機越しに若い男の声が聞こえてきた。同時に、モニターに誰かの顔が映り込む。「「……!?」」だが、ミントとジュリアは表示された顔に驚きを隠せなかった。映っていたのは、ミントと同じ翡翠色の瞳を持った青年だったのだから……[おや……?これは異な事。私と同じ翡翠の双眸とはな……大陸広しといえどもこうして巡り会うのは珍しい。貴様、もしやロフトに縁のある者か?]黒い虎のパイロットも、少なからず驚いてはいる様だ。しかし、まるで新しい玩具を見つけた様にクスクスと笑い出した。どくん………途端に、ミントの脳裏に何かが弾けた……そんな気配がした……(な……何?何なの?この感じ……!?)それは、忘却の彼方に眠る記憶……あの悲しきアルトハイム進攻より少し前……ミントの回りに父がいて、母がいて……そして、幼い自分に優しげに微笑む翡翠色の双眸の彼の姿も…………ミントより年上のその少年は、両親と同じ様にミントに向かって笑いかけていた………覚えている……自分と同じ、あの翡翠色の光を………かつて大好きだった、あの双眸を……自分は覚えている………「ぉ…にぃ……ちゃん…………お兄ちゃん!?」.同時刻、カルミナ大公国軍司令部……「辞令……ですか……?」セレナ・リィン・ヴィステリオ大佐は、司令官から書類を受け取っていた。「先日のゲリラ騒動において、明らかになった連中の事は存じているかね?」「……ガンスナイパー、コマンドウルフ、レイノス…そして、黒いブレードライガーと翡翠色のバーサークフューラー……ですね?」セレナは冷静な態度で眼前の司令官を見据えた。「バーサークフューラーは、我が軍でも量産が難しい特殊かつ強力なゾイド……あの様な代物がゲリラの手に渡っているなど、由々しき事態だと存じます……」セレナの隣に立つアムンゼン中佐が、鋭い表情で顔を上げた。「元老院も、同じ考えらしい。我々もまた、早急に対策を練る必要がある……そこで……」司令官は、椅子から立ち上がるとぴしゃりとした口調で言い放った。「セレナ・リィン・ヴィステリオ大佐、及びウォルター・アムンゼン中佐。君達2人を指揮官とした専任の部隊で調査、対応に徹して貰いたい。」
「まさか……貴方、まさか…リョウト・ルティーナ………!?」ミントは、粗い呼吸を感じながら恐る恐る口を開いた。何かの間違いか偶然なら、どれだけ良かったか…この思いが杞憂に終われば、どれだけ安堵できたか……そんな思いが、ミントの中に渦巻いていた。だが……突き付けられた現実は、14歳の少女にはあまりに無慈悲で残酷で………そして悲しすぎた………[……生きていたのか、ミント……]その言葉が、全てを物語っていた………「あの時、アルトハイムで死んだと思っていたのだが……そうか、そのバーサークフューラーに救われていたんだな……」抑揚の無いリョウトの声が、ミントの胸に突き刺さる。「お兄ちゃん……」一方、あまりに信じられない出来事にミントは精神の均衡を保てずにいた……しかし……本当の悲壮は、その後で突如として齎された。実の兄によって……「だが、残念だったな……こうして俺に盾突いた上、我々にとって無視出来ない戦力となってしまった以上、例え妹でも容赦はしない。ここで消えて貰う……」不意に、ブラストルタイガーの肩がぱかりと開いた。その中から、幾つものビーム砲がぞろりと顔を覗かせる。「全く以て嫌な再会になってしまったな……だが、これで終わりだ…………せめてこの俺の手で葬ってやる!!」そして、ブラストルタイガーの砲身が不気味に光った。.「ゴオオオアァァ!!!」力強い咆哮が響き渡ったのは、その時だった………途端に、月明かりの向こうから黒い影が疾走してくるのが見えた。ブレードライガーだ。[ミント、ジュリア、生きてっか!?]通信機からは、いつもより切羽詰まったヴァイスの声も聞こえてくる。「ヴァイス……!?」「ヴァイス、来てくれたのですね……!」驚愕するミントの声と歓喜するジュリアの声が、一瞬重なり合っていた。フューラーの近くに佇むブラストルタイガーに気付いたヴァイスは、その眼前でブレードライガーを止めた。彼等の背後には、未だ燻り続ける地面とゾイドの骸が広がっている……「で、おたくはどこのどなたよ?ウチの仲間に手ぇ出して、このままタダで帰るつもりじゃねぇよなぁ……あァ?」しばしの沈黙の後、テレパス通信を開いたのはヴァイスだった。「……ほぅ、威勢が良いな……流石は妹の仲間というわけだ……」一方リョウトは、ヴァイスの挑発じみた言動に眉1つ動かさずに応じていた。「……とはいえ、3対1ではこちらが不利か……いいだろう。妹に免じて、この場は引いてやる。」暫くして、リョウトは3人に向けてテレパス通信を開いた。「しかし…情をかけるのはこれっきりだと思え。次に会う時は容赦なく敵とみなす……その事、肝に命じておくが良い………!」だが、途端にブラストルタイガーは胸のショックカノンを放った。弾が砂地に直撃し、膨大な砂煙を巻き上げる。瞬く間にブラストルタイガーは砂塵に飲み込まれてしまった。「っ……お兄ちゃん!!」沸き上がる砂塵に向かって、ミントの悲痛な叫びが響く。「砂煙で目くらましなんて……味なことをしてくれますわね!!」狙撃態勢に入っていたジュリアは、とっさにサーマルセンサーを起動させる。しかし、「く……駄目ですわ、周りの温度が熱過ぎて捕捉出来ない……!」周りに燻っている大量の残骸と真っ赤に燃える地面のせいで、サーマルセンサーが敵を捕捉出来ていなかった。(こんな所で闇雲に撃っても外すのがオチですわね…ううん、最悪フレンドリーファイアーになりかねないわ……!)歯痒いが、ガンスナイパーに出来る事は何も無かった。.やがて煙が晴れた時……そこにはもうブラストルタイガーの姿は無かった……「ちぃ…………逃げやがったか、あの野郎……!」ヴァイスは悔しそうに舌打ちする。「こーなったら、もうここには用は無ぇ。ミント、ジュリア、戻るぞ。」かなり煮え切らない様子だったが、これではこちらに留まる意味は無い。そう判断したのか、ヴァイスは撤退の指示を飛ばした。「……っ………」しかし……フューラーは、赤々と燃え上がる大地を見つめたまま、動こうとはしなかった……「ミント………」真相を知るジュリアには、今のミントにかける言葉が何1つ見つからなかった…….やがて、岩山の向こうから真っ赤な影がゆっくりと上昇していくのが見えた。「ホエールキング……」「あいつの母艦か……」そのホエールキングには、カルミナ大公国の紋章が刻まれている。しかし…「……何ですの?あの紋章は………?」ジュリアは、船体に刻まれた小さな紋章をしっかり捉えていた…….やがて、上昇したホエールキングは、何事も無かった様に夜空の彼方へと消えていった……..数時間後、ミューズ森林地帯上空……夜空を航行していくホエールキング。その格納エリアにブラストルタイガーが鎮座していた。だが、リョウトは回収されてからずっとコックピットに入ったままだった……「ジェネラルθ、如何しましたか……?」不審に思った数名の整備員が、ブラストルタイガーに近付く。回線を使って呼び掛けるが、リョウトは黙りこくったまま応じようとはしなかった。「申し訳ありません、ジェネラルθ。降りて下さい。本部より報告の催促が来ておりますが……」それでも整備員は、しきりに呼び掛け続けた。しかし……「やめときなさい。リョウトがここまで言われて出てこないんだったら、無理に出す事も無いわ。」不意に、格納庫に誰かが入ってきた。「ど・ドゥーリットル少尉!?」整備員は、入ってきた人物を見て慌てて敬礼する。現れたのは、カルミナ大公国軍の服装をやや着崩した女性士官だった。身長は整備員よりやや低めだが、灰色のポニーテールと鋭い瞳が印象的な女性である。「ったく……我等が『スティグマータ』の司令官にしてイプシロンのNo.2ともあろう御方が、なぁーにセンチになってんだか……」ドゥーリットル少尉は、やれやれと言わんばかりにブラストルタイガーを見上げる。「ま、心配なのも分かるけどさ……ここはあたしに任せときな。あんた達はさっさと通信室に行って、ジジィ連中を待たせといて♪」軽く口元を動かしながら、彼女は整備員達を格納エリアから出させた。程無くして、格納エリアにはドゥーリットル少尉しかいなくなってしまった。「さ・て・と……」彼女は小悪魔の様に意味深な笑みを浮かべると、不意にハッチの外部開閉ボタンを押した。「…?」不意に視界に入ってくる光に、リョウトは思わず目を細めた。「ちーっす。リョウト、元気してる?」そして、しきりに縁から覗き込んでくるドゥーリットル少尉と目が合った。「シャロンか……何か用か?」「用が無きゃ来ちゃいけないの?」不機嫌を顕にするリョウトに対し、シャロン・ドゥーリットルは悪戯っ子の様に笑いかけていた。「ジジィ共………じゃなかった、ロード.αとパパから連絡よ。」「……そうか、分かった。お前とスティグマータ要員をロブ基地で降ろした後、その足で艦を向かわせる……ロード.α、及びパラディン.δにはそう報告しておいてくれ………」リョウトは、いつになく覇気の無い声で淡々と告げていた。