ゾイド系投稿小説掲示板
自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。
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街の南東3`b上空……巨大なマッコウクジラに酷似した影が、砂漠の上を通過する。カルミナ大公国の大型輸送ゾイド「ホエールキング」である。そのホエールキングの艦長席で、男はほくそ笑んでいた。「ククク……せいぜい逃げ惑うが良いさ、蛮族共……さて、時間だ。プテラス、ザバット隊、出撃!あの街から蟻一匹生きて出すな!!」号令と共に腹部ハッチが開き、無数の黒い影と青い影が上空に踊り出る。青い影は、爆弾を搭載したプテラス。黒い蝙蝠に酷似した機体は、同じくカルミナ軍の主力航空ゾイド「ザバット」だった。ホエールキングから解き放たれた爆撃部隊は、そのまま街の方に向かっていく……「ティア、貴女は艦に戻って……支援をお願いしますわ。」「了解……お姉ちゃん、気をつけて下さいね………」ミントと別れたジュリアは、途中でティアと別れてそのまま南の砂丘に向かっていた。「ヴァイス、シュウ、レナード、そちらは任せます。私は、予定ポイントで狙撃しますわ!」すかさず携帯電話で仲間達に連絡を取り、ポジションを確認。そして、眼前に見えてきた錆だらけの倉庫に駆け込む。「さて……いよいよミッションスタートですわね……!」息を整えるジュリアの前には、1機のゾイドが聳え立っていた。小型の恐竜に似た体格、背中に見える大型のレドームと1対の小型バーニア、そして、後方にピンと伸びた尻尾……そこにいたのは、カルミナ軍でも広く使用されているゾイド「ガンスナイパー」だった。機体に乗り込んだジュリアは、手慣れた動作で手元のパネルを操作していく。すると、座っていたシートが回転。ジュリアは回転ドアの要領でガンスナイパーの中に入ってしまった。否、彼女は内部のシートに俯せの状態で待機し始めたのだ。そして、目の前にあるグリップ状のパーツを掴む。(ふふっ…この子、正規軍の機体とは一味違いましてよ……♪)備え付けのスコープに頭を固定し、覗き込む。同時に、その尻尾の先端から何かが迫り出してきた。(特殊徹甲型リニアライフル、起動確認。装填するのは、対装甲用炸裂弾頭…っと……)尻尾の先端から出てきたのは、スナイパーライフルの砲口だった。この尻尾こそが、ガンスナイパーという名前の由来になったと言っても過言でない専用装備である。「今ですわ!発射!!!」やがて、冷静にスコープを見つめていたジュリアは、静かにトリガーを引いた。..爆弾を満載したプテラスとザバットの編隊は、街の南東1.5`bまで迫ってきていた。[これより爆撃態勢に入る。各員、徹底的にぶち壊してやれ!]ザバットに乗る指揮官が、後衛の爆撃部隊に指示を飛ばす。が、その時……ドシュン!!すぐ後ろにいたプテラスが、下から何かに貫かれた。胴体内部の核を見事に貫かれたプテラスは、爆弾の誘爆を引き起こして墜落、そのまま轟音を上げて四散した。[何事だ!?][砲撃です!下からの……ぐぇっ!?]指揮官が側にいたザバットに振り仰ぐが、そのザバットも報告を終える前に炎上し、落下していった。「何?下から砲撃だと!?」ホエールキングの艦長は、素っ頓狂な顔で向き直った。「はい。只今、プテラス4番機とザバット2番機のロストを確認…艦長、これは一体……」官制官は、驚きを隠せないまま報告する。「誰だか知らないが、我等カルミナ軍にミソつけるとは良い度胸だ……待機しているザバット2個小隊を攻撃装備に変更、地上を攻撃して不届き者をいぶり出せ!」一方、艦長は先程の砲撃が頭に来たのか、激昂した口調で指示を飛ばした。「相手は、恐らく読んでいると思うがな……ダロム少佐。」だが……突然、艦長席の近くに座っていた大柄な軍人がぴしゃりと言い放った。「アムンゼン中佐……」艦長にアムンゼンと呼ばれた大柄な軍人は、少し思案した後、呟いた。「北に展開している地上部隊に連絡を取れ。彼等にスクランブルをかけさせろ。」同時刻、北部山岳地帯……山肌が不意に持ち上がったと思うと、その下から数十機の獣型ゾイドが現れる。豹の形をしたしなやかな小型ゾイド「ヘルキャット」。それに、全身黒と灰色に彩られたゴリラ型ゾイド「ハンマーロック」。そして、その後方から現れたのは、真紅に彩られた3機の大型の虎型ゾイド「セイバータイガー」だった。[ホエールキングよりスクランブル確認。総員、進攻作戦を開始する!]3機のセイバータイガーが雄叫びを上げた途端、他のゾイド達も一斉に奮起していた。だが……「ガルルオォォ!!!」突然、どこからともなく重厚な咆哮が轟いた。[何事だ!?]セイバータイガーに乗る指揮官が慌てて振り向くと、近くの小高い岩山から何かが現れた。.現れたのは、翡翠色の装甲に金色のバスタークローを携えたゾイド……ミントの駆るバーサークフューラーだった。「一か八かの賭けだったけど……やっぱり山岳地帯に兵力を隠してたみたいね。」眼前にいるのは、3機のセイバータイガーに率いられたヘルキャットとハンマーロックの混成部隊。総勢して数十機はいる。「1人と1機じゃちょっとキツイかな……けど、みすみす街を攻撃させるわけにはいかない!!」こちらの存在に気付いたヘルキャット数機が、フューラーに向かって砲撃を始める。だが、雨霰の様な砲撃は全てEシールドに弾かれていく。「跳んで、フューラー!!!」途端に、ミントは大音声を上げて操縦桿を握った。
「な・何だと!?」セイバータイガーに乗る指揮官は、自分の目を疑っていた。向こうにいたバーサークフューラーが、跳躍して自分の方に向かってきたのだから……「こいつ、まさか指揮官機を直接叩くつもりか!?」だが、気付いた時には遅かった。瞬間、金色のバスタークローが閃いた……と思うと、右にいたセイバータイガーが胴体を串刺しにされていた。そして、指揮官の機体は……首から上がひしゃげて無惨に千切り飛ばされていた。辛うじて真ん中の1機だけが、バックステップで攻撃をかわしていた。数分前に隊列を視認したミントは、この進攻部隊がかなり統率されていることに気付いていた。前回の盗賊と違い、統制の取れた軍隊を相手にするのは無謀に等しい。だが、それは統率する存在……すなわちリーダーがいるからに外ならないのだ。しかし逆にリーダーを失えば、彼等は一気に指揮系統を失ってしまうだろう……ミントが指揮官機を狙ったのは、そのためだった。しかし……「くっ……」3機の中混じっていたATユニット装備型のセイバーだけが、フューラーの攻撃を避けていたのだ。そのセイバータイガーは、背中の8連装ミサイルを放って反撃してくる。とっさにEシールドを張る間も無く、フューラーは瞬く間に爆炎に飲み込まれた。「きゃあぁ!?」突然の攻撃に、流石のフューラーも僅かによろける。しかし……最初の混乱から立ち直ったヘルキャットやハンマーロックが既に攻撃を始めていた。(しまった、完全に裏をかかれた…このままじゃ、人海戦術で押し切られちゃう……!).ヘルキャットにハンマーロック、それに指揮官機の生き残りのセイバータイガーATが、態勢を崩したフューラーに砲撃を浴びせ掛ける。「ダメ、Eシールドを張る時間が無い……ぐっ!?」いかに堅固な鎧でも、雨霰の様に降り注ぐビームやミサイルを受け続けると傷ついていく。しかもこちらが反撃しようにも、敵は数十倍の数。ビームではきりがない上、遠距離攻撃に徹しているために自慢のバスタークローも届かない。そうこうしているうちに、包囲網は次第に縮められていった。「この危機を乗り切るとしたら、あれしか無い…けど……」バーサークフューラーには、バスタークローや爪、牙、尻尾以外にもある強力な武装が装備されている。だが、特定の態勢を取らなければならない上に、連中に察知されたら更に熾烈な攻撃を浴びせられることになる。それに、その武器は口の中にある。もし万一にも流れ弾か何かでそれが破壊されたら、フューラーの頭は跡形もなく吹き飛んでしまうだろう…コックピットもろとも……スラスターを噴かして包囲網を突破しようにも、噴射口を狙われたらスラスターが破壊されてしまう。崖や壁を背にしているなら噴射は可能だが、四方八方を囲まれた今の状況を切り抜けられるなど、例えライガークラスでも至難の技だ。(万事休す…このままじゃ、私もフューラーも……)ミントは唇を強く噛み締めながら、悔しそうに俯いた。ピー、ピー、ピー!ミントの耳にけたたましい振動音が響いてきたのは、その時だった……!.途端に……「グオオォォ!!!」猛然とした咆哮が起こったと思うと、ヘルキャットやハンマーロックの包囲網を突き破って、黒と銀色の大きな影がフューラーに向かって疾走してきた。「あのゾイドは……!?」黒光りする装甲…銀色に光る牙と、背中に見える1対の剣…そして、獅子の様にしなやかな体駆……そこに現れたのは、漆黒に輝くライオン型ゾイド「ブレードライガー」だった……..「黒い…ブレードライガー……?」まるで、バーサークフューラーを庇う様に立ちはだかるブレードライガー。その雄姿にミントは言葉を失っていた。途端に、通信モニターに誰かの顔が映る。その顔を見たミントは…「嘘……」またも言葉を失った。[よぉ、また会ったな。『翡翠色の姫騎士』さん♪]モニターに映っていたのは、先程喫茶店にいた赤黒い髪の青年だった。ザバットの編隊は、地上に向けて降下。翼のビーム砲で砂漠を攻撃し始める。そのうち、行く手にガンスナイパーのいる格納庫が見えてきた。ガンスナイパーのセンサーが勢い良く点滅する。「予定通り、来ましたわね……」ザバットは既に黙視出来る距離まで接近してきている。いかに狙撃に精通したガンスナイパーといえど、高速で飛来してくる飛行ゾイドを6機同時に叩き落とすなんて不可能である。しかし、ジュリアは慌てなかった。[シュウ君、レナード、今です!お姉ちゃんも迎撃に入って下さい!!]途端に、通信機越しにティアの声が響き渡った……….先頭を飛ぶザバットは、格納庫に向けて腹部のミサイルを撃ち込もうと低空飛行に入っていた。パイロットは、そのままロックオンの態勢に入る。しかし…彼がトリガーを引くことはなかった。何故なら…その瞬間、彼のザバットは腹に大穴を穿たれて爆破炎上していたのだから……墜落していくザバットが捉えたのは、自分達に砲口を向けている青いコマンドウルフの姿だった……「こちらレナード・ヴィオリア、敵ザバットを1機撃墜……」アタックユニットを装備した青いコマンドウルフのパイロット、レナード・ヴィオリアは、冷静な表情で残りのザバットを凝視した。「残りも予定通り引き受ける。シュウ、爆撃部隊は任せた。」[了解です……!]コマンドウルフの通信機から、幼さの残る少年の声がする。途端に、風を突っ切って黒いしなやかな影が飛翔していった。遥か上空の爆撃部隊目掛けて…数機のザバットが、それを追い掛けようと機首を上に向けるが、「貴方達の相手はこちらですわ。よそ見なんて許しませんことよ……!」その瞬間、ガンスナイパーの狙撃で叩き落とされた。同時にコマンドウルフも砲口を開く。地上の2機が全てのザバットを撃ち落とすのに、5分とかからなかった。..街に向かって順調に進んでいた爆撃部隊。だが、プテラスとザバットで構成された編隊に、下から黒い翼竜の様な影が猛スピードで肉薄していく…途端に、ダダダダダダ………黒い影の胸から光の弾が放たれた。それが直撃し、2機のザバットが錐揉み状態で墜落していく。瞬く間に爆撃部隊は混乱に陥った。[な・今度は一体……!?][レイノスか、しかし……あのカラーリングはまさか!?]機体の正体を確認するカルミナ軍。だが、途端に表情が青ざめる。現れたのは中型クラスのプテラノドン型ゾイド「レイノス」だった。しかも通常機と違い、黒と緑に彩られている。この特徴的なカラーリングは、北の暗黒大陸ニクスに存在する希少金属「ディオハルコン」を体内に蓄えている証拠だ。「こちらシュウ・ホウジョウ。敵部隊を視認、これより駆逐します。」レイノスのコックピットに座る黒髪の少年は、喫茶店でした様な幼い表情とは掛け離れた鋭い視線で眼前の敵を睨み据える。そして、再び機体を加速させた。慌てたプテラスが狂った様に機関銃を乱射する。しかし、黒いレイノスは風の様なしなやかさで掃射を回避していく。「カルミナ軍……!!」そして、翼に備わった鋭利な爪で擦れ違い様にプテラスを切り裂いていた。「黒いレイノスだと……!?」ホエールキングのブリッジで、艦長は空中戦を眺めていた。途端に、官制官の1人が青ざめた表情で叫ぶ。「か・艦長!地上部隊から緊急通信です!謎のTレックス型ゾイドとブレードライガーが乱入、小型ゾイド部隊に多大な損害が出ています!!」「何だと!?」だが、艦長より早く反応した者がいた。アムンゼン中佐だ。「直ちに全部隊を撤退させろ。相手は小数精鋭、このままでは総崩れは免れん!」間もなく、ホエールキングから桃色の花火が撃ち出された。信号弾だ。それを視認したプテラスやザバットは、素早く機首を翻して飛び去っていった。「撤退したか……思ったより早かったですね。」少年は追撃せず、そのまま地上の仲間のもとへと降下を始めていた。ブレードライガーの銀色の刃が、浮足立ったヘルキャットを両断する。ミントのフューラーも、バスタークローで敵のハンマーロックを引き裂いていた。[潮時だな……]戦うミントの耳に、ブレードライガーを駆る青年の声が聞こえたのはその時だった。
街外れに位置する砂漠に、巨大な海老に似た影が見え隠れする。ホエールキングよりは小さいが、それは紛れも無く輸送タイプのゾイドだった。このゾイドの名は「ドラグーンネスト」。そのブリッジに、女性はいた。「カルミナ軍は撤退を開めたか……」女性は、眼鏡越しにモニターを見ながらぽつりと呟いた。「その様です、お姉ちゃんやヴァイス隊長達の働きに感謝ですね。」女性の前に座っていた少女は、嬉しそうに振り向く。その少女は……先程ジュリアと共にミントと談笑していた、ティア・グリンスヴァールその人だった………!「しかも、地上部隊を担当した隊長の所には思わぬ増援が来てくれましたし……」「確かに…ヴァイスに危うい所を助けられてこそいるが、予想以上の戦闘能力だ。やはり噂に違わぬ猛者だな、[翡翠色の姫騎士]は…」モニターには、岩山と無数の残骸を背景に佇むバーサークフューラーとブレードライガーの姿が映っていた。「彼女、どんな人なんでしょう……??お話出来たら良いですね♪」.[やっぱし強いな、お前。判断力も的確だし、行動も早い……ま、ちぃと勇み足しちまうところはあるが……少なくとも、俺等が見てきた中じゃ最高クラスだぜ。]黒いブレードライガーに乗る青年は、愉快そうに拍手しながらミントを褒め讃えた。「は・はぁ……そりゃどうも……(汗)」ミントは少々困惑気味だったが、不思議と悪い感じはしなかった。ところが…次の瞬間、青年は予想だにしないことを言ってのけた。[決めた……今からお前を艦に連れて帰る。新しい仲間の誕生だ♪]「へ!?」突然の青年の言葉に、ミントは一瞬目を丸くした。.「作戦失敗か……」アムンゼン中佐は、ブリッジに腰掛けて溜息を尽いていた。「あのレイノス……こちが爆撃装備だったとはいえ、1機でプテラスとザバットの混成部隊をあそこまで苦しめるとはな……それに、地上にいたコマンドウルフにガンスナイパー、それに黒いブレードライガーも……」今日の結果を見る限り、どれもこれも無視出来ないものばかりである。ブレードライガーはともかく、ガンスナイパーやコマンドウルフ、レイノスで大部隊のカルミナ軍を追い払うなんて、並のパイロットにはまず不可能だった……(それに、あのティラノサウルス型ゾイド…あれはジェノザウラーではない。資料でしか見ていないが、間違いない。バーサークフューラーだ……あの様な希少種を操るとは、何者だ……!?)..ミントの視界に、巨大な海老の様な影が見えてくる……「ドラグーンネスト…!?」[俺等の母艦「ティアマトー」だ。来てくれたな♪]ブレードライガーの青年は、歓喜の声を張り上げて近付いてくる艦影を凝視した。やがて、ドラグーンネストは停止したと思うと…数秒後には、胸部ハッチを開いていた。[よぅし、行くぞ。]青年はそう言うと、ブレードライガーを開放されたハッチの方に向かって前進させる。程無くして、黒い機影はハッチの向こうにすっぽりと収まってしまった。ドラグーンネストの中には、既に3機のゾイドが鎮座していた。左右に待機しているのは、アタックユニットを装備した青いコマンドウルフ。そして、ウィーゼルユニットを背負ったガンスナイパーだ。1段上のハンガーでは、黒と緑に彩られたレイノスがメンテナンスを受けている。その中に、フューラーが怖ず怖ずと足を踏み出していった。「これが風神騎士団の母艦…」小数精鋭と聞いていたが、戦闘員は黒いブレードライガーの青年を含めると僅か4人らしい。だが、それでも彼等は数多のカルミナ軍と戦ってきた者達。侮るのは軽率だ。「…ん?」ブレードライガーに先導されて通路を進んでいると、ミントはガンスナイパーの隣にいる人影に気付いた。白金色の髪と、ひらひらしたワンピースが目立つその人影は…「ジュリア!?」気付いた時、ミントはフューラーから飛び降りていた。そして、ちょうど振り返ったその少女に勢い良く飛び付く。「ジュリアーーー!!」「貴女は…ミント!?ミントなのですか!?」間違い様も無い。ミントが飛び付いてるのは、ジュリア・グリンスヴァール本人だった。「ジュリア…まさか、貴女達も風神騎士団なの!?」「そういうミントこそ………あの、もしかして貴女、あの「翡翠色の姫騎士」本人なの!?」ジュリアは涙目でミントを見つめて詰問する。「別に隠すつもりはなかったけど……ぁ、わ・私だってジュリアが風神騎士団だったなんて知らなかったんだよ…?」たじろぎつつも答えるミント。すると、ブレードライガーから降りてきた青年がやって来た。「おいおい、お前等知り合いか?だったらちょうど良いじゃん。新入りメンバーの歓迎会を兼ねて、今から全員ブリッジに集合だ!」青年は、溌剌とした雰囲気を纏ってブレードライガーの方に戻っていった。.「あ、そーいえば……ティアはどうしたの?」中央のエレベーターを上がる中、ミントはふと思い出していた。「ふふふ……パイロットではないですが、あの子も風神騎士団の一員です。ブリッジに行けば会えますわよ。」エレベーターを上がると、扉の向こうには廊下と幾つものドアが見えた。「ここが私達の個室になりますわ。今は私とティアを入れても7人しかいませんが、ドラグーンネストは本来一個師団を輸送するためのゾイド。空いてる部屋は幾らでもありますわよ♪」「7人?こんな馬鹿でかい艦に7人しかいないの!?」これだけのサイズの艦だと、操舵手やオペレーター、各ゾイドの整備班を含めると十数人は必要になってくる。しかし、この艦を運用しているのはジュリアやティアを含めてたったの7人…ミントが驚くのも無理は無い。「艦長に操舵手兼砲撃手、そしてオペレーター…私達パイロット以外は、この3人が艦を守ってくれています。それに、愛機の整備は自分達で行う…これが私達のルールです。私も、ガンスナイパーの整備の仕方は必死で覚えましたわ。」「なるほど…私のやり方は殆ど自己流だし、自分で間に合わない時は馴染みの整備士さんにやって貰ってる。」廊下を歩きながら他愛もない話に華を咲かせる2人。やがて、彼女達の行く手に白い扉が見えてきた。「ここがブリッジ。このティアマトーの中枢にあたる場所です。」ジュリアはそう言うと、懐からカードキーを取り出して側の機械に通す。それと同時に、扉は左右に開かれた。「わ…結構広いんだ、ここ…」開放されたブリッジは、意外に広く感じられた。「サロン程ではないですけど、ブリーフィングはここで行う事にしています。ちょっと機械的ですけど、慣れれば居心地が良いですわよ。」基地の管制塔を彷彿とさせる空間。やや広いが、それでいて無駄なものが見当たらない。向かって左に見える座席には複雑な計器の類が見られ、誰かがそれを懸命に操作している。背後から見える琥珀色の髪がやけに目立つ少女だった。正面に見える椅子(恐らく艦長席だろう)には、背の高い人物が背を向けて座っている。「艦長、ミント・ルティーナ氏をお連れしました!」ジュリアが不意に敬礼して大声を張り上げたのは、その時だった。途端に…艦長席に座っていた人影がゆっくりと立ち上がった。
席から立ち上がった影は、椅子から離れてゆっくりと振り返る。ショートボブに切り揃えた赤紫の髪がブリッジに靡いた。「初めまして、翡翠色の姫騎士……私は艦長のリーファ・ホウジョウ、お目にかかれて光栄だ。」そこにいたのは、怜悧な雰囲気を漂わせた女性士官だった。青黒い軍服に薄緑のネクタイを纏い、黒真珠を彷彿とさせる瞳でこちらを見据えてくる。「ど・どーも…初めまして、ミント・ルティーナです…」差し出された手を、ミントは怖ず怖ずと握った。「フ……そう畏まる事は無い。貴公は我々と意思を同じくする者…則ち、同士なのだからな。」女性士官はにこやかに笑うと、ミントを見つめた。「あの…艦長にお姉ちゃん、私も出てきて良いですか…?」その時、左手に座っていたオペレーターらしき人影がゆっくり立ち上がった。「ん……この声は、もしや………?」やけに聞き覚えのある声に、一瞬首を傾げるミント。「あらあら、まだ気付きませんか??」隣では、ジュリアが何故かくすくす笑っている。「ぇ?今の声、まさか………」一方、琥珀色の髪のオペレーターはミントの声に驚いて席から立ち上がる。そして振り返り………「ティア………?」「もしかして、ミントちゃん……ですか………?」ミントとぱっちり目が合ってしまっていた……….「ふええぇぇ!ど・どうしてミントちゃんがここに!?」程なくして、驚愕に満ちたティアの声がブリッジに響き渡った。「私だって仰天だよ!ジュリアとティアが風神騎士団だったなんて……ていうか、私が『翡翠色の姫騎士』だって知らなかった??」(ミント)「はぇ……?ふひゃあぁぁ〜〜〜〜」(ティア)どうやら衝撃の事実だったらしい。ティアは素っ頓狂な悲鳴を上げると、へなへなと倒れ込んだ。「はぇ?ちょっ…ティア〜〜〜!?」.頭から湯気を噴き出し、くてんとノビてしまったティア。ミントは大慌てで彼女を介抱する。「あらあら……あまりのショックで上がってしまいましたわね。ミント、少し寝かせてあげて下さい。」ジュリアは呆れた様に言うと、そのままオペレーター席に座った。「やれやれ……ジュリア、すまんが他の者にもブリッジに集合するように伝えてくれ。」「了解ですわ。」リーファの言葉に、ジュリアはやれやれとばかりに頷く。そして、端末に何かを入力し始めた。.暫くして、後ろの扉が開いた。.「ふぃ〜〜……やっと呼び出しかよ、待ちくたびれたぜ。」「そう言わないで下さい、こっちも心の準備が必要なんですから。」「相変わらずだな…だが、豪胆も慎重も度を越すと良くない。」開いた扉から、3人分の声が聞こえてくる。しかも、うち2つの声には聞き覚えがあった。(この声…まさか……!?)恐る恐る振り返ってみると…「ぁ…また会いましたね…」「よぅ。」そこにいたのは、さっきのブレードライガーの青年。そして、先程喫茶店で出会った黒髪の少年だった。「あ……さっき街で食い逃げした人!?」「あ、貴方は……さっき店にいた子じゃない!?」少年の姿に、ミントはまたも驚きを隠せなかった。「彼女は…貴様等の知り合いか……?」2人の隣にはもう1人、灰色の髪をした中性的な顔立ちの青年が佇んでいた。「レナード、こいつが『翡翠色の姫騎士』。あのデザートプレデターをぶっ潰した張本人だぜ……まぁシュウやジュリア達はさっきも会ってるし、俺なんか一緒に戦ったからな。」ブレードライガーの青年は、クスクス笑いながら灰色の髪の青年に解説していた。「ほぅ…やはりあの時の女か………」レナードと呼ばれた青年は、冷静な表情でミントを見つめていた。「……俺はレナード・ヴィオリア。コマンドウルフのパイロットだ……いつぞやは敵だったが、以後、よしなに。」しかし、淡々と自分の名前を告げて通り過ぎていく。(ん?いつぞや……どっかで会ったっけ…………思い出せないや………)「あ、申し遅れましたね……僕はシュウ・ホウジョウ。レイノスのパイロットです。」続いて、レナードの隣にいた黒髪の少年‐シュウ‐が朗らかな笑顔で挨拶した。「ホウジョウ……ん?もしかして艦長さんの息子か何か?」リーファと同じ苗字を持つシュウ。よく見ると、幼い風貌ながら面差しがどこか似通っている風に見えなくもない。「あ、違います違います(汗)艦長のリーファ・ホウジョウは僕の姉………僕は腹違いの弟なんです。」どうやら当たらずとも遠からずだったらしい。シュウとリーファ………2人はどう見ても15歳は離れている様に見えるが、よく考えると惑星Ziの人間は平均寿命が120と長い。そのため、20歳近く年の離れた兄弟がいても不思議ではないわけだ。一方、ブレードライガーの青年は物思いに耽るミントの傍を通り過ぎると、操舵席にずかずか歩いていった。「おぅウィル、あんたもちゃんと自己紹介しな。せっかく可愛い新入りが入ったんだからよ♪」そして、席に座っていた人影に話し掛けた。「……分かった。」その人影は、青年に言われたのと同時に軽く会釈して振り返る。その男は、左目に奇妙な眼帯の様なものをつけていた。「……これが気になるかね?」男は、ミントの視線が眼帯に向いている事に気付いたのか、苦笑を交えて呟いた。「8年前に事故で失明して以来、愛用している視力デバイスさ。中々、重宝している。」よく見ると、足元も僅かばかり覚束ない様子。しかし、男はそれを感じさせない様子でミントに会釈した。「私はウィリアム・ピースリー。この艦の操舵と砲手を担当している……以後、宜しく。」
「それじゃ、こうして全員揃ったことだし…改めて、『風神騎士団』にようこそ……」ブレードライガーの青年が、一同を代表して声を上げる。「…って、ちょっと待って!私、仲間になるなんて一言も……」しかし、ミントは大事な事を思い出していた。ブレードライガーに助けられ、ジュリアやティアとも再会した…しかしよくよく考えると、ミントは彼等のスカウトへの返事にまだYESを出していないのだ。だが…「おいおい……なに言ってやがる、さっき俺が『お前を新しいメンバーとして迎え入れる』って言った時、否定しなかったろ?」ブレードライガーの青年は、とんでもない事を言っていた。「ヴぇ!?」そういえば、さっきの山岳地帯での戦闘の時にそんなことを言っていた様な…しかし、その後のどさくさに紛れてすっかり忘れていた。(まさか…あ・あの時の…!?)「そういうこった。それとも何か?俺等は信頼出来ないってか?」「うぐぅ……」そう言われると、ミントも何やらチクリとくるものがある。それに、どういうわけかこのまま彼等を放って帰る気にもならなかった。「そ・そこまで言う?普通………」だが、その時……ふと、レナードが割って入った。「確かに、このままではどちらも収まるまい……ならばひとつ、余興をして貰っては如何だろうか?」.「こりゃ確かに解りやすいな。大好きだぜ、こーゆーのは♪」「凄いバトルマニアっぷりね…ま、悪くないけど。」あの後、割って入ったレナードが提示した意見…それは、フューラーと黒いブレードライガーとの一騎打ちだった。「ま、いいわ……私もこういうの、嫌いじゃないし…………あ、でも私が勝ったら、所詮はそれまでと見るわ。貴方達にカルミナを倒すなんて出来やしないってことよ!」「上等……その代わり、俺が勝ったら本当(マジ)に仲間になって貰うぜ。それで良いか?」既にフューラーもブレードライガーも臨戦態勢に入っている。ゴングが鳴れば、2機とも飛び掛かっていくだろう…眼前に立ちはだかる相手に向かって…「えぇ、いいわよ……そうなったら、それこそ無条件で仲間になってあげるわ。」.[……それではスタートだ。互いに全力を尽くして戦え。]ブリッジから響くリーファの合図と共に、2機は一気に駆け出した。正面から大地を蹴って迫るブレードライガー。それに対し、ミントは敢えてフューラーを動かす事はせず、バスタークローを両側面に展開する。(これなら、正面180度はカバー出来る…近付いてきたらその瞬間に弾き飛ばしてあげるんだから!)ミントの予想通り、ブレードライガーは正面から真っ直ぐに突っ込んできた。敵が懐に入ったなら、牙とバスタークローを駆使して一気に畳み掛けるまで…(よ〜〜〜し、貰っ……)だが…次の瞬間、ミントの予想だにしないことが起こった。なんと、ブレードライガーが大地を蹴って跳躍していたのだ。「!?」「戦いってのは、相手の虚を突くもんよ。そいつを見極めりゃ……こんな事も出来んのさ!!」..夕日が地平線の向こうに沈んでいく。その光を背にして、2機のゾイドが在った。バーサークフューラーとブレードライガーだ。しかし、2機ともシステムフリーズに陥ったのか動こうとしなかった。「はぁ……はぁ……」ミントはフューラーのコックピットで、粗い呼吸を抑えていた。(まさか上から来るなんて……ライガークラスの特性もあるけど、それでも瞬時に見定めるなんて図抜けた判断だわ……)あの時、跳躍したブレードライガーは…真上からフューラーに襲い掛かってきた。それに気付いたミントは、素早く応戦しようとしたが……結果はミントの完敗に終わってしまった。急降下したブレードライガーは、刃ではなく鋭い牙でフューラーに食らい付いていたのだ。しかも、ライガー特有の強靭な四肢で真上からフューラーを押さえ付ける。本来ならばジェノザウラー並の怪力でも跳ね退けられるフューラーだが、完全に虚を突かれたミントに勝機は無かった……(私としたことが、こんな虚に引っ掛かってしまうなんて……)正面から来ると思い込んでいた結果、ミントはまんまと裏をかかれてしまったのだ。最早、敗北を認めるしか無かった。.[さぁて戻るか、色々言いたい事もあるだろーが、とりあえずお前は今日から仲間だ。今度は異存無ぇな?]一方、ブレードライガーのパイロットは、そんなミントに対して明るい調子で声を投げ掛ける。「……負けは負けよ。私、あんた達の仲間になるわ……何か面白そうだし、当分は一緒にいさせてくれる?」「勿論だ。そのうち離れたくなくなるぜ♪」敗北したのは少々癪に障るが、それでも何故か悪い感じはしなかった。寧ろ、負けて良かったのかもしれないとさえ思ってしまう。いずれにせよ、この瞬間からまた先の見えない未来が始まっていく…ミントはそう感じずにはいられなかった……「そーそー、順番がぐちゃぐちゃになっちまったが………俺はヴァイス。ヴァイス・フォン・アーセナルだ。風神騎士団のリーダーをやらして貰ってる………宜しくな♪」.暗い部屋に、モニターの光がぼんやりと映る。画面には、カルミナ軍と戦う翡翠色の機影が映っていた。「…間違いない、6年前にロフトから消えたバーサークフューラーだ……!」モニターを見つめる影は、歓喜と驚愕の入り交じった声で呟く。「よもやこんな所にいたとは…早急に策を講じた方が良いな……直ちに『スティグマータ』を招聘しろ。」影は、側に控えていたもう1人に簡潔に言づてをして……そして不気味に笑った…….「全ては我等「イプシロン」の為に……!」