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ゾイド系投稿小説掲示板

自らの手で暴れまくるゾイド達を書いてみましょう。

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[121] ヴォルド - 2006/04/14(金) 19:50 - HOME


血生臭い風、怒号悲鳴の嵐。
ここは前線。絶え間なく、争いが続く地。

共和国所属ジェロップ中尉は、愛機マンモスで狂ったように飛んでくる鉛玉と灼熱のレーザーをかわすことに追われていた。
デスザウラー、セイスモサウルスを含む帝国1個師団に攻め込まれた自軍は、最早壊滅といっても過言ではない状況に立たされている。
頼みの綱であったゴジュラスギガも、既にゼネバス砲の餌食となり、残されたのは僅かな数。

「畜生め……。こんな所で死んでたまるか……」
このジェロップ、仲間内からは“ゾンビ”と呼ばれている。
別に、ジェロップの顔が恐ろしく醜いという意味ではない。むしろ、結構美形と言えるだろう。

それでは何故そう呼ばれたか。

理由は2つ。
1つ目は、幾ら部隊が全滅しても、何故か彼だけはいつも生きて帰っていること。
そして2つ目、彼が乗るマンモスは、右の牙が折れていて、まるでゾンビの手のように垂れ下がっていることだ。
ジェロップは出会ったときからこうなっていたので、あえて修理しないでおいてあるのだとか。

そんなことからつけられたあだ名だ。

驚異的な生還率を誇る彼は、いつも仲間の話題の的。
皆はこぞって、こう彼に問う。

――何故そんなに生き残れる?

ジェロップは、その問いに対していつもこう答えていた。

目的がある内は、死ぬわけにはいかないから、と。



20年前の話になるが、ジェロップは家族を1発の砲撃で全て失っていた。
当時の敵国の仕業ではない。両国はその時休戦状態にあったのだから。

――野良ゾイドの襲撃。それが原因だった。
襲撃といっても、野良ゾイドはただ1発の砲撃を町に放った後、何処かへと姿を消しただけだ。その1発の弾丸が悲劇を生み出したとは知らずに。

ジェロップは、絶望した。
全てを失い、最早生きる望みなど無くなっていた。
だがそんな最悪の日々を過ごしていた最中、いきなりの敵国との戦争が始まった。
それは、ジェロップに生きる目的を与えた。

――軍に入れば、あの暴走ゾイドに会えるかもしれない……。

何故か、当時のジェロップにはそう思えて仕方が無かった。予感と言う奴か。



それからというものの、ただ仇を討つ為がだけに戦いに身を投じた。


危険な任務で死に掛けたもあった。

血と肉片の雨を浴び精神がおかしくなりそうなときもあった。


そんな彼をここまで生き延びさせたのは、憎い仇を討つ為。
それまでは死んではならない。と念じ続けた。
皮肉な言い方をすれば、仇が彼をここまで生き延びさせたことになるのだが。



ガン、と鈍い音がした、そう思った刹那、彼の頬を激痛が駆け抜けた。
どうやら、弾が強化ガラスを割って突き抜けたらしい。
もう少し右にいたら死んでいただろう。ゾンビの名は伊達じゃない。
「もう少し……もう少しだけ耐えてくれ……相棒!」
マンモスに呼びかける。が、もう限界だということがジェロップにもわかっていた。
そもそも、ここまで弾丸を避け続けてこれたこと自体が奇跡に近い。

左からヘルキャットが来る。
旋回させ、鼻で吹き飛ばした。更に2体同時でブラックライモスが突撃してきたが、これは牙と足で何とかする。
休む暇は無い。粒子砲がすぐ前の地面を溶岩に変貌させ、それを飛び越えてセイバータイガーが爪を振りかざしてきた。
避け切れない、特製の重装甲が抉られた。だがそれでもジェロップとマンモスは諦めない。尾部のレーザーで怯ませ、真上から踏み潰す。

それからたっぷり30分、鬼神の如き戦いを続けた。
サックスティンガーを蹴り飛ばし、アイアンコングすら牙で貫いた。
更にジェノザウラーの首を潰し、ライガーゼロイクスを踏み抜く。

だがそれでも、ついに限界が来た。がくり、とマンモスが膝をつく。
その隙を敵は見逃さず、四方八方から攻撃が加えられた。
「ぐぅ……!」
意識がすっ飛びそうになるが、耐える。
マンモスだって耐えてくれているのだ。自分がへばって、どうする。
それでも容赦なく攻撃はくる。
そして何度目かの攻撃で、ジェロップは強く頭を打ち付けた。


刹那、電撃のように映像が脳裏に浮かぶ。

巨大なゾイドが、レーザーを撃っている。
――それは、ジェロップの家のほうへと流れていった。
彼は叫び、そのゾイドを睨みつける。
そいつは大きく、無骨で、巨大な牙があった。そのうち片方は、折れている。

言うまでもない。そのゾイドは………



「……お前だったのか」
ジェロップは、すでに虫の息になりながらも、やっとの思いでそう愛機に囁いた。
思い出した。ジェロップは、仇を自分の目で見ていたのだ。ショックで忘れていたのだろう。

捜し求めた相手は、いつもそばにいた。
そして共に戦い、共に苦境を乗り越えてきた。

――少し前ならば、発狂していたかもしれないな。

そんな思いが頭を過ぎる。
だが今、彼は発狂はしてないし、怒りもしていない。
家族を奪われた憎しみを、愛機に対する友情、そして感謝の気持ちが上回ったからだろうか。

半分消えたキャノピーから、セイバータイガーの頭がこちらを静かに見下ろしていた。
静かに足を持ち上げ、今にも振り下ろしそうだ。
そうなったら当然、ジェロップは肉塊と化すだろう。
「殺るなら、殺りやがれ。畜生が」
何故か、穏やかな気持ち。もう、仇を探すという目的が無くなったからかもしれない。
今なら、**(確認後掲載)る。そう思った。
赤い足は、ゆっくりと踏み潰す準備に取り掛かった……。




すでに残骸が片付けられた戦場で、ジェロップは簡素な墓標を眺めていた。
そこには、“捜し求めた仇にして、最高の相棒ここに眠る”と記されている。

セイバーの足が振り下ろされる瞬間、マンモスは自動で脱出装置を働かせ、ジェロップの命を救った。
何故そうしたのかは、今となっては知る術は無い。

「余計な事しやがって」
今は亡き相棒に語りかける。
いつも頑固そうに唸っていた、あの声はもう聞こえない。


風が髪をなでる。
今は病院暮らしだが、いつかまた戦場に出る日が来るだろう。
両国の決戦はすぐそこまで近づいている。ここにはこれなくなるかもしれない。
だから、それまではここで、愛機と一緒にいてやりたい。

ジェロップは、何も無い蒼い空を見渡した。



そよ風が、心地よかった。

[122] お見事です! ヒカル - 2006/04/14(金) 23:48 - HOME

ども久しぶりですヴォルドさん。管理人のヒカルです。いや〜この短いお話にあれだけの内容を見事にまとめるとはお見事!私にはとてもできそうにありません。(短編苦手なんで……)
特に愛機が仇だったところに驚きましたね。内容もとてもよかったです。
それではこれからもよろしくお願いします。



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