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タイトル:The end of fortune goes to rest 恋愛

――聖なる夜、志貴の前に突然現れた、居なくなったはずの己の写し見。そいつは、笑ってこう言った。「正月、俺と初詣に行かないか?」 P.D.外伝とも言うべき、彼らのその後を書いたクリスマス作品は、正月へと続く二部作の前編!

月夜 2010年07月05日 (月) 23時40分(106)
 
題名:The end of fortune goes to rest(第一章)

「はぁ……」
自然と溢れる深い溜め息。
徐々に暮れ行く、カップルで溢れ返ったクリスマス一色の街並みを、俺は一人、宛てもなく歩いていた。
まったく、アルクェイドにも困ったもんだ。
来るだろうなとは思ってたが、やっぱり例によって例の如く、窓から俺の部屋へダイレクト不法侵入。
先読みして、一足先に屋敷を出ていたからよかったものの、もしのほほんと自室に留まっていたなら、今頃酷いことになっていただろう。
こんな日にまで、あの二人の争いに巻き込まれるのは勘弁願いたい……って、あれ?
なんだろう……今感じた妙な違和感は……。
何かしっくりこない。
アルクェイドが乗り込んでくるのは、まぁいつも通りのことだ。
クリスマスともなれば、もはや当然とさえ言える。
なのに、なんだ……この気持ちは?
何かが違う……そんな気がする……。
……足りない?
何が……いや、誰が?

――ドン。

「あっ……」
っと、考えごとに意識を傾け過ぎていたようだ。
誰かと肩がぶつかり、そのおかげで我に返ることができた。
「すみませ……!?」
謝ろうと顔を上げ、相手の顔が視界に入ると同時に、思考が止まった。
目の前にいる人物が誰であるか、一瞬わからなかった。
いや、本当のことを言えば、それが誰であるか、脳は直ぐに認識していた。
自分の中の理性が、そのことを信じられなかったのだ。
「よう、志貴。久しぶりだな」
聞き慣れた声。
それは、自分と同じ波長の、本来決して聞き得ないはずの声だ。
「七夜……か?」
未だ確信を得ていないが故の問いかけ口調。
そんな俺の言葉に、そいつは口元に軽い笑みを浮かべて答えた。
「なんだ、自分自身の姿すらわからないほど、お前は目が悪かったのか?」
瞬間、脳にうっすらとかかっていた靄が、一気に晴れ渡る。
次に気付いた時、俺は両手で七夜の肩を強く掴んでいた。
「今の今まで、一体どこで何をしてたんだ! 無事なら無事で、顔くらい見せに来てくれよ! こっちが、どれだけ心配したと……」
「志貴、とりあえず落ち着け……」
早口で捲し立てる俺の言葉を、七夜は静かに遮ると、周囲に目配せをした。
その視線を追って、俺も自分の周りを見渡す。
視界に映る沢山の人々。
その注目する先は、ほとんど全てがこちらへと向けられていた。
「あ……ご、ごめん……」
七夜の言わんとしていることを理解し、俺はその肩から手を離した。
全然自覚していなかったが、どうやらかなりの大声を張り上げていたようだ。
「だ、だけどお前、本当に今までどこに……」
「色々と事情があってな。まぁ、そんなことは置いといて、だ」
そこで一旦言葉を区切ると、七夜はこちらを真っ直ぐに見つめてきた。
真剣な表情を浮かべ、少し言い淀むような素振りを見せる。
一体なんだろう?
こいつがこんな挙動不審で躊躇いがちな態度を取るなんて、何かよっぽどのことなんだろうか。
そんなことを考えていたものだから、次にこいつが口を開いたとき、そこから出てきた言葉に、俺は耳を疑った。
「正月、俺と初詣に行かないか?」
「……は?」
それしか言葉が出てこなかった。
初詣?
俺が……七夜と?
……聞き間違えたか?
「……えっと、お前今、俺と初詣に行こうって言ったのか?」
「あぁ」
何でもないことのように七夜が頷く。
……どうやら、耳の錯覚ではなかったらしい。
しかしまぁ……俺と七夜が二人で初詣か……。
その情景を想像しようとして……直ぐに諦めた。
こいつと肩を並べて神社の境内を歩いているなんて、俺の想像の範疇を軽く凌駕している。
一体、何が目的なんだ?
「どうした? 都合が合わないのか?」
「あ、いや、別にそういうわけじゃないんだけど……お前こそ、一体どういう風の吹き回しだよ」
「何がだ?」
「だって、ほら……お前がいきなり初詣だなんて、なんと言うか……イメージに合わないっていうか……」
「まぁ、俺は別に深夜の公園でお前と殺し合いとかでも構わないが……」
「それは俺が困る」
七夜が皆まで言う前に、俺はきっぱりと拒絶の意を示した。
せっかく平和な日常を満喫していると言うのに、わざわざ自分から寿命を縮めるようなマネ、一体誰がするものか。
「だろう? だから、たまにはそういうのもアリかと思ってな。どうだ? 付き合ってくれるか?」
「まぁ、そういうことなら別に……断る理由も特にないし、付き合ってやるよ」
「良い返事だ。そうだな……新年直ぐはかなり混雑しているだろうから、当日の午前三時頃に迎えに行こう。じゃあな」
「えっ!? お、おい! 三時とか、普通に深夜じゃ……って、あれ?」
慌てて周囲を見渡すが、求める姿は既にどこにもなかった。
相変わらず自分勝手な奴だ。
まぁ、多分正月にはまた、アルクェイドから何らかのアプローチがあるだろう。
それに対し怒り狂う秋葉との板挟みを予防できたと考えれば、別に悪くもないか。
そう考え直すと、俺は何気なく空を見上げた。
つい先刻まで、まだ微かに西に見えていた夕日は、もうすっかり地平線下へと沈み込み、闇に抱かれた夜空では星たちが瞬いている。
左手首に巻いた腕時計に目をやると、そこに示されている時刻は夕飯時の午後七時。
なんだ、もうこんな時間か。
いい加減アルクェイドも退散しているだろうし、さすがにそろそろ戻らないと心配かけちゃうかもしれないな。
そう思い、俺は踵を返して、今来た道を逆方向へと進んでいった。

月夜 2010年07月05日 (月) 23時41分(107)
題名:The end of fortune goes to rest(第二章)

用事を済ませ、待ち合わせ場所へと早足に戻る俺の視界に、噴水の縁に座る彼女の姿が映り込む。
うつ向きがちに目線を落とすその姿は、端から見ていても、少なからず憂鬱さを醸し出しているように見えた。
「待たせたな」
「志貴……」
俺の声に反応して、シエルはゆっくりと顔を上げた。
依然として寂しげなままの瞳が、胸をきつく締め上げる。
「……」
なんと声を掛けたらいいのか……良い言葉が思い浮かばなかった。
何故、彼女がこんなにも憂鬱な表情をしているのか。
その理由がわかってしまっているから、また、その原因が俺自身にあるから、俺には何も言うことができなかった。
「……本当に、これで良いんですか?」
唐突に投げ掛けられる問い。
主語はなくとも、その言葉の意図するところは明確に伝わってきた。
「……これが俺の至るべき当然の答えである以上、良いも悪いもないだろう」
「そんなこと……まだ、他にも道はあるはずです。今から手を打てば、きっと……」
「……」
膝の上にて固く握りしめられた拳が、見ていてとても痛々しい。
彼女の言わんとしていることはわかっている。
今、俺たちの前に広がっている二つの道。
片方は、二人で肩を並べて歩くことのできる、けれど一寸先すら見えない暗く細い道。
そしてもう片方は、目と鼻の先を崖によって阻まれた道なき道。
シエルは、まだ二人で歩きたいと言う。
それもまた、選ぶことのできる一つの道。
俺たちにとってみれば、その道こそ最も幸せが長く続く、謂わば最善の選択肢に違いない。
だけど、俺たちはその道を進むことは出来ない。
いや、進むわけにはいかない。
そう、心に決めていた。
この街に住む人々の、そして、あいつらのためにも。
「言っただろう。俺は、本当ならあのとき死んでいた。いや、もっと根本まで問題を突き詰めていけば、俺という存在は、とうの昔に消え去っていたんだ」
「だからって、そんな自分から……」
「自殺するようなマネ、とでも言いたいのか?」
「……」
シエルが黙り込む。
無言は肯定とは良く言ったもので、その格言はこの場合にも当てはまっていた。
「自殺じゃないさ。俺は、自然の摂理に身を任せるだけだ。その結果が消滅だというなら、それで良い」
「ですが……!」
「……俺の中には、タタリが居る。今こそまだ大した変調はないが、このまま生きていれば、その残滓でしかない俺という存在は、確実にタタリに呑まれて消える。そうなったとき、俺を殺せるのは誰だ?」
「……」
シエルは何も答えなかった。
そう、先に起きたタタリの騒動でわかったように、タタリと化した俺を殺しきれるのは、あいつしかいないのだ。
そのことを理解しているから、シエルは何も言わなかった。
自分自身、表面的な異常は現状特にないとは言え、吸血鬼化は確実に進行しているのだ。
俺の抱いている、いつか自分が自分でなくなってしまうのではないかという恐怖。
それは、彼女も抱いていて然るべきなのだ。
「……私だって……わかっています。私たちが、本来ここに居ていい存在ではないことくらい……」
「シエル……」
「でも、ようやく手に入れたこの幸せを……棄てたくない。もっと味わいたい。もっと幸せになりたい。もっと……貴方といたい……」
「……」
シエルの切実な想いが、言の葉に乗って俺の心を鋭く突き刺す。
俺だって、彼女と同じ気持ちだ。
許されるなら、もっと彼女と一緒にいたい。
だけど、それは決して叶わない願い。
何故なら、その未来が俺の決心と相反するものだから。
彼女の想いに応えることは……できない。
「……すまない……」
だから、俺はそうとだけ、短く答えた。
それ以外の言葉が、何一つと見つからなかったから。
もし、この言葉で彼女が泣いてしまうのなら、そのか細い体を優しく抱き締めてあげよう。
そう思った、その矢先だった。
「……あ〜っ!! もうっ!!」
突然、シエルは大声を上げながら、その場に勢い良く立ち上がった。
思いもよらなかったその行動に、俺の思考回路が一瞬停止する。
「シ、シエル……?」
「志貴、今日はクリスマスですよ? 恋人たちの為の聖なる一日なんですよ? なのに、私たちはなんでこんなに暗い話を延々としてるんですか!」
そう言うと、シエルは俺の手を握った。
「もうクリスマスも残り少ないんです。ほら、暗い気持ちは頭の片隅にでも追いやって、残りの時間を楽しく過ごしましょう!」
走り出すシエルに連れられて、俺も駆け足になる。
こちらへ向けられる明るい笑顔。
それは、先ほどまでの暗く憂鬱なものとは打って変わって、弾けんばかりに輝かしい、朗らかな満面の笑みに見えた。
……だが、それは外見上そう見えただけで、心の奥底ではまだ泣いていることを俺は知っている。
「……そうだな」
だからこそ、そんなシエルの気持ちに応えるように、俺もまた口元を綻ばせながら、首を縦に振った。
二人でいられる時間は、きっともう残り少ない。
なら、その時間を一分一秒と無駄にせず、精一杯楽しもう。
それが、今の俺たちに許された、至上の幸福に違いないのだから。
「ほら、急いでください! 今日という日は待ってはくれませんよ!」
「わかった、わかったから、そんなに引っ張るなよ」
シエルに手を引かれるまま、俺は彼女と歩幅を合わせて駆け出した。

月夜 2010年07月05日 (月) 23時42分(108)
題名:The end of fortune goes to rest(あとがき)










あ゛?









今日はクリスマス?











……だから?










プレゼントくれないサンタに興味はねーよ






べっ、別に独りのクリスマスが寂しい訳じゃないんだからっ!








。・゜゜(つ∀`)ノ゜゜・。








さて、皆さんメリクリです〜♪



とか言いながら、実はまだ10月28日という事実。

おいおい、まだ12月にすらなってね〜よ。
クリスマス遠すぎて実感沸かない沸かない(´・ω・`)

しかし、私は個人的に、この七夜&シエルのカップルは気に入っているみたいです。
執筆速度が多作品に比べてめがっさスピーディー。

当たらなければ、どうということはないの人なんか目じゃないですね。


とりあえず、この作品はアンケートに答えつつ、クリスマスとお正月を繋げた、P.D.続編という感じですね。
どちらか片方だけで完結するのではなく、敢えて繋げてみました。

形式としては、来夢さんからの七夜&志貴のP.D.続編的な作品と、こちらは誰か分からないんですが、七夜&シエルのP.D.続編的な作品を掛け合わせた、P.D.完結編となっております。

これは、私も個人的にいつか書きたいと思っていた作品だったので、ちょっとSSとはかけ離れた量になっちゃいました。

まぁ、たまにはいいよね(いつものこととか言わないでやってくだしあ)(´・ω・`)

キーワードに関しては、後編のお正月版にしっかり入れてあるので、ご勘弁願いまする。


それでは、またお正月に。
予定としては、お正月になると同時にアップしたい……とは思ってるんですが、多分新年になると同時に初詣に出かける我が家の習慣上、正月ジャストには無理だと思います。
ってことで、これは大晦日の終わりくらいに載せることになるかと。

ではでは、皆さん次はまた新年に。


この作品に対する感想やらゴルァは、いつも通り「小説感想アンケート板」または「小説感想掲示板」、「月夜に吠えろ」までドゾー。

ここまでは、ネットからの受信拒否止めたら、迷惑メールの数どれくらい増えるかなと思って試してみたら、1日で150通近く送られてきて、メールボックスに甚大な被害を被った私、月夜がお送りいたしました。


この国の個人情報保護法オワタ\(^o^)/

月夜 2010年07月05日 (月) 23時44分(109)


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