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[206]W企画ノベライズエピソード 第2話「Aの捕物帳/愛こそすべて」E - 投稿者:matthew

 一方的に電話を切った零太の様子に全てを悟った先斗は、静かにその横顔に語りかけた。
「……麻生さんなんだな、黒幕は」
「嘘だ……雨姐さん、何でそんなことを俺に……」
 零太は、その真実を認められずにうろたえている。雨にとってそれは予想していた事態ではあったのだが、それでもここまでの動揺は想定していなかったに違いない。電話の内容から大方の事情を察した先斗は、ため息をついて口を開く。
「……アンタを。相棒を信じてるからだろ。アンタなら何とかするはずだって」
「違う! こんなのは嘘だ……信じられるか!」
 それでも、零太は動かない。しびれを切らした先斗は、彼の襟首を掴んで怒鳴りつけた。
「だったら誰が相棒を信じるんだよ!」
「!!」
「俺はどんなことがあってもみぎりを……相棒を信じる。たとえそれがどんな残酷なことだとしても、絶対に逃げたりなんかしない。そんなことをしたら、俺を信じてるあいつに顔向け出来ねぇからな」
 先斗とみぎり。零太と雨。自分達に共通していることはつまり――“2人で1人の仮面ライダー”であり、かけがえのない相棒という存在があることだ。その根底には、揺るぎない絆がある。それだけはきっと同じだと、先斗は信じていた。
「……あの人はアンタを信じてるんだ。アンタが信じなくてどうする!」
「……」
 零太は答えない。信頼――相棒である雨に対する想いをとるべきか、自分の目で見た麻生マルコという人間の表の顔をとるべきか、その狭間で心が揺れているのだ。
 先斗は手を放すと、懐にしまっていたデュアルドライバーに手をかけた。もしもの時には、もちろん“これ”が必要になる。事態が一刻を争うというのなら、もたついている暇はない。
「……俺は行くぜ。これがみぎりが掴んだネタなら、信じないわけにはいかねぇ」
「……」
「それにな。ここは俺の生まれた街だ。たとえ誰が守らなくても、俺だけは絶対に守るって決めてるんでね……!」
 自転車で鍛えた両足で、先斗は迷わず今来た道を引き返す。街に訪れるであろう危機を防ぐために、全速力で。
 その背中を茫然と眺めながら――零太はまだ、動けずにいた。

 先斗が麻生邸に再び到着した時には、もう豪邸の灯りは全て消えていた。薄暗くなった夜の闇がそれを強調し、先斗の脳裏に悪い予感を巡らせる。
「くそっ、一足遅かったか!」
 しかし、問題なのは実際に彼女があのメモリを使って何をしようとしているのかが謎のままだということだ。本来のユーザーがメモリの力を使った場合の増大具合は、経験上先斗も理解している。エーテルが変身した時の記憶を掘り起こしても、その通りになるということはまずありえない話だ。
(あのメモリは酸のメモリ……けどそいつを一体どう使うつもりだ? いや、むしろどこまで“出来る”んだ……?)
 考えれば考えるほど、答えが見えない。さすがにヒントが少なすぎた。闇雲でも麻生の行方を捜している足を止め、先斗が天を仰ぐ。
「……げ。怪しい雲行き……マジかよ、降るのかよ雨……」
 空には灰色の雲がかかっていた。そういえばTVの天気予報で今日から天気が荒れるというようなことを言っていた気がする。さすがに雨に打たれるのはいい気分ではないのだが――

――雨?

「……そうか。そういうことか!」
 何気なく口にした言葉を引き金に、脳裏に浮かぶあるひとつの仮説。もしそれが本当なら、間違いなく街はパニックに陥る。状況はかなり最悪だ。先斗はすかさずドライバーを装着した。
「みぎりっ! 変身だ!!」
「え、なに!? 分かったのお兄ぃ!」
「ああ、バッチリはっきり分かったぜ相手の目的が!」
『ウェイブ!』『ストライカー!』
 2人が手にしたメモリが叫び、内蔵された地球の記憶を起動させる。つながった意識でメゾンギャリー内の相棒と呼吸を合わせた先斗は、足を止めることなくデュアルへと変身した!!
「「変身!!」」

( 2010年08月10日 (火) 13時25分 )

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