| [2104] ドクターG最強難問「シガテラ中毒」を見ての感想ー診断できて終わり？？ |
- 愚按亭主 - 2016年06月04日 (土) 09時40分
先日見たテレビ番組「ドクターG」はとても参考になりました。指先のシビレという症状は、私のような治療室には多く経験する症例でもあります。したがって、このような場合があることを頭の中に入れておくことは、必要不可欠であります。では具体的に、検討していきましょう。
まず、釣り好きの50代の男性が、階段で転倒して救急車で病院に運ばれて検査したところ、血圧の低下（上が108程度）と徐脈がみられ、首や背中などの打撲による痛みと、腹部の痛みが見られたそうです。しかし、そのほかには問題が見つからなかったせいか、その時は入院などはせずに帰宅したようです。それ以来、指先にしびれや冷たいところに触ると痛んだりという症状が出てきて三か月、半年たっても続いているという状態で、名医の登場でした。
さすが名医は、血圧低下と徐脈が見られたことや、ドライアイスセンセーション（冷覚過敏）が見られたことから転倒するときに失神していたのではないかと疑って、その日に何を食べたのかを聞きました。するとその患者はその日は大勢の来客があったので、記念に魚拓まで作って自慢していた自ら釣り上げて冷凍保存していた大きなイシガキ鯛を、自ら料理して皆にイシガキ鯛の味噌汁を振る舞った、と答えました。そしてさらに、夜に残っていたそのみそ汁と一人で全部平らげた、と付け加えました。そして、階段で転倒したのは、その後しばらくたってからのことだったそうです。
そして、そのイシガキ鯛は餌の植物プランクトンが、シカテラトキシンという神経毒をもっているために、その毒が蓄積しているのだそうです。しかし、この患者以外の味噌汁をふるまわれた客には何の以上も現れなかったところをみると、それほど強い毒性を持っているのではなさそうです。実際、この毒による食中毒患者の死亡例はないようです。ただ、この患者だけは後で残った味噌汁を全部食べたので症状が現れる必要量を摂取してしまったものと思われます。
問題は、通常は一週間もすれば、神経症状が消えていくはずのものが三か月・半年と長期化し改善の兆しがあまり見られないことであるはずですが、難しかった病名にたどり着いたことをもって良しとしてしまって、どういう治療をしたらよいかが全くなかったことです。自然に消えていくのを待つしかない、一週間ぐらいで消えるとしているのです。しかし実際は、一週間どころか三か月経っても半年たっても治っていないというのが今回の症例だったはずです。ところがそれには全く触れられませんでした。したがって、実際の患者が今どうなっているのかは不問に付されたままでした。
私が思うに、階段で転倒した際にできたスジのネットワークのゆがみが相当にできているはずだと思います。それが指先のシビレや冷覚異常がなかなか回復できない原因ではないかと思います。それをどうしたら早く治すことができるのか、ということをまじめに研究しようとしていないように思います。
そこでネックになっているのが、スジのネットワークについての無理解です。スジのネットワークのスジは神経や血管を覆って保護しています（神経のミエリン鞘は再生修復にもかかわっています）。この神経が損傷すると神経を覆っているスジが防御的に硬くなります。じつは私は鍼で神経を傷つけてしまった経験があります。その時にスジのネットワークが固くなることをいやというほど思い知らされました。ほぐしてもほぐしても固くなってしまうのです。一週間ほどで回復しましたが、悪い時は風が吹いても服が触っただけでも皮膚が痛んだ王でした。ですから、神経が損傷されtこの症例の患者さんが風が吹いても痛むというのはよくわかります。このような状態だからこそ、神経の周りのスジのネットワークの状態を整えてやることが、回復を早めるのに必要なことなのです。
ましてや、階段で転倒してスジのネットワークのゆがみが加わってしまったのですから、なおさら必要となるはずです。この患者さんがいつまでも回復できないのは、そのためだと思われます。しかし、ドクターGではそういうことには触れられませんでした。そしてその患者が今どうなっているのかについて触れられることはありませんでした。
|
|