ゾイド系投稿小説掲示板
自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。
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荒野。それはもう何処から見ても、荒野としか言いようのない土地であった。共和国と帝国の和解後も、こうした荒野では、賊同士の勢力争いや、傭兵、賞金稼ぎなどによる戦闘で、多くの血が流れている。赤茶けた土には、かつてここで戦ったゾイドの残骸や、その操縦士の血や骨も混じっているだろう。その上を、一つの巨大な物体が動いている。へリック共和国で開発された移動要塞ゾイド・ホバーカーゴである。しかし、それは明らかに軍の物ではなかった。ホバーカーゴは通常、殻の部分の色は青である。今この荒野を通っているそのホバーカーゴは、赤や緑、黄色などでカラフルに塗られていた。そして、荒野に不似合いな、何やら楽しげな音楽も流している。「やれやれ、こりゃあまた殺風景なところだねぇ」ホバーカーゴを操縦している青年がぼやいた。テンガロンハットを被り、腰にはリボルバー銃を着けている。周りにいるのは、タキシードにシルクハットを被った20代前半ぐらいの女性と、まるで吸血鬼のようなマントを着た、14歳ぐらいの少女。「シャリー団長」少女の方が言った。「ラズ村まで、あとどれくらいかしら ? 」「もう五分もかからないわね」シャリーと呼ばれた女性は、そう答えた。「リリール、今回は最初に貴方のザバットのアクロバット飛行よ。準備は万端ね ? 」「もちろん ! 」リリールと呼ばれた少女は、元気良く返事をした。「ところで、クロンは何処にいるのかしら ? 」「あいつなら、多分自分の部屋にいると思いますよ」「そう。そろそろ準備もらうように言って」「はーい、呼んできまーす」そう言って、リリールはマントを靡かせて駆けていった。……ホバーカーゴの個室……「よーし、終わった」一人の少年が、読んでいた本を閉じる。髪の毛は黒で、眼は右目が緑、左目が赤のオッドアイである。端正な顔立ちで、色の異なる両目には光りが宿っていた。「ヒロインの性格が途中で変わっちゃうのが、ちょっとなぁ…でもアクションシーンは結構…」その時、部屋のドアが開いた。「いたいた ! クロン、団長がね、そろそろ準備しろだって」ドアの隙間から顔を出したリリールが、笑顔で言う。「わかった。俺もクラウンウルフも調子はバッチリだぜ」クロンと呼ばれた少年は、本を机の上に置き、そう答えた。「今日も頑張ってね、“踊る狼”さん」「おう、そっちこそ、今日は出番が早いだろ ? しっかりやれよ、“笑う吸血鬼”」そう言うと、クロンはリリールと共に、部屋から出てデッキへと向かった。………「おっ、来たぞ ! 」「ゾイドサーカスだ ! 」ホバーカーゴの接近を見て、若者や子供達がざわめく。木製の民家が建ち並ぶ、小さな村だった。「大歓迎ね」リリールが言う。「ケンゴ、そこら辺の、空いている所に停めて」「へい」ケンゴと呼ばれた青年は、ホバーカーゴの操縦桿をゆっくりと傾け、やがてぴたりと停めた。たちまち村の子供達が集まってくる。「さあ、行きましょう」シャリーがそう言うと、他の3人も後に従った。彼らはサーカス団。各地を旅し、その先々でゾイドによる芸を披露する。構成員は団長・シャリーの他に、クロン、リリール、ケンゴ、その他メカニック員や黒子役が10数名。共和国出身者もいれば、帝国出身者もいる。何処で生まれたのか解らない者達も多い。しかし、誰もが互いを家族と思って暮らし、そのホバーカーゴこそが自分の家だと信じて毎日を過ごしている。「れでぃーす・あーんど・じぇんとるめーん ! 」司会役が、マイクを手に大声で叫ぶ。周囲には、観客が詰めかけている。「本日は、我々の技を見るために集まってくれてありがとう ! 堅苦しい挨拶は抜きにして、ショーの始まりだっ ! ! 」その言葉と共に、ホバーカーゴの上部ハッチが開き、中からカタパルトがせり出してくる。観客の歓声が上がる。「まずはアクロバット飛行 ! 機体はザバット、操縦士は“笑う吸血鬼”リリール=ヴァンパード ! 」司会役の男がそう叫ぶと、ホバーカーゴのハッチから黒い機体が飛び出した。コウモリ型飛行ゾイド・ザバットだ。翼を閉じた状態で射出されたかと思うと、バッと翼を開き、回転しつつ急上昇する。そして、空中で赤い煙を噴射した。演出用のスモークディスチャージャーである。ザバットは煙を噴射しながら宙を舞い、星形やハートマークなどを描く。見事な技術である。そしてしばらくすると、今度は機体を下に向け、翼を閉じて急降下を始めた。地面に激突する、と誰もが思った瞬間。ギリギリのタイミングでザバットは再び翼を開いて、上空に舞い上がった。後少しでも遅れていたらとんでもないことになっていただろう。操縦士しているリリール=ヴァンパードの驚異的な反射神経と、そのタイミングを見切る才能があってこそできる技である。やがてリリールはゆっくりと着地し、観客からの盛大な拍手を浴びた。「続いて登場するのは ! 我がサーカス団のスーパースター・“踊る狼”クロン=スカーロック ! 」司会役がそう叫ぶと、ホバーカーゴの中から、再びゾイドが射出された。コマンドウルフのようだ。しかし、カラーリングはサーカスらしい派手な塗装がされ、前足の肩と膝部分に湾曲した刃が装着されているのを確認できた。その機体は空中で数回宙返りをすると、軽やかに着地した。普通のコマンドウルフではできない芸当である。「よし、行くぞ、クラウンウルフ ! 」クロンはそう叫ぶと、コマンドウルフタイプ特有の、ハンドル型操縦桿を大きく右に傾けた。クラウンウルフは「道化(クラウン)」の名の通りコミカルな動きを見せた。サッと伏せたかと思うと、次の瞬間にはなんと二本足で立ち上がって、そのままジャンプで少しずつ移動する。「10連続宙返りだ ! 」クロンは加速ペダルを踏み込んだ。クラウンウルフは、通常のコマンドウルフではあり得ない動きを見せ、空中に跳び上がり、連続で宙返りを始めた。ゾイドの中では中型とはいえ、人間から見ればずっと巨大なクラウンウルフが宙返りを決める姿は正に暴風の如し。観客達はどっと沸いた。クラウンウルフが着地すると、その背後に風を切る音が迫っていた。リリールのザバットが、地面すれすれで低空飛行しているのである。そして、ザバットがクラウンウルフに衝突するかと思われたその瞬間、再びクラウンウルフが跳んだ。しかも後ろ向きに宙返りをして、ザバットがその下を通過した後、何事もなかったかのように着地する。再び観客から歓声が上がる。「さぁーて、いよいよ我らが団長・シャリー=クーの登場…」司会役がそう言ったとき、一発の砲声が、それを妨げた。
どうもろってぃーさん、初のご投稿ですね。管理人のヒカルです。 最初タイトルを目にした際ははっきり言ってどんな内容か見当もつきませんでした。しかし読み進めていくうちに、おもしろいテーマだなあと思うようになりました。 大体ゾイド小説は戦争などを題材にしていますが(私もです)今回のこのサーカスというのには驚きました。正直私なら思いつかないです。 内容としては始まったばかりなのでなんとも言えませんが、それぞれのゾイドの演技などとても迫力があったと思います。 是非次のご投稿もお待ちしておりますので、執筆のほうがんばってください。ではどうもヒカルでした〜
「盗賊だ ! 」観客達が騒ぎ出す。見ると、モルガやコマンドウルフ、ゴドスなどの小型・中型のゾイドが村に迫ってくる。村人達は慌てて逃げていく。「ふむふむ、キャノリーモルガが2、コマンドウルフ6、ゴドス10か」クラウンウルフの操縦席から、クロンが数をざっと見積もる。「やれやれ、観客も逃げちゃったし、舞台が台無しだ」盗賊達のゾイドが放つ砲弾やビームなどを、まるで踊るようなステップで回避しつつ、クロンはそう言った。『クロン、リリール、聞こえる ? 』通信機から、シャリーの声が聞こえてきた。「ああ、聞こえるよ」『私も聞こえる』クロンに続いて、リリールも答える。『二人とも、うちのサーカス団のモットーその3、覚えてる ? 』シャリーが通信機を通してそう言うと、クロンとリリールが口を合わせて、言った。「「舞台の邪魔をする奴には、死あるのみ」」『よろしい。じゃ、早速あいつらを片づけるように』「へいへい、了解」『同じく了解〜』シャリーにそう答えると、クロンはクラウンウルフを走らせ、リリールも空中から攻撃を開始した。「リリール、コマンドウルフは俺がやる」『んじゃ、私はまずモルガから片づけるわね』クロンは、クラウンウルフの肩と膝に装着された三日月型の刃…ハルパーブレードを展開し、並んで走ってくる敵のコマンドウルフに突っ込んでいく。軽量化されたクラウンウルフのスピードは通常のコマンドウルフをはるかに上回る。飛来するビームをことごとく回避し、一番端の敵機の懐に飛び込んだ。「チェェストゥ ! ! 」クロンが叫ぶのと同時に、ハルパーブレードが敵機の脇腹を深くえぐった。そして残りのコマンドウルフ四体の後ろに回り込むと、今度は地を蹴って跳躍し、空中から襲いかかる。上からのしかかられ、バイドファング首を噛まれた敵のコマンドウルフは、呻き声を上げて倒れる。別の一機が飛びかかってくるが、クロンは難なくそれを回避したかと思うと、クラウンウルフのハルパーブレードの内側を相手の方に向けた。そして、相手の肩部分の関節、そして足にハルパーブレードを引っかけ、テコの原理でそのまま引きずり倒し、地面に叩きつける。「はい、次 ! 」クロンは唖然としている残り2体のコマンドウルフに、背中の小型ビームポッドによる攻撃を浴びせた。1体は胴体に直撃を喰らうが、もう1体はなんとか回避し、クラウンウルフに向かって牙を突き出す。しかし、凶悪なだけでろくに技術も持たない野盗ごときの攻撃が、今更クラウンウルフに当たるはずはない。軽く回避されたあげく、逆にクラウンウルフの牙で喉笛を食いちぎられてしまう。ビームをまともに喰らった方は逃走を試みるが、圧倒的な機動力を持つクラウンウルフから逃れられるはずがない。たちまち追いつかれ、ハルパーブレードの錆となった。その頃、リリールはとっくにモルガを潰し、ゴドスと戦っていた。ゴドスの対空砲火を難なく回避し、急降下しては一体ずつ爪の餌食にしていく。そしてやがて、最後のゴドスが倒れた。「よし、終わったな…」……その後、クロン達は盗賊団をその地方の役所に付きだし、その村で食料・水などの補給を行って、次の目的地へと向かうこととなった。「やれやれ」ホバーカーゴの側に腰掛け、ケンゴが言う。隣に座っているのは、団長のシャリーのみだ。「団長の相棒も出番無くて、ガッカリしてるでしょう ? 」「ええ。でもあの子は気が長いから…」そう言いながら、シャリーは缶ジュースを飲む。「また次の町まで、我慢してもらうわよ」「次の町…ハロドシティっすね。表は共和国と帝国の交易の中心部となる大規模な商業都市…裏はマフィアの巣窟ですぜ」「行ったこと、あるの ? 」「ええ、サーカスに入る前に」「じゃあ、まだ裏世界にいた頃 ? 」「ま、そうですな」そう言って、ケンゴは少し笑った。…その頃…「ふーっ、サッパリしたぜ」上半身裸になり、水浴びを終えたクロンが言ったクロンの背中には斜めに大きな傷があり、その周囲、そして胸や腕も傷だらけで、上半身で傷がないのは顔と首だけだった。「いつ見ても凄い傷だねぇ」近くに座っているリリールが、興味深げに言う。リリールは吸血鬼の衣装を着て演技をするが、普段でもその衣装で過ごすことも多い。「俺達『草原族』は狩猟民族だからな、傷は働き者の証さ。傷の多い男ほど尊敬されるし、女にも好かれるんだ。俺の爺さんなんか、ハゲ頭の天辺から足のつま先まで縦横無尽に傷があったぜ」「どんなことをすればそこまで傷だらけになれるのよ ? 」「そりゃ、野生ゾイドを捕まえたり…」その時。誰かの悲鳴が聞こえた。「ん ? 」クロンが振り向いた。そこには、サングラスをかけた数人の男と、その男達に体を押さえつけられている一人の少女の姿があった。「さあ、大人しくしろ ! 」サングラスの男の一人が怒鳴る。見ると、男達のうち何人かはファイティングナイフで武装している。「助ける ? 」リリールがクロンの方を見て言う。「放っておくわけにもいかないだろ」そう言うと、クロンは男達の方に歩み寄った。「ん ? なんだお前は ! ? 」少女の頭を押さえつけている男が言った。「見ての通り、旅の大道芸人だよ」「さっさと失せろ ! さもないと痛い目に遭うぞ ! 」別の一人が叫んだ。クロンの体の傷を見て、多少警戒しているようだ。「初対面の相手には紳士的に振る舞うのがうちの流儀だけど、武器と敵意、両方を持った相手なら話は別だ」そう言うと、クロンは拳を固めて、男達に飛びかかった。……登場人物・ゾイド紹介1クラウンウルフコマンドウルフの改造機。ビームポッドを小型化し、装甲の数カ所を小さい穴を多数空けて網目状にするなど、防御力の低下をできる限り押さえて軽量化されている。さらに脚力も大幅に強化したことで、驚異的な運動能力を得た。そして前足の肩と膝部分に装着された三日月型の湾曲した刃・ハルパーブレードは、切れ味もさることながら、付け根が回転式になっているため、向きを変え、相手のゾイドの装甲の隙間や関節などに引っかけ、柔道の投げ技の要領で引きずり倒すことも可能。遠心力や相手ゾイドの速度などによっては、レッドホーン並の機体でも引きずり倒せる。結果として、曲芸用でありながら相当な戦闘能力も得ることになった。その能力を100%発揮できるのはクロンのみという。クロン=スカーロック男 15歳サーカス団のトップスター。“踊る狼”と呼ばれる少年で、エウロペの少数民族である草原族の出身。打てば響く性格で、並はずれた運動神経を持つ。ウルフ系ゾイドの操縦が得意で、演技だけでなく戦闘能力も高い。全身に合計24の傷があり、その事からシャリーがスカーロックという姓をつけた。最初はウルフではなくセイバリオンにしようかと思ったのですが、コマンドウルフの方が動いていて派手かな、と。ちなみに草原族は俺のオリジナルです。草原で野生ゾイドと共に狩をして暮らす、まあ遊牧民みたいな感じですね。
どうもろってぃーさん、早速読みましたよ、ヒカルです。 今回は題名どおり鮮やかな戦闘シーンが魅力的でした。サーカスを連想させるような、水のよう流れる戦闘テクニックは「さすがだな〜」と思わず唸ってしまいました。個人的にはもう少し戦闘シーンのボリュームがあってもいいかな〜と思いました。 さらに次は生身の体を駆使してクロンが、ドカバキやりそうでさらに期待が膨らみます。(ゾイド同士だけでなく結構こういうのにも興味があります) それでは続きのご投稿もお待ちしております!