ポケモンという存在は、人が作り出した架空の生き物に過ぎない。 いきなり身も蓋もないどころか夢を壊しかねない発言をするのはどうかと思われるかもしれないが、それを前提としなければこの話が成り立たないので勘弁願いたい。 もっともその前提は暗黙の了解だったり不文律だったりする筈なのに、その境界線が自己の中で曖昧になってしまう場合もあったりするのだが。
閑話休題。
今から始まる話はゲームの世界ではなく、アニメの世界でも勿論無い。 ここにこうして書かれ始めたその瞬間から、どちらを柱にしていようと関係なく、独立した世界としてこの話は成り立つのだ。
故に、ここは無地からの始まりであり。
混沌とした空想埋立地の結末でもある。
「よーするに、二次創作っていう時点で本家とは別モンって事でしょーに。何回りくどい言い回ししてるんだかねぇ」
スレンダーな体躯に呆れた表情がミスマッチを呈しているミツコの発言はまさしくそのとおりであると肯定せざるを得ないが、いくらこの場が舞台公演直前の控え室と同じようなものとはいえ遠慮がなさすぎる。 あえてそのようにキャラを描いているのはこちらなのでぐうの音もでないのが口惜しいところだ。
「まぁまぁねえさん、ようやく黒歴史との踏ん切りがついてなんとか新しい境地で再出発しようとしている実に矮小で卑屈者で無職な文才0のボンクラ相手なのですから、もっとこう手心を込めて辛辣な言葉を選ぶべきだと僕は思いますがね。現実に肉体を持たない僕たちに出来る唯一にして最大の武器は文章による精神への攻撃のみなのですし」
鬼畜眼鏡の一言でキャラ説明が済んでしまうという驚きのシンプルイズベストを体現したミツコの弟キャラであるコウシの言葉が長く重く伸し掛る。 これまた仰る通りであり、まったく反論する余地が無い。 こちらはこちらでそれを楽しめているのが不幸中の幸いだろうか。
「あの、僕、帰ってもいい、でしょうか……」
少年Dは相変わらずの無関心といった態度と口調。だがそれがいい。 人は良くも悪くも変化する生き物だが、それは緩やかにかつ穏やかに進行するものであり、急激なものでは断じて有り得ない。 髪の毛をばっさり斬り落としたぐらいでガラリと人となりが変貌するのはゲームや小説の中だけの話なのだ。
「はいはい、暇つぶしにしかならないあんたのぐだぐだ話はその辺にして頂戴。わたしゃカイザーナックルの難易度ハードジェネラルをマルコで倒すのに忙しいんだから」
「はっはっは、そんな極々一部の人間にしか分からないような無理ゲーに延々と取り組めるのはねえさんぐらいですよきっと。まあ僕も僕で、シュレーディンガーの猫と量子学の統一理論を記述する作業が忙しいといえば忙しいのですがね」
「ちんぷんかんぷんとか、専門的すぎるとか、それ以前に、言葉を適当に並べただけ、でしょうに。………さっさと帰って風呂沸かして入ろう」
と、いうわけで。 非常に残念極まりないが、三者三様にそれぞれ外せない用事があるのでこのあまりにもお粗末なテストプレイはこれにて終幕とさせて頂く。 いずれそれなりにまとまった話が完成した暁には、世界の在り方も少しは違っていることだろう。 それっぽい発言を締めの代わりとし、未完。
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