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[1029] 哭天の繁華街
明朝の詩人 - 2011年04月23日 (土) 02時21分

とある廃墟の片隅に、襤褸を纏った醜い男が一人佇んでいた。
社会に失望し、自分に絶望した男が望むものは
「死ぬ理由」唯一つだった。

暗い表情でいつものように町を彷徨っていると、
目の前にくじ屋があった。
いつもは通り過ぎてしまうのだが、そのときは違った。
ある考えが浮かんだのだ。
「今丁度、くじを買えるだけの金がある。
 この金が無くなったら俺は ない。
 くじなんて十中八九外れる。
 俺が死ぬ理由なんてこれで十分だ。」
そう思い、男はくじを買った。

酷く憔悴し、希望の光が微塵もない目で
まるで嘲笑するように男はくじの中身を確認した。


くじは「当たり」だった。
だが、死ぬ理由を失った男にとって
そんなものはうれしくもなんともなかった。
そして、この予想外の出来事にしばらく途方にくれていた。

今まで一度も当てたことがないくじが
死のうとしたまさにそのときに当たった。
しかも、ただの当たりではなかった。
男はくじ一枚を買ったことで、
大金とどこでも好きなところにいける旅行券を
手に入れたのであった。

今まで何度も希望を抱き、そのたびに大きく打ちのめされてきた男は
これもその前兆に過ぎないと考えたが、
「どうせいつでも**(確認後掲載)るんだ。
 この金と旅行券を使って、
 それでも何も変わらないのなら、
 そのときこそ本当に死のう」

そういって、男は希望でも絶望でもない
混沌と皮肉の混じった感情を抱き、歩き出した。



その後、男がどうなったか知るものはいない。




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