いまリーダーに求められるもの (83) |
- 日時:2015年01月24日 (土) 19時59分
名前:伝統
*『致知』2014年6月号 特集「長の一念」(P76)より
《いかにしてこの歴史的偉業は成し遂げられたのか》
【対談】(童門冬二 渡部昇一)
<渡部>
童門先生は、どんな時代にも共通して求められる長の資質というものを挙げられますか。
<童門>
6つの条件があると思います。
(1)先を見る力 (2)情報を集める力 (3)その情報を分析判断する力
(4)問題解決の選択肢から一つを選択する決断力 (5)それを実行する実行力 (6)生身の人間が行なうことだから健康・体力
<渡部>
それは古今東西、普遍の条件ですね。
<童門>
また、いままではよく信長型、秀吉型、家康型と天下人を3タイプに分ける癖が ありましたが、これからはそれではダメだと。
古いものを壊していく信長、 新しいものをつくりだす秀吉、 よいところを長持ちさせる維持管理の家康、
この三つを兼ね備えていることが求められます。
つまり、陋習を打ち破り、新しい価値を創造し、その中からよいものを残していく 指導力を持ったリーダーが望まれますね。
<渡部>
きょうは明治維新のリーダーたちについて話してきましたが、 私は、明治維新は単に江戸時代が終わって明治になったのではなく、 世界に例のない有色人種の近代国家をつくったという大事業であった点を、 もっと多くの日本人に認識してもらいたいところです。
そして、その維新の立役者の中には、明治天皇もいらしたのではないかと。 若くして天皇になられ、あれだけの激動の時代を君主として過ごし、 日本を近代国家へと発展させました。
確かに、明治天皇が直接何かをされたわけじゃないんです。 しかしそれが将の将たるゆえんというのでしょうか。
例えば漢の高祖なんか戦争で勝ったためしがないんだけれど、 何となく皆に懐(なつ)かれる資質があった。
あるいは初代エリザベス女王の時代にイギリスはパーッと成長したわけです。
じゃあエリザベスが何か画期的なことをしたかというと、そういうわけではない。 ただ、エリザベスに従う人たちが非常に張り切ったんですね。
仮にエリザベスのお姉さんであるメアリーが長生きしていたら、 あれだけイギリスが発達したかといったら、それは分からないと思います。
そういう意味では明治天皇の時代、日本はいろいろな人材が大活躍しました。 人をして大活躍させる徳が君主にあったということでしょう。
<童門>
明治というのは、二百六十年間の鎖国時代の蓄積があったから、 人材にしても、何にしても、それが一気に爆発した時代なんでしょうね。 近代日本の青春時代だと僕は思っています。
<渡部>
名君には、ただ在位するだけで国家が発展するという徳がある。 しかしその根底には、国を思う深い一念があるのだと思います。
明治維新は明治天皇と、そこに関わるすべてのリーダーたちの 強く深い一念によって成し遂げられた日本史上稀にみる偉業であることは間違いない。
現代のリーダーたちにも維新の元勲たちに負けないような強い一念を抱いて、 再び国家の徳を取り戻してもらいたいものですね。
<童門>
私はちょっと逆説的になるのですが、一人ひとりがキョロキョロしないで、 それこそ一念を持って、いまいる場で全力を尽くすことだと思います。
先ほどもありましたが、維新を推進したリーダーたちは皆、地方の下級武士たちですよ。
彼らは天下を取ってやろうと野心を抱いて、クーデターを起こしたのではなく、 自分の最善を尽くしていく中で明治維新が成し遂げられていったわけです。
いま日本各地にいるそれぞれが、一念を持ちその場で全力を尽くすことが 、やがて国家をも動かしていくということを、 維新のリーダーたちが教えてくれていると思うのです。
<感謝合掌 平成27年1月24日 頓首再拝>
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