ゾイド系投稿小説掲示板
自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。
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朝焼けの中……上空から、黒い影が地上に降り立つ。シュウの駆るレイノスだ。「発見しました。1時の方向にコマンドウルフとディマンティス、アロザウラーの混成部隊がいます……!」「数は……?」間髪入れずにレナードが問い掛ける。「総勢して50機…それに、反応しか確認出来ませんでしたが、10時の方向にもそれらしき反応があります。かなり規模の大きい連中ですね……」シュウは溜息を尽きながら汗を拭いた。シュウの目視によると、敵の勢力の中にはさきに報告されたコマンドウルフやアロザウラーに加え、都市制圧に特化したカマキリ型ゾイド『ディマンティス』も確認されているらしい。「それから、彼等の待機している場所に何か変なものがあるんです…」しかし、真剣な表情に戻ったシュウは数枚の写真を取り出した。映っていたのは、砂地から幾つも突き出している黒い棒の様な物体だった…「これ…何……?」ミントは首を傾げる。しかし、ヴァイスとリーファ、レナード、ティアは、その写真を見た途端に硬直していた。「こいつは…まさか……!?」(ヴァイス)「そのまさかの様だな…だが、ただの盗賊が何故こんな物を持っている……!?」(リーファ)「……っ!!」(レナード)ミントには解らなかったが、少なくともただの棒っきれでないことだけは保証出来る。ヴァイス達の真剣な表情が、それを真摯に物語っていた……..同時刻、カルミナ大公国首都『ヴァルーシア』…暗い部屋で、青年は回線を通して会話していた。「首尾は上々です。既にウィプスタウン他3つのオアシスは制圧し、その場にいた者は全て抹殺を敢行…秘密を知る可能性がある奴等への口封じは終わりました…残るは……」机の上の灰皿に紙を置き、青年はそれに火を点す。複雑な文章やグラフの描かれた『機密文書』は、点された明かりの中で焼け焦げて塵に変わっていく…その明かりの中に、青年の不気味な笑顔が影絵の様に浮かび上がった……「ニケアコロニーだけです。あそこの人払いを済ませれば、我々の計画達成の足掛かりとなります……了解しました。では、私も向かいます……」青年は、薄ら笑いする顔を更に不気味に歪ませていた。.「全ては、我等イプシロンの為に……」リョウト・ルティーナ大尉は、笑顔を貼付けたまま立ち上がると、そのまま部屋から立ち去っていく…後には、主のいない空間と電源を切られた端末、それに灰皿の中でブスブスと燻る燃え殻だけが残されていた………..乾いた砂漠の谷間に、陽の光が降り注ぐ。その光に照らされて、翡翠色の巨大な影が谷間をゆっくりと進んでいた。その後ろからは、一際小さなメタリックブルーの影が追随する。「…ティア、こちらミント。もうすぐ谷間を抜けるわ。」翡翠色の影‐バーサークフューラー‐を駆るミントは、慎重な口調で回線を開く。『こちらティア。ミントちゃん、出口数十メートルの地点で止まって。レナードは出口のすぐ近くでロックオンしつつ待機……2人とも、指示があるまで絶対動かないで下さいね。』回線の向こうのティアは、的確にミント達に指示を飛ばしていた。..ブレードライガー・ブリッツとガンスナイパーは、岩山の上から地上を見下ろしていた。「おぅ、無事に予定ポイントに着いたぜ。」「シュウの報告通りですわね。敵はコマンドウルフやアロザウラー、ディマンティスを中心とした部隊の様です…それに、一際大きな熱源も感知出来ましたわ。」ジュリアの視線の先…そこには、コマンドウルフやアロザウラー、ディマンティスに囲まれる様に立つ機影がぼんやりと浮かんでいた。「んで、攻撃開始はいつ頃にするんだ?」ヴァイスは、敵の集団から目を逸らさずにティアに話し掛ける。『そうですね……後30秒。30数えたら一戦に攻撃します。お姉ちゃんとレナードは砲撃に専念し、布陣が乱れたところで隊長、シュウ君、ミントちゃんが接近して各個撃破にあたる……と、これが艦長の立てた作戦です。』「先手必勝…ってわけか、上等だぜ……!」操縦桿を握る手に力を込めるヴァイス。しかし、その時……『!?』不意に、ティアの声の調子が変わった。同時に、各々の熱源センサーがけたたましく鳴り始めた………「これは……各員に通達、作戦一時停止だ。現状のまま防衛態勢を取れ!」不意に、ティアの後ろからリーファの指示が飛ぶ。「艦長……?」ティアマトーの操縦桿を握るウィルが、訝る様に振り返った。「…シュウに連絡しろ。今すぐ戻れとな…レイノスを収容次第、光学迷彩を展開。そのまま砂に潜れ……」だが、リーファの指示が飛んだ途端…不意に、レーダーに無数の熱源が現れたのだ。「レーダーに機影を確認、機種は………!?」素早く熱源を照合するティアだったが、途中で口篭ってしまう。「ティア……?」見ていたウィルが思わず声をかけるが、次にティアの放った言葉に凍り付いてしまった。「敵はガイサック、イグアン、レブラプター…上空にレドラーとザバット…そして、ゴジュラス……!!」.「おいおいゴジュラスだと?こりゃマジで洒落になんねーぞ……!」「まさか、私達を捕捉しているの…!?」突然の敵の襲来に、ヴァイスとジュリアは驚愕を隠せなかった。「そう見るのが妥当って所か…俺等のいる谷を包囲するみたいに迫ってきてやがる…」.「こいつら、まさか…別動隊がいたの…!?」ミントは、突然現れた多数の熱源に驚きを隠せなかった。「その様だな…どうやら、俺達は嵌められたらしい。」レナードは、口調は冷静だが歯ぎしりを隠せない様子。「しかもゴジュラスまでいるとはな…間違いなく、只の盗賊ではないぞ……!」やがて、遠くから無数の影が向かってくるのが見えた。ガイサックに加え、しなやかな体つきのヴェロキラプトル型ゾイド「レブラプター」や、同サイズにして頑丈な脚を持つ「イグアン」。3種類のゾイドの混成部隊である。更に上空には、ザバットに加えて、中型の飛竜型ゾイド「レドラー」の部隊がこちらに迫っていた。そして、その中に映る一際大きな銀色の影……「間違いない…ゴジュラスだわ……!」巨大な恐竜の様なそのゾイドを見て、ミントは息を呑んでいた…..「布陣は完成しつつある様だな…悪いが、ここでカルミナ大公国にもしもの事があっては困る。彼等には、この辺りで退場して貰うとしよう……」リョウト・ルティーナは、邪悪な笑みを浮かべてモニターを凝視していた。すると…『大尉、ブラストルタイガーの最終調整が終了しました。至急ハンガーにお越し下さい。』机の上の通信機から、部下の声が聞こえた。「了解した。直ちにそちらに向かう……必要無いとは思うが、シャロンと奴の『ロードゲイル』も待機させておけ。」
「こうなったら…ティア、聞こえてる!?」ミントはいきなり回線を開き、ティアを呼び出した。『み・ミントちゃん!?』回線越しに、素っ頓狂なティアの声がする。「接近戦に入られたら袋叩きになる……そうなる前に、私とフューラーで突破口を開くよ!至急、敵の布陣データをこっちに送って!」「なるほど、その手があるか……!」艦長席でミントとティアのやり取りを聞いていたリーファは、少し嘆息していた。「だが、連中に果たして通用するか…」しかし、すぐにしかめ面に戻ってしまう。「…ティア、ミントに敵の布陣データを転送しろ。ついでに、例の黒い棒の位置も教えておいてやれ……フューラーなら、恐らく吹っ飛ばしてくれる筈だ………」暫く思案していたリーファは、ティアに簡潔に指示を出した。.迫り来るゾイド部隊は、次第に谷間を包囲し始めた。そのうちに、前方にいたコマンドウルフやアロザウラー達もじりじりと迫り出す。「困りましたわね…この間のカルミナ軍の時よりも全体が統率されています。これじゃ誰が頭目なのかさえ解りませんわ…!」ジュリアは、眼前に迫るゾイドの群れを見て歯ぎしりしていた。「それに、あの黒い棒…私とガンスナイパーには厄介な事この上ないですわ……!」それでも、流石に何もしないわけにはいかない。ジュリアは素早くガンスナイパーを狙撃態勢にする。しかし…途端に、しびれをきらしたのかコマンドウルフの部隊が走り出し、一斉にビームを放っていた。「!?」狙撃態勢に入ったガンスナイパーには避けようが無い…!「ジュリア!!!」だが…途端にじっとしていたブレードライガーがジュリアの眼前に立ちはだかっていた。そのままEシールドを展開する。バシュ!バシュ!バシュ!!コマンドウルフ達の放ったビームは、全てブレードライガーに阻まれていた。「この…野郎!!」途端に、ヴァイスの激昂した声が響き渡った。ブレードライガーもそれに合わせて咆哮を放つ。一方、ジュリアは後方に見える敵の群れに向かって照準を合わせていた。「今の私じゃ戦力外かもしれませんが……援護しますわ、ヴァイス!!」そして、そのままトリガーを引いた。だが……….ガンスナイパーから放たれた弾丸は、狙い違わずコマンドウルフ達に直撃する…筈だった……「ぇ……!?」だが、途端に予想だにしない事が起こった。真っ直ぐに飛んでいた弾丸が、地面に立っていた黒い棒の近くを通過した瞬間に……いきなり軌道を逸らしてしまったのだ。「っ……!」「やっぱりな……ジュリア、撃つな!この棒は磁力誘導装置だ!!」(設計図しか見たこと無かったけどよ、流石に反則だろーが……カルミナでもまだ試作段階の代物なんだぞ、こいつ等一体何者なんだよ……!?)ヴァイスは、初めて目の当たりにした兵器に歯ぎしりしていた。(しかし見たところ、形状は射出式……トーチカが見当たらないから、多分専用装備のゾイドから射出されたってところか……こうなったら………!!)だが、途端にスラスターを噴かしてブレードライガー・ブリッツを疾駆させる。「ジュリア、あの群れの中にここら一帯の磁場を操ってる機体がいる筈だ!そいつを見つけて叩っ斬る!!」漆黒のブリッツは、銀色の刃を展開して更に加速していく。行く手を数機のコマンドウルフやガイサックが阻みにかかるが………「邪魔してんじゃねぇ!コラ!!」次の瞬間には首と胴体を一刀両断されていた。それも4機同時に…….ヴァイスの駆る黒き獅子『ブレードライガー・ブリッツ』は、通常機の刃よりも長大かつ威力の高い「ラッシングレーザーブレード」を装備している。そのため、間合いも切れ味も通常機の比ではない。加えて、装備するブレード自体もスラスターと一体化している。そのため、本体の機動性も恐ろしく素早い。迫り来る敵をまるで嵐の様に切り倒しながら、ブリッツは後方に控えていたゴジュラスに襲い掛かる。猛スピードで肉薄するブリッツを、ゴジュラスは即座に迎え撃とうと腕を伸ばした。だが、高速格闘戦に特化したブリッツをゴジュラスの性能だけで捕らえるのは不可能……いや、寧ろ無謀過ぎた。ズバッ………!!!!!ゴジュラスの上半身と下半身が綺麗に分断されたのは、その直後だった……「へっ!遅ぇんだよ、ドンガメが!!」.「なるへそ……了解です。ここは私とフューラーに任せて下さい!!」転送されてきたデータを眺めつつ、ミントは威勢良く返事を返した。「レナード、悪いけどちょっと下がってくれる?」ミントはレナードのコマンドウルフに打電すると、眼前に迫る敵部隊を見渡した。「ゴジュラスは後方か…小型、中型ゾイドで袋叩きにして、控えてるゴジュラスで確実にとどめを刺すつもりみたいね。だけど……」フューラーの口とバスタークローが開いたのは、その時だった。同時に、両踵に設置されたアンカー状の装備が地面に突き立てられる。(あれが磁力誘導兵器だとしても、これは流石に防げない筈だよ……!!)「そうか、了解だ……ミントに伝えな、[構わず撃て]ってよ。」ヴァイスは、レナードからの通信を聞いた後、迅速に指示を出した。「お前とジュリアは俺が合図するまで谷間から出るな、不用意に出てきたら巻き込まれるぜ。」[いくら何でもバーサークフューラーを前にしてそんなヘマはしない。それより貴様は…?]レナードの訝る声に、ヴァイスは間髪入れずに答えた。「大丈夫だ、こっちもやり方は心得てる。それより…」そう言いつつ、ブリッツが黒い棒ごとアロザウラーを切り刻む。やがて、その視線の先にある機体が飛び込んできた。「見つけたぜ、磁場を操ってる大元をな……」ヴァイスは、獲物を見つけた狩人の様に[獲物]を凝視していた。.バーサークフューラーの口から筒の様な何かが迫り出したと思うと、その周りが白く光り始める。[ミントちゃん、チャージ終了までの時間は!?]そんな中、回線越しにティアの声がした。「あと12秒……このまま押し切る!!」ミントは、はやる気持ちを抑えつつトリガーに手をかけた。そして照準を合わせる……やがて、モニターに表示されていたカウントが0に到達した。「今よ、みんな下がって!!!」素早くミントは全員に打電する。[分かりました……ミント、外したら承知しませんわよ!!](ジュリア)[ミントさん、無理はしないで下さいね………](シュウ)[ミントちゃん……](ティア)「一発勝負だ、間違っても仲間や艦を撃つなよ……」(ウィル)「……ぶちかましてやんな。」(ヴァイス)ジュリア、ティア、シュウ、ウィルの声が、回線越しに伝わってきた。(行くよ、みんな……!)既に、フューラーの口腔に収束した光は一層輝き始めていた……….「拡散荷電粒子砲、発射!!!」
「拡散荷電粒子砲、発射!!!」ミントは、掛け声と共に力強くトリガーを引いていた。その途端、フューラーの口から巨大な光の奔流が溢れ出す。破壊の光が、押し寄せる小型ゾイドやコマンドウルフ、アロザウラーの軍勢を飲み込んでいく。そして、前方に立つブレードライガー・ブリッツにも迫ってきた……「来たな……!」しかし、こんな状況でもヴァイスは驚く素振りさえ見せなかった。そうしているうちに、荷電粒子の渦がブリッツに襲い掛かってきて……一瞬のうちに黒い巨体を飲み込んでいた。そのまま、後方にいたゴジュラスも巻き込まれていく……拡散しているために威力は抑えられているが、小型ゾイドを消し飛ばしてゴジュラスの装甲を僅かながら融解させるには充分すぎる砲撃だった………..[大尉……荷電粒子の反応を確認。進攻部隊に多大な被害が出ている模様です……!]オペレーターの報告に、格納庫のリョウト・ルティーナ大尉は黙って頷いていた。「何………?了解した、渓谷の映像をこちらに回せ。荷電粒子を発している元も特定するんだ……尚、ホエールキングは現空域で待機。現地には私が行く。」冷静な口調で淡々と指示を飛ばすリョウトは、そのまま傍らに待機してあった黒い虎の様な機体に乗り込む。「[ロード.α]には私から報告する。お前達は私を落とせば良い。」[りょ・了解しました…では[ジェネラル.θ]、お気をつけて……」暫くして、黒い機体の前方ハッチがゆっくりと開き始めた。黒い機体はそれを見届けると、ゆっくりとカタパルトに移動した。眼前の隙間から見えるのは、広大な砂漠地帯。ハッチからの高さは十数b程……「この高さなら十分だな……リョウト・ルティーナ、これより作戦行動に入る。」だが、次の瞬間……黒い虎は、勢い良くハッチから飛び出していた………!(俺の予想が正しければ、荷電粒子を発しているのは恐らく…………クククッ、これは面白い……実に面白くなりそうだ!!!)コックピットの中で、リョウトは不気味に顔を歪ませていた。(ロフトの負の遺産め……父と母と妹を奪った貴様に、この俺が引導を渡してくれる!!!)..バーサークフューラーの口から放たれた荷電粒子は、次第に小さくなり始める。その間に、前方から迫ってきた小型、中型ゾイドの部隊はその大半が消滅、もしくは完膚なきまでに破壊されていた……「ふぃ、間一髪だったぜ……」その焼け跡と残骸の中に、漆黒のブレードライガー…ブリッツが何事も無かった様に立っていた。ブリッツの頭からは、フューラーのものと同じ光が発生している。それが繭の様に機体を取り囲んでいた。「[ハイパーEシールド]……こいつがあってマジに助かったぜ………」.バーサークフューラーの荷電粒子砲は、広範囲に及ぶ拡散型と粒子圧縮によって威力を重視した収束型がある。これはパイロットの意思によって自由に切り替える事が可能であり、従来の機体-デスザウラーやジェノザウラー-のそれに比べると特化していることになる。今回ミントが使用したのは、威力よりも範囲を重視した拡散型。多方面から迫る敵を駆逐するのに適している。一方、ブレードライガーには頭部に特殊な防御機構[Eシールドジェネレーター]が内蔵されている。これは機体前面に強力なEシールドを発生させて敵の攻撃を弾く防御機構である。しかも実弾に留まらず、レーザーや荷電粒子を防ぐ事も出来るのだ。(とはいえ、自分で言うのもなんだけど威力の低い拡散型で助かったな……)ヴァイスは、安心した様に胸を撫で下ろした。「ま、無傷な奴も無きにしもあらずだがよ……!!」だが、次の瞬間には真剣な表情で左を見る。そこには…ブリッツと同じ様にEシールドを展開させる大型ゾイドの姿があった。巨大なステゴサウルスに酷似した電子戦仕様機[ゴルドス]だ。しかも薄紫に彩られた背鰭が淡く発光している。そして、背鰭の上に超大型のミサイルポッドらしき装備が確認出来た。電子戦仕様の大型機……それだけで、ヴァイスは確信を掴んでいた。「あいつが本丸か!!」ゴルドスの姿を認めたヴァイスとブレードライガー・ブリッツは、そのまま猛然と突撃していく………!悲しいかな、動きの鈍いゴルドスには高速格闘仕様機であるブレードライガーの突進を避ける術はなかった。.「よぅし……みんな、今だよ!この谷から脱出して、各自ティアマトーと合流しよう!!」荷電粒子を限界まで撃ち尽くしたミントは、直ちに一行に打電した。[了解、では貴様の後方は俺が受け持つ。]後ろにいるレナードが抑揚の無い声で返した。「フューラー、全力前進!行っけぇぇーーー!!」操縦桿に力を込めたミントは、そのままフューラーを加速させていく………!.「ヴァイス……」ジュリアは、ガンスナイパーの索敵機能をフル活用してブリッツを探していた。しかし、先程の荷電粒子のせいもあってレーダーはあまり役に立たない。「っ……迷ってる暇は無いですわね、ここで躊躇していたらミントの作ってくれたタイミングも無駄にしてしまいます……!!」だが…やがて顔を上げると、正面を見据えた。見ると、荷電粒子から逃れたアロザウラーが数体、こちらに向かってくる。「邪魔よ、そこをどきなさい!!」ジュリアはそれを見るなり、背中の小型ミサイルを乱射して牽制した。そして相手が怯んだ瞬間……ガシュ!!思い切り跳躍して、後脚の爪でアロザウラーの頭を叩き潰していた。そのまま両手のバルカンと背中のレーザー砲で、別のアロザウラーを蜂の巣にする。「私達は、ここで倒れるわけにはいかないのですわ!」一瞬のうちに2機のアロザウラーを葬ったガンスナイパーは、そのまま疾走を開始した。.「バーサークフューラー、ガンスナイパー、コマンドウルフ、ブレードライガー・ブリッツ、現戦闘区域より各個に離脱を開始しました!」ティアの声がブリッジにこだまする。「良かった…これなら各自、突破口を抜けられそうです!」ブリッジにて待機していたシュウも、安堵した様に胸を撫で下ろす。「……………」しかし、艦長席のリーファは何故か浮かない顔をしていた。「艦長……?」そんなリーファの様子に気付いたウィルは、訝し気な表情で振り返った。.「フューラー!!!」「グオオオオォ!!!」ミントの声と共に、バスタークローを展開したフューラーがゴジュラスに襲い掛かる。ゴジュラスは自慢の怪力でフューラーを迎え撃つが、機動力で勝るフューラーは即座に側面に回り込む。そしてバスタークローを突き立てた。半身をえぐり取られて崩れ落ちるゴジュラス。しかし、ミントはそれを一瞥もせずに真っ直ぐフューラーを疾走させていく。今の目的は戦闘ではない。この場からの各自離脱、ただそれだけだった………
太陽が地平線に沈んでいく…朱く照らされたその大地を、漆黒の獅子が駆けていた。「確か、合流ポイントはこの辺りだっけな……」命からがら戦場から離脱したヴァイスは、油断なくセンサーを見つめる。どこかに伏兵が潜んでいないとも限らないのだ。(……それにしても、さっきのは何だったんだ?)本来行う筈だった、盗賊の征伐ミッション。しかし、このミッションには腑に落ちない点が幾つも見出だせた。(クソッ、わけわからん事が目白押しかよ!苛々すんぜ……!)思わずコンソールを殴り付けたくなる。しかし、ゾイドに罪は無い。いくら何でも大事な相棒に八つ当たりはしたくなかった。ピー、ピー、ピー……ブリッツのセンサーが何かを捉えたのは、ちょうどその時だった。「ん……?」反射的に光学モニターを起動させるヴァイス。すると、そこにはガンスナイパーをぶら下げて飛行する黒いレイノスが映っていた。.「あのブレードライガー……ヴァイス!?」レイノスでガンスナイパーを曳航していたシュウは、見覚えのある黒いブレードライガーを見つけた。ブリッツだ。[ようやく見つけましたわね……]ガンスナイパーに乗るジュリアも、安堵した様に溜息を尽く。[よぉシュウ、ついでにジュリアも元気そうだなぁ?]回線からは、これまた聞き慣れたヴァイスの声が響いてくる。「よかった…これでみんな無事ですね……」シュウは、慣れ親しんだ隊長の声に肩の荷が降りた様な感覚を覚えていた。[ミントとレナードはとっくに戻って、私達が最後みたいですわ。早くティアマトーに戻りましょう。]ジュリアも、朗らかな口調で帰還を促す。程無くして、3人は砂に埋もれた洞窟の様な穴を見つけた。…否、それは穴ではない。砂を纏って擬装したドラグーンネストだった…….「なるほど……確かに中々面白い連中だ。あの絶対的不利から、よもや全員生還するとはな……」漆黒の虎‐ブラストルタイガー‐は、高い崖の上から一部始終を見届けていた。「噂に違わぬ猛者ということか、[翡翠色の姫騎士]というのは……それに比べてあの連中ときたら、せっかくのお膳立てをフイにしてしまって……」ブラストルタイガーのコックピットに座る青年……リョウト・ルティーナは、不気味な笑みを浮かべて総崩れになった盗賊達を見下ろした。.満天の星空の下、ミント達一同はブリーフィングルームに集まっていた。「なぁ、お前等……今回のミッション、どう思う?」今回集まったのは、ミッションに対する各々の意見を聞く為である。「どうって……絶対変だよ。敵があんなに多いなんて聞いてないもん!」そんな中、ミントは怪訝そうな顔で意見を述べていた。「確かに…ミントさんの言う通りです。動きを見るからに、まるで僕達が襲撃してくることを予め掴んでいたみたいですよ……!」シュウも、納得出来ないと言わんばかりにミントに加勢する。「恐らく、何らかの形で情報が流れたか……」(ウィル)「もしくは、このミッション自体が罠という可能性も高い……」(レナード)これには、ウィルやレナードも疑惑を隠せない。「確かにな……本来、この事を知ってるのは俺達とクライアント連中だけの筈。つーか、そうじゃなきゃおかしい。」ヴァイスは、一石を投じる様に言葉を紡いでいた。「だとすれば……レナードの言う様に、ミッション自体が私達をおびき出す為の餌……ということですか?」みんなに紅茶を注いでいたティアが、心配そうに一同を見つめた。「いずれにせよ、明日もう一度ニケアコロニーに戻るべきだな……場合によっては戦闘も考慮しなければならないが……」ふと、それまで黙っていたリーファが静かな口調で切り出した。「疑いたくはないのだが…裏切りだとすれば、許さない……!!」「中々手痛くやられたらしいな。せっかくゴジュラスや磁力誘導兵器まで用意してあげたというのに……」ブラストルタイガーは、小高い岩の上から盗賊達を見下ろしていた。[じょ・冗談じゃない!あんなバケモノみたいなゾイドがいるなんて聞いてねぇぞ!!]全身ボロボロのゴジュラスに乗る頭目が、噛み付かんばかりに抗議する。[そ・そうだ!!][あんた等の調査不足なんじゃないのか!?]ここぞとばかりにまくし立てる盗賊達。だが、彼等は気付いていなかった……ブラストルタイガーに乗るリョウト・ルティーナという男が、氷の様に邪悪な笑みを浮かべていたことに……!.「しかし、君達のお陰でこちらは有用なデータを取る事が出来た。これは君達の功績だよ……よって、この場で報酬を支払う。特別料金を上乗せしてね……」[報酬だと?さっさとよこせや!!][ここまでの慰謝料に加えて、てめぇのそのかっこいいゾイドもツケて貰うぜ!!]好き勝手にぎゃーぎゃー喚き散らす盗賊達。しかし、リョウトはそんな騒音など意に介すこともなかった。「……ブラストルタイガー。」彼は、愛機ブラストルタイガーに向かって悪戯っぽく笑い掛ける。途端に……ガシャン!!ガシャン!!ガパァ……!ブラストルタイガーの黒い装甲が、いきなり内側から爆ぜる様に開いたのだ!!「誰が金銭で支払うといった?しかも、これだけ事前投資をしてあげたにも関わらず、たった1機にまんまとしてやられた君達に……しかし先刻言った通り、君達のお陰で奴等の貴重なデータを得る事は出来た。その礼、受け取り給え!!」開いた装甲の間や肩からは、無数の針の様な砲座がずらりと並んでいた。しかも、その砲口が妖しく光っている………「サーミック・バースト……!」..ピー、ピー、ピー……!備え付けられていた熱センサーが、不意にけたたましく鳴り響く。「な・何!?」「何事ですの!?」ミントとジュリアは、それを聞くや否や即座に立ち上がった。「ブリッジの熱センサー…!?」同時に、ティアも弾かれた様に立ち上がっていた。「これは…!?」ブリッジに駆け込んだティアは、センサーを表示した瞬間に表情を強張らせた。「オイ、今の反応は何だ!?」程なくして、ヴァイスもブリッジに駆け込んできた。「た・隊長……すぐにみんなをゾイドに乗せて下さい!向こうの砂漠で何か起こってます!!」ティアが指し示す熱センサー……その数値は、気温の低下する夜にも関わらず1000℃という高値を示していた……「なっ……何だよこいつは……!?」明らかに只事ではない。しかも、この異様な熱は、昼間にミント達が盗賊と交戦した谷間から発せられていた。ついでに言うと、この辺りには火山帯など見当たらない筈だ。……となると、何者かが異様な熱を放っているとしか考えられなかった。「……いや、全員はまずい。仮にこれが囮だとしたら、丸裸になったティアマトーが狙われるリスクもある……ここはミントとジュリアに先行して貰い、残るメンバーは各機にて待機。いつでも出られる様にしておけ。」ただ1人、リーファは冷静な表情で手早く指示を飛ばしていた。