No.170 コナサナギタケの有性時代? 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月15日 (月) 18時33分 [ 返信] |
北海道のyuccuriさんという方がツイッターにサナギ生の不明種を投稿しておられたので、結実したストローマとシンネマを一本ずつ送っていただいて検鏡しました。アナモルフの方はコナサナギタケそっくりで、テレオモルフの方は子嚢や胞子はみられませんでしたが、子嚢殻や柄の色からcordyceps属と判断しました。どうやらコナサナギタケの有性時代のようです。以前、山鳥さんの掲示板にコナサナギタケの有性時代が投稿されたように記憶していますが、どんな感じだったでしょう?
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No.171 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月15日 (月) 18時54分 |
yuccuriさんの画像ではシンネマと思われるものが十数本、有性時代のストローマが3本出ていました。柄はどちらもオレンジ色。長さはストローマが1.4cm、シンネマが2.8cmです。
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No.172 投稿者:山鳥 投稿日:2018年10月15日 (月) 19時43分 |
こんばんは、
申し訳ないです。
掲示板の画像を収納していたパソコンが壊れて、現在のパソコンには画像が殆ど残っていません。 残っているものを確認しましたが無かったです。
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No.173 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月15日 (月) 20時49分 |
そうですか。それは残念。たしか山口のN嶋さんの投稿だったような・・ もしコナサナギタケの有性時代の情報をお持ちの方はお知らせください。 サナギタケに似て橙赤褐色、シンネマの柄は長めでオレンジ色です。
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No.174 投稿者:K.Y 投稿日:2018年10月15日 (月) 21時22分 |
以前から裸生型のストローマを生じたコナサナギタケ?の存在は気になっていました。
会誌22号(p.62)、29(p.9)に関係がありそうな虫草の報告があります。 ネット上では、山荘主人様のサイトにハナサナギタケのテレオモルフとして類似の写真があります。 http://10.pro.tok2.com/~yamaasobi/kinoko/20040908k/20040908k.html
ついでに、サヌキイラガツブタケも怪しい気がしています。
もしかしら違うかもしれませんが、ignatiusさんの標本箱の不明種も関係があるかもしれません。 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ignatius/pages6/humei14.htm
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No.175 投稿者:K.Y 投稿日:2018年10月15日 (月) 21時49分 |
ちなみに、Cordyceps memorabilisがコナサナギタケのテレオモルフという報告がありますが、個人的には少々疑問があります。 (下記ResearchGateのDownload full-text PDFで閲覧できます。ResearchGateは研究者向けのSNSです https://www.researchgate.net/publication/234027647_Paecilomyces_farinosusthe_conidial_state_of_Cordyceps_memorabilis) 肝心な分離に用いたテレオモルフの形態は、別の論文に載っています。 https://www.researchgate.net/publication/233319103_Interessanti_funghi_entomogeni_italiani_I_Paecilomyces_fumoso-roseus_Cordyceps_memorabilis
図を見るとわかるように、ハリタケ型で裸型の子嚢殻をまばらに形成する種で、日本産のコナサナギタケのテレオモルフ?とは 形態が全く異なります。 ignatiusさんがtwitter上でCordyceps memorabilis(当時はRacemella memorabilis)の原記載論文を引用されていますが、 https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=mdp.39015052512855;view=1up;seq=7 図から、やはりハリタケ型の虫草であることがわかります。
ここからは個人的な憶測ですが、ヨーロッパで現在Ophiocordyceps superficialisとされている虫草(例えば下記サイトの虫草)と Cordyceps memorabilisは同種なのではないかと考えています。 http://www.pharmanatur.com/Mycologie/Clavicipitaceae/Cordyceps%20superficialis.htm 形態的にCordyceps memorabilisはウスイロヒメフトバリタケやミヤマムシタケに近いOphiocordycepsに見えます。 2番目の論文には甲虫の幼虫が宿主とあり、memorabilisの原記載の図の宿主の頭部はいかにもゴミムシの幼虫らしい外見をしています。
ではなぜOphiocordycepsに見えるCordyceps memorabilisを分離培養してIsaria型アナモルフが形成されたのか、という疑問が残りますが… コンタミくらいしか原因が思いつきません…
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No.176 投稿者:K.Y 投稿日:2018年10月15日 (月) 22時03分 |
そういえば、台湾から記載されたボウキョウムシタケCordyceps bokyoensisも、話題になっているコナサナギタケのテレオモルフ?とそっくりです。 原記載: http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_058_221_224.pdf 原色冬虫夏草図鑑ではストローマが白色とありますが、間違いです。
発見者である小林義雄博士が著した「世界の菌類図譜」という本に、ボウキョウムシタケの原色写真があります(写真)。 線画と写真の個体は同一のようなので、タイプ標本の写真とみて間違いなさそうです。 アナモルフの線画はIsariaには見えませんが、末期の小林博士の論文は図が粗末なので正確な情報を得るには標本を見るしかなさそうです。
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No.177 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月15日 (月) 22時24分 |
K.Yさん、さっそくありがとうございます。 確認しましたが、会誌22号は黄色タイプのようですね。 29号のはよく似ています。 山荘主人様のサイトのは多分今回のもと同じでしょう。 うちのサイトのも怪しいですが、分生子がちょっと違うような? もっとも採集した段階で古くなっていました。一応画像をあげておきます。 I.farinosaの有性時代とされるC.memorabilisも一応確認しましたが、橙赤褐色で裸生のようですね。 https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=mdp.39015052512855;view=1up;seq=7 P65に記載文、P110に図版
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No.178 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月15日 (月) 22時41分 |
すみません、投稿のタイミングがずれてしまいました。 原記載の図版の宿主は確かにゴミムシの仲間のようですね。 http://www.pharmanatur.com/Mycologie/Clavicipitaceae/Cordyceps%20superficialis.htmの写真提供者の別サイトに小林論文を参考に同定したような記述があったので、単なる同定まちがいでしょう。 C.memorabilisとは子嚢殻の色や形が違うようです。 ともかく、C.memorabilisがコナサナギの有性時代というのはやはり怪しそうですね。
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No.180 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月15日 (月) 23時17分 |
ボウキョウムシタケ、確かに似ていますね。分生子柄の図はともかく、分生子はコナサナギタケと同じようです。二次胞子もサナギタケの仲間によくあるタイプです。 ついでにI.farinosaを調べてみたのですが、原記載の画像と英訳が載ったサイトをみつけました。図版をみるとハナサナギタケのようで、どうもコナサナギタケのようには見えません。こうなるとコナサナギタケの定義が怪しくなりそうです。 http://www.plantpath.cornell.edu/CUPpages/Isaria.html
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No.181 投稿者:K.Y 投稿日:2018年10月16日 (火) 00時13分 |
このサイトは初めて知りました。ありがとうございます。
たしかに、樹枝状に分岐している点はハナサナギタケ的です。
このHolmskjoldの図が、Isaria farinosaのレクトタイプに指定されているようですね。 Hodge KT, Gams W, Samson RA, Korf RP, Seifert KA. (2005) Lectotypification and status of Isaria Pers.: Fr. Taxon 54: 485–489.
一方、Hodgeは同時に、新たに標本CBS 6586をエピタイプに指定しています。 HodgeはCBS 6586がレクトタイプと共通の特徴を有していると判断してエピタイプ指定したのだと思いますが、CBS 6586から分離培養された株 CBS 111113は明らかにハナサナギタケtenuipesとは異なる系統的位置に位置しています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5729716/pdf/ima-8-335.pdf
つまり、レクトタイプはハナサナギタケのようだが、エピタイプ選定時にtenuipesではない種を選んだ可能性がありますね。 かといって図からは証明はできないので、解決は難しそうです。 幸い?farinosaをタイプとしていたIsariaはCordycepsのシノニムになったので、属レベルの混乱が生じることはなさそうです。
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No.182 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月16日 (火) 09時15分 |
つまりこういう解釈でいいんでしょうか? Holmskjoldが1781年にハナサナギタケと思われる標本を元にRamaria farinosaを記載発表した。(後にIsaria属に移行) しかしいつの間にかI.farinosaという名は現在のコナサナギタケの特徴を持つ分類群を指すように変わっていた。 発表時に正基準標本(ホロタイプ)が指定されていなかったか、所在不明だったので2005年にHodgeらが原記載の図をタイプとして指定した。(レクトタイプ) 同時にこの分類群の特徴を反映する標本として標本CBS 6586を指定した。(エピタイプ) しかしこの標本は現在のコナサナギタケの特徴を持つ標本だった。 そうすると原記載の内容から柄が赤いタイプと黄色いタイプのどちらが本物のコナサナギタケを推定するのは無意味ということになりますね。 今のところはこれがコナサナギタケのテレオモルフとアナモルフとしてよさそうですね。学名はCordyceps farinosaでいいのでしょう。
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No.183 投稿者:元N嶋 投稿日:2018年10月17日 (水) 14時06分 |
途中から失礼します。 とてもお見せするような画像ではないのですが、該当画像が出てきました。 2003年のものです。
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No.184 投稿者:山鳥 投稿日:2018年10月17日 (水) 18時38分 |
元N嶋さん、こんばんは、 画像提供、ありがとうございました。
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No.185 投稿者:ignatius 投稿日:2018年10月17日 (水) 20時19分 |
元N嶋さん、ありがとうございます。色(オレンジというよりサーモン・ピンク)や子嚢殻が裸生っぽいところなど、よく似ています。多分同種でしょう。
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No.186 投稿者:K.Y 投稿日:2018年10月17日 (水) 21時28分 |
No.182にignatiusさんが投稿された内容は現状を端的に表していると思います。 エピタイプの形態的特徴が気になるところです。
元N嶋さんの写真も興味深いです。 なぜコナサナギタケのテレオモルフ?のストローマはアナモルフに覆われてしまう ことが多いのか、不思議です。 あるいは、Ophiocordycipitaceaeに多い、アナモルフを先に形成して、あとから 内側からテレオモルフが成熟してくるタイプなのかもしれません。
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No.187 投稿者:元N嶋 投稿日:2018年10月18日 (木) 13時14分 |
皆様、コメントをありがとうございます。 発生時期を見たら10月で、季節的にも同じでした。 アナモルフに覆われているのは、成熟の仕方が関係するかも知れないのですね。テレオモルフを生じる環境がいまひとつだったのだとばかり思っていました。ちょうど今の時期ですし、また出会えるといいです。
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