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[20] 投稿者:圭 - またまた保守〜 RES


本当に、折角借りた掲示板なので、またも保守のために書き込みました〜
本当にお気軽にコメントを残して下さいませ
出来る限り返信しますので

2009年11月10日 (火) 11時31分

[19] 投稿者:圭 - 保守〜 RES


 この掲示板も使わないまま放置状態ですが、解約してしまうのも勿体無くて。
 そんな訳で、保守の為の書き込みでした〜

2009年04月18日 (土) 17時31分

[17] 投稿者:麗華 - お久しぶりです RES


 覚えてますでしょうか?その節は大変お世話になりました。そして、大変ご迷惑をお掛けし、申し訳ないと思っております。もっと周りにも目を向けなければいけないと反省しました。
 しかし記事を見て心配になり、ご迷惑を承知で書き込みをしました。その後、体調の方は快方に向かっているでしょうか?本当に心配です。特に眼のこととなると一際です。無理なさらず、ご自身を優先にしてくださいね。
 小説、ようやく二人の想いが通じ合い本当に良かったです。でも、圭と瑛様にはまだまだ問題が残されてそうですね。二人が心から一緒にいられる日が早く訪れるように願って止みません。
 これからも応援してます。残暑厳しいですが、お身体に気を付けてくださいね!それでは……。

2008年09月09日 (火) 09時51分

[18] 投稿者:圭 - いらっしゃいませ


麗華様
 お久し振りです。
 ご心配下さり、有難う御座います。
 原因は不明なのですが、多分、目の疲労が原因だろうという、その程度の物なのですが、一時は右眼全体に黒いモヤが掛かったようになり、不自由な日々でした。今はそのモヤも大分取れて、目の前に外れた付け睫が引っかかっている程度に減りました。
 ご心配掛けてすみません。どうやら次回の更新も出来そうです。

 それから、迷惑だなんてとんでもないです。毎回ご感想を下さっていた事、感謝しております。それがどれほど次の更新の力になっていたか判りません。
 ただ、麗華様の折角のご好意が、サイトのシステム上の荒し行為として認識されてしまうのが、残念であり、申し訳なかったものですから。
 ですから、宜しければまた、このBBSにでも、メッセージを頂ければ幸いです。
 本当に、お気になさらないで下さい。

 お話の方はまた波乱含みの展開になりそうで、そこを書き手としてどう乗り切るか、という状態です。
 今後とも宜しくお願いいたしますね。
 麗華様も、季節の変わり目は体調も崩し勝ちですので、どうかご自愛下さい。
 執筆も頑張ってくださいね。

 書き込み、有難う御座いました。

2008年09月10日 (水) 00時45分

[15] 投稿者:恭 - 感想を… RES


今週も読ませていただきました。更新お疲れさまです。小説を読んだ後にブログのほうもチェックしてるのですが、先週は見逃していたようです。私も今まで通りの更新ペースでよいと思っています。絡みのシーンが分割されるのは、さほど気になりませんし。(って、今更な意見ですが…)
噛み痕については、もっとひどい事になるのではとアワアワしてましたので、瑛様の嫉妬心を煽ったスパイスであったのなら『怖い思いした甲斐あったね、圭ちゃんww』ってなもんです。
月曜日は仕事始めで毎週アガらなかったのですが、更新日という楽しみができました。
執筆応援しております(^-^)

2008年08月04日 (月) 23時31分

[16] 投稿者:圭 - いらっしゃいませ


恭様

 メッセージを有難う御座います。
 今までも一晩の出来事を分割したりして、もしかしたら読み難い、あるいは次を待つ間に興味が少し冷めてしまうという事があるのでは、と気にしていたので、気にならないと仰っていただけて、少し安心しました。
 噛み傷が付けられた話は、瑛の「自分がこんなに嫉妬深い性格だとは思わなかった」という台詞をどうしても入れたかったんです。長々と書いてきて、やっと初めて瑛が本心を言葉にしたシーンでしたので。
 今後も、徐々に瑛が心の中のことを言葉にして行きます。第一部で撒き散らした片付いていない諸々も、少しずつ明らかになる予定です。
 出来る限り今の更新ペースを守ろうと思っておりますので、今後とも宜しくお願いいたします。

2008年08月07日 (木) 00時40分

[14] 投稿者:圭 - BBS設置 RES


ちょっと思い立って、BBSを設置してみました。
……というか、他の目的に使用していたBBSを、ちょっと別の使い方にしてみた、とも言うけれど。
宜しければ、何か一言コメントを残していって下さいませ。

追記:ちょっと過去記事に、他の書き込みが残っていますが、もともとの使用目的のままに残っているだけでして……。
いずれ、何処かへ移動させる予定ですので、お気になさらず書きこんでくださいませ。

2008年07月20日 (日) 15時36分

[9] 投稿者:宵 - 旅 RES


 休日の穏やかな午後。
 朝昼兼用のような食事の後のコーヒーを入れて、私の指定席のようになっている椅子へと。開け放した窓からは、心地良い初夏の風が流れ込んでくる。
 椅子から手を伸ばせば届くテーブルにカップを置き、代わりに傍に積んであった数冊の本を取り上げた。これは昨日の仕事帰りに立ち寄った書店で購入した、ミステリー。
 パラパラと捲ってみて、これから読む一冊を決めた。孤島の館で起こる、所謂『雪の山荘』物。
 読まないと決めた本をテーブルに戻し、コーヒーを一口。これから起こる事件に、緊張を孕んだドキドキを抑え、改めて最初の1ページを開く。
 さあ、物語の世界へ……。

 これが私の、ささやかな小旅行。

****************************

 そういえば、最近旅行にも行っていないなと思いながら書きました。
 子供の頃から大好きだった、本当にささやかな空想世界への旅行の扉は、本の表紙という事で……。

2006年10月05日 (木) 00時18分

[10] 投稿者:宵 - 音


 何度目かに目覚めた時、朝までは時間がありそうだし、今のうちに一度トイレに行っておこうと思い、身を起こした。早春の中国地方はまだ寒く、足が冷え切っていたのを覚えている。
 起き上がり、ガウン代わりのブルゾンを着込んでいる気配で、隣に寝ていた母が目覚め、『どうしたの?』と問い掛けてきた。『トイレ』『寒いから気をつけて』程度に言葉を交わした。
 部屋は廊下側から見て縦長の造りで、奥は障子で仕切られ、その向こう側には僅かな板張りのスペースがあり、小さな洗面と、小さなテーブルと椅子が置かれている、良くある旅館の一室だった。当然、この板張りの部分は部屋ごとに独立している。
 室内にトイレは無く、廊下に出て全室共用のトイレまで行かねばならない。幸いそれは部屋から近く、往復にさほどの時間を要しなかった。
 部屋に戻り、まだ起きていた母と、また二言、三言交わしながら布団に潜り込み、目を閉じた直後、それは始まった。
 最初は遠くから響いてくる、シャラーン、というお遍路さんの杖の音だった。こんな深夜に、まだ歩き続けているお遍路さんがいるのだろうかと、漠然と思った。
 シャラーン、シャラーン、と鳴る杖の音が近づいてくるにつれて、その音の方向に違和感を覚えた。
 この宿は道沿いにあり、廊下側が道に面しており、反対側は海だった筈。しかし、音は海側から響いてくる。海岸の砂浜を歩いているのだろうかと思い始めた頃、新たな音が加わった。何人もの足が床を踏み、軋ませる音である。
 いまや盛大になった杖の音に、床が軋むギッ、ギッという音が混じる。それはかなりの人数で、こんな時間にお遍路さんが? というレベルではなかった。音は段々と近づいてきて、障子一枚向こう側の、板張り部分を通り過ぎて行った。
 一度遠ざかった音は、宿の端まで辿り着くと折り返してきて、またこの部屋の板張りを通る。反対側に行き着くと、また戻ってきて……。果たして何往復、此処を通り過ぎたのだろうか。いつしか足音が遠ざかり、杖の音も消えていった。

 翌朝、その話をした私に、母は『何のこと?』と言った。聞こえなかったらしい。

*****************************

 季節先取りの怪談話です。
 全て実話。

2006年10月05日 (木) 00時20分

[11] 投稿者:宵 - 笑


「気分はどう?」
「今日はお天気も良いし、窓を開けていられるから、そんなに悪くない」
 久し振りに友人の病室を訪れた私を、彼女は疲れたような笑みで迎えた。
 ふっくらとした桃色の頬。一見、健康そうな見た目は、薬の副作用による顔の腫れと、慢性的な発熱による赤みだった。よいしょ、と自分に掛け声をかけて身を起こす彼女に、無理をしなくて良いと言うと、重病人じゃないんだから、と笑った。冬の午後の日差しが窓から射し込み、室内は明るくほっかりとしていた。
 ベッドサイドの小さなテーブルには、気分の良い時の気晴らし・暇つぶし用の遊び道具が置かれており、それは訪れるたびに少しずつ変化していた。
 そんなもの達の中に、クッキーでも入っていたのであろう缶がちょこんと置かれている。蓋を取ると、中には沢山の小さな白い折鶴が入っている。その中に、ところどころに赤い鶴が混ざっているのが見える。更に良く見ると、その紙には鶴を折るため以外についた折跡があるのが分かる。
「随分溜まったね……」
「うん。……でも、最近少しずつ赤い鶴が減ってきているの」
 彼女は缶に手を伸ばし、戯れるように指先でかき回して、少し嬉しそうに笑った。
 この鶴は、彼女が服用した薬の薬包紙で出来ている。赤いのは頓服が包まれていた物。最近は頓服に頼る回数が減っている、という事か。
 薬を飲み続ける日が一月ほども続いた後、暇潰しのように始められた折鶴作りは、もう三月ほどにもなる。毎食後に増えて行く白い鶴と、高熱の回数を数える赤い鶴は、既に百羽を越えただろう。
「この鶴、千羽鶴にはならずに終わりそう……」
 指先に一羽の鶴を摘んだまま、彼女は悪戯っぽく笑った。
「え?」
「この間の検査で、かなり通常値に戻って来ているって……」
「おめでとう。良かったね」
「季節が変わったら、外に出られるようになるかな……」
 そう言って、彼女は窓の外に目を向け、嬉しそうに微笑んだ。

 立春も過ぎた、穏やかな日の事だった。

2006年10月05日 (木) 00時21分

[1] 投稿者:宵 - 指から始まる7つのストーリー RES


1.隠れた指

2.指さす先に

3.指の震え

4.指がなぞるもの

5.袖を引く指

6.凍える指先

7.指きり

お題配布>>>『くじらのゆりかご』様
http://www.realintegrity.net/~ichikusa/

2006年04月17日 (月) 10時22分

[2] 投稿者:宵 - 1:隠れた指


「またお目にかかれるのを、心待ちにいたしております」
 営業用の口調。深々と下げた頭。店に来た客を見送る時に繰り返される、儀礼的な行動。
 けれど、密やかに、私は彼を愛していた。心から、彼にまた会える日を心待ちにしていた。過去形で語るしかないのが悲しいけれど。
 もう二度とお目にかかることも無いでしょう。私は貴方の前から消えようと決心しました。
 こうして貴方の背中を見送る今も、貴方の事が恋しくてなりません。けれど、貴方が他の誰かを愛する姿を、これ以上見詰めている事は私には出来ません。
 さようなら……心から愛した人……。

 扉が閉まる音が聞こえた。最後の糸の切れる音も、一緒に聞こえたような気がした。
 私は一人、そっと自分の身体を抱き締めてみる。私の身体の何処かに、彼が過日触れた温もりが残っているんじゃないかと、そんな期待を込めて……。
 指先は服の中へと忍び込んで、飢えたように温もりの残骸を探し続けた。
 そんな物など無いと、心では分かっているのに……。

2006年04月17日 (月) 10時24分

[3] 投稿者:宵 - 2:指さす先に


 周囲には濃密な乳白色の霧が立ち込めていた。足元はおろか、行く先を探るように伸ばした指先すら見えないほどに、視界は閉ざされている。
 身に纏ったものは全て湿気を含み、重く肌に纏わり着いて不快だった。
 俺は方向感覚を失ったまま、無限とも思えるミルク色の空間を、主観的に前方と思われる方向へと歩き続けていた。

 ここは一体何処なのだろう。

 俺は確か戦場にいた筈なのだ。
 小国同士がひしめき合う辺境。それぞれの国家がそれぞれの思惑で、しかし、結局は統一国家を造る事が、この地に暫定的な平和をもたらすと、協定を結んでは破棄し、小競り合いを続けていた。
 俺は傭兵としてその戦いに身を投じ、山脈に囲まれた美しい湖の辺に首都をもつ国の、若き君主に仕えていた。隣国が最近勢力を伸ばしてきた北方の国の軍隊に首都を奪われ、首都の奪回と交換条件に、我が国の支配下に入るという申し入れを受けて、君主が軍を派遣する事を決め……俺はその戦いに参戦していたのだ。
 馬の蹄の音、剣戟の響き、空気を切り裂く矢音……そして怒号と悲鳴……。その中を、俺は小隊を率い、愛剣を手に向かってくる敵兵を切り伏せながら馬で駆け抜けていた。大切な人の隊が危機に瀕しているという情報を聞いて、居ても立ってもいられなくなったから。その判断が、戦いの大局にあって正しいかなんて、関係なかった。ただ、彼を死なせたくない一心で馬を駆った。
 剣は既に血と油で殆ど役立たずになっており、ただ、鉄の棒で相手を叩き伏せるだけのような物だったが、それなりの重さのある金属で殴られればかなりのダメージになる。俺は敵兵の肩や腕を狙って剣を振り下ろし、戦闘不能状態にしていった。漸く彼の姿を乱戦の中に見出した。彼もまた斬れなくなった大刀を振り回しては、敵兵を叩き伏せていた。俺が彼の名を叫ぼうとした刹那、飛来した矢が彼の胸に突き刺さった。一瞬信じられないような表情を浮かべたところに、次々と矢が飛来しては、彼に突き刺さって行く。彼の身体はゆっくりと倒れて行った。
 俺の口からは悲鳴が迸ったのだろうか……。そんなことすら覚えていない。ただ……彼を倒した矢が今度は俺の馬に集中し、俺は苦痛で暴れた馬の背から振り落とされて、地面に……叩きつけられた筈なのだ。

 落馬したのなら、かなりのダメージがあるだろうが、俺は苦痛を何も感じていなかった。ただ、重たく湿った服と装備が気持ち悪いだけだった。
 気付けば、周囲を取り巻く霧が暗くなりつつある。こんな場所でも時間が流れており、日没が近いのかもしれない。闇が訪れたら、身動きが取れなくなる。俺は疲弊した身体に鞭打つように、歩く速度を速めた。
 闇は急激に落ちてきた。取り敢えずでも良い。一夜を過ごせる場所を確保しようと、俺は焦りを覚え始めていた。
 不意に視線の片隅に、仄かに光る物を見た気がした。それは誰かが点した灯なのか……そうだとして、その誰かが俺に敵対する者ではないのか……。これは賭けだと思いながら、俺は剣を握り締め、その光に向かって歩き始めた。
 光は小さな洞窟の入り口から奥へと誘うように灯されていた。中にいる人間の気配を窺うように、息を殺し入り口に近づいてみる。
「お入り」
 掠れた女性の声が中から響く。敵意は無さそうだ。
「そんなに警戒せずとも、私は戦う気は無い」
 更にその女性の声が促す。俺は完全に警戒を解いたわけではないが、それでもこの洞窟の片隅にでも今宵一夜の居場所を借りようと、ゆっくりと中へと歩を進めた。
 洞窟の中は思っていたより広く……というより、何かの結界が張られた別の次元のようだった。あれだけ濃密だった霧の湿気もなく、仄かな温かみを帯びた空気が満ちている。暫く歩くと、そこは広い部屋のようになっていた。
 その中心に、小柄な女性が蹲るように座っている。彼女が先刻の声の主か。目を凝らして見ても、彼女の姿がはっきりとは掴めない。若いようでいて、また老婆のようでもあり……一つの姿の中に何人もの女性が重なっているような、といえば一番イメージに近いか。
「こんな場所に、どうやって入り込んだ?」
 女性の唇が動いて言葉を紡ぐ。
「戦場で落馬して、気付いたら外の霧の中にいた。それより、此処は何処なんだ」
 俺は一番聞きたかった事を口にする。
「此処? さあ。何処だろうね。ちょっとした空間のひずみの中に出来た、時間すら捩れたおまけのような空間、とでも言っておこうかね?」
 言葉を紡いだ紅唇が、妖艶な笑みを刻む。
「元の世界に戻りたい。どうしたら戻れる?」
「元の世界? 戻るのは造作も無い事。そこに並ぶ扉の、どれでも好きな物を開けば良い。但し……どの時間軸の、どの場所に出るかは運次第。それは私には分からない事」
 女性が背後を指差す先には、今まで無かった筈の扉が、幾つか並んでいた。
「そうか……それでは、これで失礼する」
 俺はその空間を突っ切り、直感的に選んだ左から3つ目の扉へと歩き始めた。
「せっかちな事。少し休んで、ゆっくり考えてから行けば良い物を……」
 クッと喉奥で女性が笑う。
「大切な奴が死に掛けているかもしれない。助けたいんだ」
 俺は答えて、選んだ扉に手を掛けた。
「大切な奴? 恋人か?」
 揶揄うような声が、俺の背に掛けられた。
「恋人より大切な存在だ」
「まあ、そういう事にしておこうかね」
 女性の掠れた笑い声を振り切るように、俺は扉を開いた。


………………………………………………………………………………………
 ちょっとヒロイック・ファンタジー風にしてみました。
 開いた扉の先が何処に繋がっていたのかは、わざと答えを出さないままにしてみたのですが、如何でしょう


2006年04月17日 (月) 10時25分

[4] 投稿者:宵 - 3:指の震え


 現在、室内に流れているのは……ラフマニノフの前奏曲か……。よく知っているメロディーを、無意識に追いそうになり、僕は無理やり頭の中からそれを閉め出す。他人が弾いている曲を聴いてしまうと、僕の神経が疲れてしまうのだ。
 僕は幾度目かの深呼吸をすると目を閉じて、同級生の弾くラフマニノフを頭上に聞き流しながら、大好きな歌手の歌を頭の中で再生する。
 僕の順番まで、あと3人。
 そして、これは実技試験の度に繰り返される、僕なりの手順なのだ。
 頭の中で再生していた曲が終わった。室内に流れるのは、ベートーヴェンを経て、シューマンに変わっていた。弾いた事のある曲を、指が思い出して動き出そうとするのを押し止め、またお気に入りの曲を、今度は少しだけシューマンを意識したまま、頭の中に流す。
 自分の弾く曲の事など、一切考えない。考えたら、多分悪い方へと想像が行ってしまう。
 遠くに聞こえていた曲が、試験官の声で止まる。持ち時間終了か……。僕はゆっくりと目を開いて、席を立つ。次は僕が弾く番。
 名前が呼ばれたのに返事をして、試験官達が並んでいる前のグランドピアノへと向かう。既に僕の持ち時間はカウントされている筈。手早く椅子の高さを一番高いところまで引き上げ、座る。何時見てもつまらなそうな顔の試験官達の、ずっと向こうで、僕の少し後に弾く女子が、空いたスペースを使って柔軟体操中だった。
 ふぅ、と深く息を吐き、最初のユニゾンでの3連符を弾くためのポジションに、指を形作る。
 緊張で指が震え、鍵盤に触れた爪の先がカチカチと硬質な音を立てた。
 意を決するように、鍵を沈める。繊細なピアノでの3連符、それに続くフォルテでの和音のジャンプと、急き立てられるようなメロディーの提示。
 上手く行った。
 曲の大部分は、弾き始めでどれだけ聴き手を引きつけられるかで決まるという。
 いきなりのピアノでの速い3連符は、緊張に強張る指にはかなりの難関である。音がきちんと鳴らなかったり、デコボコとした感じになったり、リズムが狂ったり……。
 その部分を無難に過ぎた僕は、急き込むような左手の和音に乗せた、音の急降下を奏でる。大丈夫……もう大丈夫だ……と、何の根拠も無く自分に言い聞かせる。
 やがて、曲想はガラリと変化して、分散和音に乗せた華やかなパートに入る。腕をリラックスさせてアルペジオを刻みながら、僕はすっかり曲の中に意識を溶け込ませていた。
 もう、指の震えは止まっていた。


……………………………………………………………………………………

 懐かしい学生時代の、実技試験の一コマでした。
 どうやって自分をリラックスさせるか、人それぞれですが、『絶対に、他人の曲は聴かない』というのは、共通項のようです。
 私自身は、この物語の通り、他のメロディーを頭の中に流す事で、意識を切っていました。


2006年04月17日 (月) 10時26分

[5] 投稿者:宵 - 4:指がなぞるもの


 帰宅して、何時もの条件反射のようにポストを覗くと、一枚の葉書が入っていた。誰からの物とも確かめずポストから取り上げて、家へと入る。
 今時、葉書で寄越すような用件は急ぎではないだろうと決め付けて、それを照明を点けながらリビングのテーブルに置くと、私は着替えるためにベッドルームへと入った。窮屈な、仕事用の服を脱ぎ捨て、部屋着に着替えてリビングへ戻り、改めて取り上げて見た。
 どんな顔をして買ったのだろう、と思うような可愛らしい絵葉書に、季節の挨拶と、転勤が決まって名古屋へ行く、という近況報告、それに、『元気?』と私の近況を問う言葉が、懐かしい、右肩上がりの少し筆圧の強い癖のある文字で綴られていた。
 私が幾つになっても子供っぽいキャラクターグッズが好きだったのを、今でも覚えていたの? こんな可愛らしい、ウサギの絵葉書なんて……。どんな顔をして買ったの? 昔のように、自分の使う文房具を買うついでに、誰かへのプレゼントも買うんだ、というように、『これは、ちょっと別に包んでください』なんて言ったの? 本当は、自分が使う為の文房具だって、今すぐ必要な物じゃないのよね?
 仕事、頑張っているのね。名古屋へ行くのか……。水が変わって体調を崩さないようにね。あなたはお腹が弱いのだから。
 私は相変わらず。元気で過ごしている。


 私の指先は、懐かしい文字をゆっくりと辿っていた。
 あの頃と全然変わらない文字……。
 この葉書を書いている間、私のことを考えていてくれたのね。それだけで嬉しいと思うなんて、馬鹿みたい?


 でもね、今でもあなたのこと、好きなんだから仕方ないじゃない。


……………………………………………………………………………………

 転勤の季節ですね。
 ご主人の転勤で、仕事を辞めた方の穴埋めに、忙しい日々を送る中で出来た物語です。
 この二人、昔も『恋人』と呼べるほどの関係ではなかったのかもしれないと思いながら、書いてみました。

2006年04月17日 (月) 10時27分

[6] 投稿者:宵 - 5:袖を引く指


 薄っすらと開いた目に、一番最初に飛び込んできたのは、今にも泣き出しそうな、不安に満ちた顔だった。
 何がそんなに悲しいんだ? 泣くなよ。良い歳をした、むさくるしい男が泣いたって、可愛くないぞ。
 急速に意識がはっきりするのと同時に、全身を苛む痛みもまた明確になり、その激痛に俺は堪え切れなかったうめき声を上げていた。痛い……とにかく全身が切り裂かれるように痛い……。感覚の全てが苦痛一色に染め上げられて行くようだった。
「目、覚めたか?」
 俺を覗き込んでいた不安そうな顔が、僅かな安堵を無精ひげの伸びた口元に滲ませながら、静かに問い掛けてきた。
「ここは? 俺、どうしたんだ?」
 記憶の断片が頭の中を次々と過ぎり、状況が飲み込めないままに言葉を紡いだ。
「ここは、湖畔の城の一室だ。今回の戦いでの負傷者が多くて、医務室に入りきらないので、とにかく空いている部屋に放り込まれた。お前もその一人だよ。お前は全身に矢を受けて倒れたんだ。覚えていないのか?」
 説明されて、漸く状況を理解する。そうか……俺は戦場で矢の標的にされたんだ。胸に刺さった矢を抜こうとした刹那、一気に射掛けられて……。
「助かったのか……」
 あの時、最後の一瞬で死を覚悟した。遠退く意識の中、このままこの世とはオサラバだと思ったのだった。
「運が良かったのさ。一方的に押されて、もうダメだと諦めた時、漸く援軍が来た。それで、恒例の戦争ごっこもお開きとなったって事らしい」
 そう。この辺境に於いては、小競り合いは日常茶飯事、何処かの勢力が伸びそうになると、一応叩いて戦力を殺ぎ、また自分の国が勢力を伸ばしそうになれば、他のどこかの国に叩かれる。こんな事をしているから、一向に統一へ向けての会議も進展しなければ、中央の強国に攻め込まれては滅亡したりしているのだ。本当に愚かしい。
「お前が……あの戦場から助け出してくれたのか?」
 最後に、馬で駆け寄ってくるこいつの声で、名を呼ばれたような気がしていたので、尋ねてみる。
「いや……俺は結局お前のところには辿り着けなかったんだ」
 この話はまた他の時にな、と奴は笑ったので、俺もそれ以上詮索しなかった。
「お互い、生きていられて良かったな。まあ、生きているからとは言え、この痛みはどうにかして欲しいが……」
 どれだけの矢がこの身に刺さったのかは知らないが、今までどうやって眠っていたのか想像がつかないほどに、痛みは酷くなっていた。
「お前が生きていてくれて、本当に良かった。俺の背を安心して任せられるのは、お前だけだからな」
 奴が、傭兵同士に於いては恐らく最高の褒め言葉を口にした。
 突然の裏切り、技量の低さ、そういう奴が背後にいたら、幾つ命があっても足りる訳がない。背を任せられるというのは、全幅の信頼が置けるという事なのだ。
「ああ、俺の背を任せられるのも、お前だけだろうな」
 お世辞でも、この場の成り行きの同意でもない、俺の本音を口にすると、奴は極上の笑みを浮かべた。
「また、一緒に戦えるな」
「ああ……」
 笑いあった筈が、俺の笑みは苦痛で歪んでいたらしい。奴は医師を呼んでくるといって、部屋を飛び出した。間もなく来てくれた医師に、薬を処方され、タイミング良く運び込まれたスープを口にした後、その鎮痛剤を飲み込んだ。余程強力な鎮痛剤と見えて、直ぐに意識がぼんやりとしてくる。そんな俺を見て遠慮したのか、奴が席をはずそうとした。その服を力の入らない手で掴んだ。
「何だ?」
 突然の俺の行動に戸惑ったか、奴は其処に立ったまま俺を覗き込んだ。
「もうちょっとだけ……眠るまでで良いから、此処にいてくれよ。俺が死んでしまわないように、見ていてくれ……」
 朦朧とする思考力が、思いもかけないことを俺に言わせた。奴は頷いてまた俺を覗き込み……。
「死にそうになったら呼ぶから、ちゃんと戻って来いよ」
「ああ……」
 奴の言葉に安堵して、俺は一言だけ返事をして、そのまま深い眠りへと落ちて行った。


………………………………………………………………………………

 お題『指さす先に』の二人の、その後のお話です。
 今回は矢を受けて倒れた方の彼の視点で展開してみました。
 この通り、異次元へ飛ばされた方も、無事にこの世界に戻ってきたようです。
 今回のテーマは、身体が弱っていると、誰だって心も弱くなるよね、という事で。病気の時、誰かが側にいてくれるだけで、なんだか安心できる、そんな感じのお話を目指して見ました。
 それより……そろそろ彼らの名前を決めてあげないと…。

2006年04月17日 (月) 10時28分

[7] 投稿者:宵 - 6:凍える指先


 決行時刻まで、あと30分。
 腕の時計を確認して、再び視線をセレモニーの行われる広場に設けられたステージに戻す。30分後、クリスマスイベントのスペシャルゲストとして其処に立つ予定の男が、今日の俺の標的。そして多分、俺にとって生涯最後の標的になる筈だ。
 俺は自分の身体の一部のように感じられるまでになった愛用のライフルを抱いたまま、緊張と気温とで冷え切った指先に息を吹きかけた。ほんのりとした温もりが指先を温もらせ、また直ぐに氷の冷たさへと戻って行く。
 見詰めている広場は既に観衆に埋め尽くされていた。
 30分後……いや、もう25分後か。この場所からクーデターが起こる事を知っているのは、あの中の何人ほどだろうか。


 俺は裏社会で生きてきたスナイパーだった。この技術一つで稼ぎ、生き抜いてきた。しかし、とんだところで踏んだドジが元で捕まり、獄中生活を強いられる事になった。そんな俺の房の前に、青年将校二人が立ったのは、つい十日ほども前だったか。彼らの目的は、軍を私物化して独裁者の暗殺依頼だった。
 俺に対する報酬は、この獄からの解放という自由と、パスポート、それに当面生活するのに困らないように、どこの国でも換金可能な金塊が一つ。悪くない条件というよりも、断れば、クーデターに関する極秘情報を知ってしまった犯罪者など、闇の中での死しか残されていないだろう。
 そんなあまりにも不利な交渉に、俺は一つの条件を持ち出した。それは、もう一人分のパスポートの用意と、それを持つべき人物を呼び寄せる事。彼らはその条件にOKを出し、かくして俺はこの真冬の寒空の下、広場を見下ろす教会の鐘楼に、たった一発の弾丸を込めて返却されたライフルを抱いて、蹲っている。分厚い上着を着込んでも、真冬の空気は全身を凍りつかせ、指先の感覚を奪って行く。


 この仕事が終わったら、もう一人のパスポートの主である彼女とこの国を脱出して……。どこかの鄙びた町で、畑を耕す生活をするのも良いかも知れない。日々の天気に一喜一憂して、子供が出来たら親馬鹿オヤジになって……。
 彼女は一緒に来てくれるだろうか……。俺の血塗れた手など、嫌うだろうか……。


 そんな事を考えているうちに時間は過ぎて行き、決行までほんの数分を残すのみとなった。
 俺はライフルの銃身を抱いて体温で暖めながら、指先に息を吹きかけては擦り合わせ、少しでも体温を取り戻そうとしていた。
 少し早めに、セレモニーを取り仕切る司会者がステージに上がった。そのステージの後方に、一塊の軍服の一団が見える。その中心にいて、周囲をしっかりとガードされているのが、今日の標的の独裁者だろう。俺は深く息を吐きながら、ライフルを構えた。風は微風。弾が大きく流される事は無いだろう。
 司会者が何か身振り手振りを交えて話しているが、此処まではその声は届かない。無音のドラマはクライマックスを迎え、観客達がうねるようにざわめく中、ステージ後方の軍服の一団が動き出す。司会者の手が其方を指すようにゆっくりと滑らされ、その動きに促されるように、豪奢な軍服に身を包んだ恰幅の良い男がステージに上がった。
 決行だ! それを促すように、時を告げる教会の鐘が盛大に鳴り響く。
 俺は肩でライフルの銃身を安定させて狙いをつけると、鐘の音に紛れさせるように静かに引き金を引いた。身体を突き飛ばされるような衝撃が肩に来て、俺の視線の遥か彼方で標的が身体を折るのが見えた。そして、其処をめがけて一気にステージに駆け上がって行く、クーデター参加者と、先刻の護衛兵達。
 此処からではその怪我の状況はわからない。そんな事はもうどうでも良い。
 俺は長年愛用したライフルをその場所に放り出し、代わりに青年将校が用意してくれた、金塊やパスポートの入ったバックパックを背負い、塔の階段を駆け下りた。長時間、寒い場所で同じ姿勢を続けた身体はギクシャクとして、躓いては階段を転がり落ちそうになりながら、必死で下へ下へと下りた。
 将校に言われていた通り、俺は教会の裏へと抜けた。通用口のような小さな扉を開いて外へと飛び出す。


「ロイ!」
 泣きそうな顔をした彼女がこちらに向かって走ってくる。
「アンジェ!」
 来てくれた、とゆっくり喜ぶ暇は無い。
 俺の見張りもかねて配置されたのだろう、若い兵士が彼女を庇うように、一緒にこちらに来る。
「あのバイクを使ってください!」
 示されたバイクにアンジェを抱いたまま向かい、一緒に置かれた二つのヘルメットを取り上げ、一つを彼女に被せ、急いで俺も被る。
「行くぞ」
 キック一発、大排気量のバイクは大きなエンジンの唸りを上げた。
「しっかり掴まっていろよ」
 シートに跨り、後に彼女を乗せて俺はバイクを発進させた。弾むような感覚と共に、一気にバイクは加速して行く。
 風を切って、人々が勃発したクーデターに右往左往する街を走り抜けて行く。冷えた身体には、更に寒さが痛いほどに感じられる。
 さて、このまま上手くこの国を脱出できるか……。
 俺は背中に暖かな幸福の予感を覚えながら、自由に向かって更にバイクを加速させた。

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 ネタが出てこない、と苦しんでいる時に見つけた、昔書いたショートショート。それはギャグで、軍の上役が気に入らないので、解任要求をしようというアンケートを、本人のいる前でするという物だったのですが。
 その話から新たに展開したら、こんな話が出来上がってしまいました。


2006年04月17日 (月) 10時30分

[8] 投稿者:宵 - 指きり


 左肩に受けた傷から、1秒ごとに命が流れ出して行く。
 救急キットの中に入っていた麻酔を打ってから、相当の時間が経ったはずなのに、あまり痛みを感じないというのは、肩甲骨を砕かれた時に神経も破壊されたという事なのだろうか。何にしても、この怪我なのだ。痛みを感じないで済むのは、ある意味ありがたい。
 視野が妙に薄暗いのも、前へ進もうとする足が恐ろしく重たく感じるのも、血が足りなくなっているせいなのだろう。


『この国のトップにどんな思惑があろうと、私にはそんな物関係ない。ただ、貴方さえ生きていてくれれば……、貴方の傍であれば、私は幸せ。だから、死なないで! 必ず私の所へ帰ってくるって、約束して』
 俺がこの戦場に送られる前、別れ際に彼女はそう言って、小指を差し出した。
『ああ、必ず帰ってくるよ。そうしたら……』
 その指に俺も小指を絡めながら、それでも『結婚しよう』という言葉を告げる事は出来なかった。
『そうしたら?』と言葉の先を促すように繰り返した彼女に、俺は『それは、帰ってきたら言うよ』と言葉を濁して、ただ一度、その細い身体を抱き締めて別れて来た。


 膝がガクッと折れて、俺は気付けば地面にへたり込んでいた。こんな所で立ち止まる訳には行かない。本隊に戻らなければ……。
 必死の思いで立ち上がろうとするが、膝は萎えたまま、僅かに腰を上げる事すら億劫だった。
 それでも、どうにか這うようにして近くの岩に凭れるように座り込んだ。ゴツゴツとした岩が背に当たって、身体の落ち着きが悪い。


 約束を破ってごめん。
 頑張ったけど、君の所へは帰れそうにないよ。
 君は、こんなにも簡単に約束を破るような男の事なんて、さっさと忘れて、幸せになってくれ。君の幸せが、俺の望み……。
 君ならきっと、ステキな奥さんに……そして、いつかは優しいお母さんになれる筈だよ。その隣にいるのが俺じゃないってのは、かなり悔しいけれど、約束を破ったのは俺の方なんだから、仕方ないな……。
 愛しているよ……。もう、君に届く事も無い言葉だろうし、届かない方が君の幸せだろうけれど……俺の本音だ。
 魂だけになったら、帰れるかな……帰りたいな……。

 きみに、あいたい……

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 え〜……この戦場はどういう場所なのか、戦況はどうなっているのか、という突っ込みは勘弁してください。イメージのみで書いてしまいました。

2006年04月17日 (月) 10時31分



Number Pass


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