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何か記念に書いてください!

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[62]予告 - 投稿者:ヤミ

「あの凸凹馬鹿コンビが帰ってきた!」
「更なる破壊と恐怖を撒き散らし!」
「ビルを壊して通った後にはぺんぺん草一本生えてこない!」
「新キャラ二人も登場してさあ大変!」
「最凶最悪!破天荒で荒唐無稽!」



「いやぁ久しぶりですねぇ、日本の地は」
超絶不良神父:ジェラルド・リア・カーソン

「ここまで遅くなったのもアンタのせいじゃないのーッ!」
激天然記念物指定暴力シスター:ヴァルジュリア・レイピット


不良神父と暴力シスターが奏でる新たなる戦いとハイテンションofマイペースなノンステップギャグの連続!そして鳴り渡る悪魔どもの断末魔!不幸な生贄は一般市民かはてまた悪魔か!?
13課達の新境地を目指した新キャラも登場予定
馬鹿コンビが奏でる新たなるストーリー


「……関係ない」
心はセメントで出来ている:エルステル・ユスティーツア・L・キーリ


「ボク、頑張るからね」
実はオトコ:ベルヴィアム・フォン・エヴァン


埋葬の徒-The Fools-(仮)

近日公開予定(何時かは未定)

( 2005年02月13日 (日) 23時33分 )

- RES -

[63] - 投稿者:ヤミ

ついに神父達のリレー小説再始動です。
懐かしい人も初めての人も笑ってくれればこれ幸いかなーっと、そしてよろしくイシュさん

( 2005年02月13日 (日) 23時37分 )

[64] - 投稿者:イシュ

こちらこそ、よろしくお願いします。しかし、連載の初陣はお譲りします(何)
 かの三条 陸×稲田浩司のごとく(古)よりよい作品を作っていきたいと思います。なお、これはただの願望です、切なる願いです(何)

( 2005年02月14日 (月) 22時33分 )


[60]仮面ライダー罪[クライム]初犯・第三罪 - 投稿者:エクスチェンジャー

不知火裕は不敵な笑みを作って、同僚に見せるのだった。
「・・で?俺に頼みたい仕事ってーのは何なのよ?大道寺ちゃん?」
裕の不真面目な問いかけに二人組みのうちの男のほう、大道寺悠は顔色一つ変えず応じた。
「先ずはこれを見てもらおう。」
大道寺は右手に持っていたファイルをデスクに載せ、裕を含めた数人を促す。
あくまでもへらへらした態度を崩さず、裕はファイルの中の資料を広げる。
中には相当な量の紙の束が見える。
薄っぺらなファイルに容量以上のプリントを挟み込むのは大道寺の悪い癖だ。
面倒になったのか、ファイルの残りを部下に任せ、裕は内容に目を通して始めた。
彼の目は活字を次々と弾いていき、だんだんと事件の様相を彼は掴んでいった。
「殺人事件・・か・・しかもわざわざ俺を呼んだってことは並みの話じゃ・・・」
あらかた読み終わり、一枚めくって次の資料に目を通した裕の口から言葉が消えた。
「・・・普通じゃないだろう?」
大道寺の言葉が酷く皮肉じみて聞こえた。
資料には事件現場を撮った写真がプリントされていた。
いや、それが殺人現場だと知覚できたのは大道寺の言葉よりも後だった。
「こいつぁ・・・ひでェ・・・」
同期の中では最も修羅場に立ち会ってきた彼にそう言わしめたのはやはりその写真であった。
公園の一角、公衆トイレの壁に、本来描かれていなかった朱色の紋様を作った夥しい量の出血の跡。
足元の草むらには何かが無数に転がっている。
ーーーああ、人の肉かーーー
四肢どころか30パーツくらいに″分断″されていた。
さらに良く見ると壁の側にも幾つかその残りが貼り付いていた。
よくよく考えれば人の手が重力に逆らってあんなところにぶら下がっていることも十分におかしい現象だったのだが、割とすんなり受け入れられたのは一種の感覚マヒに陥っていたからかもしれない。
もう資料を一枚めくってみる。
不運にも、別の角度から撮った写真が目に飛び込んできた。
さらに不運だったのは、写真の中で転がる頭蓋の目が彼を見ていたことだ。
裕は資料をデスクに静かに置いた。
「・・・不知火裕・・いきます」
彼はさっき入ってきたドアをもう一度勢いよく開けると、猛スピードである場所まで駆け出した。

「・・ご愁傷様」
大道寺は皮肉屋だ。

男子手洗い所から不気味な叫びが木霊した。
一拍おいて、さらに強烈な音が鳴り響いた。

( 2005年01月14日 (金) 22時24分 )

- RES -


[59]試練の駆け落ち魔法事件5(王都へ・・・・。) - 投稿者:仮面ライダー音夢

チヒロ「モンスターがいるだろうから、王都から歩いていくのは危険だ。馬車をレンタルしたほうがいいよ。」

レイコ「町の治安部隊が動いてくれればいいのに・・・・。」

チヒロ「ここ数年、犯罪が増えているから、治安部隊もそこまでは手が回らないんだよ・・・・・・。」

王都までの道のりは歩いてでも行ける距離なのだが、最近は治安の悪化とここ数年の異常気象が影響しているのか、町の外には凶暴なモンスターがうろつくようになった。(モンスターと言っても、姿形が変わっているだけで、後は野生の動物とほぼ同じ。)

レイコ達は馬車をレンタルしようとしたが、、馬車はすでに全部貸し出されていて、明日でないとレンタルできない状態だった。
エツコたちを危険な目にあわせられないので、結局もう一晩チヒロの家に泊まるはめになり、チヒロはまたまたため息をついた。

翌日、レイコたちは馬車をレンタルして王都に向かった。
馬車は費用が少しかかる反面、徒歩の約三倍の速さで王都に着く。それにモンスターや通り魔におそわれる心配もほとんど無いのだ。


レイコたちは午前中に王都に着くことができた。王都はナハタウンとは比べ物にならないほど街の面積が広く、にぎやかだった。だからといって治安がどこの町よりも悪いというわけでない。王都の強力な騎士団が治安活動やモンスター退治、そしてテロ対策を担当しているから、大きな混乱が起こる心配がほとんど無いのだ。

4人は城下町の少し歩いてから、中央にそびえ立っている大きな城に向かった。

エツコ「たぶん父は今、お城の中にいると思うの。城の関係者の身内は身分証明書を見せるだけで面会ができるわ。」

レイコ「身分証明書は持っているのね??」

エツコ「ええ。私は父と話をするから、レイコ達はここで待ってて。」


10分後・・・・・・・エツコが戻ってきた。
レイコ「エツコずいぶん早かったのね。お父様とは会えたの??」

エツコ「ううん。父は王様の命令で別の地域の治安部隊の代理をしているの。父が戻るのは今日の夕方から夜になるらしいわ。」

レイコ「今日は宿屋に泊まったほうがよさそうですわね。宿代は四人とも私が出しますわね・・・・。」

チヒロ「4人って・・・・・僕も!!」

チヒロはあせったが、結局、断れなかった・・・。エツコたちのことが少しは気になるからだ。

レイコは困ったような表情をしたが、内心では喜んでいた。

レイコ(お兄様と二人っきりで寝れるチャンスができたんですもの。)


午後6時王都の兵士がエツコの所にやってきて、エツコに父親からの置き手紙を渡した。

エツコ「お父さん、帰ってきてたんだ・・・。」

エツコは手紙を見た。

『シマくんの事、よく分かった。今日の夜中11時に王都の南門入り口で二人だけで話し合いたい。夜が明けたら改めてシマくんも交えて3人で話そう。』

エツコはその手紙をヒロヤたちにも見せた。

ヒロヤ「じゃあエツコのお父さんは少なくとも、僕たちの付き合いには反対してないんだね??」

エツコ「うん。少なくとも話しあいがこじれることはないと思う。」

ヒロヤ「分かったよ。僕はエツコを信じて待つよ。」

エツコ「レイコもクサカさんもいろいろとありがとう。このお礼は必ずするからね。」

レイコ「水臭いですわ!!私たちは親友じゃないの。」


そして、数時間後、エツコは待ち合わせ場所に向かった。それが悲劇の始まりだということも知らずに・・・・・・・!!

( 2004年12月31日 (金) 16時21分 )

- RES -

[67]こんなことに・・・・・。 - 投稿者:仮面ライダー音夢

ツクールアドバンスの作成データが消えてしまったので、とてもノベルを最後まで書ききれなくなり、打ち切ることにしました・・・・・・。

本当に申し訳ありませんでした・・・。

( 2005年03月20日 (日) 18時47分 )


[50](削除) - 投稿者:システムメッセージ

ユーザーの希望により削除を行いました。
(返信記事が存在している為、削除メッセージに変更されました。)

( 2004年11月08日 (月) 10時15分 )

- RES -


[48]試練の駆け落ち魔法事件4(愛する人と過ごす一夜) - 投稿者:仮面ライダー音夢


チヒロはレイコが苦手だった・・・。会うたびに『お兄様ぁ』と、甘ったれたような声で、チヒロに抱きついてくる・・・・。レイコがチヒロの恋人のマイコに初めて会ったときも、まずは

レイコ「お兄様ぁ!!会いたかったわ!!」

と、チヒロに抱きつき、マイコはチヒロが浮気をしているのでは!?と、一瞬疑ったのだ・・・・。
今回はマイコがいないのが、せめてもの救いだが、また抱きついてむりやりデートに誘おうとするのか・・・・と思うと、ため息が出た。もういい加減に慣れてもいいころなんだけど・・・・・・・・(汗)。
しかしよく見てみると、レイコの後ろにカップルの姿があった。少なくとも抱きついたりデートに誘ったりはしないな・・・・とチヒロは少しホッとした。

チヒロ「レイコさん、どうしたの??とにかくあがって・・・・・。」

レイコたち3人はチヒロの家に上がりこんだ。そして、部屋にあった大き目の机の左側にチヒロとレイコが、右側にエツコとヒロヤが座った。

チヒロ「レイコさん一人じゃなかったんだね・・・。」

チヒロはホッとしたように言った。

自分もチヒロお兄様と駆け落ちがしたいと思っているレイコはしまった!!と思った・・・・。

レイコ(あの二人を王都に送り届けてから、ここに飛び込めばよかったかも・・・でも今更やり直すわけにはいきませんわね・・。)

レイコは少しがっかりしたが、気を取り直してチヒロに二人を紹介した。

レイコ「私の親友のエツコ=ツバキさんと、その恋人のヒロヤ=シマくん。二人は駆け落ちしてきたの!!」

チヒロ「あ、どうも。僕はチヒロ=クサカといいます・・・・・・え?え?か、かけおちーーーーーーーー!!!!」

チヒロは大声を出して驚いた・・。

チヒロ「あの・・・出し抜けにそんなことを言われても混乱するからさ・・・詳しい話を聞かせてくれるかな??」


エツコ達から事情を聞いたチヒロは少し納得したようだった。

チヒロ「なるほど・・・・つまり駆け落ちは二人の仲を認めさせるためのお芝居なの??」

エツコ「まだなんとも言えません・・・父との話し合いが決裂したときは、本当に二人だけで暮らすことも考えています・・・!!」

チヒロ「うーーん・・・・他に味方になってくれる人はいないんですか?」

エツコ「います!!私の叔父です。父の弟で、王都の近くにある遺跡の警備員をしています。ヒロヤとの関係がバレてすぐに叔父に手紙で相談したんです・・・。そうしたら駆け落ちをすすめてくれたんです。」

チヒロ「・・・・・・・・とんでもない叔父さんだな・・・!!」

エツコ「いえ、本当に駆け落ちをしてはだめだけど、お互いの家族を脅してみてもいいんじゃないかって言ってくれたんです・・。」

レイコ「それでエツコ達は私のところにやってきて、私は父親を味方につけたほうがいいと提案したというわけですわ。」

チヒロ「それで、3人じゃ心細いから、僕にもついてきてほしいと・・・?」

レイコ「ねえいいでしょ??お兄様!!」

チヒロ「いやそのあの・・・・・・・・分かったよ・・・・僕でよければ・・・・。」

放っておくわけにはいかなくなった・・・。

レイコ「それで、今日は遅いからお兄様のところへ泊めてもらおうと思って・・・。あの二人は駆け落ちしてきたから、お金もたくさんあるわけじゃないの。」

チヒロ「え!?・・・でも!!」

レイコ「寝室に私とお兄様が、そしてこの部屋にエツコとヒロヤくんが寝ればいいことですわ!!」

チヒロ「だ、だめだよ!!寝室にきみとエツコさんだ。僕とヒロヤくんはこの部屋で寝る!!」

レイコ「じゃあよろしいんですのね、ここに泊まっても??」

レイコはニヤリとしながら言った。

ヒロヤ「ありがとうございます。クサカさん。」

チヒロ(してやられたような気がする・・・・トホホ・・・・えらいことになってしまった・・・・。)

チヒロはまたため息をついた。

レイコ「その代わり、夕食と朝食は私が作りま・・・・・・」

レイコの地獄の料理を知っているチヒロとエツコは真っ青になった!!

チヒロ「いやいやいやいや、そこまでしなくていいんだよ!!!!船旅で疲れているだろうから、レイコさんたちは休んで休んで!!」

エツコ「レイコ!!クサカさんのお言葉に甘えましょうよ!!!!ね。」

エツコとチヒロのあわてぶりに、ヒロヤだけが頭の上に?を浮かべている。

レイコ「お兄様・・・うれしいですわ!!私のために気をつかってくれるなんて・・」

レイコは思いっきり勘違いをしていたが、その方がありがたかった・・・・・・。


そして真夜中になって・・・寝室でレイコとエツコは寝る準備をしていた。

エツコ「ねえレイコ・・あのクサカさんって人とどういう関係!?お兄様って呼んでいたけど、レイコは一人っ子だよね?もしかして従兄??」

レイコはよくぞきいてくれましたという顔になって、

レイコ「実は私の婚約者なの!!今は遠距離恋愛なんだけど、たとえ遠くに離れていても、二人に愛の絆は不滅なの・・・ああ・・・お兄様・・・・・」

エツコ(そうは見えないんだけどなあ・・・・・。)

エツコがさらに質問しようとしたときレイコはもう寝ていた・・・・。

そして夜は明け、王都に行く準備は万全だった・・・!!

レイコ「さあ王都に出発ですわ!!」

レイコはワクワクしながら言った。

ヒロヤ「レイコさん、やけにハイテンションですね・・・・。」

チヒロ「いやな予感がする・・・レイコさんのことだから絶対何かたくらんでるよ・・・・・・。」

4人は期待と不安の中、王都に向かい始めた。

つづく

( 2004年10月31日 (日) 15時06分 )

- RES -

[58] - 投稿者:仮面ライダー音夢

最近書く時間がなくて、滞りがちですので、年末年始に一気に書き込む予定です。

( 2004年12月14日 (火) 18時40分 )


[47]仮面ライダー罪[クライム] 初犯・第二罪 - 投稿者:エクスチェンジャー

そんないつもの業務をこなした男はとぼとぼと町を流離っていた。
誰も彼もこの街で普通に暮らしている。
だが彼らのほとんどは街の裏側を知らないだろう。
暴力団の勢力争い、違法ドラッグ、売春、頭のいかれた人間達の末路。
男はそういう汚い世界を必死に焼き付けてきた
忘れたら自分は今の自分を抑えることが出来ないだろう、そして自分も汚いものになってしまうだろう事が彼には解っていた。
一番忘れてはいけない記憶がそれを許さないのだ。

「不知火さ〜〜ん!!」
男の耳に若い男、おそらく巡査だろう男の声がズカズカと入り込んできた。
男の後方から自転車に乗った警官が猛スピードで走り寄り、男の前で急停車した。
「不知火さん!もう探しましたよ〜」
若い巡査は自転車から降りると額から滴る汗をふき取った。
「・・・誰だっけおまえ?」
怪訝した目で男は巡査を見た。
「いやだなあ〜、いい加減覚えてくださいよ!」
巡査は息を整えてから背筋を伸ばして言った。
「轟衛!!不知火刑事と同じく岩波署勤続の巡査であります。」
---思い出した。最近配属になった時代錯誤の熱血野郎がいたっけな。---
男は心の中で確認した。
「で、なんか用か?」
男はいたって冷静に話しかける。
巡査、轟は一瞬硬直する。
---コイツ、何話すか忘れてやがんナ---
轟ははっとすると目を大きく見開いて叫んだ。
「携帯の電源切ってらっしゃるでしょ?不知火さん!」
轟の言葉で内ポケットの携帯を確認してみると案の定だった。
「あ・・・・」
「「あ・・・・」じゃないでしょ!署長が招集かけてるンですよ!」
---なるほど、どおりで今日はのんびりしてたわけね---
「と、とにかく一旦署に来てくださいよ!」
と息巻く轟の眼前には既に男の姿はなく、側に止めてあった自転車も消えていた。
「ってええええぇぇぇぇーーーー!!?何すかそれ!?」
哀れな新米巡査はグータラな刑事によって置いてけぼりを食らったのだった。

ものの30分ほどで男は職場、岩波署に出戻っていた。
「不知火さんどこにいたんですか?皆さん探してましたよ?」
署内を行きかう同僚達に幾度もそんな言葉を投げかけられた。
男はしれっとした表情でそんな周りの目を掻い潜り、刑事課のドアを勢い良く空けた。
その刹那、まるで爆音のような大音声が課を揺さぶった。
「不知火裕ァァァァァァ!!!!一体今まで何をしておったこのヴァカモオォォォンンン!!!!」
まるで衝撃波だった。
課長の頭の実り無い草原はむき出しになった大地を赤く輝かせていた。
他の刑事達は一様に耳を塞いで怯えていた。
それでも男だけは余裕たっぷりに課長のデスクまで歩を進めていた。
「あんまり大きな声を出すと持病の発作が再発しますよ課長?」
皮肉交じりで歩く彼に課長は苛立った。
「お前が一向に連絡をよこさんからじゃアホタレェ!」
課長の大きな拳が机を叩く。毎度同じところばかり叩くので部分的にへこんでいた。
「いや聞いてくださいよ。携帯の電源が切れちゃってまして・・朝起きたときは・・どうだったかな?」
あくまでおちょくるつもりなのか、へらへらした態度で男は切り出す。
「このゴクツブシが!刑事なら自覚をもたんか自覚を!!」
「はいはいスミマセンでした。それで用件は何でしょう?」
まるでわがままな子供を諌めるように男は話を切り替えた。
「おお、それか・・実はな・・・・」
「それは俺の口から話しておこうか?不知火?」
男が振り返るとそこには一組の男女が立っていた。
「もっともお前みたいなのに力を借りたくないんだがな・・不知火裕」
男女のうちの男は冷ややかにこちらを見ている。対する男も口元に笑みを造って見せた。
「へ・・上等・・!!」
今更ながら、不知火裕、それが男の名であった。

( 2004年10月31日 (日) 10時32分 )

- RES -


[44]でべとライと 第1章「裏のある街」B - 投稿者:イシュ

「ん……」

虚無を彷徨っていたライの意識が戻る。
しかし、目を開くとそこは暗く閉鎖された倉庫と思われる場所だった。
さらに彼女の両手両脚は鎖で縛られていて、一切の行動を封じられている。

「一体……何だってんだよ…!」

突然の事態に困惑しながらも現状を把握しようと、辺りを見渡しながら記憶を辿るライ。
普段なら一通りの装備を持ってはいるが、食事中の出来事であったため、当然はずしたままであった。

「でべは…!」

どこに目をやってもでべの姿は無い。
どうやらここに運ばれたのは彼女一人らしい。
そして、この事態の元凶と思われる人影が、この部屋に存在する唯一の扉を開き、やってくる。

「目が覚めたかね…?嬢ちゃん」
「じ、じいちゃん……!」

何食わぬ顔で現れた町長に、驚愕の表情を浮かべるライ。
今でも彼女は信じられなかった。
何故自分がこんな目に遭っているのか。
何故この人物が自分をこんな目に遭わせているのかを。

「この娘か…?」

長老の背後から姿を現す数人の黒服の男達。
その内の一人が男が一人、町長に声を掛ける。

「はい……そちらの条件を全て満たしていると思いますが…」
「ふむ…」

黒服の男は顎をあげると、ゆっくりとした足取りで拘束されているライに近づくと、彼女の顎を持ち上げ、舐め回すようにその身体を凝視する。

「……っ!」

まるで動物か何かを扱っているようなその男の振る舞いに、嫌悪の念を抱くライ。

「確かに、久しぶりの上物だ。まだまだガキだがな」
「あ……!」

ライの身体を眺め終えると、捨てる様に彼女から手を離す男。
ライを支えるものが無くなり、地面にその身体を叩きつけられる。

「約束の金だ……次も頼むぞ」

男がクイッと顎を上げると、長老の後ろに立っていた黒服の一人がその手に持っていたアタッシュケースを開ける。
その中にケースいっぱいにギッシリと紙幣の札束が詰まっていた。

「あ、ありがたい…」

札束を確認すると、アタッシュケースを閉じ、受け取る町長。

「私を……売った……?」

信じられない光景を目の当たりにし、残酷な推測が頭をよぎる。
しかし、それが事実であることは町長自身の口から語られることになる。



「にゅー……もう食べられないです〜…」

一匹町長邸に取り残されて、幸せそうに眠っているペンギンはベターな寝言を漏らしながら、ベッドの上で眠っていた。
今ライが窮地に陥っていることなど、でべは露ほども知らない。



「こんな辺境の街を豊かにするには、仕方の無いことなんじゃ……。運が悪かったと思って諦めてくれ…」
「……!」

自分を見下ろしながら非情の言葉を投げ掛ける町長を前にし、歯をかみ締めるライ。

「お前のような小娘は意外と貴重でな……。そのままでも、その手の趣味の人間には高く売れるし、その健康的な身体で労働力としても売れる。内臓だけでもお前のなら高値が付くだろうよ…選り取り緑だ」
「てめぇ……!」

自分を商品としか見ていないこの男に対し、怒り以外の感情が出てこないライ。
それは町長に対しても同じだ。
自分を騙し、裏切ったのだから。

「ハン、粋がるなよ…ガキ」
「…っ!」

ライの怒りの瞳を物ともしないように、サングラス越からの睨みで彼女を威嚇する黒服。

「話は聴いたが、騙される方が悪いんだよ、うん?第一考えてもみろ、どこの世界に単に通りすがるだけの旅人を住民挙げて歓迎する街がある?」
「……!!」

男の言葉に、まるで身体の中をえぐられたような痛みを感じるライ。

「ちょっとチヤホヤされたからって気を許したお前が悪いんだよ。わかったなら、おとなしくしてな」
「……」

愕然としているライの耳にはもはや男の声は入っていない。
まるで何かを求めるように儚げに、ゆっくりと町長を見上げるが、彼はライから逃げるように顔を逸らす。

「じいちゃんにとっても…私はただの商品か…?最初から、そのつもりで私を迎えてくれたのか……?」

答えを知るのは怖かった。
しかし、真意を確かめられずにはいられなかった。
たとえ、さらなる絶望に落とされるとしても。

「……当然じゃ。ワシにとって大事なのはこの街と住民だけじゃ…。旅人の一人や二人を気にしているわけにはいかん……」

町長はライの顔を見ようとはせず、まるで唱えごとのように呟く。

「……そっか」

まるでスッキリしたかのように、先ほどまで怒りと絶望の色に支配されていたライの表情が、打って変って清々しいものになる。
しかし、それはまさに「嵐の前の静けさ」であった。

「それを聞いて、吹っ切れたよ!でべ……じゃない、『ヤフ=パランデ』!!」

それまでの穏やかさが吹き飛び、目を見開き聞き慣れぬ単語を叫ぶライ。



「……にゅ?」

互いに離れた場所に居る事にもかかわらず、ライの言葉に呼応するように、眠っていたでべの身体が淡い光に包まれたかと思うと……。

「にゅっ、にゅぅ〜〜っ!?」

自分でも驚きながら、でべは青白い光弾となって、あっという間に天井を突き破ってどこかへと飛び去ってしまった。



「……今、何か言ったか、ガキ?」

ライの突然の叫びに呆気に取られながらも、威圧的な態度で尋ねる黒服。

「直に解るよ…」

男の威圧にも屈せず、気丈に振舞うライ。
そして彼女の言ったとおり、それは突如、彼らの前に現れた。

「な、何だっ…!?」

轟音と共に天井を突き破って床へと落下した青白い光弾。
男達が驚きと共に目を見張る中、白煙から姿を現したのは……。

「にゅ?」

ペンギンだった。

「……これは何の冗談だ…?」

 マヌケ面を露呈して辺りを見渡しているでべに、先ほどから厳格な態度を崩さなかった男も、さすがに呆れ気味だった。

「すぐに解るって。おい、でべ!この鎖を凍らせてくれ!」
「にゅー、人をたたき起こしておいて、いきなり命令ですかー。やれやれですー」
「いいから、黙ってやれ!」

到着した直後に指示を送るライに、「やれやれ」とジェスチャーを取るでべ。
自分の今の状況に反して、全く真剣みの無い暢気なでべを怒鳴りつけるライ。
なお、でべの後では。

「オイ、今時のペンギンは喋るのか?」
「いっ、いいえ、普通のペンギンは昔から喋りませんよ」

という、黒服と部下のやり取りが。

「にゅー、しょうがないですねー。うりゃーっです〜!」

「やれやれ」のジェスチャーを止めると、ライに向かって口から、ペンギンよろしくの冷気を勢いよく噴出するでべ。
ライを拘束する鎖はたちまち凍りつく、が……。

「カチーン」

鎖を凍らせていた氷がライの身体まで包み込み、彼女自身も凍らせてしまった。

「って、やりすぎなんだよっ!!」
「にゅぎゅんっ!?」

気合と根性で(ということにしておこう)鎖ごと氷を砕き、でべの脳天に渾身のチョップを打ち込むライ。

「………」

そんな一人と一匹のやり取りを、心の底から呆れ果てて見ている黒服たち。

「ととっ、冗談はこれくらいにして」
「冗談だったのかよ!」

黒服たちの何か得体の知れないものを見るような視線に気づき、すかさずシリアスモードに切り替えるライに抜群のタイミングでツッコむ黒服。

「コホン、気を取り直して……」

バツの悪そうな顔で呼吸を整えるライだが、次の瞬間、その顔色は変わり…。

「『ヤフ=パランデ』!スタイルチェンジ!『CANON』!!」
「にゅっ!」

またもや聞き慣れぬ単語を叫ぶライ。
だが、それに呼応するようにでべに変化が生じる。
突然、その体表面がメタリックに変質し、身体全体がまるで大砲のように変形し、ライの右腕に装着される。

「なっ!ガキッ!それは何だァッ!!」

ペンギンが変形して武器になる。
そんな絵空事のような事態など、たとえ直に見ることになっても、そう簡単に受け入れられるものでない。

「見てわかんない?これはー」

動揺する黒服の問いに軽口で返しながら、大砲化したでべの砲口を黒服達に向ける。

「こうするモンだっ!!」

猛然と叫ぶと、ライの腕に装着されたでべ大砲が火を噴く!
その瞬間、天井に大穴が開く。

「テッテテテ、テメェっ!なんて危ねぇモン持ってやがるゥッ!?」

ただでさえ困惑する状況に、ライの駄目押しで恐怖心をあおられ、黒服の男の自己防衛が爆発。
男が即座に出した銃から放たれた銃弾はライの急所を外し、頬を掠めるだけに至ったが、それを合図に残りの黒服達も銃を構える。

「………最初に言っておくけど、最初に手を出したのはそっちだかんな…?」

頬から地位を流しながら黒服たちを睨んだライの瞳は、普段の彼女では持ち得なかった殺意のこもった冷たい瞳だった。
そして、次の瞬間。

「アベベッ!?」

人間のものとは思えない断末魔を残し、あっという間に上半身を無くしたのは、町長のすぐ横に立っていた黒服の仲間だった。

「ひ、ひぃぃっ…!」

血を噴出しながら佇む上半身の横で、怯えながら蹲る町長。

「な、何をしやが…べばふっ」

上半身をなくした仲間を見て、ライに振り向いた瞬間、頭が吹き飛ぶ黒服の仲間。

「あ、アアアァァ〜〜ッ!!?」

仲間二人を無惨に葬られたのをスイッチに理性の崩壊した黒服は、自分の身を守るために所かまわず銃弾を打ち込むが、その悉くはライの身体を射抜くことが無かった。

「………」

無言で大砲を黒服に向けるライ。
そして……



硝煙と血生臭い匂いが充満する倉庫。
その中で生きているのはライ、でべ、そして町長だけだった。

「安心しな、あんたの命は取らない…」
「……!」

ライの声で、それまでガタガタ震えたまま蹲っていた町長が我に返り、辺りを見渡す。
その目に飛び込んでいたのは、数分までは人間だった肉の塊であった。

「なっ、なんて事をしてくれたんじゃ…!ワシ等は一体これからどう生きていけばいいんじゃ…!」

黒服達が葬られた事により、金の収穫経路を経たれた事に深い絶望感を抱く町長。
しかし、ライはあくまで冷静な口調で告げる。

「だったら、他の土地に移ればいい」

辺境なために繁栄が難しいのならば、土地を変えればいい。
それが最善の方法であると思われたが。

「バカを言うな……そんな簡単な事ではない…。旅人のアンタにはわからんじゃろうがな」
「そうだね。行くよ、でべ」

床に座り込んだまま動かない町長を背に、何の未練も感じていないようにその場を離れようとするライ。
そんな彼女に、ただ付いて来るだけのでべ。

「じゃあな、じいちゃん」

その言葉を最後に、座り込んだ町長を取り残して街を出るライとでべであった。
その後、その街がどうなったかを知る者はいない。



「今回は散々でしたねー」
「……うん」

街を離れる旅路の中、ただ足を前後に動かして歩いてるだけのライに、でべが話しかけるが、返ってきたのは気の無い返事だった。

「あんなに歓迎を受けたのは初めてですけど、あんな目に遭ったのもはじめ……」
「でべ……ちょっと黙ってろ」
「にゅ…」

ベラベラと喋るでべに、小声で呟くように口止めを促すライ。
いつもなら気にせず喋り続けるでべではあるが、いつもと違うため、その場は逆らえず口を閉ざす。

私は別に誰かのために旅をしているわけじゃない…
これは自分のための旅だ…

一人と一匹は旅を続ける。
これから先も、止まることなく。

( 2004年10月27日 (水) 01時13分 )

- RES -

[45] - 投稿者:イシュ

キャラデータ@

ライ・エルピス 女 14歳 身長148cm 体重31kg スリーサイズ 67/50/70
 若干14歳ででべと共に旅をする少女。
非常にがさつで男勝り、口より先に手が出るという攻撃的な性格で、パートナーのでべの悪口には敏感に反応しては彼女を殴る蹴るのを日課(?)にしている。
 ある目的のために旅を続けており、旅の過程で彼女は世界のもう一つの姿を見ることになる。

でべ(ヤフ=パランデ) メス 年齢不詳 身長74cm 体重?

 ライと共に旅をする人語をしゃべる謎のペンギン。
その正体はペンギン、人間を含めた7つの姿に変身する能力を有する古代文明の生態兵器……らしい。
可愛らしい外見とは裏腹に相当な毒舌家で、いつも余計なことをしゃべってはライに殴られる。

※これらのデータは近作限定の設定です。他の作品とは一切関係ありません

( 2004年10月27日 (水) 01時19分 )

[46] - 投稿者:イシュ

次回予告

旅の途中、一人と一匹が立ち寄った海と空の見える小さな街。
旅人の間でも休養の地として有名な街であり、ライもすぐに気に入ってしまうが、その街には一つの奇妙な噂があった。

第2章「永遠の街」

( 2004年10月28日 (木) 03時12分 )


[43]でべとライと 第1章「裏のある街」A - 投稿者:イシュ

「久しぶりのベッドだぁ」

町長邸にあったのを借りたパジャマに身を包み、綺麗にメイクされたベッドに飛び込むライ。
この街に辿り着くまでの間はずっと野宿続きだった事もあり、フカフカの心地よい感触が返ってくる羽毛ベッドにすっかり心を奪われてしまう。

「ちょっと待つです」

ライの小柄な身体が沈むベッドのやや下から声が。

「一体この差は何なんですか〜!」

ライ達が通された個室に用意されたベッドは一つだけで、それはライが使用しているが、でべに用意されたのはやっと身体が収まる程度の揺りかごとシーツ一枚だけだった。

「すー……すー……」
「………寝てるし」

でべの声が届く前に、ライの意識は深いまどろみの中にあった。
仕方なく今宵はこの揺りかごと共に過ごす事にするでべ。
ライのベッドに入り込みたいところだが、ベッドに飛び込んだ姿勢のまま眠っている彼女をどけてまで、ベッドを物にする気にはならなかった。
そして、一人と一匹はこれまでの疲れもあって、これ以降一度も目を覚ますことが無いまま朝を迎えることになる。



「講演会…?」

二日目の朝を町長邸で迎えたライ達は、夕べと同じ食堂で朝食をとる。
そんな中、町長から一つの話を持ち上げられる。

「うむ、恥ずかしい話じゃが、街の者のほとんどは町から一歩も出たことがなくてな。ワシとて年に1,2回くらいしか出ておらん」
「ふーん…」

パンをかじりながら、町長の話を耳に入れるライ。
街から出たことが無いというのも、この街の特殊な位置のためだと推測し、それ以上は考えなかった。

「そこでじゃ、嬢ちゃんから皆に旅の話でもしてもらえんかの。外の世界の話など、街の者も喜んで聞いてくれることじゃろう。どうか、頼まれてくれんかの?」
「いや、街の人達に聴かせるなんて……そんな大層な物じゃないってゆーか…」

町長の申し出に、頬を紅潮させてあからさまな照れ隠しをするライ。
大勢の前で何かを話すなど、今まで経験したことの無い事を迫られ、彼女は舞い上がっていた。

「おぬしがこの街にやって来たのも何かの縁じゃ……どうか、どうか頼まれてくれんかのぉ?このジジィもあんたの話が聴きたいのぉ……ゴホッ、ゴホッ」
「う……」

事情も事情だからか、町長に退く気はないと思われる。
その事情もわかるが故に、ライはこの申し出を断るに断れない。
そして苦悩の末、結論を出す。

「わ、わかったよぉ……でも、ホントたいしたモノじゃないからな」

念を押しながら、顔を紅くするライ。
その横でひたすらマイペースに食事を取るでべ。

「おぉ、恩に着るぞぉっ!」

歓喜の表情でライの小さな両手を握る町長。

「い、いやぁ〜……」

町長の喜ぶ様に、少々引き気味ながら手を握られているライ。
その隙にライの食事まで口に突っ込んでいるペンギンが一匹。

「って、私の分まで食うなっ!!」
「ギュニュッ!?」

しかし、即座にライのチョップを脳天に受けるでべであった。



それからあっという間という表現がピッタリなほど時間が経ち、街は夕焼けで紅く染まっていた。

「講演会、大絶賛でしたねー」
「うん…」

用意された部屋のベランダから夕日に照らされた街を眺めているライとでべ。
でべの声に、気の無い声で返すライ。
心ここにあらずというのはこういう事を指すのだろう。

「みんな喜んでましたねー」
「…そうだな」
「にゅー……」

いくら言葉を掛けてもライの耳には入ってないように思えたでべは、その場を離れようとする。
いつもなら、軽口、悪口でライを刺激するところだが、今の彼女にはそれも気が引ける空気が漂っていた。

「なぁ、でべ……」
「にゅ?」

でべが背中を向けると、やっとライの方から口が開く。

「この街っていい街だな…」
「にゅ?」

ずっと遠くを見つめるような瞳をしていたライが、そんな言葉を漏らす。
いつもと違うライの姿にでべは首を傾げる。

「いっぱい歓迎してくれて、私のつまんない話をあんな真剣に、楽しそうに聴いてくれてさ……」

どこか儚げな表情で言葉を続けるライ。
その姿に、普段のガサツで豪快な彼女は微塵も感じられなかった。

「街を見て回ったけどさ…私が通る度にみんな、いい顔で笑ってくれて、話しかけてくれて……私まで何か楽しかったよ…」

いくら気丈に振舞っていても、彼女は14歳の少女に過ぎない。
それまでの一人旅から思うこともたくさんあっただろう。

「にゅー……」
「あ……悪い悪い、急にこんな事話しちゃって……。私、どうしちゃったんだろうな」

でべの心配そうな声を聞き、我に返ったようにいつもの自分の戻るライ。
しかし、無理やりに作ったようなその笑顔が、どこか哀愁を思わせる。



「どうじゃったね?この街は?」
「いい街だよ、住んでる人もみんないい人で……今まで寄った街とは違ってて…」

夕食の時間、スープを口に運んでいるライに町長が唐突に声を掛ける。
ライも気を許したのか、今朝よりも気軽な口調で話しに応じる。
しかし、今まで立ち寄った街の話に触れると、自然と表情が曇ったのが解る。
それまでの街にはあまり、いい思い出がないようだ。

「気に入ってもらえて何よりじゃ…我々もおぬしがこの街に来てくれて嬉しいよ」

そう言いながら湯飲みに手を伸ばし、茶をすする町長。
その姿は今までの苦労が半端なものではなかったということを思わせるほど、疲れたように見える。

「……」

自分はこの街では必要とされている。
そう思うと、ライは無性に嬉しくなり、その顔に笑みが出来る。
しかし、そんなムードをぶち壊すように、彼女の横で豪快に夕食を飲み込んでいるペンギンが一匹。

「空気読めっ!」
「にゅごっ!?」

ライの肘がでべの脳天に決まった。

「……お嬢ちゃん、本当にありがとうのぉ…そして、すまん」
「……へ?」

唐突に意図の見えない話を切り出す町長に、間の抜けた声を出すライ。
しかし、異変はすぐに訪れた。

「う…ぁ……?」

目を開けているのも辛いほどの、異常な眠気。
ライの意識はあっという間にまどろみの中へと消えた。
ライでも我慢の出来なかった眠気だ。
横ではとっくに寝息を立てて幸せそうに眠っているでべが。

「すまんのぉ……嬢ちゃん」

椅子から転げ落ちて、安らかな寝息を立てているライを見下ろしながら町長がつぶやく。
眉毛に隠れたその瞳は哀しみが溢れていた。

( 2004年10月27日 (水) 00時28分 )

- RES -


[42]でべとライと 第1章「裏のある街」@ - 投稿者:イシュ

でべとライと裏のある街


ひたすら続く山道を、ひたすら続く同じ情景を眺めながら、ひたすら足を動かし突き進む。
終わりの見えない進路に体力の消耗はもちろんのこと、心労も募る。
そして、何より。

でべでべでべでべでべ

「……っ」

背後から絶え間なく聞こえる珍妙な足音。
それが彼女に言い様のない不快感を与える。

でべでべでべでべでべ

「あぁ〜〜っ!うるせえぇっ!!」

放出出来得る限りの怒声を、背後の不快の元凶に叩き込む少女。
少女は十代の半ば頃、長い金髪のツインテールに蒼い大きな瞳を持つ顔は幼げで、その身には帝都中央スクール中等部の制服を着込んでいる。
スカートから見え隠れする右太股には、しっかりと固定されたナイフと思われる鞘が下がっており、背中には自分の体よりやや大きめのリュックを背負っていた。
少女はすこぶる不機嫌である。

「にゅ?何をそんなにイライラしてるんですか〜」

返ってきたのは何故怒鳴られているのか皆目見当もついてないペンギン・でべの顔だった。
その後、少女・ライの怒りの全てを込めた鉄拳を受けたペンギンがいたというのは語るまでもないだろう。



歩き続けること子一時間……山道を突き抜けた向こうの町にたどり着いた頃には、手に持った棒でやっと自分の体重を支えていられるような状態のライであった。

「もうダメだ……歩きたくね。早く宿をとって寝たい……」

ガクガクと肘を震わせてやっと地に足をつけているライを、真っ赤な夕日が照らす。

「にゅ〜、それが年頃の女子のセリフとは思えないですね〜。ババァですね、ババァ」

その後まもなく、でべは自らの毒舌の報酬を受け取ることになる。
ライの残りの体力全てを込めた暴力を一身に受けることで。

ガヤガヤ

「ん…?」

コブだらけでもはや顔の識別など出来ない有様のでべの胸倉(?)を掴み上げ、もう一発拳打を打ち込もうとするライだが、いつの間にか自分達が街の住人達の注目の的になっている事に気づく。

「………」

住人達の珍しいものでも見るような視線で平静さを取り戻し、ゆっくりと視点を自分が今掴んでいる物体に移すライ。
これ以上無いというくらい立派にペンギンだった。
もちろん、往来のど真ん中でペンギンに暴行を加えている人間など、この街には彼女くらいしか存在しない。
つまり浮いていた。

「あー……えっと…」

様々な考えが飛び交いする頭で、必死に言い訳を思案するが、パニック状態の彼女には無理な話だった。
困惑しながら突っ立ているライに、不意に歩み寄ってくる青年が一人。

「ねっ!ねっ!君、どっから来たの?」
「へ?」

しかし、喜びを含んだ表情で自分に接して来る青年を前に、てっきり非難を受けるものと思っていたライは唖然とする。
そして、それを皮切りに彼女達に視線を食っていた住人達がどっと押し寄せる。

「一人で旅かい?大変だっただろう」
「疲れてるだろう、良かったらウチの宿へ泊まっていてくれ」
「このペンギン、カッワイイ!あなたのペット?」
「おやまぁ、こんなに若いのに旅かえ?」

嵐のように次々と声を掛けられるライ。
まるでアイドルが熱狂的なファン達の歓声を浴びているように。
住人達のライへ示す興味はやや異常であった。

「あの……ちょっと…」

ただでさえ長旅の疲労が消えてないライにとって、住人達にもみくちゃにされるのは嫌悪こそ感じないが、快きものではなかった。
それは、先ほどから子供達に身体を引っ張られて弄ばれているでべも同じであった。

「これこれ、皆の衆。久方ぶりの来客で嬉しいのは解るが、少し鎮まりたまえ」

ライ達を中心に波のように集まっている住人達が一歩退いて一本の道を作る。
そこから歩いてきたのはかなりの高齢と思われる老翁であった。

「はじめまして、お嬢さん。ワシはこの街の町長を務めている者ですじゃ」

自己紹介する町長に、「ども」と会釈するライ。
子供達の玩具にされているでべにはその余裕も無い。

「ここまで来きて、さぞ疲れただろう。今夜はひとまずワシの家に泊まっていきなさい」
「え…?でも……」

宿代が浮くのはけして嫌な事ではない。
しかし、初対面の人間の家に突然泊まりこむというのは、あまり経験も無く、気も引けた。

「個人的にお前さんと話がしたいんじゃ…。老い先短いジジィの願いを聞いておくれ、可愛いお穣ちゃん」
「……」

「可愛いお穣ちゃん」という言葉に少しくすぐったさを感じつつ、首を縦に振るライ。
ここまで言われて無碍に出来るほど彼女は冷めた人間では無いし、長老の話というのも気になったからだ。
長老の後に付いていくライ達を惜しみながら見送っていく住人達に、背中から疲れを感じたライであった。



「街の者の歓迎には疲れただろう。でも悪く思わんでくれよ。街の外の人間を見るなど久しぶりじゃからな」
「久しぶり…?」

町長という立場ゆえか、ライ達が招かれた家は街で一番目立った豪邸であった。
豪華な装飾に彩られた広大な部屋へ、ミルクティーの出されたテーブルに落ち着き無く座っているライとでべ。
このような場所に招かれるなど、これまではもちろんこと、もう二度とあり得ないだろうと思う一人と一匹であった。

「お前さんも知ってのとおり、この街は来るまでの道が難所でな。当然のことながら立ち寄る人間が極わずかなんじゃ。たまに商人がやって来る程度じゃな」
「ふーん…」

ミルクティーを口に含みながら長老の話を聞くライ。
この街までの道のりが難所なのは、自らの身体で思い知ったばかりであったからうなずける。

「そういうわけでじゃ、久しぶりの客人に皆も喜んでるだけなんじゃ。気を悪くせんでくれ」
「はぁ……別にそれはいいんだけど…」

とある目的のための旅で偶然立ち寄った街で、盛大(すぎる)な歓迎を受け、さらに町長の話を聞いて恐縮するライ。
ただの旅人に過ぎない自分の存在をありがたく思っているこの街の住人にたいして、どこか罪悪感めいた感情があった。
自分は本当に偶然立ち寄っただけなのに……

「ところで、この街へはどれくらい滞在する予定かな?」

これが本題とばかりに、唐突に話題を切り替えて尋ねる長老。

「え…?んと、別に決めていないけど……」

特にこれといった意味が無い質問かと思い、深くは考えずに返答するライ。

「なら、しばらく滞在してくれんかね?街の者に旅の話でも聞かせてやっておくれ」

ライの返答を聞くと、シワだらけの顔で笑顔を作る町長。
とは言っても目は太い眉毛で、口は長い白髭に隠されていて、顔のつくりでしか認識できない笑顔であったが。

「さて、話はくれくらいにして食事にしようか」

そう言うと、横に控えていた使用人と思しき女性になにやら合図を送る町長。
使用人はペコリと頭を下げると、早々とした足取りで部屋から去っていった。

「……!」

「待ってました!」と声を大にして叫びたかったライだが、場所が場所だけに、その欲求を押し殺して黙って席に着いていた。
でべに関しては、幸せそうな顔でテーブルに身体を乗り出していた。



「は〜…生き返る〜……」

鬼気迫る勢いで食事を終えた後、家一個分はあると思われる広大な浴場に落ち着かないながらも、湯船に浸かって今にも昇天してしまいそうな心地になるライ。

「きゃー、ライさんババくさ……」

頭に手ぬぐいを乗せて、さも当然のように湯船に浸かっているペンギンが、お得意の悪態を披露するが、瞬時にライの放った桶の直撃を受け、湯の底に消える。

「……最初はちょっと戸惑ったけど、たまにはこういうのもいいかもな…」

湯船に身をゆだねながら、豪華に彩られた天井を見つめるライ。
長いこと旅を続けていたが、今までどの街でも受けたことのない待遇に、彼女は快楽にも似た感情を抱いていた。

「にゅ〜……でも、ちょっと気持ち悪いです〜」

プカプカと仰向けの状態で湯船に浮くでべ。
その風貌はまるで玩具か何かであるが、彼女は立派な生き物である。

「んぁ?何が…?」

完全にくつろぎモードで、気の抜けた声をでべに掛けるライ。
心なしか、顔もとろけているように見えていた。

「やれやれ、ライさんは舞い上がりすぎです〜。あ、普段から鈍感でし……」

二言目には悪言が飛び出すのが災いし、ライによって桶で湯船の底に押し込まれ、続きを話しことなくでべは沈んでいった。

( 2004年10月27日 (水) 00時26分 )

- RES -


[40]でべとライと プロローグ「静かなる夜」 - 投稿者:イシュ

プロローグ でべとライと静かなる夜


 風の音も、虫の声も聞こえないただひたすら静寂と闇だけが支配する夜。
一瞬、そこに生命は存在しないなどとも思わせる静寂の中、ガサガサと何かが草花に触れる音と共に一つの人影が姿を現す。

「今夜はここら辺で野宿かな…」

リュックを背にし、草を分けながら、暗闇の中でも目立つ巨木の下へとやってくる人影。
その姿は10代前半の小柄な少女であった。
帝都中央スクール中等部の制服に身を包んだ少女は巨木の下を見定めると、そこへリュックを下ろし、草の上へと腰を下ろして座り込む。

「おーい、でべ。……どこ行った?」

リュックからランプを取り出し、それに火を灯しながら、少女は明かりの届いていない暗闇へと声をかける。
その声に呼び返すように、ガサガサと葉が鳴る。

でべでべでべでべ

葉がこすれる音と共に、何やら珍妙な足音が少女の方へ向かって来る。

でべでべでべでべ

足音は少女の方へ向かって来る、小さくて丸みのある物体の物だった。その物体の正体は……。

「にゅ〜」

ペンギンだった。

「ったく…すぐ迷うくせに、私から離れるなっていつも言ってるだろ」

妙な泣き声を発するペンギンの存在に全くの違和感を感じることなく、少女はペンギンの存在を受け入れ、リュックから就寝用の寝袋を取り出す。
しかし、ペンギンが驚かせるのはその存在だけではなかった。

「にゅ〜、ライさんはいつもせっかちでいけないですね〜。少しは海のように広い心を持ったらどうですか〜?あ、その何もない胸じゃ無理でしたね〜」

小さな嘴をパクパク動かしてベラベラと人語を喋りだすペンギン。
しかも、かなりの毒舌家である。

「胸は関係ねぇだろっ!!」
「にゅぎゅ〜〜っ」

しかし、所詮はペンギン。
自らがライと呼ぶ少女のアッパーを前に、あっさりとロケットのように吹き飛ぶ。
過剰気味な彼女の怒り様から、胸にややコンプレックスがある事がうかがえる。


「………」

ランプの明かりを消し、寝袋に潜ってみるものの眠気は一向に来ない。
胸に抱きつく形で幸せそうに眠っているペンギンの存在が苛立たしく思えるほどに。

「……一体、どこまで来たんだろ…」

ふと呟く。

「ま、いっか…」

自分にとって実に意味のないことを考えたと思い、自らに笑みをこぼすライ。

「おやすみ…でべ」

胸にへばりついて眠りに就いているペンギン・でべに一言呟くと、自分も目を閉じる。
どこにいようと、どこを目指していようと、自分が探している答えは一つであることを再認識しながら、彼女は眠りへと落ちる。

そして朝は来た。

( 2004年10月26日 (火) 02時33分 )

- RES -

[41] - 投稿者:イシュ

ちょっと違った趣向で書いてみた近作。
少々キノの旅っぽいですが、それは今回だけです(ホントかよ)
どんどん違うものになっていくことを保障します(んなモンされてもな)

( 2004年10月26日 (火) 02時34分 )





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