[217]W企画ノベライズエピソード 第3話「危険なF/千の顔を持つ女」C - 投稿者:matthew
「って、ちょい待ち! それで何であたしを呼び止める必要があるん!?」 みぎりの説明を受けて大方の状況を把握した鶴ではあったが、それでも腑に落ちない点はあった。別に彼女に頼まなくても、もっと信頼できる仮面ライダーは他にもごまんといるのだ。それなのに何故自分が指名されたのか――厄介ごとのお鉢を回されたのが何故自分なのか、認めたくなかったのだ。 するとみぎりは、ふんとそっぽを向いたまま胸を張って彼女に言ってみせた。 「お仕事だよ、お仕事。みぎりんは依頼をあずかったの、お兄ぃから」 「仕事ぉ?」 「そ。みぎりんたちは2人で1人の運び屋だから、どっちかがいなくなったらダメなの」 「……で?」 「だから、お兄ぃからの依頼。自分の代わりに、運び屋を代行してくれってさ」 「……っ、そ、そう来たかぁ〜……!」 やられた、と言った感じで鶴は両膝をついた。面倒ごとは確かに勘弁だが、こと仕事となればむげに断るわけにはいかない。先斗は見事にロジックの穴を突いてきたのである。 「ホントはみぎりんもやだけど、お兄ぃが言ってるんだからしょーがないし……一日相棒ってことで、よろしく」 子ども扱いされたことを根に持ってか、まだみぎりの頬は膨れたままだ。幼い雰囲気には似つかわしくないビジネスライクな挨拶をして、すっと彼女が片手を差し出す。その手を握れば、依頼は成立ということだろう。 これを断るのは、代行屋としてのプライドが許さない。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった鶴の背中を、皮肉にもそんな揺るぎない自らの誇りが押してくる。跪いたままで鶴は恨めしそうにみぎりを見上げ――やがて観念したように、その手を握り返すのだった。 「……しゃーない。運び屋代行、その依頼確かに引き受けた!」
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2010年09月03日 (金) 09時36分 )
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