[209]W企画ノベライズエピソード 第2話「Aの捕物帳/愛こそすべて」G - 投稿者:matthew
零太の姿を認めたアシッド・ドーパントは右手に溜めていた酸の塊をするりと体内に呑み込んで肩をすくめた。その声に、失望の色が混じる。 「残念だわ、探偵さん……あなたなら私の考えを理解してくれると思ったんだけど。その様子だと違うみたいね」 「ああ。最初は僕も理解してたつもりだった。でも……今は違う」 雨脚が強まり、草木がざわめく。その中を、零太は力強い足取りで歩き出した。体を打つ雨の強さにも構わずに。 そう、同じく動物を愛している“はず”だからこそ気づくことの出来た違い――自分との間に見える決定的な差を、零太は戦う意思に変えていた。もはや、迷いはない。 「あなたのそれは愛情じゃない。あなたの心は荒んでる……何かを愛せる心があるなら、そんな風に心は荒んだりなんかしない!」 「違うわ。これは愛故の憎しみよ。それが分からないようじゃ……言葉は通じないようね!」 アシッドが臨戦態勢に入り、右手を零太に向ける。しかし零太は動じなかった。雨に濡れた野球帽のつばの下、零太の目が怒りに燃え上がる。 「違う! そんなのが……そんなのが愛情であってたまるか! その憎しみは、ここで僕が断ち切ってみせる!」
――と、そんな零太の頭上に黒い傘が覆いかぶさった。 「――僕が、じゃない。僕たちが、の間違いだろうレフト?」
「雨姐さん!」 「こんなことだろうと思ったが……まあ合格としておくよ。一応は行動したわけだしな」 いつの間にか追いついてきたルーズなジャージ姿の雨が、零太に差し出した傘の下で気だるげに微笑む。その青い瞳は全てを見透かしたかのように“相棒”を映していた。 「……ごめん、電話勝手に切って」 「気持ちは察している。そう気にするな、今はそれよりも先にやるべきことがある……だろう?」 「ああ……そうさ!」 雨から傘を力強く受け取って、零太はサベルドライバーを懐から取り出した。彼らの心はすでにひとつだ。ドライバーを装着するまでもなく揃った心は、響く雨音の中に手の中のガイアメモリの声を強く轟かせた。 『マッハ!』『ブレード!』 傘が、放られて空に舞い上がる。その刹那に状況を察知したアシッドが掌から酸の塊を2人に向けて放つ。 「「変身!!」」 『マッハ、ブレード!!』 2人を覆い隠すように落ちてきた傘は酸を浴びて一瞬で白煙と共に溶けてなくなった。 しかし次の瞬間に煙の中から見えてきたのは、草むらの上に倒れこんだ雨と――サベルへと変身を遂げた零太が腰の刀を抜き放つ姿だった! 「「その罪の連鎖……ここで断ち切るッ!!」」
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2010年08月18日 (水) 13時43分 )
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