ゾイド系投稿小説掲示板
自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。
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砂煙を上げて、十数機のゾイドが迫ってくる。目的は、眼前に広がるコロニーだ。まるで餌に群がる肉食動物の様に、彼等はひたすら猛進していく……….砂漠に点在するオアシスから発展した町は、その地域に住む人々にとっては貴重な水源として重宝されている。しかし…そのために、盗賊や兵隊崩れに狙われる事も少なくない。そのため、住人達はあらゆる手を使って町を守り続けていた………あるオアシスは互いに利害を以て連携し、またあるオアシスは傭兵や自警団、もしくは国家の正規軍の力を借りて彼等に対抗している。しかし、それはいずれも水や資源に満ちている場合に限った話に過ぎない。水が少なくなったオアシスは外敵に抗う余力は無く、それ故に襲われれば一たまりもない。住民達の選ぶ道は、町を捨てるか、自らも盗賊になるか、それすら出来ないならば、町と共に死に絶えるかしか無かった…..とある寂れたオアシスに、赤い巨大な影が接近する。ドラグーンネストだ。そのブリッジで、ミントはオアシスの様子を垣間見ていた。(前よりも荒廃が酷くなってるわね…あの子、大丈夫かしら……?)不安げに眼前の風景を見つめるミントは、拳をきつく握り締めていた。「ミントちゃん…そんなに思い詰めた顔して、どうしたんですか?」そんな彼女に声をかけるのは、オペレーターにして親友のティア・グリンスヴァールだった。隣にはレイノスのパイロット、シュウ・ホウジョウの姿もある。「ティア…シュウ君……」..その情報が流れてきたのは、つい3週間前のことだった…レッドラストの南端に位置するオアシスの町「ウィプスタウン」が、大規模な盗賊に襲われて壊滅したのだ。町は蹂躙され、住人は手当たり次第に捕まっては虐殺されていったという。1人残らず…カルミナ軍の救援隊が到着した時には、廃墟と化した建物、破壊されたゾイド、そして、ゴミの様に打ち捨てられている住人や動物の死体しか残っていなかった…「足跡から分析したところ、襲った機体はコマンドウルフやアロザウラー、ガイサックの混成部隊と解りました。多分、かなりの数が導入されたんだと思います。」ミントに結果報告書を渡しながら、ティアは悲痛な声で告げた。「それにしても、こんな寂れたオアシスに本当にいるんですか?ミントさんの友達が…」シュウは、訝る様に問い掛ける。確かに、眼前のオアシスは水が枯渇しているらしく、建物も殆どが風化しかけている。人がいる気配なんて、微塵も感じられなかった。「いるよ……ここは、あの子の…リアンの大好きな町だから……!」ミントはシュウの言葉を跳ね退ける様に強い口調で言った。「それに、3ヶ月前に来た時は…まだ人がいっぱい残ってたんだよ!あの子だって、きっとこの町のどこかで……」思わず声を荒げるミント。その時、ブリッジの扉が開いた。入ってきたのは、赤黒いざんばら髪の青年だった。この風神騎士団のリーダー、ヴァイス・フォン・アーセナルだ。「駄目だな、町のメインストリートをちょいと見てきたが、人影は全然見当たらねぇ……きっと、連中は町を捨てて出ていったんだ。」ヴァイスは、かなり疲れた表情で椅子に座り込んだ。恐らく、何回も町を往復してきたに違いない。「そぅなの……他のみんなは?」ミントは悲し気に俯いたが、ふと思い出した様に聞いてみた。「あぁ、ジュリアは先に戻ってガンスナイパーの整備。艦長とウィルはサロンで休んでるぜ。それとレナードの野郎は…そーいやまだ戻ってねーな………」..「予想以上に寂れた場所だな…」レナード・ヴィオリアは、人通りの見られない路地裏を歩いていた。「こんな所を指定するとは…しかし、確かに隠れ蓑にはうってつけかもしれないな……」狭くて薄暗い廃墟の谷間を歩きながら、レナードは溜息を尽いた。やがて、彼の視界にうずくまる影が飛び込んできた……その人物は、ボロボロのマントを纏ってそこに座り込んでいた。しかし……レナードは、人影を見つけるや否や気配を殺して近寄っていった。「…こちらダークフォックス、目的地に到着した。諜報員、応答願う。」不意にレナードの口から冷たい言葉が紡がれた。それと同時に、暗がりに座り込んでいた影が立ち上がる。一見みすぼらしい身なりをしていたが、マントからちらちらと見える影の上半身は精悍で鍛え抜かれた形をしていた。「お待ちしておりました……」そして、影はレナードに向かって敬礼したのだ。「で、俺をここに呼び出したのは何故だ…?」レナードは、別に驚く様子も見せずに影に話し掛ける。「は…実は、昨夜遅くに本国の諜報部が不穏な情報を掴みました。」「不穏な情報…?」途端に、レナードの表情が僅かに強張った。「まだ断片的ですが、カルミナ大公国の中にいる者達が何かをしようとしていると…」「ということは……!?」レナードが聞き返すと、影は真剣な口調で言った。.「今のカルミナの背後には、間違いなく『イプシロン』が関係しています…!」
同時刻、カルミナ大公国首都ヴァルーシア、軍司令本部…「冗談では済まされないんだよ、ダロム少佐。一体何だね、この失態は?」薄暗い円卓に座るのは、軍の高官とおぼしき7つの人影。それが、壇上に立つ士官を糾弾していた。「しかしまぁ、手痛くやられたな……」「ホエールキングが無傷だったのは幸いだが、プテラス、ザバットが総勢10機…」「地上部隊に至っては、ノーティス中尉のセイバータイガーATやヘルキャット、ハンマーロック小数を除いてほぼ壊滅…アムンゼン中佐が撤退の指示を出さなければ全滅していたかもしれないというではないか……」彼等によって矢面に立たされていたのは、ホエールキングの艦長だった。「し・しかし…まさかあのような奴等がいるとは想像もつきませんでした!あの連中が…」「言い訳は聞かん!その不測の事態を何とかするのが君達の仕事だろう!!」正面からの怒声を浴びて、艦長は思わず身を強張らせた。「お待ち下さい、少将。」その時…周りに座っていたうちの2つの影が不意に立ち上がった。「む………ヴィステリオ大佐…アムンゼン中佐…」進み出たのは、ホエールキングのブリッジにいたアムンゼン中佐。そして、怜悧な雰囲気を漂わせた黒髪の女性士官だった。セレナ・リィン・ヴィステリオ。彼女は若輩ながらカルミナ大公国の強襲師団を統括する大佐である。元は貧民街の出身だが叩き上げの司令官として有名で、軍内部でも絶大な支持を誇る軍人でもある。そして何より、戦術予報や作戦において類い稀なる才能を誇る猛者として名が通っている女傑だっだ。「確かに、ダロム少佐の失態は明白です。ですが、作戦を立案したのは私……そちらの申し上げる不測の事態を予測出来なかったのは、私自身の失態と存じ上げます……」眼鏡の奥の凛とした視線は、他の5人の幹部を捉えて逃さなかった。「私も同意見です。」それに呼応する様に、アムンゼン中佐も進言する。「殉職した者には申し訳ありませんが、あのまま部隊を全滅させるよりは良かったと……私は考えます。その決定を下した少佐の御蔭で、生き残った部下達も撤退出来ました。願わくば酌量を提言したいと存じます。」アムンゼン中佐は、重厚な声色で自らの意見を延べていた。.「…もう良い。そこまで言うならば、大佐にはダロム少佐の処遇を任せるとしよう………下がっておれ。」少将と呼ばれた老人が、ヴィステリオ大佐の言葉を遮る様に言い放った。.「よもや、精鋭無比なる我がカルミナ大公国軍に盾突く者がいるとはな…」ヴィステリオ大佐とアムンゼン中佐、そして矢面に立たされていたダロム少佐が退出した後、少将は残った閣僚達に呟いた。「まさかタリオスかロフトの残党ではあるまいか…?」別の閣僚が少将に向かって問い掛ける。すると…「ご安心下さい。既に密偵を派遣し、探りを入れさせております…」先程から無言で座っていた影が、不意に立ち上がった。他のメンバーは年配か老年だが、影の声は若い男のそれだった。「大尉…」少将は、不意に声を上げた若い男を見た。暗がりにちらちら見え隠れしているが、長身痩躯なその男は他の幕僚達をまるで観察する様な目つきで見ていた………「こちらをご覧下さい。」男は、唐突に指を鳴らした。すると、閣僚達の正面に映像の様なものが現れた。「ホエールキングから回収した、敵の映像です…」そこには、ザバットを圧倒する黒いレイノス、地上で砲撃を敢行するガンスナイパーとコマンドウルフAC、そして、残骸の真ん中に佇むブレードライガーとバーサークフューラーの姿が映っていた…「なんと…我等を相手取ったのはたったの5機…!?」「ガンスナイパーにレイノス、コマンドウルフ如きに不覚を取るとは…なんたる失態だ!」モニターを見た幕僚達は、蜂の巣を突いた様に騒ぎ出す。その中で、少将と若い大尉は冷静に分析を始めていた。「これは…敵の中に、恐ろしく優秀な指揮官がいる様だな…」「確かに…戦闘に至って、兵器…すなわちゾイドの性能が優劣を決める絶対条件とは限りませんからね……事実、何十時間も砂の中で待ち伏せしていたガイサックがセイバータイガーを打ち倒した例もあります………」そんな中、大尉の視線は、ふとフューラーに注がれた。「それに…これは傭兵達の間に広まっている噂ですが、ここ最近「翡翠色の姫騎士」と名乗る謎の傭兵が台頭してきているそうです。先日、セフェムタウンを根城としていたデザートプレデターが壊滅した折も、逮捕されたメンバーが『彼女』に潰された様なことを言ってました…あぁ、『彼女』というのは『翡翠色の姫騎士』のネーミングから推測した単なる人物像に過ぎませんがね………」闇の中に、大尉の鋭い瞳が光った。「全く…恐ろしい洞察力だよ。今の地位に留めておくには器が違い過ぎる…君が敵でなくて本当に良かったよ……」少将は、身震いしながら目の前の若い男を見据えた。.「リョウト・ルティーナ大尉……」..「よもやこんな所で見つかるとはな……しかしようやく会えたな、ロフトのバーサークフューラーよ………!」リョウト・ルティーナ………そう言われた大尉は誰にも気付かれない程微かな、しかし言い知れぬ悪意に満ちた声色で呟く。その翡翠色の双眸が妖しく煌めいた事に、誰も気付く事は無かった………
「しかし……その友達って奴ぁ、本当にこの街にいるのか?」ヴァイスは、訝る様にミントに詰問した。「確かに…このオアシスは、既に荒廃が進んでいます。もはや人1人ここで過ごしていけるかどうか…」ヴァイスの傍では、背の高い青年が彼に同意していた。青年の左目に付けられた眼帯が、キィキィと鳴りながらミント達を見据える。ウィリアム・ピースリー(通称ウィル)。彼は母艦ティアマトーの操舵手にして、艦砲射撃を担当する砲撃手を兼任しているメンバーだ。彼の左目は、数年前の戦争で銃弾を受けて失明し、それによって精巧な義眼に変えられている。一見すると生々しい傷だが、普段は本人もそれを気にすることもなく明るく振る舞っている。そして付き合いの長いヴァイス達も、そんな彼を慕っているのだ。「それにミント、この近くに来た本来の目的も忘れてはいけない…」「…ええ、ウィルさんに言われなくても分かってますって………!」本日、風神騎士団はとある依頼を受けてこの地に足を運んだのだ。依頼主は、小さなオアシスの長。数週間前から大規模な盗賊に悩まされているのだ。「ティアが調べてくれたデータと照合したところ、襲ってきた連中は前回の事件と同じ可能性が出てきた…恐らく、他にも被害がある筈だ……」ウィルは、傍らにある報告書を眺めながら言った。「ウィプスタウン……!」その言葉と共に、ミントの拳がぎりぎりと音を立てていた。「ミントさん…」シュウも、苦虫を噛み潰した様な表情でミントを見つめていた。「でも、相手はコマンドウルフやガイサックとかが30機程度ですよね…フューラーとブレードライガーならある程度は駆逐出来ると思いますが……」不意に、ティアが思い付いた様に口を開いた。「いや、そんな簡単な問題ではないさ……」しかし、ウィルがティアの考えを一蹴する様に口を挟んだ。「相手はこの地域を中心に、多くのオアシスを襲っている。しかも襲う時は徹底的に、誰一人として生き残りが出ない様に皆殺しにしている…」「そればかりか、追撃したカルミナ大公国の小隊までも返り討ちにしちまった。アイアンコングやレブラプターの2個小隊が、コマンドウルフやアロザウラー相手に壊滅だぜ。」ウィルの鋭い分析に、いつの間にかヴァイスも加勢していた。「ここら一帯は奴等のテリトリー……連中はここで、どんな相手をどうやって潰すかを熟知してると見てるぜ。そうだろ?」.「ええ、その通りです。彼等には地の利がある…なめてかかると、それこそ危ないかもしれない…」ウィルは、冷静な口調でヴァイスに応えた。「…早急にクライアントと合流する必要があるわね…レナードが戻ったら、すぐに出発しよう…!」ミントは、ゆっくり振り返ると全員を見据えて言い放った。..「『イプシロン』が…やはりそうか…!!」影の言葉に、レナードは眉をひそめていた。「で、本国はどう対処すると…?」「現在は様子を見る。但し、ヴィオリア特務兵…ダークフォックスは引き続き調査を継続せよ…何か動きがあれば、本国も動く………ということです……」レナードは、眉1つ動かさずにその言葉を吟味した。「…了解した。こちらも何か分かり次第、報告する。」「レナード、貴方一体どこ行ってたんですの!?」帰ってきたレナードを待っていたのは、ジュリアの怒り顔だった。「なに……しばし野暮用があったので、済ませてきた。それだけだ…そう目くじらを立てることはあるまい。」コマンドウルフをハンガーに設置しつつ、レナードはいつもの冷静な口調で流した。「あのですね……前から言いたかったのですが、貴方、あまりに協調性が無さすぎですわ!みんながどれだけ心配したか…」あまりにシレッとし過ぎるレナードの態度に、ジュリアも思わず声を荒げてしまう。「……案ずるな、今の俺の帰る場所はここだ。それだけは約束する…」しかしレナードは、態度を変えることなくそう言うと、そのままハンガーを横切って消えていった。「…馬鹿…そんなんじゃないのに……!」「また、ネオゼネバスからの仕事か………?」サロンから出てきたリーファは、目の前を横切ったレナードにぽつりと呟いた。「流石に察しが早いな、艦長……」レナードは、リーファに背を向けたまま立ち止まって呟く。「……安心してくれ。特務故に詳細は明かせないが、貴女達に迷惑をかけないことだけは保証する………では失礼。」やがて、レナードはそのまま足を進め、中央のエレベーターへと消えていった……….「『風神騎士団』か………本国は良い隠れ蓑とか何とか言っているが、俺にはどうも……な…………諜報部には理解出来んだろうが、俺にはそれ以上のものにしか思えんよ………」..「依頼により罷り越しました、風神騎士団のヴァイス・フォン・アーセナルです。」「同じく、副官のリーファ・ホウジョウです。」数日後、近隣の街「ニケアコロニー」に着いた一同は、自警団の詰め所に押しかけていた。そして隊長であるヴァイスと、副官にしてティアマトーの艦長を兼任するリーファ・ホウジョウがみんなを代表して挨拶していた。「いやいや、あの風神騎士団に私共の依頼を聞いていただけるとは…それだけでも十分ですよ…」応対するのは、ニケアコロニーの自警団とおぼしき数名の男性だった。「では…改めて依頼内容を確認させて貰います。良いですか?」ヴァイスは、目の前に座る男性達を見据えて切り出した。「事件が起こったのは3週間前…それまで友好関係を保っていたウィプスタウンからの交流が途絶えたのです。最初は何か事故があったのかと思い、有志を募って救援を派遣したのですが…救援隊は、何者かに襲われて全滅してしまったのです。生存者はいませんでした…」自警団の男は、悔しそうな表情で唇を噛み締めていた。「そして1週間前…大量のゾイドを引き連れて、奴等はこの街に現れたのです…」「1週間以内に全ての財産を放棄し、この街から立ち去れ………ということですね…」ヴァイスは、念を押す様に言った。「そうです…さもなくばウィプスタウンと同じにすると言い残して……」.「すぐに行動すべきだよ!このままじゃ、ここが戦場になっちゃう…!」ミントは、テーブルを叩いて一同を激励する。「同感ですわ…相手はかなり統率の行き届いている集団、後手に回ったらこちらが不利になります!」ジュリアも、同じ様にミントを援護する。だが、「焦るな…不用意に出ていけば、救助隊の二の舞になるだけだ。この辺りが連中の縄張りなら、奴等にとってはここでの戦闘など十八番ということだろう……」リーファがはやる2人を諌めていた。「だが、こうしてる間にも敵は準備を整えてるかもしれねぇ…早急に行動しないと、それこそヤバイかもしれないぜ。」ヴァイスは、唇を噛み締めて呟いた。すると…「そうだな…だとすれば、やはり連中が態勢を整える前にで攻めるのが効果的かもしれないな……」不意に、リーファがぽつりと呟いた。「奴等の拠点は恐らく、西の砂丘に近いこの谷間と思われるな……直ちに補給と整備を整え、準備が出来次第発進する。ヴァイス、ティア、レナード、ミッションプランを作成するぞ……!!」